色々なIF集   作:超人類DX

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理由があってオカルトが嫌い。
理由があって猫も嫌い。

犬はまだマシだけど、別に好きでもない。


でもこの世界で善吉とめだかちゃんの三人でしょっちゅう見ていたアニメの影響でハムスターは好き。


でも皮肉にもナチュラルに猫を引き付ける変なオーラ出してるせいでにゃんこがわらわら現れてゴロニャンされて凄い渋い顔に……


犬よりも猫よりも……ハムスター派

 目を離すとフラフラとどこかへ行っては、全然知らん人と仲良くなっている。

 それがイッセーという、俺とめだかちゃんを引き合わせたドスケベ男の見てくれであり、人タラシであった。

 

 老若男女――は語弊があるにしても、基本的に誰だろうが関係なく仲良くなれてしまうのは一種の才能すらも感じるのだけど、アイツの性癖的な意味でのストライク相手にはいつも空振りをしている。

 

 それさえなかったら……と思うことも何度かあったけども、それもまたアイツの個性なんだろう。

 

 お陰で一個年上なのに先輩感が全然しなくて気安くなれるしな。

 え、先輩としてのリスペクトが無いだって? 大丈夫だ、しなくてもアイツはそんなに怒らない。

 

 

 

 

 

 

 

「犬が逃げたから探して欲しい?」

 

「おう」

 

 

 有明ありあが抱えてた問題が上手く収まってから数日。

 基本的に生徒会役員では無いイッセーは、帰宅部であることもあって放課後は大体年上女性のナンパの旅に出る事が多く、今日も普通にナンパの気分になっていたのだけど、そのタイミングで教室にやって来た一年坊こと人吉善吉に、生徒会のお仕事のお手伝いをして欲しいと頼まれていた。

 

 

「犬の捜索ってなぁ。

それ学園外の話じゃんか」

 

「それがそうでも無いんだよ。

依頼主の三年の秋月先輩曰く、学園内で散歩していたらはぐれたらしいんだ」

 

「は? 学校になんで犬を持ち込んでるんだよその人は?」

 

「それは疑問に思ったんだけどよ、ほら、めだかちゃんが犬と聞いた瞬間、遠い目をしながら『私には無理な案件だ』って」

 

「あーなるほど……。でも()()が出張る訳にもいかないもんな」

 

「そういう事。()()だからな」

 

 

 動物大好きめだかが、軽くマナー的にどうなんだと疑問に思う行為を依頼主がしてるのも気にせずに引き受けてしまったのが容易に想像できてしまったイッセーは軽くため息を吐いていると、ちょうど部活に行く準備をしていた…――というか今年も結局同じクラスで席も隣だったありあが話しかけてくる。

 

 

「そーいえばここ最近変な怪談話が広まってるんだけど、その内容が夜な夜な化け狼が学園内を走り回って遠吠えしたりしてるって」

 

「化け狼ィ?」

 

「うん、ただの野良犬だとしか思わないけど、オカルト研究部の人たちがそっち方面に広めたっぽいんだよ」

 

「お、オカルト研究部……ね」

 

 

 ありあからの情報を律儀にメモする善吉の傍らでイッセーはオカルトという言葉に顔をしかめ、ありあもちょっと『しまった』という表情をする。

 

 

「あ、ごめんね? イッセーくんその手の話が苦手だったのに……」

 

「苦手っつーか、オカルトやら悪魔やら妖怪って単語に拒否反応が起こるっつーか……」

 

「その手の話が大嫌いだもんなイッセーは。

中学の頃とか、新約聖書を配る教会のシスターがしつこく渡して来るのにぶちギレてたし」

 

「あ、それ私も見たことある。

この前だったかな、放課後一緒に帰ってたら、怪しそうな人に『神は信じますか?』ってしつこく絡んできたのを、本気でキレて撃退してくれたんだ」

 

「………は? 一緒に帰ったってどういう事っすか有明先輩?」

 

「え゛? ……あ、えっと……」

 

「……………」

 

 

 気付けば話がありあとイッセーが一緒に帰ってる話について善吉がぐぬぬ顔して尋問してる感じになっている中、イッセーはこっそりと頭を横に振りながらオカルト関連のワードを記憶から消す。

 昔からその手の類いが()()に大嫌いなイッセー。

 

