色々なIF集   作:超人類DX

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ゼノヴィアがフリードと旧知の仲と知り、そしてそのフリードが一筋縄ではいかないと理解した彼は……


人手不足解消の為に

 どんな相手でも物怖じしない小馬鹿にしたような笑みは変わらなかった。

 

 一人で全てを終わらせようとする所も変わらなかった。

 チビだチビだと言うその口調も変わらなかった。

 

 追い付く為に鍛えてきたつもりだったけど、まだまだその差は縮まらない。

 アイツは……アイツのままだ。

 

 

 狂いの実験体。

 狂気の殺戮人形。

 

 奴等はアイツをそう呼んで処分しようとしたけど、私は知っている。

 

 

『骨折ってオメーの身代わりになってやったんだ。

精々伸びた寿命をテメーの為に使うんだな……クククッ!』

 

 

 

『さぁ、クソ共が! 長い間随分と俺を強化してくれた礼だァ! 全身全霊を込めてぶち殺してやるよォ!!!』

 

 

 その狂いも。

 その言葉も。

 その無謀さも。

 

 

『俺の名はフリード・セルゼン、またの名を打無。

白夜騎士・打無……!!』

 

 

 全ては私を奴等の記憶から消し去る為である事を。

 

 

『テメー等のクソまみれの陰我……俺がぶち抜く!!』

 

 

 私は忘れない。

 闇を照らした純白の光を……その背を。

 

 

 

 

 

 

 佐上ジュン、紫藤イリナ、アーシア・アルジェントの三人の視線は、仲間の一人に一点集中していた。

 

 

「……。フリード・セルゼンはただのはぐれ悪魔祓いじゃあないのか?」

 

「アナタは彼を知っていたみたいだけど、どういう関係?」

 

「………」

 

 

 先日出会したはぐれ悪魔祓いにて、今回の事件の鍵のひとつでもあるフリード・セルゼンについて、仲間の一人であるゼノヴィアと何やらただならぬ因縁を感じさせるやり取りを短い間ながらも繰り広げていた事について、今一度問い掛けていた。

 

 

「まさかゼノヴィア、アナタは彼と裏で繋がってたって訳じゃないわよね?」

 

「無い。

アイツとは昨日まで一切会わなかったし、どこで何をしてたのかも知らなかった」

 

「じゃあどういう事だ?」

 

 

 裏切り者なのかもしれないという懸念が浮かび上がってしまった二人は当然彼女に渡されていた聖剣を没収し、身柄を拘束していた。

 ゼノヴィアも抵抗する事もなく無抵抗の姿だ。

 

 

「奴とは昔ちょっとした因縁があってな。

今回の任務に志願したのも、奴がこの事件に関わっていると知ったからだ」

 

「因縁……?」

 

「…………」

 

 

 

 淡々と話すゼノヴィアにジュンは難しい表情を浮かべる。

 

 

(アーシアの件といい、この世界は俺の記憶する世界と色々と違う。

リアス・グレモリー達もどこか様子がおかしいし、そもそもゼノヴィアがフリードと昔会っていたというもの違う)

 

 

 佐上ジュンは佐上ジュンである前の人間の記憶を持っている。

  その記憶ではこの世界は創作の存在であること、そしてその創作とは色々と差違がある世界である事を。

 

 

(イッセーとイリナが幼なじみですら無いから、他にもあるとは思っていたけど……)

 

 

 少しうつ向き加減のゼノヴィアを見ながらジュンは記憶がまるでアテにならない事に少しの苛立ちを覚えていた。

 考えてみれば、木場祐斗が聖剣に対する復讐心が薄いのもそうだし、イッセーも一切首を突っ込んで来ないのもそうだ。

 

 

(上手くイッセー達と手を組まないとひょっとしてマズイのかもしれない……)

 

 

 この分だとコカビエルも何かしら変わっている可能性もある。

 様々な経験と予感を騒動員させていった佐上ジュンは、結果ひとつの結論を導き出すと、取り敢えず一応縛っていたゼノヴィアを解放する。

 

 

「キミを疑っていても仕方ない。

別に敵になる気は無いんだろう?」

 

「ああ、私の目的と今のところ君達は障害にはなっていないからな」

 

「ちょ、い、良いのジュンくん? もし裏切ったら……」

 

「裏切れないよ彼女は。その気だったらとっくに俺たちの前から姿を消してるさ。そうだろう?」

 

「まぁな……」

 

