色々なIF集   作:超人類DX

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多分前の続き。

意外と耐性強し――とだけ言いましょう。


普通の少女と年上キラーになりたいのになれない少年

 彼女は普通だった。

 人より少し走るのが得意なだけで、別に異質なパワーを持ってる訳でもない只な少女だ。

 

 それはこれからも変わらないし、自身もそうなんだと思っていた。

 

 

『霧島一誠でっす! えー、一週間遅れとなりますが、クラスの一員として何に頑張るかは後で考える事にしても、とにかく頑張ります!』

 

 

 箱庭学園に入学してから一週間程空きっぱなしだった隣の席の者を見るその日までは。

 

 

『え、何で一週間も休んでいたかだって? 実は入学式の時に色々とあって謹慎に――あ、違う違う! 別に暴力騒ぎとかじゃあないぜ? 単にこの学園の女性の先生に片っ端からナンパを仕掛けただけなんだぜ!』

 

 

 自分の隣の席であるその男子は、聞いてみると入学式初日に片っ端から学園の女性教師をナンパしまくったせいで謹慎にされたらしい。

 あんまりにもオープンに、自分の性癖を暴露する霧島一誠に当初謹慎を喰らっていたと聞いて身構えたクラスメート達は一気に『あ、コイツ馬鹿なんだ』という認識になったし、彼女もまたあんまり関わりたくない様な気がした。

 

 

『チィ、二年十三組の啝ノ浦センセも駄目だったか……。

なら今度は学年主任の蜑住先生に突撃だぜ……!』

 

『…………』

 

 

 授業中に騒ぐとか、備品を壊すとかはしない。

 いや寧ろある種学校行事の全てに対してはとても模範的だし、クラスメートに対する当たりもとても良い。

 ただ壊滅的にスケベで、その対象が教師だったり人妻だったり、クラスの男子相手に女性の胸について宗教家の如く語り尽くしたりと、残念な面が多いのだ。

 

 お陰で女子からは若干引かれており、彼女もまたその内の一人だった。

 

 

『? ねぇ、このシャーペンって霧島君の?』

 

『んぉ? 拾ってくれたのか? サンキュー』

 

 

 だが偶々シャーペンを落とし、それを拾った事で彼女はこの年上女性とおっぱい大好きを毎日言いまくる彼と関わることになっていく。

 

 

『んあー疲れた! 遊んでる時の50分と授業してる時の50分ってどうしてこうも時間の流れの感覚が違うのかね? キミもそう思わね?』

 

『え? あ、うん……そうだね』

 

 

 気はあまり強い方では無い。

 なので気付けば彼女は席がとなり同士だったというのもあってか、しょっちゅう話す事が多くなった。

 どんな授業が面白いとか、何が得意なのか、部活は何に入ったのかとか……本当に他愛の無い話だった。

 

 

『陸上部? 走るの得意なんだ?』

 

『得意というか、ちょっと向いてるかもって思ってるだけなんだけど……』

 

『そういう曖昧な理由でも実際にやれるのは良いことだと思うぜ? 俺なんか部活入らないで毎日放課後になったら子持ちのママさんが集まってそうな公園に行って声掛けてる毎日だしな』

 

 

 話してみると結構面白い。

 漠然とした感想だが、彼女は彼との会話を結構楽しんでいた。

 それが積り、気付けば昼休みのご飯に誘われ、それに乗ってる自分が居た。

 

 

『この学園の飯超うめーな!』

 

『わぁ、やっぱり男の子って沢山食べるんだ』

 

『うめーかんな! つーか有明はそれっぽっちで良いのか?』

 

『うん、あまり食べ過ぎたら走るのに支障をきたしちゃうし』

 

『そういう理由なら良いが、ダイエットとかってな理由なら許さんかったぜ』

 

『? 何で?』

 

『女の子は肉付きがある方が良いんだよ。

無理してダイエットしたら肌に悪いし、食わなかったら痩せたって勘違いしてるのが居るけど、ありゃ単にゾンビ化してるだけだからな。肌とかにも悪いし』

 

