色々なIF集   作:超人類DX

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……。

まあ、そのまんまだと終わるしね


裏取引

 結婚相手を決めつけられた。

 しかもその相手がかつての世界においてのトラウマのひとつであった存在。

 

 そのトラウマは地の底から這い戻った事で克服出来はしたが、それでも良い思い出が無い相手であるのはだけは間違いなかった。

 

 例え今の世界でなんの接点も無ければ、別に何をされた訳でもないとはいえだ……。

 

 

「ライザー・フェニックスが今日来るという事で、この学園の旧校舎を貸してあげるよリアス」

 

「心遣いに感謝したいわね……ホント」

 

「いやいや、大事な姉の事だからね……ふふふ」

 

「………」

 

 

 リアスのあくまで目線だが、兄のサーゼクスが腑抜けた様な容姿。

 良い表現をするならば男にも女にも見える中性的な赤髪の悪魔で、リアスの双子の弟であるアルスという名の悪魔の笑みにリアスはほぼ皮肉でできた言葉で応じておく。

 

 高い悪魔としての才能を持ち、その強さも兄のサーゼクスに勝るとも劣らない……だなどと言われてる様だが、リアスにしてみれば彼の目がかつて自分と一誠を陥れた者のソレとまるで変わらない、軽蔑を含んだものだったので、弟としての情は一切ない。

 

 いや、言ってしまえば悪魔という種族そのものを半ば見限っているというべきなのだろうか。

 

 

(抗うに決まっているでしょう。

アナタの中で私がどれほどの間抜けに見えるか知らないけど、私は昔と違ってそう簡単にはいかないわよ……)

 

 

 かつての眷属達はこの弟の眷属となっている。

 だから今はかつての眷属達とはほぼ接点もなければ話をしたこともない。

 誰もがこの弟に好意的らしいが、好きに取り合うなりなんなりすれば良いとすら思う。

 

 リアスはもうかつての眷属達への情は消し飛ばしてしまっていたのだから。

 

 

 

 

 人と鬼の混血児故に人の可能性である神器と、伝説の赤き鬼武者としての力を受け継いだ今の兵藤一誠は、かつて初めてリアスと出会う切っ掛けとなったライザー・フェニックスとの顔合わせに、少し気合いを入れていた。

 

 

「イザとなれば父さんも母さんも悪魔であるリアスちゃんを迎え入れてくれるって言ってたからな……」

 

『いきなり戦闘沙汰にはならんと思うがな……。それに今のお前がかつての頃から鍛えてモノにした力とあの鬼の力を合わせてしまったら相手が粉々になるだろうが』

 

 

 生まれのルーツが違うこの世界にて新たに教え込まれた赤き鬼武者流の剣術。

 その要となる武器である打刀・明智拵という代々兵藤家に受け継がれてきた日本刀の手入れを念入りにしたり、素振りをしたりしながら無駄に気合いをノリノリにさせている一誠に、かつての頃から変わらない相棒である赤き龍ことドライグは少し呆れた声だ。

 

 

「今の俺の先祖の鬼武者がどうだったとかなんて知らねぇ。

例え鬼の血があろうと俺はリアスちゃんが一番大事なんだよ。

備えあれば憂いなしだ」

 

『リアス馬鹿め……』

 

「それは最高の褒め言葉だぜドライグ?」

 

 

 右腕に灰色の奇妙な形状をした籠手。

 左腕には相棒であるドライグの力である赤龍帝の籠手を纏い、新たに手にした鬼の力とを融合させた新たな戦闘スタイルの鍛練を欠かさない一誠はニヤリと笑いながら、手入れを済ませた刀を籠手と共に青白く輝かせ、形状を変化させる。

 

 

「よし……」

 

『雷斬刀か。

確か五郎の話だと最終形態ではないんだろう?』

 

「籠手を含めてな。

なんでも経験値が足りないんだとか」

 

『まあ、戦闘経験自体は問題は無いからなんとでもなるだろうが……。俺の力を上乗せさせられれば良しな』

 