 理由はまだ誰も知らない……。

 

 

「とにかく犬探しを手伝えば良いんだろ? 猫じゃないだけマシだし、手伝うよ」

 

「相変わらず猫嫌いだなイッセーは……」

 

「鬱陶しいんだよアイツ等は。

どこかの何も知らん奴等が猫はツンデレ生物だなんてほざいてるけど、あんなの嘘だぜ」

 

「嫌いなわりにはしょっちゅう野良猫とかにに近づかれてるよね、イッセーくんって?」

 

「だから嫌なの。ハムスターだぜ世の中はやっぱ」

 

 

 それと同時に猫嫌いな理由も……。

 

 

 

 

 部活に行ったありあを見送ったイッセーと善吉は、予め善吉が協力要請をしていた情報通の不知火半袖と合流し、ここ最近学園内を根城にしている野良犬っぽくない野良犬の出没ポイントに行ってみたのだが……。

 

 

「逃げた犬って、俺はてっきり柴犬辺りを想像してたし、精々ゴールデンレトリバーくらいの大型犬だと思ってた。

なるほど、化け狼だなんて舐めた噂はあながちでもなかった訳だね」

 

「りょ、猟犬とか聞いてねーぞ俺は!? だ、だって飼い主の秋月先輩の見た目とか見たら誰だって小型犬を想像すんだろ!?」

 

「秋月先輩? あぁ、将来の夢がお嫁さんで趣味が菓子作りとか言ってる人だろ?」

 

「? なんで先輩が知ってるの?」

 

「チラッと見かけた事があるだけで、直接話した事は無い。

が、あの人見た目は穏和そうだけど、中身絶対やべーぞ? あの犬見りゃわかる。一旦キレたらヤバイタイプだぜ」

 

 

 地獄の番犬という二つ名がとても似合いそうな、狂暴感丸出しな迷い猫ならぬ迷い犬を遠巻きに三人仲良く眺めながら、何気に秋月先輩なる人物の中身についてを語るイッセー。

 

 ひとつ程度の年上では一切食指が動かないからこそ冷静な人格診断を下せたらしく、結果、穏和そうに見えて一旦キレたら目の前の野良犬みたいな狂暴性を秘めているという事らしい。

 

 

「で、どうすんの? 下手に捕まえようとすりゃあ腸食い荒らされるかもしんねーぞ?」

 

「こ、怖いこと言うなよ!? い、いやでもあのフォルムにはそうされる様な気がする『凄味』を感じてしまうぜ……」

 

「! ならアタシに良い作戦があるよん!」

 

 

 基本別に犬は好きでも嫌いでも無いが、近づきたいとは思わないイッセーに、善吉が足踏みしていると、半袖が連結されたソーセージを取り出しながら犬に向かってドッキリを仕掛けてくれと言っているのだが、それは即ち『自殺』しなさいと言われてる訳で……。

 

 

「アタシはどっちがやっても笑えそうだから良いぜ?」

 

「だってよ、クラスメートたってのお願いだぜ善ちゃんや?」

 

「いやいや、ここは先輩として男を見せてくれよ?」

 

「ハーリーアップ!! 揉めた場合は二人同時に行って貰おうかっ!!!」

 

 

 互いにソーセージを擦り付けあっている間に鬼畜つるぺた化した半袖が背景に『ズゾゾゾッ!』みたいな効果音と真っ黒なハニワみたいなオーラを醸し出しながら二人で行けと言い出す。

 その結果……。

 

 

「うぉぉっ! 内臓喰われたー!!! ………っと見せかけてソーセージでし―――うぎゃぁぁぁっ!?!?」

 

「ぜ、善ちゃーん!? こ、この犬コロがぁっ!! ロシアンバトルウルフだか知らねーが善ちゃんを離―――うげぇっ!? ま、待って、そ、ソーセージが腹に――あんぎゃぁぁっ!?!?」

 

 

 二人は仲良く犬に食い散らかされましたとさ。

 

 

「あぁん♪ ステキ! 本当に二人ともやるなんて超ステキ!」

 

 

 二人が犬に食べ散らかされてる間、半袖はそんな二人を写メしながらくねくねとしていたのであった。

 

 

 犬の捕獲――一回目失敗。

 

 

 