『なんで肌に悪いを二回言ったのよ?』

 

『女性のお肌は重要なんだよそれだけな! だから有明もそういうダイエットはすんなよ? もっとも、必要なんて無いだろうが』

 

 

 性癖はアレでかなりオープンだけど、対象から外れてる相手には結構な紳士なのだ。

 しかもどうにも異性の壁を感じないし、何に対しても良いリアクションをしてくれるのは見ていて飽きない。

 

 だから気付けば仲良くなったし、陸上専用のスパイクを新調する話をしたら一緒に買いに行ってそのまま遊びに行ったり、夏休みの時も部活が休みの時は一緒に夏休みの課題をしたり、二学期辺りで互いに下の名前で呼びあってたりもした。

 

 その結果、二学期中盤以降から、自分とイッセーがデキてるみたいな噂で一時期からかわれたりもしたけど、あんまり気にしなかった。

 

 

『はぁ!? 俺とありあが付き合ってる!? ちがわい! 友達だよ友達! 第一ありあに失礼だろが!』

 

『……………』

 

 

 気にしてないのに、その誤解を解く為にイッセーがそんな事を言った時はちょっとだけ寂しい気分になったりもした。

 いや、多分有明ありあはその気持ちを抱いた瞬間からそうなのだろう。

 

 

『前にイッセーくんが言ってた、善ちゃんとめだかちゃんって子が入学するんだ?』

 

『そうそう、二人とも良い子なんだぜ? 先輩として俺の事全然リスペクトしてくんねーけど』

 

『あははっ! それはきっとそれだけイッセーくんの事を慕ってるんだよ』

 

『そうかぁ? 軽く見られてる気がしてならねーんだが』

 

 

 学年が上がっても変わらないこの変な友人の事が……。

 

 

『レギュラーになれるかもって? マジか! よっしゃ! だったら今度の休みにスパイクの新調に行こうぜ! 確か結構ガタが来てるって言ってただろ?』

 

 

 もっとも、彼は鈍くて何時も二十越えた女性ばっかりに鼻の下を伸ばすのだけど……。

 だからありあは『このありさま』を見た時は人知れずに泣いた。

 

 イッセーと一緒に買ったスパイクがズタズタにされて、部を辞めろという脅迫文が部室のロッカーに貼られていた事に対して――いな、脅迫文は寧ろどうでも良く、大切にしようと思っていたスパイクを壊された事に。

 

 だからありあは一年でいきなり生徒会長になったイッセーの後輩の引く程美人な女の子が設置した目安箱(めだかボックス)に投書したのだ。

 

 

「ほぅ? イッセーと一年の頃からのクラスメートで友人か……」

 

「席が隣同士でよく一緒に居ると……へー?」

 

 

 その生徒会室に居た生徒会長の黒神めだかと、制服の下に何故かジャージを着込んだ一年生の男子にめっさ警戒する顔をされてしまった訳だけど。

 

 

「なんつー顔してんだよ二人して?」

 

「あ、あはは………」

 

 

 そしてまさかその生徒会の手伝いをさせられてるイッセーにも話さなければならないなんて……と、ありあはちょっとだけ投書するのは早まったかもと後悔するのであった。

 

 

「脅迫文と買ったスパイクが壊された?」

 

「う、うん。ごめんね、この前折角一緒に選んでくれたのに……」

 

「ありあが謝る事じゃないだろ。

寧ろこの先新調する度に壊されるかもしれない環境をどうにかしなければならない訳であって――」

 

 

 隠す訳にはいかなかった有明ありあは、正直にスパイクを壊された件と脅迫文の件を話した。

 イッセーはまた買いにいけば良いし、脅迫文の主をなんとかする方が先決だと言ってくれたので少しだけ気持ちが軽くなったのだが……

 

 

「「イッセー!!!!」」

 

 

 そんなやり取りをジトーっとした目で見ていためだかと善吉がイッセーに向かって詰めよりはじめた。

 

 

