色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

貧弱さをなんとかし隊


公安再始動……?

 人体の致死量を遥かに越えた量の血液を丘の魔女に提供していた理由で肉体的な貧弱さが露呈してしまった月音は、宣言通りに体調を回復させると、明け方のまだ誰もが寝静まる時間を使って身体を鍛え直していた。

 

 

「ふっ……! フッ……!」

 

 

 別に特別な事はせず、基礎的な体力作りの為のトレーニングが主な特訓内容。

 意外に普通でこれで鍛えられるのか? という疑問の声が出てきそうな程に地味なものだが、一誠であった頃からやって来た事できちんと結果も出せていたので、今の貧弱なボディを考えれば今はこれが地道ながらも効率は良いのだ。

 

 

「フンッ! セイッ!!」

 

 

 自らを鍛えるという行為に没頭できる時のみ、月音は過去や今の柵を忘れて『自分』でいられる感覚が持てるので、この時間が割りと好きだったりする。

 

 悪魔に通せんぼされるまでは純粋に生きる為に強くなろうと遮二無二駆け上がっていたあの、誰にも殺意を抱く事が無かった頃に戻れる気がして……。

 

 

『ここ最近は俺の力ばかりでお前自身が鈍っていたからな。

……お前の進化の特性さえ萎んでなければ鈍る事も無かったのだろうが』

 

「サボれば鈍るのが普通なんだから仕方ない。

だったら昔のように地道にやっていけば良いさ。それに俺はこの没頭して小難しい事を忘れられる時間が好きだ」

 

 

 基本的に月音の戦闘スタイルは突撃スタイルだ。

 敵の攻撃を真正面からぶち破り、固く握りしめた拳で砕き倒す。

 後年、ドライグとの親和性が極限まで達した事で手からビームを出しまくる様になり、月音として生きてる今もそっちを主体にしていたが、原点回帰しなければいけない事を、月音曰く『畜生共』との一件により自覚させられた。

 

 

「あの狸野郎の言ってる事は気にくわないけど、大体合ってる。

今の俺じゃああの猫ガキには勝てねぇ……」

 

 

 だから取り戻すのだ。

 何よりも強い男になることを夢見てがむしゃらに生きたあのハングリー精神を。

 高々貧血程度で弱くなる貧弱さを克服する為に。

 

 

『しかし、妖怪小娘の乳房の件は――』

 

「ええぃ言うなドライグ! それもまた黒歴史なんだからなっ! ちくしょうめ……!」

 

『人間の女と何が違うのかが俺には解らんが……』

 

「バッキャロー! 人間のおんにゃのこのおっぱいはスーパードリーム物なんだよ!」

 

 

 妖怪相手に黒歴史(自称)を量産させたとしても彼は取り戻さなければならないのだ。

 

 

 

 さて、そんな訳で肉体強化特訓に着手し始めた月音は今日もテンションに身を任せて潰してしまった公安委員会と、猫目静からのセクハラ逃れの為に入ってしまった新聞部という二足のわらじ状態をやっている。

 

 

「は? 新聞部の名を語った誰かに勝手に名を語られた挙げ句脅迫記事がばら蒔かれた?」

 

「せや、しかも校舎裏に落書きまでしてな」

 

「ふーん……」

 

 

 公安の仕事についてはほぼ適当にやっていて、基本的にまともに機能させてはいない。

 それは月音以外に公安に所属する者がいないからというのもあるし、誰も他に所属させようと勧誘すらしていないからというのが大きい。

 

 とはいえ、先代の公安全体を嗤いながらグチャグチャに叩き潰したという『恐怖』のネームバリューが強いのもあって、約7割程はそれだけで抑止力になっているのでギリギリでなんとかなっている。

 

 が、最近ははぐれ妖のグループだったり、今みたいな悪戯グループが青野月音単体に対して『実は別にそこまでじゃなくね?』みたいな空気が流れ出しているらしい。

 

 銀影が今忌々しげな顔をしながら告げた件がまさにそのまんまだった。

 

 

「最悪じゃない。

ウチの部活の名前を語るなんて……!」

 

「厄介な事に『あの青野月音が所属している』って理由だけで、この脅迫記事を書いたのがウチ等やて信じられてしまっとるんや」

 

