色々なIF集   作:超人類DX

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それはつまり、某オーバーヘヴンみたいなもんであり、人助けには気質上全然合わないみたいな?


現実を否定してねじ曲げるマイナス

 

 卑屈を制御しなくなり、不幸を前にしても笑うようになり、本当に好きなのかを確かめる為に顔の皮を剥がし合ってから、イッセーは少しだけ他の繋がりを持てた。

 

 ソーナから始まり、同じ素養を持って爆発させたイリナ。

 下手をしたら都市丸ごとを壊滅させる事すらやらかせてしまう凶悪スキルの制御を解放してしまったロスヴァイセ。

 デュランダルばかりか聖剣という概念そのものを否定された結果、ただの泣き虫ちゃんになってしまったゼノヴィア。

 

 他にもアウトドア派なサイラオーグやドン引きしつつも逃げはしなかった――今はソーナから独立した匙元士郎や他の眷属達。

 

 二人目のもう一人の人外で安心院なじみの反転であるアザゼル。

 

 卑屈から過負荷になることで出来た繋がりは確かにあった。

 けれど今はそれらの繋がりは失われている。

 何故ならイッセーとソーナは死んだから。

 

 故に今の二人の繋がりは別世界の人間界で唯一持ってしまったまま、誰にも理解されずに死んだ過負荷のカズマと、そのカズマによって見出だされ、英才教育によってこちら側に這い寄ったゆんゆん。

 そして、過負荷どころか寧ろプラス側の特別の素養を持っているのに、加えて主人公気質を持ったミツルギ。

 

 異世界で、しかもファンタジーな世界で『悪魔(あくま)でマイナス』なソーナとその悪魔が大好きなイッセーは今日もきっと何かを台無しにしてしまうのだろう。

 

 抑えはしても制御するつもりはない気質を放って……。

 

 

 

 まんま幽霊が運動会でもしてそうな薄暗い山中にある墓場には、異様な数のアンデッドタイプのモンスターが出没しているので墓参りに困る。

 そんな依頼をよりにもよってマイナス組が受けた訳だが、彼等はそんな寒気もするじめついた空間でも平然とピクニック感覚で買い込んだお菓子を食べながら、アンデッドがポイポイと吹き飛ばされている様を見ていた。

 

 

「フンッ!!」

 

 

 それは、彼等のパーティにはマイナスでは無くて寧ろプラス側である特別レベルの青年が居る訳で、ここ最近精神的な構造が切り替わったせいか、めまぐるしい成長を遂げているミツルギ キョウヤがアンデッド達を素手で叩きのめしていたからだ。

 

 

「セイッ!!」

 

 

 カズマと同じく、アクアによってこの世界に転生した当初はアクアをまるで初期のゼノヴィアが神を信仰しまくってた時みたいに崇めていて、そのアクアが変わり者だらけのパーティで不自由をしていると思い込んで色々と失敗した挙げ句転生特典の魔剣を失い、それまで自分を慕ってた仲間にも幻滅されて離れられ、心身共にボロボロになった。

 

 しかし彼はよりにもよってマイナスたるソーナやイッセーによって救われてしまってからその人生が一変した。

 

 アクアに対する妙な拘りを止め。

 自分を助けてくれた嫌われがちなマイナス達の為に。

 畏怖故にでは無く、ただその恩を返す為に。

 

 

「ドリヤァァァッ!!」

 

 

 一からのリトライによって彼はマイナスが側に居るにも関わらず寧ろ成長し続けているのだ。

 

 

「すげーなミツルギ。

素手でアンデッドをぶっ飛ばしてんぞ」

 

「初期の匙君くらい強いかもしれないね」

 

「サジ……?」

 

「センパイの眷属だった俺と同い年の男子さ。

今は出世して他のセンパイの眷属の人達共々独立して、センパイのお姉さん――つまり魔王の直属護衛軍の隊長さんやってるんだっけ?」

 

「そうよ。

気付いたら姉さんとデキ婚してたわ」

 

「え、そのサジってのは元は人間だったんだろ? 凄くね? 魔王を孕ませたって……」

 

「転生悪魔の間じゃ、転生悪魔ドリームを体現した男として有名だからね匙君は。二十歳前なのにパパだぜパパ?」

 