「有明二年生と買い物だと!? 何時の話だ!!」

 

「え、先々週の日曜――」

 

「先々週って本当なら俺とめだかちゃんと遊ぶ予定だったろーが!! 断ったと思ったらそういう事だったのか!?」

 

「断ったってな、当日急に来いって言うお前達の方が非常識だろ。

それに、ありあとの約束は更にその前の週にしてたんだし」

 

「それでもだ! 狡いぞ! というかやけに有明二年生に優しすぎだろ!!」

 

「そうだそうだ! 俺達にもその優しさを分けろ!」

 

「分けとるだろ! 人妻ナンパデーを返上して遊園地に何度お前等を連れてってやったと思ってんじゃい!!!」

 

「「ぐぬぬぬー!!!」」

 

 

 詰め寄られても言い返された二人がありあをギロッと睨んでから、負け犬がよくやりそうな悔しそうな唸り声を出す。

 依頼した相手に敵意を向けられるとは思ってもなかったありあは無論困惑するのだが、それと同時に二人の話は以前から聞いていたので、納得も出来た。

 

 

「そんな事よりありあの話をちゃんと聞いてやれよ。そういう目的の目安箱なんだろ?」

 

「ぬ……! わかった。それで有明二年生、先々週はイッセーとどんな場所に出掛けた?」

 

「そっちじゃねーよ! 脅迫の方!!!」

 

「ったくめだかちゃんはしょーがねーなぁ! ……で、有明先輩? イッセーにどこ連れてって貰ったんですか?」

 

「同じだろがこのチビッ子共!」

 

 

 あぁ、大好きなんだイッセーくんが。

 同じ様な気持ちがある分、どう見てもジェラシー光線出してる善吉とめだかの気持ちを理解できてしまうありあは、後ろからイッセーにどつかれて涙目になってる二人に苦笑いだった。

 

 

「だって狡いぞ! 私だってお買い物したいっ!」

 

「俺もガリガリ君食べながら公園で駄弁りたい!!」

 

「今度付き合ってやるからちゃんと仕事せーや!」

 

 

 取り敢えずイッセーのこの一言によって矛を収めた様子の二人は、改めてありあに依頼の内容についての話し合いを行う。

 

 

「これがイッセーに選んで貰った壊されたスパイク。確かに酷いな。………チッ、私だってそんな事して貰ったことないのに」

 

「無駄にセンスだけはありますねイッセーが選んだ癖に。…………クソ、俺だってデビルカッケー服とかチョイスして欲しい」

 

「成長するにつれて気色悪くなってないかお前等……?」

 

「私、二年生で代表に選ばれて、イッセーくんも一緒に喜んでくれたばかりか買ってくれたんだ。だけど、こんな風にされて――」

 

「「買って貰ったぁっ!?」」

 

 

 だけど一々二人が過敏に反応するものだから中々話が進まない。

 けれどパキパキと両指を鳴らし『話を脱線させたら拳骨』という意思表示をイッセーがしたお陰で、取り敢えず色々なものを飲み込る事になる善吉とめだか――合わせて『ぐぬぬ……』なコンビ。

 

 

「……。犯人の心当たりは?」

 

「わからないよ。皆怪しく見えちゃうし……」

 

「疑心暗鬼にもなりますよねそりゃあ。にしても本当にイッセーから買って貰ったんですか?」

 

「う、うん……私はそんな事しなくて良いって言ったけど、イッセーくんが『お祝いだお祝い』って……」

 

「放課後ナンパタイムをストップして短時間の日雇いバイトしたかんな。

友達の晴れ舞台だぜ? 張り切るってもんよ」

 

「「ぐ、ぐぬぬ……!」」

 

 

 悪意なく、子供っぽい笑顔を浮かべながら当たり前の様に言い切るイッセーにちょっとキュンとしてしまうありあ――とは逆にぐぬぬの指数が更に上がる善吉とめだか。

 二人にしてみればイッセーは何時もだと思っていた。

 