「あぁ、俺の……」

 

「月音さんはわざわざこんな遠回しな真似はしないのに……」

 

「まあ世間的には俺は極悪人でしかないからね。

確かに仙童さんの言う通り、こんなみみっちぃ真似するくらいなら学園祭の日とは言わずに今すぐ直接血の雨にしてやると思うけど」

 

「そこは否定しないんだな……」

 

 

 しかも今回に至ってはその『恐怖』が下手に信憑性を与えてしまっているらしく、本人もケタケタ笑いながら血の雨にする事に関しては否定しないので、銀影や萌香は微妙に苦笑いだ。

 ちなみに、何気に部に所属していないのにみぞれが混ざってたりするのだが、誰もそこに対する突っ込みは無くスルーだった。

 

 

「誰がこんなフザケタ記事をばら蒔いたのかの検討はついとる。

恐らくは反学園組織のもんやろ」

 

「反……なんですって?」

 

 

 無論、この面子達の誰もが月音がこんな遠回しな真似はしないと解っており、更には銀影も既に誰がやったかの目星を付けていた模様。

 しかしながらまた変な名称が出てきて一年面子達は目を丸くする。

 

 

「反学園組織――通称・反学派(アンチテーゼ)

実態や規模は謎に包まれ、平和的な学園方針を否定して(あやかし)本来の暴力性を取り戻そうとする――簡単に言えば学園側の敵やな」

 

「へー? この学園って平和方針なんすね。

その割りには小競り合いばかりな気ィしますけど」

 

 

 しかもそれって単なる表向きの方針だろ――と、御子神典明の実態を知っている月音は、そんな事も知らずに力こそが正義を掲げて活動してる反学派とやらの滑稽さに、皮肉を交えながら笑う。

 

 

「まあ、学園自体がどうなろうが正直どうでも良いんですが、要するにこの悪戯をやってくれた誰かをとっちめりゃあ良いんでしょう?」

 

「有り体に言うとそれが風評を否定する為の近道ではあるな」

 

「はぁ、公安って肩書きってホントめんどくせっ」

 

 

 取り敢えず方針云々は置いて、この悪戯をやめさせる事が先決だという流れに、月音は平和方針が聞いて呆れると思っていると、突然新聞部の部室の扉が開き、ゾロゾロと黒いスーツを着た者達が雪崩れ込んでくる。

 

 

「っ!? な、なに?」

 

「だ、誰ですかアナタたち!?」

 

 

 当然驚く胡夢や紫や萌香たちの問いに答える事無く、黒服たちは座っていた月音を取り囲む。

 

 

「青野月音だな? この校内新聞を書いた反学派の容疑によりお前を連行する」

 

「えっ!?」

 

「違います! 書いたのは月音じゃありません!」

 

 

 連行すると言われて、必死に違うと主張するが黒服達は無視して座ったまんまの月音を立たそうと肩に触れる。

 

 

「さっさと立て―――ギャッ!?」

 

「気安く触んなよ。俺に気安くさわって良いのは人間のおんにゃのこだけだぜ」

 

 

 が、触れた瞬間その手を逆に掴まれて骨を砕かれてしまった黒服が苦悶の表情と共に膝を付き、他の黒服達が一斉に臨戦態勢に入る。

 

 

「て、抵抗する気か!」

 

「してねーよ、気安く触れんなって事だよ。

ったく、大方あの狸理事長だろ? 呼ぶなら直接呼べってんだ」

 

「た、狸……?」

 

「行ってはやるからとっととここから出てけ。仙童さんが怯えてんだろ、このバカが」

 

「ぐっ……!」

 

 

 ポンポンと紫の頭の軽く撫でながら消えろと堂々と言い放つ月音の迫力に圧されて黒服たちは腕を砕かれて痛みに苦しむ仲間を抱えて退散する。

 相変わらずやることが誰に対しても暴君過ぎる月音の優男な容姿とのギャップの差になんともいえなくなる銀影。

 

 

「今のは理事長ん所の使いやのに……」

 

「どうやら呼び出しらしいっすね。

行くだけ行ってみるんで後は頼みますわ」

 

「えっと、た、退学にはならないわよね?」

 

「さぁ? それはわからんけど……えっと、なに黒乃さん、キミわざわざ心配してくれんの?」

 