 

 形状の変わった蒼い刀の刀身から紫電が流れ、上段に構える一誠。

 ドライグの言うとおり、戦闘経験に関しては嫌というほどある。

 

 だが何故今もこうして鍛練を続けるのかというと、鬼の一族の力をなまじ持ってしまったが故にかつての戦闘勘との微妙な差異が生まれてしまったのだ。

 

 鬼武者と呼ばれる戦う鬼の一族の力は数こそ少ないまでも、その力は神をも越えていくものであり、その力を多く受け継いだ一誠の身体は少し不安定なのだ。

 

 その微妙な不安定さを払拭しないことには、龍と鬼の融合という誰も到達したことのない新たな領域に立つのは不可能であり、リアスを守れるとは胸を張って言えないのだ。

 

 

「フー……よし、やってくれドライグ」

 

『わかった』

 

 

 かつての頃から慣れ親しんだ力を新たに持った力と融合させる。

 簡単に思えて実の所かなり難しいこの修行は無限の進化の異常性を持つ一誠でも難航するものだった。

 ドライグの力と鬼の力を精神力を以て拮抗させ続けなければすぐに暴走してしまう。

 

 

「っ!?」

 

『まずい!』

 

 

 少しでもどちらかの力に傾けば、この様にドライグの倍加の力が雷斬刀から放たれる雷の力を一瞬にして膨大化させてしまい、山の一部を削り取ってしまうほどのものになってしまう。

 

 

「家の庭じゃできねーよなこれじゃあ………」

 

『家所かご近所共にも迷惑になるぞ』

 

「だよなぁ……はぁ」

 

 

 誰も居ないとある山の奥――鬼の一族が今も所有していた修行場を破壊してしまった一誠は、上手くいかなかった事を含めてため息を漏らす。

 鬼の力はドライグでも認め、自分の力にすれば良いと言ってくれた力だが、制御がこれほどまでに難しいとは……。

 

 元士郎も破壊神とまで言われた鬼の生まれ変わりで神器保有者なのに、その制御は自分よりも上手いのでちょっと悔しいとすら思えてくる。

 

 

『鬼へ覚醒しても自我は保てる様にはなったが、とてもではないが実戦では使えんぞ』

 

「あぁ、覚醒前でこれだから、したらやべーわこれは。

まあ、諦める訳ないけど」

 

 

 しかし諦める訳にはいかない。

 ドライグの力と鬼の力を完全にひとつとして制御できれば、何者からもよりリアスを守れる矛へとなれる。

 

 

「もう一度だドライグ」

 

『リアスが家で待ってるんじゃないのか?』

 

「昔と違って父さんと母さんが付いててくれている。

……それに、あの父さんに喧嘩仕掛けるやつが居るなら是非見たいね」

 

『……。よくあんなのが他にも居た時代に悪魔が滅ばなかったものだと思うぞ』

 

 

 一族から『真の鬼武者』と全盛期に認められた事すらある一誠の父である五郎。

 鬼の力を押さえ込み、一誠かつての全盛期戦闘スタイルを思わず引き出したのに、負けた程なのだ。

 

 

「上には上が居る。

世界が違うとはいえ勉強になったよ」

 

『あの腐った世界で頂点に到達した俺達は少し傲慢になっていたという事だ』

 

「おうともよ。

別に世界最強なんぞになりたいとは思わないけど、もっと強くなってみせるぜ」

 

 

 高い目標を持つことが進化の秘訣。

 形状を変化させた刀から迸る紫電の制御に四苦八苦しながらも、一誠の表情に諦めの色は決して無く、挑戦的な笑みであったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 リアスにとっての最初の壁だった存在ことライザー・フェニックスがやって来る。

 かつての世界線では、既に転生者によってほぼ機能不全にされていた『部活動』の部室にて行われ、自分の意思も通せずに話を進められてしまった訳だが、今回はそうはならないしさせはしない。