 ギャグに付き合わされ、年上ナンパタイムも返上したイッセーは凄く良いとこ無しなまま、善吉と仲良く保健室で治療を受けてから犬に逃げられた事をめだかに報告する。

 

 

「ギャグに命張ったら逃げられちまいました」

 

「不知火に写メられるだけ写メられた挙げ句に逃げられました」

 

 

 善吉とイッセーが頭に包帯を巻いたボロボロ状態の姿で犬に逃げられたと報告すると、めだかは取り敢えず先ずは一言言いたかった。

 

 

「それはわかったが、お前たちが不知火と仲良しになっているのは不愉快だな」

 

 

 幼馴染み二人。

 イッセーは有明ありあと、善吉は不知火半袖とそれぞれ仲良しになってるのが何か気に入らないめだかは取り敢えずそれだけを言うと、犬を逃がしたという疑問についてをイッセーに問いかけた。

 

 

「そもそも逃がしたのが解せんぞ。

イッセーも居ながら」

 

「だって猟犬だし、別に犬好きじゃねーもん俺は。猫はもっと嫌いだけど」

 

「それにあの犬、野生化してからどうも戦闘力を増したみたいでよ。

投書主の秋月先輩には一応会ってみたけど、現状はとてもじゃねーが報告できねーよ」

 

「会ったのか? へー? イッセーと話が弾んでしまっただなんて事は無いだろうな?」

 

「勿論阻止ったけどよ、イッセー自身があの手のタイプが苦手だったからあんまり弾みもしなかったぜ?」

 

「まーね、何か話が若干通じないお花畑タイプは苦手なんだよ。

………第一あの人、やっぱキレたらガラリと性格変わるタイプっぽいし」

 

 

 将来の夢がお嫁さんという秋月先輩にたいして一瞬で身体が硬直して鳥肌が凄まじかったイッセーはどうやらかなり苦手なタイプらしい。

 それを聞いてホッとしためだかは同じくホッとしていた善吉と共に犬の対策について話し合う。

 

 

「さっさとふん縛らないと危険害獣扱いされて保健所が出張るぜ? つーか、あんまこんな事言いたくないけど、あの先輩は何を思ってこの学園に犬なんて連れてきた訳? ホントあの手のタイプの考える事がわかんねーんだけど」

 

「そこまで言うとなると、マジで苦手なんだな秋月先輩のこと……」

 

「苦手っつーか、配慮しろよと思うんだよね。

これでもし関係ない人が噛まれたら大怪我するしよ……」

 

「だが犬は生きる為に縄張りを持ったのだぞ。わんちゃんに罪は無い」

 

「あの犬が害とは言っちゃいないよ。

テメーでちゃんと飼えもしねーなら最初から飼うなってんだ。

どーせ子犬の姿見て『キャー!可愛い!』……って思ってる自分が大好きなんだろ? ったく、これだから責任感の無いお花畑未成年は困る」

 

「好みとは離れるとはいえ、異性相手にそこまで言うイッセー見るのは久し振りだな……」

 

 

 犬に罪が無いとは言い切らないが、一番罪なのは、躾もちゃんとせずに成長させたら危険になるタイプの動物を飼う責任感が無い飼い主だと、珍しく傷が塞がった包帯を外しながらイッセーは言う。

 

 

「まあ、こんな所でぶつくさ言ってても始まらないし、今度は真面目に善ちゃんと捕まえるよ。

まだ動けるだろ善ちゃん?」

 

「大丈夫だ。

という訳でよめだかちゃん、もう一度チャレンジしてみるわ。

不知火にもう一度協力頼めば、イッセーも今度はふざけないみたいだし捕まえられない事は無いと思うからな」

 

「不知火とだと……?」

 

 

 善吉とやる気イッセーだけで事足りるのに何故不知火? そこで一気に気にくわないゲージがMAXになっためだか。

 

 

「またソーセージドッキリをやれとか言わないだろうなあの子は?」

 

「流石に二度は言わないぜ。

アイツはそれなりに良い奴だしな」

 

「まあ、少なくともお花畑じゃないから嫌いじゃないな俺も」

 

「嫌いじゃない……だと……!?」

 

 

 嫌いじゃない……その言葉を聞いた瞬間めだかが机を叩きながら立ち上がる。

 

 

「? どしたのめだかちゃん?」

 

 

 急にどうした? と鈍い幼馴染み二人にムッとなるめだかはコホンとひとつ咳払い。

 

 

「まー……なんだ、私の方の案件はほぼカタもついているし、三人一緒にやろう?」

 

「いや良いわ。犬だぞ相手は?」

 

「そうだぜ、無理しなくてもイッセーと不知火が居たら問題ない――」

 

「その不知火にっ!!! ――頭を下げる二人を想像するだけでムカっ腹が立つ! だから私かやる! というかやらせろ!」

 

「「…………」」

 

 

 なに怒ってんのこの子?