 

 その成長率は、どうやらイッセーとソーナ的に匙元士郎を思い起こさせるものがあるらしい。

 彼はソーナという極大のマイナスを受け止められる自信が無くて落ち込んでいたのだが、サイラオーグという悪魔によって鍛えられた結果、その才能を開花させ、サイラオーグが甦らせた黄金騎士の称号と対を成す暗黒騎士の称号を持つ程の男にまでなった。

 

 結果、それを色々あって近くで見ていたソーナの姉であるセラフォルーのハートを射止めたらしく、ソーナとイッセーが知らない間に急接近していた――らしい。

 

 

「だからミツルギ君はまだまだ強くなれるんじゃないか?」

 

「マジかよ。アイツ本当に俺達と一緒に居て大丈夫なのか?」

 

「何度も言ったのだけど、本人はここに留まりたいらしいわ」

 

「変わったお人ですね……」

 

 

 だからそんな気質がありながら、自分達の下に居ることを選択しているミツルギはマイナス達からも変な人という認識だった。

 

 

「剣術頼りだけじゃなくて体術も鍛えてみたのだけど、どうかな?」

 

「ナチュラルに地面を踏み割ってるお前に上から目線で言えるわけないだろ」

 

「キミ今なら上位のパーティでも欲しがるんじゃないか?」

 

「はっはっはっ、まだまだだよ。

それにそんな気は今の僕には無いさ」

 

 

 そんなこんなであっという間に目に見えたアンデッドがミツルギによってポイポイされ、魔剣装備時代とはまるで違う質素な軽装姿の彼はとても爽やかに笑っていた。

 

 

「魔剣に頼らないと決めた時から妙に身体が軽くてね。

あくまで剣術メインで戦うつもりだけど、剣が無くなった後の対処もちゃんとしないとなやっぱり。

それで前回は痛い目にあった訳だし」

 

「嗜む程度と言いたいんだろうけど、素人目に見てもお前って体術もやばいんじゃねーの?」

 

「そうか? キミ達に褒められると素直に嬉しいよ」

 

「う、さ、爽やかに笑ってるよセンパイ……」

 

「焼け死にそうね……」

 

 

 その爽やかスマイルはマイナスにとっても少し圧されるものがある。

 彼は呆れるほど、ちょっと独り善がりな所もあるけれど主人公気質なのだった。

 

 

 さて、そんなこんなでオンリーワンタイプに昇華していくミツルギの修行を兼ねたアンデッド討伐クエストも終わりに差し掛かった頃だったか。

 忘れてる訳ではなかったのだが、別に進んで関わりたくないし、なんなら黙って帰ってくれないかなと放置していた尾行者達も特に何にもせずただただ墓場の外側からこっちを覗いていたのだけど、その墓場にやってきた見知らぬ女性がなにやら一人で徐霊をし始めた瞬間――

 

 

「天誅!!」

 

 

 鬼みたいな形相をした尾行者の一人たるアクアが、引くくらいの勢いで飛び出して来たかと思ったら、尾行中も溜め込んでいたなけなしの神パワーを使って眩い光を放つ魔方陣を展開。

 そしてこともあろうに墓場に居たソーナ目掛けて聖なる力を全力でぶつけてきたのだ。

 

 

「三日を掛けてなんとか溜め込んだ聖なる力を喰らいなさい!! これならアンタでも流石に滅するしかないわ!!!」

 

 

 凄い勝ち誇った顔をするアクア。

 力のほぼを失っているアクアが何故これ程のパワーを捻り出せたのかは、共に居た転生者のライカも知らないしビックリしたのだが、実の所この力にはカラクリがあった。

 

 

「あ、アクアにあんな力があったなんて驚いたぞ……」

 

「…………」

 

 

 クルセイダーのダクネスがアクアの力に驚愕しているすぐ後ろ。

 無表情で墓場が光で照らされているのを見ていたクリスという、先程『偶々と言って』マイナス達の前に現れたシーフの少女にあった。

 

 彼女が――いや、彼女の裏の顔としての彼女がアクアに対して密かにパワーを貸し与えていたのだ。

 

 

「……………」

 

 