 気付けば誰とでも仲良くなる。

 人妻や年上からの受けが悪いのは、その時はいつも性癖がオープンになって色々とやることが酷いからであって、対象から外れてる相手には何時もこんな紳士だ。

 だから中学の頃もこっちがある負完全みたいな男子と水面下バトルをしてたというのに、イッセーは人タラシの如く誰とでも仲良くなっていた。

 

 

「レギュラーに選ばれたからシカトとかは覚悟してた。でもここまでされるとは思わなかった。

脅迫はまだしも、イッセーくんが折角買ってくれたものまで壊すなんて……!」

 

「なるほど、有明二年生的には脅迫された事よりもイッセーに買って貰ったスパイクを壊された事に憤慨している訳だな? それはよくわかるぞ、私も以前、イッセーから貰ったヘアバンドをとある者の不意打ちで破損した時は記憶が飛ぶ程の逆襲をしてしまった」

 

「乱神モード全開だったからなぁ。

今頃何してるんだろアイツは……」

 

 

 ありあの話にちょっと同調しているめだかと善吉を見て微妙な顔のイッセー。

 イッセーもまさか、『何かイッセーのものを寄越せ』と言われたので、適当にコンビニで買った安いヘアバンドを後生大事にされたばかりか、壊されたって理由でぶちギレたゴリラみたいに暴れて相手をボコボコにするだなんて思わなかったのだ。

 

 

「ぎゃ、逆襲はしないよ私は……」

 

「……………」

 

 

 そんな二人と比べてこの妙に波長の合う友人のなんたる普通っぷり。

 仲良くなれた相手は多かったが、結局友達と呼べた者はほぼ皆無だったイッセーはちょっと感激して思わずありあの頭をポンポンと優しく撫でた。

 

 

「「!」」

 

「え、な、何急に?」

 

「いやホントありあって良い子だねぇって思って。

ありあが友達になってくれて嬉しいぜ」

 

「あ、ありがとう? でも、友達……かぁ」

 

 

 やましい気持ちゼロ。ただただありあが普通に良い子過ぎたので脊髄反射的にやってしまったのだが、されてる本人は別に嫌がる訳でも無く、寧ろ友達と言われて複雑そうな顔をしてるのがめだかと善吉的に面白くない。

 

 

「おい、セクハラしてないで離れろイッセー」

 

「セクハラ!? これでセクハラ!?」

 

「そーだこのセクハラ野郎。だからお前はイッセーなんだよ」

 

「俺という存在全否定!? どっちもまた反抗期なのかよ……!?」

 

 

 とにかく、なんか良い空気になってるのが面白くなかった二人は割って入って邪魔をし、この脅迫文の犯人探しを開始するのだった。

 

 

 

 そんな訳で始まった犯人探しだが、実の所善吉には心強い情報屋的なクラスメートが居た。

 

 

「陸上部所属、三年九組、諫早先輩、有明先輩と同じ短距離を専門とする。有明先輩が代表に選ばれたせいでレギュラー落ちしてまーす♪」

 

 

 善吉やイッセーの腰辺りの背丈……てのは流石に言い過ぎだが、どう見てもつるぺた幼女にしか見えない重力無視なアホ毛がチャームポイントの女子生徒。

 

 

「サンキュー不知火。しかしお前、何時もながらそういった情報はどこから仕入れてんだ?」

 

「あひゃひゃ!

人吉が正義側に居たいなら知らない方がいいよ、霧島先輩もねっ!」

 

 

 名を不知火半袖といい、善吉とは偶々半袖が落とした消ゴムを善吉が拾った事で繋がった仲だった。

 

 

「善ちゃんがクラスメートの友達を……! ううっ、中学の頃は変な方向にグレて時代錯誤も甚だしいヤンキーになったせいで友達居なかった事を思うと、お兄さん涙がとまらねぇ」

 

「ばっ!? 中学の頃の事は言うなよ!? それと善ちゃん言うな!!」

 

「霧島先輩、そこ詳しく」

 

 