 

 何時自分達よりも強大な存在が現れるやもしれないという理由でリアスはこの世界に生まれ直しても自身の力を磨く事を欠かしてはいない。

 

 無意味に悪魔達の前で己の力を示したら胡麻を擦る様に聞こえの良い言葉の羅列で祭り上げられる為に、兄や双子の弟の影に埋もれることに徹していたものの、一誠との再会が果たされた今、隠す意味は無くなってきた。

 

 

「良い。写真で見るよりずっと良いじゃないかリアス。

キミとなら喜んで婚約出来るぞ」

 

「…………………」

 

 

 場所は旧校舎の教室。

 この他の部屋から引きこもりの気配を感じる中、この世界ではほぼ口を聞いたためしも無かったグレイフィア・ルキフグスと共にやって来たライザー・フェニックスとの前世越しの再会に、リアスは早くもげんなりしてきた。

 

 

「いきなりキミのご両親から話を持ちかけられた時は不安だったが、これならば嬉しいくらいだ。

グレイフィア様、俺は喜んで彼女との婚約に同意しますよ」

 

「左様でございますか。

ではリアスお嬢様の同意ということで――」

 

 

 ……。勝手な連中だ。

 両親もまともかと思いきや、結局は同じだった……そんな失望を抱くリアスは、後ろに控える一誠が刀を抜いて二人に斬りかかる前にはっきりと返した。

 

 

「お断りします。

グレモリーの名を剥奪して頂いて結構ですので、私は彼とは結婚はしません。

そう両親にお伝え頂けますかグレイフィアさん?」

 

 

 自分の悪魔としての血や名に誇りなんてとっくの昔に消し飛ばした。

 寧ろ自分がなまじ純血のグレモリーだから色々な枷が邪魔をしたのだから要らないぐらいだ。

 

 尊敬できた兄もこの世界ではただの兄。

 姪は甥として……まあ、彼は別になんの罪はないので思うことなんて無い。

 

 とどのつまり、リアス・グレモリーはただのリアスになりたいだけなのだ。

 

 

「まあ、私が鬼一族であるこの三人を眷属にした時点で上層部の一部は三人の力を利用しようと考えている様ですし? 勘当してくれそうにはないですが。

ですが、好きでも無い相手と――ましてや知りもしない相手と結婚する気はございません。

グレイフィアさん、貴女だって兄とはそういう柵を乗り越えて結婚なされたのでしょう? 私の言う意味を理解出来ると思いますが?」

 

「………………」

 

「随分な挨拶だな。

……まあ、わからんでもないけど」

 

 

 グレイフィアに対してハッキリ言い切ったリアス。

 その態度にグレイフィアは訝しげな表情を浮かべた。

 

 アルスとは実弟以上に弟のような繋がりを持ったが、このリアスとはほぼ関わりが無かった――いや、避けられていた。

 故に彼女は夫やアルスの影に埋もれた凡婦というイメージがどうしても付いてしまっていた。

 

 しかしどうだ? 今のリアスはハッキリと自分の意思を述べていて、その佇まいも、眼差しも、放たれる強い魔力も、とても凡婦と評されるものとは思えぬ強さがある。

 

 見誤ったか? グレイフィアはそう考えたが、リアスの両親であるジオティクスとヴェネラナにどうしても今回の話を成立させる様に命じられた為、彼女は淡々とした態度を崩さない。

 

 

「ご理解は致します。

しかしこれはジオティクス様とヴェネラナ様がフェニックス家と決められた事なのでございます。

アナタ様がそこの鬼の一族の男とふしだらな関係を持ってしまう前に……」

 

 

 グレイフィアの視線が一誠に向けられる。

 その視線はどこか敵意が含まれており、となりに居た元士郎と茜にも注がれた。

 

 どうやら少なくともサーゼクスの世代辺りまでは、散々鬼の一族にしてやられた世代らしい。

 リアスが最近調べた所によれば、一誠の父である兵藤五郎がかつてたった一人で悪魔の本拠地のひとつを壊滅させた……らしい。

 