 善吉とイッセーは互いに顔を見合せながら首を傾げるが、まぁ本人がそんなにやりたいのならと頷いた。

 結果……。

 

 

「よし、完璧な変装だ……!」

 

「………」

 

「………」

 

「なにあれ?」

 

 

 めだかは犬の着ぐるみ姿にチェンジした。

 しかも妙に中途半端に人間のボディラインが強調されてるので変装もへったくれもない。

 

 

「えー、つかぬところをお聞きしますが、その格好はなんですか?」

 

「む? わからんのか不知火? ふっ、だから貴様は不知火なのだ」

 

「え、私今ひょっとしてディスられたの?」

 

 

 妙に勝ち誇った顔をするめだかに、アホらしすぎて逆に肩の力が抜けてしまう半袖はドヤァっとしているめだかを他所に微妙な顔をしていた男二人に質問する。

 

 

「ねぇ、ひょっとしてこの人……」

 

「ご覧の通りだよ不知火」

 

「あの子って頭の良いバカなんだよ」

 

 

 完璧マシーンと思っていためだかに見えた人間らしさにちょっと意外な気持ちになる半袖。

 妬いたり、動物が苦手だったり――

 

 

「どうだイッセー? 似合うかな?」

 

「似合う似合う」

 

「本当かっ!? あのわんちゃんもこの完璧な変装によって仲間だと思ってくれるかな!?」

 

「思う思う」

 

 

 イッセーにたいして、何かを成し遂げて父親に褒めて貰いたい娘さんみたいにしていたり。

 

 

「あのお嬢様って、先輩相手だと精神年齢が下がるんだ――」

 

「よっしゃあ! 俺も演劇部から犬の着ぐるみ借りて来たぞ!!」

 

「――ね……って……」

 

 

 それを見た善吉がいつのまにか犬の着ぐるみ姿になってイッセーに駆け寄ったり。

 

 

「うっわー……」

 

 

 あの二人こそ犬じゃない? と、めんどくさそうに二人に相槌してるイッセーにキャッキャッしてる善吉とめだかに思いつつ軽く引くのだった。

 

 

「待て善吉! まずは私が行くんだ! もし成功したらよしよししてくれよなイッセー?」

 

「はぁ!? ここは公平にじゃんけんだろ!? ずりーぞ!!」

 

「どっちでも良いから早く行けよ……! 揃って恥ずかしいだろうが」

 

 

 そんなこんなで犬着ぐるみ姿になった二人は、順番に野良犬化したターゲットの前に立とうと、まずはめだかが突撃したのだが……。

 

 

「ギャインッ!?!?」

 

 

 あれだけ狂暴だった犬がめだか姿を見てドン引き――では無く、めだかの背後に視えてしまった猛獣の様な圧に生物的本能による恐怖が爆発し、一目散に逃げ出してしまった。

 

 

「キャンギャンギャン!!!」

 

「うわっ!?」

 

「おわっ!?」

 

 

 なんだアレは? なんだあの化け物は!? 犬は生まれて初めて心の底から恐怖し、犬の着ぐるみを着た善吉―――

 

 

「っ!? 恐怖が強すぎたか!?」

 

 

 の、横を爆走して駆け抜け、あろうことか多くの生徒達がまだ居る運動場へと行ってしまったのである。

 

 

「チッ! おい善ちゃんと不知火さん! そこで半泣きになってるめだかちゃんの事は頼んだ!!」

 

「え!? わ、わかった!!」

 

 

 今の半狂乱状態の犬が人間沢山の場所に出てきたら、見えるものすべてに恐怖して、身を守るために噛みつく可能性がある。

 そう思ったイッセーは半泣き顔になってプルプル震えているめだかの事を二人に任せ、いつぞやのロケットスタートで犬を追いかける。

 