 善吉が普通にクラスメートの友達を持っている事に、一人感激しているイッセーが余計な事を言い始め、善吉が慌てて止める。

 

 

「写メ見せてやるよ。ほら、これが中学の頃の善ちゃん」

 

「くひゃひゃひゃひゃ!? だ、だっせー!! 人吉ダッセー!」

 

「見せるなよぉぉっ!?!? 不知火もわらうなよぉぉっ!!」

 

 

 何時撮られたのか、中学時代の間違ったヤンキー感丸出しオールバック長ラン姿の善吉の写メを見せられた半袖が死ぬほど笑いこけ、善吉は恥ずかしくて顔が真っ赤っかだった。

 

 

「ひーひー……! き、霧島センパイ、その写メ転送してください……!」

 

「勿論さ!」

 

「よせよ! やめろ!」

 

 

 こうしてイッセーは半袖という善吉おちょくりフレンドを獲たのだが、話は諫早という犯人候補の話に戻る。

 

 

「あの先輩さんが犯人だとしても、どうやって自白されるか……だな」

 

「しらばっくれられたら追撃できないしなぁ……。お、水を飲む姿がちょっと色っぽい。

十年後が楽しみな人材だぜありゃあ」

 

「お前はすぐそれかっ!? ダメだかんな!!!」

 

「……。ねぇ、人吉ってホモなの? 前から霧島先輩の話とか教室とかでもうざいくらいするけど……」

 

「ちがわい!」

 

 

 自主連してる諫早という女子生徒が本当に犯人かという話は半袖ネットワークで80%は確信できるが、後はどうやってそれを証明させるか……についてを何気に善吉のホモ疑惑が浮上しながらも考えていると……。

 

 

「諫早三年生、貴様が犯人か?」

 

 

 陸上選手スタイルになっているめだかが神風特攻をしていた。

 

 

「あ、居ないと思ってたら!」

 

「バカヤロー! そんな事聞いた所でしらばっくれられるに決まってんだろーが!」

 

「あのお嬢様って聞いてた通り、一周回ったバカだね……」

 

 

 頭を抱える善吉とイッセーはいきなり現れていきなりズタズタにされたスパイクを見せてきためだかに対する諫早の予測できしまう反応に次の手を早急に考えなければと頭を捻るのだが……。

 

 

「し、知らないっ!!」

 

 

 諫早はあまりにドストレート過ぎるめだかからの質問に動揺してしまったのか、あからさまに走って逃げ出した。

 

 

「わかりやすいなあの先輩」

 

「だが決まりだぜありゃあ!」

 

「お、めだかちゃんが追い掛けたか。

よし、善ちゃんは一応こっち側に逃げて来た時の為に待機しててくれ」

 

「? イッセーはどうすんだよ?」

 

「決まってんだろ? オイタした子にはお仕置きだぜ。大丈夫、エロい事はしないよ、好みじゃあないからな!」

 

 

 逃げ出す諫早を追いかけるめだかを更に追い掛けるイッセーは、人間じゃない速度でロケットスタートを切り、あっさりと諫早を追い掛けていためだかに追い付いてそのまま並走する。

 

 

「ねぇ人吉……あのセンパイ普通に信じらんないことしてない?」

 

「? そうか? 昔からあんなんだぜイッセーって?」

 

 

 そんな化け物みたいな出来事を前にした半袖が微妙に引いていたが、慣れすぎていた善吉は当たり前みたいなコメントだった。

 そして……

 

 

「うははは! 掴まったら食っちまうどー!」

 

「キャァァァァッ!?!!!? な、なんで霧島まで来るのよぉぉっ!?!?」

 

「む、何故イッセーの事を知っている諫早三年生?」

 

「ゆ、有名だからよ! あ、有明さんがよく話してたし!」

 

「何!? ど、どんな事をだ!?」

 

「いやそっち関係なくね!?」

 

 

 ありあとしょっちゅう一緒に居るのを知ってた諫早は、自分が犯人だと気付かれて逆襲されると思ったのか、半狂乱になって色々とぶちまけていた。

 

 