 全ては完全にアクアのミスでこの世界に転生しまった純粋悪魔のソーナ・シトリーを秘密裏に処理する為に。

 アクア以上に実は対極生物に対する容赦が無いクリスは、アクアが自分の力で放った力と思い込んで勝ち誇った顔を向ける相手であり、黙ってその光を浴びているソーナを無表情で見ている。

 

 

「キャァァッ!? き、消えちゃう! 滅してしまう!?」

 

「あら? この気配はリッチーかしら? 何でこの場所に居るかなんて知らないけど、ついでにそこの悪魔女共々滅してしまいなさい!」

 

「あ、悪魔女……? ひぃ!? 私の足が……!」

 

 

 何かそこに居た女リッチーの足が消え始めてる様だが、クリスの視線はソーナに固定されていた。

 何故なら女リッチーは滅し始めているのに、ソーナは……。

 

 

「わざわざ後をつけてきた理由はこういう事でしたか。

でも残念でしたね、私は光に対する耐性はとっくに克服してますので」

 

「なっ!?」

 

 

 傷ひとつも無く、滅される気配も無く、ただそこに変わらずに君臨していた。

 クイッと眼鏡のズレを直しながら清ました顔をしているソーナの抑揚の無い声に力を使い果たしたアクアはぎょっとした顔をする。

 

 

「あ、悪魔なのに私の力が通用しないですって!? ふざけるんじゃないわよ! そんな理があってたまるモンですかっ!!」

 

「事実私は消えてないじゃあないですか」

 

「じゃあ物理で消すだけよ! ドリャァァッ!!」

 

「よ、よせアクア!!」

 

 

 悪魔の一般的な弱点は既にイッセーによるマイナスにより完全に克服している。

 故に神の放つ光だろうがソーナは消える事は無く、それを知ったアクアは憤慨しながらも今度は物理で殺ろうと殴りかかってきた。

 

 ライカという男が止めようと飛び出すが、時既に遅く、アクアは乱暴な腕っぷしでソーナの顔面に思いきりグーパンチを叩き込もうとするが……。

 

 

「いい加減にしてくれないか……!」

 

 

 それを止めたのが先程と同じく、ミツルギだった。

 アクアの手首を掴み、鋭い目付きで苦悶の表情を浮かべる彼女の手首を締め付けるミツルギは、然り気無くカズマとゆんゆんに絡み始めためぐみんを含めた全員に向かって殺気を放つ。

 

 

「誰がパーティのリーダーかは問わないが、誰も止めないということは彼女達に危害を加えるんだな? ならば僕は皆を守る為にお前達全員と戦うぞ……!!」

 

「チッ、邪魔しな――わっ!?」

 

 

 アクアをそのまま一本背負いでライカに向かって投げ飛ばしたミツルギが、腰を落として八卦の構えをする。

 

 

「このパーティに新たに加入したミツルギ キョウヤだ。

どうせキミ達は僕の事など覚えて無いだろうし、覚えて貰わなくて結構……! 彼等に危害を加えるキミ達とは敵対するだけのそこら辺の男だからな!!!」

 

「っ!?」

 

 

 ミツルギから虎の様な幻影が見える程の覇気が放たれ、アクア達に向けられる。

 その覇気はライカにアレがあのミツルギなのかと驚愕させる程であり、そのミツルギの横には巨大な釘と杭を持ったイッセーと、そこら辺で拾った木の棒を持ったカズマが並ぶ。

 

 

「いきなりそこの、ゆんゆんの同郷の者らしいちびっ子に爆破されそうになった訳だし、微力ながら俺も加わるぜこの喧嘩。

勝てる気はまるでしないけどな」

 

「同じく。久々にイラッとしちゃったからさぁ?」

 

「うっ……!?」

 

 

 カズマとイッセーが放つミツルギとはまるで真逆の負のオーラに、普通(ノーマル)気質のダクネスやライカ……そして負の対極の極致であるアクアとクリスはその終わっている雰囲気に吐き気を催した。

 

 

「めぐみん、本当に貴女は大嫌いだわ……!」

 

「ゆ、ゆんゆん? 何故そんな事を言うのですか……?」

 

 

 それはゆんゆんも同じであり、カズマをいきなり爆殺しようとしためぐみんに対して、初めて純粋な怒りと殺意を放っていた。

 

 