 そして案の定、運動場に逃げ込んだ犬が突然の訪問者に驚いてしまっている人間達を前に半狂乱になって襲い掛かろうとしている。

 それが別に知らない相手ならイッセーも特に気にせず――無論噛みつく前に助けるが、犬も大概運が悪かった。

 

 何故なら襲い掛かった人間が――

 

 

「あ、危ない有明!!!」

 

「キャァッ!?」

 

 

 イッセーが親友と思っている有明ありあだったからだ。

 

 

 プッツン――

 

 

 霧島イッセー――かつて兵藤イッセーと呼ばれていた少年はとてもドスケベだ。

 それは本来の道を歩む兵藤一誠にもっとも近くて、彼の中に宿した別種の何かさえなければ悪魔達に骨の髄までしゃぶりつくされた挙げ句盾にされて死ぬこともなかっただろう。

 

 だからイッセーはオカルトという類いが物凄く嫌いであり、また性癖もおっぱいよりは人妻派になってしまった。

 それは多分きっとどこかの赤い彗星みたいに母親を求めているから――かは知らないが、とにかくイッセーは友達の事や自分を自分として見る善吉とめだかがとても大事だった。

 

 故にその者達を傷つける様なら……。

 

 

「うぉぉっ!! ダイナミック・レスキュー!!!!」

 

「!」

 

 

 その限界を常に超え続け、無限の進化の塊と化す。

 

 

「っあぁ! 間に合った!!」

 

 

 

 

 

 

 化け物から逃げたと思ったら……。

 猟犬として生まれながらに強者ならぬ強犬だったボルゾイさんは、二度になる挫折と先程以上の絶対的な恐怖を前に身体が震えてその場から動けなかった。

 

 

「あ、ありあ! だ、大丈夫かっ!?」

 

「い、イッセーくん? これは一体どういう……」

 

 

 アレハナンダ?

 さっきの人間よりももっと怖いものが……。

 ボルゾイさんは股の間に尻尾を挟みながら、生まれたての牡鹿の如く震えながらその男の背後に視えてしまったそれに愕然としてしまったのだ。

 

 先程のめだかが全てを喰らい尽くす猛獣なら、イッセーは全てを天から見下ろして破壊する『龍』にボルゾイさんは見えてしまった。

 

 

「な、なんだあの猛獣!?」

 

「いやそれよりも見ろ! アレは陸上部の有明と――あの霧島だぞ!?」

 

「史上初、入学初日に女教師をナンパしまくって謹慎にされたあの霧島かっ!?」

 

「俺は見たぞ! あの猛獣にあの女の子が喰われそうになったのを霧島が助ける様を!」

 

「やっぱりデキてるのかあの二人!?」

 

 

 意思とは無関係にチョロチョロと恐怖のあまり失禁してしまうボルゾイさんはまだ目は合ってないが、あの男に敵と思われたら終わると感じとり、全力で服従の腹見せポーズを行っていた。

 

 自分は人畜無害の可愛いわんちゃんです、ですから何卒お許しを。

 

 言葉は話せないが、本能的な意味でそんな事を思ったボルゾイさんはプライドもへったくれも無くただただ服従のポーズをし続けた。

 

 

「あ、アンタ霧島くん……? そこの大きな犬は一体?」

 

「この学園に迷い込んだのを捕まえようとしただけっす諫早先輩。

それよりありあ、怪我は……」

 

「だ、大丈夫なんだけど、あの……は、離れてくれない?」

 

「えっ!? な、なんで!?」

 

「だ、だってその……」

 

 

 許して欲しい。

 殺さないで欲しい。

 もう悪いことなんて何一つしないし、人に吠えることしない。

 この縄張りから出ていく事だってするから……! とボルゾイさんは小さく鳴きながらひたすら服従のポーズを続けるが、悲しいことに本人は犬よりもありあの方が心配だったので、意識の外ですらあった。

 

 しかも今しがたありあが恥ずかしそうに離れてくれと言い、それに軽くショックを受けていた。

 

 

「お、俺気に触ることしたのか……?」

 

「そ、そうじゃなくて……」

 

 