「わ、私まだ高校生でキミの好みじゃないわ! だ、だから勘弁して!」

 

「心配しなくても別に先輩さんは好みじゃありません!」

 

「う、嘘よ! だってさっき私を食べるって言ってたじゃない!」

 

「言ったけど、アレは『なまはげ』的な意味で言ったのであって―――」

 

「絶対嘘よ! そんな事言って止まった瞬間、こんなグラウンドの真ん中なのに、私の服とかビリビリに引き裂いて、え、えっちな事をするんでしょう!? え、えっちな本みたいに! えっちな本みたいに!!」

 

「なんだと!? イッセー! 何故諫早三年生なんだ!? そこは違うだろ!? 幼馴染みモノだろう!?」

 

「お前等声がデケーし全部的外れだバカ!! てかムッツリか諫早先輩は!?」

 

 

 こんなアホなやり取りだが三人したグラウンドを何周も短距離走ペースで走り回っている。

 めだかとイッセーは別にしても、とっくにスタミナ切れを起こしてもおかしくない諫早も、イッセーに捕まったらエッチなお仕置きをされると、一人で勝手にパニクってるせいか、火事場の馬鹿力が発動して常に全力だった。

 

 

「俺が言いたいのは、ありあのスパイクをぶっ壊してレギュラー取って楽しいのかよって話だよ! てかアンタめっちゃ早いな!? これでレギュラー取れねーとかどんだけ陸上部レベル高いの!?」

 

「うむ、確かに私とイッセーから逃げ回れてるその走力は凄いと思うが、エッチなお仕置きをされるのは貴様ではないぞ!」

 

「そっちに持ってくるな!!」

 

「だ、だって私はもうこの夏で引退なのに! あ、あの子がレギュラーで悔しかったのよ! だ、だから……だから!」

 

「なるほど、理由はわかったが、だからといって人の物を壊す事が許される訳ではない! だからごめんなさいをするのだ!」

 

「す、するわ! するから取り敢えず霧島君は止まってよ! 私が止まった瞬間、後ろから飛び付いて、犬みたいに私の事を――」

 

「別の意味でシバくぞゴラァッ!! 誰がするかよ!!」

 

 

 こうして犯人は特定され、その犯人はイッセーにエッチなお仕置きをされない代わりにありあに死ぬほど謝ることになったのだが……。

 

 

「謝らなかったらイッセーくんにエッチなお仕置きって……」

 

「いや違うからね? 勝手にこの人が言ってるだけだからね? この人相当ムッツリだし」

 

「う、嘘よ! ほ、ほら今私の胸見た!!」

 

「見てねーっす!!」

 

「………。まあ、そんな事無いってわかるから信じるけどさ」

 

「ほひょ!? あ、ありあ……お前ってホントなんて良い子なんだ……。

十年俺より年上だったら結婚申し込んでたぜ……!」

 

「……………十年か」

 

 

 諫早先輩がムッツリであることが発覚し、ありあは微妙に許せてしまった。

 なんかもう……逆に可哀想に思えて。

 

 

「取り敢えず新しく買いに行こうぜありあ」

 

「先輩が弁償してくれるってさ。

それにあのスパイクも補修さえすれば使えるし、その……二人の目が……」

 

「「ぐぬぬ!!!」」

 

 

終わり




補足

ぐぬぬ! してる二人だけど、結構過保護にされてますよ。

特にめだかちゃんの兄貴が逆にぐぬぬとしてるくらいには。

その2
人タラシではあるが、友達と呼べた者は善ちゃんとめだかちゃん以外には居なかったので、有明さんが友達になってくれたのはマジで嬉しい。

だから凄い構うし、そのせいで後輩二人からめっさぐぬぬされてるという……。


その3

レギュラー取られたのもそうだけど、男子からプレゼントまで貰ってる後輩に対する若干のアレも入ってるらしい。

だからその男子になまはげごっこノリで追い回された時は、普段勝手に妄想してた事が爆発して実はムッツリだった事をぶちまけてしまった……

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