「か、帰るぞ皆……!」

 

「はぁ!? なんで帰んなきゃ――」

 

「良いから今は言う通りにしろ!!!!」

 

「ぅ、わ、わかったわよ……。

そこの悪魔女! 覚えてなさいよ!!」

 

 

 ライカは悟った。

 アレは……あの集団はヤバイと。

 勝つとか負けるとかではなく、関われば何かを壊されてしまうという得たいのしれない恐怖が彼等にはある。

 だからライカの取った行動は逃走だった。

 

 それはきっと正しい判断であり、英断であり、最良の選択だろう。

 

 

「ちぇ、来た瞬間あの人達の能力を俺並に引き下げてやろうとしたのにさぁ」

 

 

 でなければそれまでの努力も、獲た力も、地位も、名誉も、個性も、全てが台無しにされていたのだから。

 

 

 こうしてライカ達は過負荷という名称は知らないにしても、本能的に彼等がどんな存在なのかを理解した。

 神すらも台無しにしうるもっとも危険な生物という意味で……。

 

 

「あっぶね、流石のミツルギ君でもあの人数相手だとやばかったろ?」

 

「あ、あぁ、正直あんな啖呵をきったは良いけど、ビクビクはしてたよ」

 

「思わずハッタリになるかと思って俺もイッセーも加勢するみたいな空気出しといたけど、通用して良かったぜ」

 

「もっとも、センパイとゆんゆんさんという『勝てるマイナス』が居るから良い感じで抵抗できたと思うけどな」

 

「そ、そんな……私だって自信なんかありませんよ……」

 

「勝てないにせよ、道連れにはしてやれたとは思うわ」

 

 

 そんな彼等の認識とは反対に、実は結構ハッタリで誤魔化していたらしいイッセー達は、大人しく去ってくれたアクア達にホッとしながら、ふと全員で後ろを振り向く。

 

 

「あぁ、私このまま昇天しちゃうんですね……」

 

 

 そこには既に下半身が透けていた女性が、諦め混じりに笑っていた。

 

 

「えっと、キミは誰だい? とんだタイミングでとんだ災難に見舞われてしまった様だけど」

 

 

 全員して見たこと無いその女性にイッセーが話し掛けてみると、女性は今にも消えかかってるのに慌てて頭を下げている。

 

 

「あ、は、はい! 私はウィズといいます。

一応その……リッチーです」

 

「リッチー? アンデッドの王じゃあないか」

 

「リッチーといっても別に何をしてる訳でも無かったですし、街でほそぼそとアイテム売りをしているだけですから……。

あはは、もうそういう事もできなくなりましたけど……」

 

 

 ウィズというリッチーの女性はとても自虐的に笑っていた。

 既に胸元まで透け始めている。

 

 

「あ、あの、先程の人達が貴女の事を悪魔女と言っていましたが……」

 

「? ええ、比喩とかじゃなく私は悪魔です。

ソーナ・シトリーともうします」

 

「!? そ、ソーナ・シトリー!? そ、そのお名前は確かバニルさんから聞いたことが……」

 

「バニル? 失礼ですが、バニルとは?」

 

「え、ええっと、マスクを被ったタキシード姿の悪魔なのですが、以前貴女方と会ったら地獄に突き落とされたと、今は地下の小部屋で引きこもりになってしまいまして……」

 

「タキシードに仮面?」

 

「それもしかして前にソーナのカップを変態ちっくに舐め回しながら茶を勝手に飲んでた奴じゃね?」

 

 

 思わぬ繋がりを知ったイッセー達は、例の男がその後引きこもり生活になってしまった事を知る。

 ちなみに彼の名誉の為に補足するが、バニルは決してソーナがお気に入りだったカップを舐め回してなんかない。

 偶々侵入して、偶々お茶が飲みたくなったので自分で沸かして、飲む為に使わして貰ったカップがソーナのだっただけの話だ。

 

 が、ウィズはどうやら誤解してしまった様で……。

 

 

「ば、バニルさんが貴女のカップを舐め回してたって……」

 

 

 古くからの知り合いがそんな変態ちっくな行為に走ってたと聞いてしまったウィズはアホの子も入ってたのか、簡単に信じてしまい、バニルの知らぬ所で更にその尊厳がぶち壊されていた。