「ばっ!? ち、違うわよ! こんな中途半端にアンタに去られたら紫ちゃんたちが可哀想だと思ってるだけで……!」

 

「それを聞いて安心したよ。ま、されはしないだろうぜ」

 

「む……そんな言い方しなくても良いじゃない……」

 

 

 ちょっと寂しそうな顔をする胡夢を見なかった事にしながら、同じく心配する萌香や紫にヘラヘさた笑みを浮かべると、月音は部室を出て理事長室へと向かう。

 

 

「何の用っすか?」

 

 

 勿論、ノックなんてせず、ふてぶてしさ満載の態度で入って高そうなソファーにふんぞり返るのも忘れない。

 白音を知る者が故に主導権を取られたら負けた気がするので。

 

 

「………ここはキミの自室じゃないのだが」

 

「部室にあんな役に立ちそうにもない畜生共を寄越してくるアンタに畏まれってのか?」

 

「そういう意味じゃなくて……。

はぁ、そういう面は本当に彼女とそっくりだな。

いや、キミのやり方に彼女が影響されたというべきか」

 

「フンッ!」

 

 

 彼も大分白音のふてぶてしさに苦労したらしいが、月音にしてみればザマァ見ろとしか思えない。

 遂にはテーブルに両足を乗せて座り始める月音に典明は最早何も言うまいと、中間管理職が醸し出しそうな哀愁をローブ越しに放ちながら本題を切り出す。

 

 

「キミのお陰で学園の風紀の7割は改善された。

どうやらキミの名前はそれ程に恐怖の対象らしい」

 

「畜生共が俺に怯えているのは気分が良いっすね。……で?」

 

「今回はその恐怖の象徴が仇になっている。

新聞部を語った悪戯については聞いているかね?」

 

「反学派とやらの話っすか?」

 

「そうだ。聞いているのならそこら辺の説明は省略させて貰うが、困った事にキミの抑止力としての名が逆にあの悪戯に信憑性を持たせてしまっている様なのだよ」

 

 

 オイ、茶ァくらい出せや? みたいなオーラを放出する月音を察して、渋々お茶とお菓子を出した典明が月音の前に移動して座る。

 

 

「チッ、クソまじぃ。

満足に茶も淹れられないのかアンタは?」

 

「…………。私に向かってそこまで言える者なんて最早彼女かキミぐらいなものだと改めて実感するよ。

彼女もよく私に作らせた料理に対して文句ばかりだった」

 

「あの暴食バカ猫に味覚の概念があるとは思えないがな」

 

「キミの味が忘れられないらしい。

私ですら『味のしないグミを食べてる感覚がして美味しくない』らしい」

 

「あ、そう良かったね。食い殺される心配は無くなってる訳だ」

 

「……正直、残念だなという気持ちはあるがね」

 

 

 鬼神が正体である典明の力ですら白音の舌は満足させられなかったらしい……と聞いた所で別にどうでもよかったりする月音。

 

 

「いかんな、キミを前にしているとつい昔を語りたくなる。

話を戻すとだ、このままこのラクガキ魔の悪戯が続いてしまうと新聞部を廃部させなければならないのだよ。もしくはキミ単体の退部か……」

 

「お? 退部しても良いんすか? じゃあ退部――」

 

「言うと思った。

だが顧問の猫目先生にこの事を話した瞬間、彼女があり得ぬ程に激情を爆発させてしまって退部させるのは却って余計な混乱を招くということで退部は無しだ」

 

「あの雌猫……!」

 

 

 キッパリサッパリと退部不能だと理事長直々に言われてしまった月音は、静をいつかマジで泣かすと心に誓う。

 

 

「故にキミを新・公安委員長として依頼をしたい。

ラクガキ魔の捕縛、新聞部の存続を」

 

「……。それはアレか、テメーの手が届かない部分を俺を利用して揉み消したいって事か?」

 

「ハッキリ言ってしまえばな。

私も立場というものがあって直接動けないのだ。

あぁ、先に言っておくが私はキミをかつて縛り付けた悪魔連中とは違うぞ? キミの力を欲している訳ではない。あくまでビジネスなのだよ」

 

「ビジネスねぇ……」

 

 