 その現場にグレイフィアが居たのかは知らないが、その血族者である一誠にはあまり良い印象が無いのだけはその目でよーくわかる。

 

 

「鬼の一族というのは俺も父と母から聞いた事がありますが、今では人間社会に解けて数も殆ど居ない一族なのでしょう? 今更恐れる事も無いのでは?」

 

「ライザー様達の世代の者は直接見たことが無いのでそう思われるのは無理もありません。

ですが奴等は危険なのです、特にそこの兵藤一誠という者は、伝説の赤き鬼武者である、明智左馬介秀満の直系子孫であり、かつて冥界存在する全ての都市をたった一人で壊滅寸前まで追い込んだ兵藤五郎の息子なのですから」

 

「それは……」

 

 

 何時になく喋るグレイフィアの若干危機迫った様子にライザーも口を閉じる。

 こんなそこら辺に居そうな少年がそんな危険な力を秘めているのか……といった様なそうでないような目をしながら。

 

 

「父さんの奴、相当の暴れん坊だったんだな……」

 

「知らなかったのかよ?」

 

「だって、昔から母さんとイチャイチャしてるだけののほほん親父の側面しか見てなかったからさぁ」

 

「イチにぃが継ぐまではあのおっちゃんが天海の先祖返りって言われてたらしいじゃんか」

 

「父さんの籠手って金色だったしなぁ……」

 

「オレの記憶だと、あの籠手って取り外しできたりするんだけど、イチにぃとおっちゃんの籠手って完全に腕にくっついちゃってるんだよな」

 

「神器みたいに仕舞えるから不便はしないけどね」

 

 

 父親が悪魔からそんなに怖がられていたのを生の悪魔の意見を聞いて初めて知った一誠。

 もっとも、だから別に悪魔に対して友好的になる気はあまりないが。

 

 

「そもそも鬼の一族と抗争になったのは、彼等一族の何世代も先を行く様々な技術を奪い取ろうとしたからと聞きましたが? それに当時の事を彼の父に聞いてみたら、『技術交換の為に一族の子供を何人も拐って人質にしたから頭に来てやってしまった』と言っておりましたよ? となれば、先に喧嘩を吹っ掛けたのは我々悪魔でしょう?」

 

「………」

 

 

 リアスの言葉にグレイフィアが黙る。

 真偽の程はわからないが、どちらにせよリアスに結婚の意思なぞ零。

 

 

「まあ、今はこの話ではありませんね。

とにかく私に結婚の意思はございません――そうお伝えくださいグレイフィアさん」

 

 

 なんだったらはぐれ悪魔にだってなっても良い。

 そう啖呵を切るリアスはまさにとりつく島がない。

 

 

「まあまあ、リアスの気持ちもよくわかります。

だからここはひとつ俺だけで話をさせて貰えませんかねグレイフィア様?」

 

「……それは、危険です。奴等が居るのに……」

 

「まさかいきなり彼等が俺を殺す訳は無いでしょうよ。

大丈夫、貴女様はアルス君の所で待っていてください――――実はそれが目的で俺に同行したのでしょう?」

 

「………………」

 

「あぁ、だからか。納得……」

 

 

 ふふふと、何故か見抜かれてしまって軽く目を逸らしたグレイフィアに、リアスは少し軽蔑した眼差しを送ってきたので、グレイフィアは逃げるように部屋を後にした。

 

 残ったのはリアスと一誠と元士郎と茜……そしてライザー。

 

 

「……………………………。ふぅ」

 

「「「「?」」」」

 

 

 グレイフィアの気配が完全に遠くへと行ったのを確認した瞬間、それまで放っていた遊んでそうオーラを引っ込めたライザーが大きくため息を吐くと同時に肩の力を抜いた。

 かつてのライザーの事を知る一誠とリアスは怪訝な顔をする訳で……。

 

 