 イッセーはこの時点で服従腹見せポーズをしているボルゾイさんの事なんて視界にすら入らない程にどうでも良かった。

 何故なら、間一髪で噛まれてレギュラー落ちする所だったありあを助けられてホッとしたのに、そのありあから離れろと言われてしまったのだから。

 

 かつて友だと勝手に思ってた相手に思いきり裏切られたトラウマのせいか、イッセーは意外と変に気にしいだった。

 

 

「はぁ……言っていた通りに鈍いわねキミは?」

 

「へ?」

 

「あのね、私たちは今部活で走ってたのよ?」

 

「走ってた? そりゃ知ってますが……」

 

 

 巨大な犬がイッセーの真後ろでか細く鳴きながら服従ポーズをしているのが気になるが、それ以上にイッセーが思ってた以上に鈍い事を見かねた諫早いさぎが、この前の事もあるので助け船を出した。

 

 

「汗かいてるのに、そんな抱き起こされた体勢は女子としては恥ずかしいの。

だから離れて欲しいと言ったのよ」

 

「あ……あぁ、そういう。ごめん」

 

「う、うん……」

 

 

 さっと離れるイッセーにちょっともじもじするありあ。

 いさぎの言うとおりで、助かったと思う反面、恥ずかしさだけは募るし、どう思われたのかが気になってしょうがない。

 

 

「なんだ……それなら無事でよかったという意味でもホッとしたぜ。本当に怪我はないんだな?」

 

「うん大丈夫……えっと、ありがとう」

 

「おう!」

 

 

 友達関連だとかなりぽんこつ化するイッセーはお礼を言われてちょっと得意気。

 

 

「早くその犬連れて行きなよ。

生徒会のお仕事なんでしょう?」

 

「あ、はい。フォローあざっす諫早先輩」

 

「はいはい」

 

 

 ヒラヒラを手を振りながら応えるいさぎにペコペコ頭を下げながら、イッセーは何気に大型犬の首根っこを掴んで片手で軽々と持ち上げると、死んだフリでも決め込んだかの様に動かないボルゾイさんを連行する。

 

 

「あぁ、ちょっと待った。なぁありあ!」

 

「? なに?」

 

 

 最後に……。

 

 

「一言だけ言わせてくれ。あ、オイ犬。逃げたらどうなるかわかるよなぁ?」

 

「ぎ、ぎゃう!(い、イエッサー!)」

 

 中々に中々な……。

 

 

「さっきの話だけど……」

 

「え――ひゃあ!?」

 

「なっ!?」

 

『おおっ!?』

 

 

 爆弾を設置して……。

 

 

「すんすん……うん、普通にありあの匂いってだけだぜ! 別に変じゃないし恥ずかしいと思うなよ! あっはっはっはっ! じゃあな!」

 

「え……ぁ……」

 

「ちょ、アンタ! こ、こ、こここ、こんな場所でなにしてんのよ!?」

 

「何って、汗くさいの気にしてたんでしょ? 俺は別に気にならないから恥ずかしがるなとだけ言いたかったんっす」

 

「だ、だからって! い、今完全に抱き着いて――」

 

「大好きな友達ですからね、それじゃあ。 あ、部活終わったら携帯に連絡しろよ? 家まで送ってやるぜ」

 

「あ……あぅぅ……!」

 

「んぁ? どうしたんだ?」

 

「い、良いからさっさと行け! 有明はこっちでなんとかするから!!」

 

「あ、はい……んじゃあ」

 

 

 彼はそういう男なのだ。

 

 

「び、びっくりしたぁ。あの生徒会長も大概だけど、彼も色々と凄すぎるでしょ……大丈夫有明?」

 

「だ、大丈夫じゃ……ないかもしれません」

 

「でしょうね……。アンタ達本当に付き合ってないの?」

 

「な、ないですよ! だ、だってイッセーくん、何時も年上の女の人の事ばっかりですし……」

 

「それなのにあの距離感なの? アンタ達が噂になるのも無理ないわよこれじゃあ」

 

「うぅ………」

 

 

 もじもじするありあに呆れるいさぎ。

 そして見てしまった周囲多数。

 お騒がせ少年として有名ながら、彼とありあの仲の異様な近さもこれにて更に噂されるのかもしれない。

 

 

「ほら犬捕まえました」

 

「まあ! ありがとうございますわ霧島君! まさか霧島君まで私の為に――」

 