 かつての悪魔連中の事も把握している辺り、白音はどこまでこの男に話したのやら……と思いながらも特に怒りは不思議と沸かない月音。

 

 

「無論タダでやって貰うつもりはない。

成功の暁にはキミが熱を入れている魔女の丘の魔女がこの先も奪われぬ様にバックアップする事を約束しよう」

 

「………………」

 

 

 好きか嫌いかでいえば普通に嫌いという評価だが、御子神典明の影響力の大きさは確かなものがある。

 故に今の提示に対しては結構揺らぐものがあったりする月音。

 

 あの魔女師弟は人間社会に溶け込む事は無理なのだから。

 

 

「それにもう一つ成功した暁には彼女を無条件で転校生として学園に迎え入れよう」

 

「? 誰の事だ?」

 

 

 大分丸くなった月音の扱いが微妙に上手い典明の言葉に首を傾げながら不味いお茶を一口飲んでいると、典明が『入りたまえ』と扉の向こうに待機していた誰かに入室を促す。

 すると入ってきたのは――――

 

 

「えっと、来ちゃいました……」

 

「………………………………………なんで?」

 

 

 魔女の丘で師匠と平和に半ニートやってるお漏らし――もとい弟子魔女の瑠妃だった。

 

 

「彼女の師から頼まれてね、彼女にも学生を経験させたいらしい」

 

「あの人が……?」

 

「私も学校に通ってみたかったりしたので、この方のお話に乗ってみようと……」

 

 

 どうやら師の希望らしい。

 月音という抑止力が存在しているこの学園でなら通わせても問題は無いだろうと彼女が語っていた聞かされた月音は数日振りに見た瑠妃を横目に座り直す。

 

 

「魔女・イリナ――キミにしてみればその名を知った時は大層驚いただろう彼女の体調管理も我々が全力でフォローしよう。

どうだね? この依頼を受けてくれるととてもありがたいのだが……」

 

「………」

 

 

 お館様と瑠妃に呼ばれた魔女の、かつて捨て去った名がイリナだった事を当時聞いた時は死ぬほどギョッとなった事を思い返しながら、月音は舌打ちをする。

 

 

「二人を出されて俺が断れなくなるのを知ってる上だとしたらアンタはやはり狸だ」

 

「ふふ、キミのそういう一度でも認めた者に対する献身さは私は嫌いではないぞ?」

 

「気色悪いからやめてくれ」

 

 

 受けない理由が消えた。

 そして何故この魔女師弟に対して彼らしからぬフォローが多いのかもこれでハッキリした。

 

 

「彼女は公安委員会見習いという形で暫くこの学園に所属させる。

正式化させられるかはキミに掛かっているぞ青野月音」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「………ハイハイ」

 

『やるなこの男……』

 

 瑠妃にまでペコペコされてしまった月音は受ける事になったが、説明を新聞部達にするのが面倒だった。

 

 

「……てな訳です」

 

「退学ではないやな? それなら別にええんやけども……」

 

 

 

 

「紫ちゃん! お久し振り!!」

 

「る、瑠妃さんがまさか学校に来るなんて……」

 

「しかも月音の公安見習いって……」

 

「何だろう、凄まじく納得できないんだけど」

 

「………誰だそもそも?」

 

 

 公安見習いという腕章を身に付けた瑠妃の登場に喜び半分、腑に落ちなさ半分な顔をする女子達との邂逅を他所に月音は銀影と話をしている。

 

 

「皆さんの部の為に月音さんと頑張りたいと思います!」

「月音さんと……ねぇ?」

 

「嫌に強調するわねアンタ……」

 

「というか誰だお前……?」

 

「む、そういうアナタこそ何者? 月音さんが好んでそうな服装ですけど……」

 

 どうやらそれなりに溶け込めてるみたいなので引き続き放置しておく月音。

 

 

「取り敢えずとっとと終わらせるつもりですので……」

「そらええけど、向こうサイドが物凄い険悪ムードなんやが……」

 

「は? 俺はノータッチなんで知りませんわそんなもん」

 

「……わりと酷いなジブン」

 

 

 勝手に火花を散らし始め、その理由が月音なのにも関わらず、勝手にやってるだけで己は関係ないと言い切ってしまう態度に銀影は妬みよりも、こうまで人間女主義を主張されると、却って彼女達に不憫さを感じてしまう。