 ちなみに、ドン引きしてるウィズだけど、彼女は彼女で今から下が完全に消えていてマジで昇天する寸前だった。

 

 

「まあ、引きこもりというのなら元気そうって事だし安心したよ。なっ?」

 

「そうね」

 

「まったくだ」

 

「で、アンタマジで消えかかってるけど大丈夫なのかよ?」

 

「大丈夫……じゃないですけど。もうここまで来てしまったらどうにもなりませんよ……」

 

 

 自分等が原因でバニルが引きこもりになった癖に、そんな自覚がまるでない他人事みたいなコメントをしつつ、口もと付近まで消えているウィズは既に諦めていた。

 

 

「本当はもっと生きたかったですけど……」

 

「? 死にたくないの?」

 

「えっと、ま、まぁまだ生きたいですけどもう無理かなって……あはは、奇妙な人生だったなぁ……あははは、あれ、涙かしらこれは? うぅ、まだ死にたくないよぉ……人に戻りたいよぉ……!!」

 

「人に戻りたい……?」

 

「も、元々はれっきとした人間だったんですよ私……。

い、色々あってリッチーになっちゃいましたけど、いつか人に戻れるかなって思ってたのに……グスッ」

 

『…………』

 

 

 なんと元は人間だったらしいウィズの、生きたいという無念の涙にマイナス達とミツルギは互いに顔を見合わせ、やがて内四人の視線がイッセーに向けられた。

 

 

「………………え、俺?」

 

 

 なんで全員俺を見るのよ? とちょっとビックリ顔のイッセーに四人が次々と口を開く。

 

 

「いやキミしか居ないだろ?」

 

「イッセーならなんとかできるだろ?」

 

「この方にとってそれが最善になるかはわかりませんけど、可能なのはイッセーさんのマイナスかと……」

 

「えぇ? そんな便利スキルじゃないんだけどな……。てか良いのセンパイも?」

 

「完全に私のせいで巻き込まれた被害者だし、こんなに無念そうに泣かれるとあの子を思い出すのよ……」

 

「泣く? あぁ、ゼノちゃんの事か……」

 

 

 確かにウィズを見てると、イッセーによって聖剣という概念を世界からまるごと否定されて消えて無くなった事やら聖書の神が既に死んでいて、天界のミカエル達によって誤魔化されていた等々で、色々と精神的な支柱を失った結果、泣き虫ちゃんになった友達の事を思い起こさせるものが、ソーナに言われてみると確かにあった。

 

 

「ぐすん……くすん……」

 

「……………………ハァ」

 

 

 ゼノちゃんの方がもっと可愛いだろ。

 的な身内贔屓的な事を思いながらも、ひとつため息を吐いたイッセーは、多分後五秒もしない内にこの世から消え去るだろうウィズの泣き声を前に手を翳す。

 

 

「誰かの為にとか、あんまり得意じゃないんだよね」

 

 

 と、ブツブツと乗り気ではないアピールをしながらもイッセーは『まあ、たまには良いか』と思うと、後ろで見ている四人に口を開く。

 

 

「じゃあ、全員でご唱和してよね? わかるだろ?」

 

『………』

 

 

 ご唱和願いますという言葉に四人が頷いた。

 そして――

 

 

『it's reality escape!!!』

 

 

 全てをねじ曲げるマイナスが爆発した。

 その瞬間、世界の理は強引に捩じ曲げられた。

 リッチーの王が聖なる力で完全消滅するという本来の出来事が強引に否定され――

 

 

「未完了」

 

「…………………………え?」

 

 

 聖なる力も浴びてない、ただなにもなかったという幻実へと。

 

 

「え……え……?? わ、私の身体……? あ、ある……? 消えてない?」

 

「キミが消えるという現実を否定した。

これでキミはまだ死なないよ」

 

「げ、現実を否定……?」

 

 

 何だその力は? 聞いたことが無いとウィズは殆どの意味を理解できなかったが、確かに自分は消滅寸前だったのにそれが無かったかの如く地に足を着けて立っているし、消える気配も無い。

 しかもだ……。

 

 