「アンタの為じゃない。

放置してたら他の生徒も巻き込まれるからだよ。

自分でちゃんと飼えもしないのに飼おうとする輩が俺は大嫌いなんすよ。

わかったなら二度と逃がすんじゃない!」

 

「ぁ………ご、ごめんなさい……」

 

「ま、まあまあちゃんと解決したんだし……な?」

 

「そうだ……私はどうせわんちゃんにすら嫌われる駄目な生徒会長さ……」

 

「あ、あの皆さんにお詫びを」

 

「お詫びするならこの二人にしてやってください。俺は結構なんで」

 

「ぅ……」

 

「ったく、おい犬公。

二度と飼い主から逃げんじゃねーぞ? もし逃げたと知ったら捕まえてマジでくっちまうぞ?」

 

「ぎゃふ!!(イエッサーボス!)」」

 

 

 そしてありあが危なかったというのもあってか、投書主が女の子でも結構風当たりが強いイッセーは、とぼとぼ帰る秋月 漆という名前の通り漆黒の意思が地味に搭載されてそうな先輩の背中をフンっと鼻を鳴らしながら見送る。

 

 

「ありあが危うく噛まれそうだったからイライラしちゃったぜ」

 

「む……有明二年生がだと?」

 

「間一髪で止められたけどな。

他に怪我人も居なかったし、良かったぜホント」

 

「そうか……ハァ、わんちゃん……」

 

「ショックが大きくてな、ずっとこんな調子なんだよ」

 

 

 落ち込むめだかに苦笑いするイッセー。

 まあもっともその明くる日……。

 

 

「言い訳があるなら聞いてやろう。

昨日わんちゃんを捕まえた際に、運動場のど真ん中で何故有明二年生と包容していた?」

 

「まったくだ、なんの意図だ? 最近俺たちにそんな事してくれないのに何でだ?」

 

「なんでって……ありあが自分が走ってて汗ばんでるのが恥ずかしいって言うから、変な臭いなんてしないぜって言うつもりで……」

 

「納得できるか! 有明二年生に甘すぎる!」

 

「そうだそうだ!! しかもイッセーと付き合ってる疑惑が強まってるしよ!!」

 

「それは無いことくらいわかってるだろ? 第一ありあに失礼だろ。

俺とそんな噂になってて嫌な気分になってたら――あ、やばい。想像すると結構泣きそう……」

 

「ぐ、ぐぬぬ……! や、やはり有明二年生とは戦わなければならないようだぞ善吉」

 

「くっ、女子というアドバンテージが強すぎるぜ……!」

 

「なんだお前等? 包容がして欲しいなら黒神先輩に頼めば鼻血でも出しながらやってくれんじゃねーの? 善ちゃんはムズいだろうが」

 

「アレは変態なだけだ!! イッセーとは暖かみから優しい匂いから何からが天地以上の違いだ!!」

 

「変態度なら俺の方が上だと思うけど……」

 

 

 有明ありあ侮りがたし……と、よりにもよって会長庶務コンビにマークされてしまう事になってしまったのだった。

 

 

「あーわかったわかった! ほれ! これで良いのか?」

 

「わぷっ!? ……む、う、うん……」

 

「ぶむ!? お、おぉう……わかれば良いんだよわかれば」

 

「ったく良い歳した高校生がいつまでも甘えるなよ。つーか善ちゃんに至っては男だろーが。

だから不知火さんにホモ疑惑持たれるんだよ」

 

「ホモじゃねーよ……」

 

 

 そしてこんなんだからチラッと出てきた黒神先輩に思いきり嫉妬されてるのだが……。

 

 

終わり

 




補足

忌々しくてトラウマな記憶のせいか、オカルトだとか悪魔だとかの話になると拒否反応が起こるらしい。

というかもう天使も神も堕天使も『話に聞くだけで嫌になる』くらい嫌らしい。


その2
ボルゾイくんはイッセーくんの手下になりました。
本人は気付いてませんが、ボルゾイくんはもう飼い主よりイッセーくんを群れのボスと崇めてます。

それはつまり、めだかちゃんがもふれる可能性がワンちゃん!! ……犬だけに。


その3
こんな事有明さんに平気やるから噂になるんだし、ぐぬぬ度もあげちゃうんだよ。

そして善吉くんも結構ぽんこつになるんだよ。
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