「だから今は君を信用するよ。

俺たちの任務はあくまで聖剣の回収だからな。人手は大いに越した事はない」

 

 

 解放されたゼノヴィアが、かつてフリードが癖でいつもやってた首の関節を鳴らす仕草をしながら立ち上がるのを見ながらイリナとアーシアに言い聞かせる。

 

 

(本当なら因子をバルパー・ガリレイに埋め込まれて聖剣を持って襲いかかってきた筈のフリードが素手で……しかもあきらかに手加減してたからな。

ひょっとして俺たちが知らない何かがあるのかもしれない)

 

 

 知識をなまじ持っていたからこそ、意外なことに冷静で中々柔軟な思考を持っていたジュン。

 

 

「ただし、イリナとアーシアを傷付けたら俺は許せなくなるぞキミを」

 

「あぁ、肝に命じておこう」

 

 

 取り敢えずやるべき事は聖剣回収。

 その為にはやはり人手は足りない。

 ジュンはゼノヴィアに忠告の言葉を送りながら、あまりやるべき事ではないのかもしれないが、彼等を上手く協力させる事を考えるのだった。

 

 

「やっぱり俺たちに今足りないのは人手だ。

だからまずは、きっとキミ達としても気が進まない話かもしれかいけど――」

 

 

 これは賭けになるが、自分達の命を守る為には危険な橋を渡る他無い。

 だからジュンが起こした行動は、アーシアとイリナの反対があったものの、なんとか説得して承諾させるものだった。

 

 

 

 

 

 一誠、祐斗、元士郎。

 この三人は同性の友人がほぼ皆無だった。

 今日も元気にかわゆいお洋服を着て満足して引きこもっていたギャスパーは性別かギャスパーなのでカウントしない場合、残っているのは互い三人がほほ唯一の同性の友人であった。

 

 

「ひっとづま! ひっとづまっ! ひっとづまっ!!」

 

「うっせーな……輪に掛けて今日は発作がひでぇな」

 

「小猫ちゃんとリアス部長と朱乃副部長にこってりしぼられたからね……」

 

「まぁた怒らせたのか? まったく学習しねーなコイツは……」

 

 

 悪友というべきか。

 基本的に一誠が突拍子の無い真似をするのに巻き込まれてしまうのが祐斗と元士郎である訳だが、なんやかんな付き合う辺りは彼を友人と思っているからなのだろう。

 珍しく今日は三人が時間を持て余していたので集まり、午後の公園で子持ちの人妻観察をする一誠に巻き込まれたとしても、仕方なく付き合えるのだ。

 

 

「人妻人妻としつこいせいで昨日あれだけ怒られたのに、イッセー君ってホント……」

 

「バカだからな。しゃーねーだろ」

 

「ヒュウ♪ 見ろ二人とも! あの眼鏡掛けた如何にもPTA会長やってそうなお姉様系を! たまんねーぜ!」

 

「わかったから声を抑えてよ……」

 

 

 二回り以上年上という、どこで拗れてしまったのか分からない性癖であるイッセーの興奮したバカ面にため息しか出てこない二人。

 これで化け物じみた鍛練の果てに異常なパワーを持っているというのだから負け越し気味の二人は微妙に悔しい。

 

 

「っし、お茶に誘うぞ俺は……!」

 

「玉砕に一票。元士郎くんは?」

 

「俺もだな」

 

 

 さっさと性癖を矯正してくれ……そんな事を思いながら今日も元気に玉砕するだろう一誠を見守っていると……。

 

 

「ちょっと良いか?」

 

 

 物陰に隠れて人妻を眺めていた三人の背後から声を掛ける男の声。

 祐斗と元士郎が振り向くと、そこには先日会合した席に居た悪魔祓いの男と女子三人が居た。

 

 

「あ? アンタ等は悪魔祓いの……」

 

「どうしたんだい? 見ての通り、今僕達はこのイッセーくんに付き合わされて人妻を見てただけなんだけど?」

 

「は? ひ、人妻……?」

 

 

 会合内容の事もあり、少し警戒した面持ちの祐斗と元士郎から放たれた言葉に少し狼狽えた様子の佐上ジュンと、若干引いてるアーシアとイリナ。

 

 

「そ、彼は無類の年上好きでね。

暇さえあればこうやってナンパに付き合わされるのさ」

 

「ナンパくらい良いだろ? それとも転生悪魔の時点で駄目ってか?」

 

「い、いや別に……年上好きなのか彼は?」

 

 