「あぁ、そういやキミ、人間に戻りたいって言ってたろ? ついでだから単に助けるのもムズ痒いから人間にねじ曲げたよ。

よかったね、キミはこれで人間に戻ってそのまま老けて死ねるぜ?」

 

「えっ!?」

 

 

 ウィズは人に戻っていた。

 当たり前のように信じられないが、リッチーに変質させられた事によって失った力の一部が自分の中に戻っているのを感じる。

 

 

「あ、貴方は一体……?」

 

 

 まだ確証なんかない。

 けれど、あまりにも神にすら感じるスキルを前にウィズは呆然と訪ねた。

 

 

「キャベツにすら殺されかける、ソーナ・シトリーが大好きなただの過負荷だよ」

 

 

 そんなウィズにイッセーはちょっと無駄にカッコつけたポーズで名乗った。

 

 

「良かったね、不老長寿だったキミが今更せいぜいあと80年しか生きられない状態に戻れてさ? ふふ、でもキミは人間に戻りたかったんだろう? 俺はただ戻しただけだから悪くないよな?」

 

「…………」

 

 

 そして多分本人的にはしてやったりと思ってるのだろう。

 ウィズが心の底ではリッチーの方が不老長寿だから良いと思ってる決まってるとでも思ってるのだろう。

 

 人にねじ曲げたという現実にバニルじゃあないが絶望している筈だとニヤニヤするイッセーはウィズに背を向ける。

 

 

「じゃあ精々残りの寿命を老けながら謳歌するんだね。

今消えた方が良かったと後で後悔しながらね………」

 

 

 そう言いながら、『いやちがくね?』的な顔してる仲間達と去ろうとするイッセーにウィズが慌てて呼び止めた。

 

 

「ま、待って!!」

 

 

 唐突過ぎて色々と整理がつかないし、そもそも本当に人間に戻れているのかもわからないけど、なにより消滅の運命をねじ曲げてくれたのは真実だった。

 だからウィズはこのまま去ろうとするイッセーを呼び止めて何か一言でも良いからお礼がしたいと慌てた結果……。

 

 

「きゃ!?」

 

 

 着ていたローブの裾に思いきり足を引っ掛けてしまった。

 それはいつもの彼女のぽんこつさから来るドジなのだが、そんな事はイッセー達が知る訳も無いし、小さな悲鳴に対して反射的に振り向いたイッセーは――

 

 

「ぐべぇっ!?」

 

 

 キャベツにすらボコされるレベルに貧弱なので、そんなウィズの頭突きに対応できる訳も無く、ガツンという良い音と共に彼女の頭を鼻にクリーンヒットさせながら巻き込まれ事故の如く地面にひっくり返った。

 

 

「あ、ああっ!? だ、大丈夫ですか!?」

 

「は、鼻が……!」

 

「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!!」

 

 

 思いきり馬乗りみたいな体勢になったウィズが鼻を押さえながら痛がるイッセーに慌てて謝る。

 恩人? になんてことを自分は……! 等と思えば仕方ないのだが、イッセーにしてみればまず退いて欲しい訳で。

 

 

「あ、あのさ、わかったから降りてよ。重いよキミ……」

 

「お、重っ!? そ、そんなに太ってませんよ私……!」

 

 

 体重の事を言われたのかと思ったウィズがちょっとだけ傷付いた顔をする。

 まあ、事実イッセーの貧弱撫で肩体型では何に乗られても重い訳で、重くないと思えるのは、今クスクスと笑ってるソーナくらいなものだった。

 

 

「良いから降りろよ!」

 

「きゃ!?」

 

 

 ほら、人助けなんかしても碌な事になりゃしない。

 そんな事を、カズマやゆんゆんやミツルギを見ながら思ったイッセーは、まだのしかかるウィズを突き飛ばそうと腕を伸ばしたのだが……。

 

 

「あ」

 

「い」

 

「う」

 

「え」

 

「お……?」

 

 

 伸ばした腕の先は、ソーナが初見時から実は『大きいわね』と思っていたウィズの乳房だった。

 ゆったりローブ越しでも主張の激しいその胸は、今イッセーの掌によって弾力がありそうに潰れており、墓場周辺の音は怪鳥の鳴き声以外が消え去った。

 

 

「あ……わ……わ……!」

 

「すいません、あの、違います。間違えました……だって退いてくれないからさ」

 