 

 

「そんな事より先輩。

今度こっそり人間界で『取材』しません? 実はとある学校の女子水泳部が中々来てるらしいんすよ~」

 

「うーん、悪くはないんやけど、後ろの子達の目が怖いというか……」

 

「そんなものなんかに怯えてて取材はできないっすよ。

ええっとですね、箱庭学園って学校なんすけど、水泳部どころか女子陸上部や女子柔道部なんかも中々にわくわくする感じで……」

 

「つ、月音さん! 取材のお話は後にしてまずは取り敢えず学園内の見回りをしましょうよ!」

 

「え? あー良いよ別にそんな張り切らなくても。

テキトーにやってる体でやってさえくれりゃあ、捏造でもしておくし……」

 

「そういう訳にもいきません! ほら早く!!」

 

 

 人間の女子の事になると途端にアホ面全開になる月音の鼻息荒めの取材敢行の話になった途端、火花を散らしまくってた女子が挙って割り込んでくる所はハングリー精神を感じてやまない。

 

 

「新聞部の問題でもあるし、私達も手伝うわ。ね、萌香、紫ちゃん」

 

「もう一人の私も同じ意見みたいだし……」

 

「皆で調査すれば効率も良いです!」

 

「だから要らないっての。

今はその話より今後の取材場所を……」

 

「あ、じゃあ私の故郷についてはどうだ? な? そうしろ?」

 

「何が『な?』なんだよ。それよりも箱庭学園って学校の生徒会長が引く程美人でしかも人間という完璧過ぎる素材についての取材が――」

 

「「「「「それはまたいつかの時!!!!」」」」

 

 

 知ってる妖や魔女よりも見知らぬ人間女子に頭が一杯過ぎる月音をここでゴリ押しで圧しきる女子達。

 色々と先は長そうだ。

 

 

「そうそう、今度キミの師匠さんにキャミソール&スカート衣装を―――」

 

「お館様は着せ替えお人形じゃないんですよっ!! そもそも何でお館様にばかり頼むのですかっ!? 年齢的に言ってもそこは私じゃあありませんかっ!!」

 

「ふん、キミはわかってないな。

男は無理をして着て恥ずかしがる女性にグッと来るもんなんだ。ねぇ先輩?」

 

「わからんでもないけど今オレに振るなや」

 

「この前セーラ服を着て貰った時の、恥ずかしそうにもじもじしてた姿は不覚にもドキドキしたからね俺は。

ふふふ、あの人は結構な逸材だぜ……!」

 

「ぐ、ぐぬぬ……!」

 

 師の命の恩人という意味では尊敬しているが、時折その師に対して色々とさせているというか、師も師で恥ずかしそうにしながらも引き受けてしまうやり取りを見てて納得できない気持ちで沢山だった瑠妃は、今も師が褒められてるのになんかムカムカしてしまう。

 

 

「おい月音。こいつの師匠に服を着せてるってなんだ? 私の役じゃないのか?」

 

「何時からキミが専属モデルになったんだか、俺の記憶に無いんだが……」

 

 

 かといって自分が前に買って出た時は鼻で笑われたし、何が違うのかがわからないし、納得もできない。

 まあ確かに月音の血によりひび割れていた師の肌に潤いが戻ってて美人ではあるが……。

 

 

「へっくち! ………むっ、誰かに噂されてる気がする。

それにしても次は何を着させられるのか……借りがあるから仕方なく着てやってるとはいえアイツのセンスは若すぎる。いや、実際若いのだからしょうがないんだが……。

しかし、アイツはなぜかつて捨てた私の名を聞いた時にあんなに驚いていたのだろうか……」

 

 

 その師こと魔女・イリナは館の自室で月音に差し入れで貰ったお煎餅を食べながらダラダラしているのだから、瑠妃の納得のいかなさもうなずけるのかもしれない。




補足

てな訳で合流したけど、思いの外お館様の方がニートになっちゃったらしい。

その2
原作だと名前が判明しなかったのでオリジナルです。

しかもピンポイントなんで月音くんはびびったらしい。

その3
んで、彼女は割りと着せ替え人形にされてるのですが、本人も最近彼が『ほほぅ……』みたいな顔をするもんだから吝かでもない模様。

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