 胸の大きい女性。そもそも美少女全般ならなんだって鼻の下を伸ばすという記憶しかなかったジュンは、年上にしか興味が無いと二人に教えられて、内心『こういう所も違うのか……』と、そういえばゼノヴィアやイリナやアーシアに全然関心が無さげだった会合の事を思い出す。

 

 

「自分は現役男子校生のイッセーと申します……。

今偶然お姉さんを見た時から心臓が張り裂けそうなのです。

なので回転ベッドのある部屋で治療を……」

 

「え、えぇ? あ、あの……夫が居るので……」

 

 

 しかも死ぬほど下手と来た。

 一体何があったのだろうかとジュンは地味に気になったが、秒で玉砕して俯きながらトボトボと戻ってきたイッセーに話しかける勇気はあんまり無かった。

 

 

「あ、あの……ちょっとした提案があるんだけど、少し時間良いか?」

 

 

 取り敢えずこの局面を上手く打破するには、やはり彼等の手が必要。

 そう思ったジュンは、三人を連れて近くのファミレスへと誘導するのだった。

 

 

 

 

 

「正直言う。俺達だけでは聖剣を奪還するのに時間が掛かり過ぎてしまう」

 

 

 上手く新たに入手した資金で物を頼んだジュンは横に座るアーシアとイリナに食べさせながら三人に打ち明けた。

 

 

「時間が掛かるって、相手はコカビエルなんだろ? そんなもん最初からわかりきってた話じゃないのか?」

 

「……。相変わらず連中は確実に奪還出来る筈の人材を使わずに居るんだね」

 

「てかさ、悪魔側の俺達にそんな弱音吐いちゃって平気なのか?」

 

「「「…………」」」

 

「………」

 

 

 意外と話になったら、まともに聞いてる元士郎と祐斗と一誠の言葉に三人は何も言い返せない。

 

 

「ああ、正直上層部の考えは俺達にもわからない」

 

「そういうのはどこの勢力も同じみたいだな。

差し支えなければ聞くけど、何本か奪還できたの?」

 

「いや、ターゲットの一人とは出会せたけど逃げられた」

 

「……フリードか」

 

 

 ドリンクバーのコーヒーを飲む三人に、人手不足であることをそれとなく伝えてみるが、やはり反応は薄い。

 

 

「木場祐斗だったね。

キミはその……聖剣に恨みはないのか? 例えば今俺達が預かってる聖剣を破壊したいとか……?」

 

「聖剣のせいで人生を壊された恨みはあるけど、その恨みを無機物に抱いてはないよ。

強いて言うなら、恨んでいるのは、当時聖剣計画に荷担していた連中だしね」

 

「…………」

 

 

 聖剣を前にしても冷静に切り返す祐斗に、ジュンはまたも差違を感じながらも、少しだけホッとする。

 

 

「で、俺達に用ってのは何だ?」

 

「あ、あぁ……この前啖呵をきっておきながら虫の良い話ではあると自覚した上で頼みたい。

キミ達転生悪魔の力を借りたい」

 

「借りるって、俺達がアンタ等に協力してアンタ等以上にリスクのある聖剣の奪還をしろってのか?」

 

「……。お門違いなのは認めるけど、今の俺達では正直かなり難しいんだ」

 

 

 そう言って頭を下げ始める佐上ジュンに元士郎と祐斗は困惑する。

 

 

「信用してないんじゃないのかよ? アンタがリアスちゃんにそう言ってたのを俺は忘れてないぜ」

 

「……悪かった。

悪魔のイメージが先行していたんだ。

キミ達は本当に干渉せずに居てくれた事で信用できると思ったんだ」

 

「ふーん? でもアンタのお仲間はアンタが俺達に頭を下げてるのが気に入らないみたいだけど?」

 

 

 意外と単純ではない雰囲気を纏うイッセーの視線が、何か言いたげな顔をしてるイリナとアーシアに向けられている。

 

 

「イリナ、アーシア……俺達は協力して貰う側で、して貰わないと今回の任務は無理なんだぞ……」

 

「わかってるけど、悪魔なんだよ?」

 

「その……複雑なんです」

 

「………………」

 

 

 悪魔に対する好感度が無いイリナとアーシアの疑う目にイッセー達はヘラヘラ笑う。

 

 

「ま、教会に身を置く者としては当然の心構えだな。

寧ろアンタとそこの女の子が変わってるぜ」

 

「……。私は元々そこまで主に対する信仰心が無いだけだ」

 

「この前のキミ話が本当ならそうだろうね」

 