 

 地割りボディブローでもされるかと身構えていたが、顔を真っ赤にしながら涙目になってるウィズ。

 イッセーはすぐさま自分なりに謝りながらそそくさと立ち上がってウィズから距離を離そうと後退しつつ、然り気無くカズマやゆんゆんやミツルギを盾にし始めるのだが……。

 

 

「い、今私の胸触りましたよねっ?」

 

 

 ウィズはただただイッセーに確認する様に訊ねてきた。

 

 

「さわってないっす。マジで勘弁してくださいよ……事故じゃん」

 

 

 それに対してイッセーは逃げるように事故を主張するのだが……。

 

 

「に、妊娠しちゃう……! せ、責任を!!」

 

 

 ウィズは思いの外アホの子だったのか、自分のお腹に触れながら訳のわからないことを大声で宣い出したのだ。

 

 

「男の人にあんなに強く掴まれたら妊娠するって聞きました! そ、それで貴方は私の胸を……だ、だから責任を!!」

 

「そんな訳あるかい!? 赤ん坊はコウノトリが運んでくる説より酷いじゃないかキミの解釈は!?」

 

「ど、どちらにしても! け、結婚……え、私結婚するの? この人と? あ、でも命の恩人さんだし、こういう形もアリなのかも……」

 

「ろ、ロスちゃんかキミは!?」

 

「だ、誰ですかロスちゃんって!? 女の人ですか!? う、浮気されるんですか……? う、ぐすん……! うぇぇぇん!」

 

「うぶっ!? い、息ができな――ぎぇぇぇっ!?」

 

「あ、あぁっ!? い、イッセーさんがあの人の胸で窒息死しちゃいます!?」

 

「ホントだ、マイナスが人助けしても碌なことにならないんだな」

 

「それより早く引き剥がさないと! さっきからイッセー君の身体から骨が砕ける音が!!」

 

 

 コイツやべぇ。

 全員が流石に思うレベルにおかしくなってるウィズを見てソーナは小さく呟いた。

 

 

「泣くところはゼノヴィア、変な固定観念はロスヴァイセ、強引さはイリナに似てるわね彼女は……」

 

 

 他人助けなんかマイナスがしたって良いことなんか無し。

 逃がさんホールドをしてきたウィズのせいで全身の骨がバキバキにされていくイッセーはただたた後悔していくのだった。

 

 

「本当に人に戻れたのなら結婚もできる……ふふ! ふふふ!」

 

「お、おいアンタ。イッセーにはソーナという心に決めた女がだな……」

 

「でも私は妊娠しましたっ! 構いませんよね!?」

 

「いやしてないぞ!? 貴女はちょっとおかしいぞ!」

 

「どこが!? そんな言葉に騙されません! 離しません!!」

 

「ぐぎぃぃぃっ!?」

 

「ああっ!? い、イッセーさんが圧死しちゃう!?」

 

「取り敢えず落ち着いた場所でお話しませんか、ウィズさん? 私は少なくとも貴女みたいな人は『嫌いじゃあない』ので、色々とお話してみたいのですが……」

 

「あ……は、はい。えっと、ソーナさん――ですよね? わかりました」

 

 

終わり




補足

知らん所でどんどん危険生物の集まりみたいにされてましたとさ。


その2
ミツルギくんはそんな中でもすくすくと成長し、今では地面を踏み抜いたら疑似地震も起こせるし、割ったりもできたり、体術も強くなったんだとさ。


その3
バニルさんは引きこもりにされたばかりか、最悪すぎる風評被害も押し付けられました。

 主にカズマくんがボソッとバニルのやったことを誇張して教えたからだけど(笑)


その3
はい、人間にされてしまいました。

 お礼言おうと思ったらつまづいて頭突きしてしまいました。

 馬乗りしちゃったら重いと言われてちょっと傷ついてしまいました。

はよ降りろと突き飛ばされたらめっさ胸むにゅんされました。

妊娠しました

責任ゴーしてください。

逃げたらダメです。逃げたら泣きます。泣いて泣いて、泣きまくりながらも逃がしません。


ね、ロスさんとゼノちゃんとイリナちゃんみたいっしょ?

なのでか、寧ろソーたんが気に入ったっぽいよ。
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