「対価は? 悪魔は対価で動く、だからアンタ等から対価を貰わないと俺達は動かねぇぞ」

 

「勿論用意できるものは用意する」

 

 

 元士郎の質問にジュンは頷くと同時に、元士郎もまた何かが違うと察知する。

 なんというか、戦士としてのオーラを感じるのだ。

 

 

「今回の任務はどうもキナ臭いんだ。

多少掟を破っても問題はない筈だ」

 

「だ、そうだ。どうする二人とも?」

 

「ムチムチぷりぷりの妙齢悪魔祓い女性とデートできる権利さえくれたら俺は暗殺業務だろうがやるぜ?」

 

「……。三人にぶちのめされたいなら僕は止めないよ」

 

「………………。ば、ばか野郎、三人が怖くてお姉様とめくるめく一時を求められるかってんだ」

 

「ちなみにうちの会長にバレたら……まあ、どうなるかわかるよな?」

 

「うぐっ! し、知らん知らん! そもそも俺はあの子達とは別にそんなんじゃねーもん!」

 

 

 取り敢えずこうして協力体制にこぎつけられたジュン。

 よりにもよって知識以上に癖が強すぎる三人である事を知るのはこの後直ぐになる。

 

 

「それより会長ってソーナ・シトリーの事だよな? ……リアス・グレモリーの兵士の彼が兵藤君と仲が良いのか?」

 

「あ? あぁ、そうだよ、それが?」

 

「……いや、キミはえっと……」

 

「? 俺が何だよ?」

 

「な、なんでもない……」

 

 

 まず元士郎の夢がまるで違ってた事を知り。

 

 

「おいおい、そんな睨まんでもなんもしねーよ。

お子様にゃ興味ねーし」

 

「お、お子様!? 子供じゃないわよ!」

 

「そ、そうです! 訂正してください!」

 

 

 イッセーは美少女にまるで興味を示さないで、ファミレスのパートさんにばっか目が動いてるし……。

 

 

「フリードの事をキミが知る限りの事で良いから教えてくれないか?」

 

「大体はキミも知ってると思うけど……」

 

「何でも良いんだ。

私は最近のフリードの事は知らないから……」

 

「そうか。

そうだね……間違いなく女性の影は無いねまず」

 

「! そ、そうか……!」

 

 

 ある程度白状した後のゼノヴィアは露骨にフリードを気にしてるし……。

 

 

「! お、おい兵藤君!? い、今キミの背後に黒髪の女の人が……!」

 

「あ? …………………。なんも居ないじゃん。

おいおい、冗談で俺を脅かすのは無しだぜ佐上君よー?」

 

「あ、あれ? い、今間違いなく見えたのに……あれ?」

 

 

 イッセーの背後にどっかで見た女の人が居たりと。

 先行きは正直不安なものだった。

 

 

 

終わり

 

 

 

 オマケ

 

 

 人間のオバハンをナンパしまくる姿もバッチリ見てた。

 何でか知らないけど、教会連中に協力してる現場もバッチリしっかり見てた。

 

 何故なら彼女はずーーーーーーーーーーーっと、ここ最近イッセーの後ろに居たのだから。

 

 

「何だ俺? 幽霊にとりつかれてるのか? ……ハッ! もしや人妻の幽霊……!!?」

 

「いや、俺が一瞬見えた姿は結構若いというか……」

 

「あん? ハッキリしないな? でも若いのか……ちぇ」

 

(………み、見間違いじゃなければあの姿は――)

 

 

 本気を出せば誰にも悟られる事無く敵を仕留めるスキル。

 姿を見せても相手に触れさせずにすり抜けさせるスキル。

 

 まさに暗殺に特化したそのスキルは彼女の持つナニかだった。

 

 

「猫耳みたいなのがあった気が……」

 

「猫耳ぃ? 白音じゃ無さそうだしな……。

ていうか、なんだね佐上くん? ひょっとしてそれはキミの性癖かね?」

 

「なっ、ち、違う!! 俺は――」

 

「隠すなって! 大丈夫大丈夫、男なんて万国共通そんなもんだろ?」

 

「違うって! 本当に見ただけで――」

 

「おーい、そこのお二人さん、この人猫耳萌えらしいぜ? 今度コスプレしてやったらどーよ?」

 

「や、やめろよ!」

 

「「………」」

 

 

 この教会組の事は正直どうでも良いが、気を抜きすぎたのだけは反省しなければならない。

 何故なら教会組の男に見られてしまったのだから。

 まあ、幽霊と勘違いされたのは幸いだったが。

 

 

(むー……でも敢えて気付かせてみるのも悪くないかも。

もし私だってイッセーが気付いたら即座に結婚してくれって言ってくる筈だし)

 

 

 背後霊みたいにイッセーの後ろを歩く猫耳幽霊こと黒歌は、やはり自分で好意を伝える事は考えてない模様。

 というか、何を根拠にしているのかはわからないが、彼女はどうもイッセーが自分にベタぼれである事を決めつけてるらしい。

 

 

「フリードが修行場にしてる箇所をいくつか当たろうと思うんだけど……」

 

「!! 修行場!? そ、それはどこだ!?」

 

「お、おう……落ち着けよゼノヴィアさん」

 

「私は平常だ! 早く教えてくれ!」

 

「……。最早隠す気も無いのかゼノヴィアは……」

 

「どうもフリードが好きみたいだな彼女は」

 

「あぁ、意外過ぎて実感が……」

 

 

 

「…………」

 

 

 だから姿を見せたら即座に押し倒すだろうと思っている黒歌はどうしようか迷った結果、恥ずかしいので姿は見せない方向に決めた。

 代わりに……。

 

 

「ん? なんだこれ? もにゅもにゅした感触が急に顔――んぶっ!? な、こ、呼吸ができね……っ!?」

 

「!? て、敵襲か!?」

 

「全員警戒しろ!」

 

 

 取り敢えず前に立ってぎゅってしてみた。

 任意の相手にだけ己の感触を感じさせられるという、スキルの応用を効かせた使い方でイッセーにのみ己の体温と匂いと感触を感じさせる形でぎゅってしたのだが……。

 

 

「げほっ!? な、なんだ今のは……?」

 

「大丈夫かいイッセーくん!?」

 

「大丈夫ではあるが、一体誰がどこから……!」

 

 

 イッセーにしてみればいきなり窒息させられそうになったに過ぎず、見事に敵襲と勘違いして臨戦態勢になっていた。

 

 

「……? なんだ、白音に似た匂いがす――もぷっ!?」

 

 

 が、再び苦しそうに顔を歪めて手足をバタバタさせるイッセー。

 何故なら……。

 

 

「白音に近い匂いって察してるなんて、ふふふ、どんだけ私の事が好きなのよ? あーもうしょーがないにゃー!」

 

 

 なんて事無い、全力でイッセー以外に己の気配の全てを消している黒猫さんのせいなのだから。

 

 

「ええぃなんなんだ! ここら辺から凄く白音に近い匂いのする何かがあるぞ!」

 

「と、取り敢えず取り囲むぞ!」

 

 

 所で、なんでイッセーが白音の匂いを明確に把握しているのかは―――お察しください。

 リアスとか朱乃も匂いで判別できたりする理由もお察しください。

 

 

「む、少しふざけすぎたかな? うん、今日の所はこのくらいにしてあげる。

キミのせいでお腹が熱くなっちゃったしねっ!」

 

「!? い、今女の声が……」

 

「へ? 何も聞こえないけど……」

 

「したっ! 今日の所はこのくらいにしてあげるとか言ってたぞ! ええぃ、こうなったら、ここら一帯を吹っ飛ばして炙り出して――」

 

「よせ馬鹿! 一般人も巻き込まれるだろ!」

 

「ぐ、ぐぬぬ……! 白音に似た匂いだから何も出来なかったのが悔しい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、緊張した。

ふふ……結構可愛い反応でついやっちゃったわ。匂いで私と判別できるみたいだし、どんだけ私が好きなのよアイツは……ふふふ♪」

 

 

 

 色々とお察しください。

 

 

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 




補足

知識が一切無意味と理解し、捨て駒扱いされてると薄々察して、形振り構わなくなりはじめた転生者。

シリーズ史上意外と害もなければ柔軟性も意外とある。


その2
イリナとイッセーは一切面識も無く、またイッセーが年上好きなのもあって特に互いに思うことはない。
 寧ろ誤解で転生者が猫耳萌えであることをアーシアさん共々に教えてしまうという、まさに悪魔の囁き。


その3
鳥猫みたいに接触だけは過激な黒猫さん。

しかも妹の白音に近い匂いがするという発言でキュンキまくりでハイテンションになったとさ。


その4
ゼノちゃん。
もう隠す気ゼロでフリードを捕まえる気になる。

捕まえても多分緊張してまともに顔も見られなくなるくらいしおらしくなるだろうけどね。

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