「あー、悪い悪い、あの人の前じゃ話せない事だから、上手く言って離れて貰ったんだわ。

心配しなくても何もしないし、俺もそこまで無謀じゃねぇ」

 

「え?」

 

 

 別の意味でガラッと雰囲気を変えたライザーは、まずリアス達に頭を下げたのだ。

 

 

「婚約の話も実は俺も本気じゃない。

しかし何故この話に乗ったのか……それはリアスさん、キミが鬼の一族であるそこの三人を眷属にしたからだ」

 

「それはどういう意味ですか?」

 

 

 先程グレイフィアと話してた時と違い、鬼の一族を知ってた様な口ぶりにリアス達は少し警戒する。

 特に一誠とリアスにしてみれば、こんな下手な態度のライザーは知らないのだ。

 

 

「……。キミ達――いや、キミ達鬼の一族に嘆願したいことがあってな……」

 

 

 それはとても女を侍らせて遊んでる様な男とは思えぬ姿であり、ちょっとした新鮮さすら感じるほどの真面目な態度だった。

 しかも鬼の一族の末裔である三人に対して貴族で純血悪魔のライザーが頭を深々と下げている。

 

 なるほど、確かにこんな姿はグレイフィアに見せられない。

 騒がれるのがオチだろう。

 

 

「幻魔一族を知っているだろう?」

 

 

 ましてや、別の世界において鬼との決戦において滅んで歴史から消えた幻魔一族の事を、そもそも存在すら知らない筈の悪魔のライザーが口にすれば彼が別の意味で警戒すべき存在へと昇華するものなのだから。

 

 

「幻魔だと……? オイ、なんでアンタが幻魔の事を知ってんだよ?」

 

「落ち着け茜! ……続けてください幻魔がなんですか?」

 

 

 別世界において茜が仲間達と共に戦い、そして勝利した幻魔についてを悪魔のライザーが質問してきた。

 それだけでも心中穏やかではなくなった茜が問い詰める様にライザーの声を荒げようとしたのだが、元士郎が宥め、続きを話せと促す。

 

 事と次第によっては今ここで一戦交えなければならなくなる。

 そんな緊張感が場を支配する中、ライザーも緊張した面持ちで深呼吸をする。

 

 

「鬼にとっては幻魔が不倶戴天の敵な事は知ってる。

そして俺達悪魔がキミ達一族に大変失礼な事をしたのに虫の良い話だと重々承知している。

俺の眷属の一人に幻魔と人間のハーフが居るのだが……その子を傷つけるのは勘弁してくれないか……?」

 

「な……!」

 

「あ、アンタの眷属に幻魔と人間のハーフが居るって……!? その事を他の悪魔には――」

 

「いや、言ってない。

この事は親兄弟にも話しちゃいない。

唯一知ってるのは今僧侶としてその子の友人になってくれた俺の妹だけだが、他の誰もその子が幻魔一族と人間の間に生まれた子だとは知らない」

 

 

 頼む……どうかあの子だけは勘弁してくれ。

 そう頭を下げ続けるライザーにリアス達は互いに目を合わせて沈黙してしまう。

 

 

「いや、アンタがそのハーフ幻魔を保護してるみたいなのはわかったけどよ、何もしてないんだろう? だったらオレ達だってわざわざ斬ろうとは思わないよ。

だろイチにぃ、アオにぃ、リアスねぇ?」

 

「まあ俺は別に幻魔と因縁ある訳じゃないし。

あくまで末裔だしな」

 

「同じく。そもそも幻魔自体鬼と同じく殆ど壊滅しちまってるようなもんだし」

 

「私は婚約の話さえ無くなれば別に……」

 

「ほ、本当かっ! 勿論婚約の話も無くす様に尽力する! そもそも俺も突然過ぎて驚いていたぐらいだからな! ふふふ、妹のレイヴェルも喜ぶぞ……!」

 

 

 心底喜ぶライザーになんだか毒気が抜かれてしまうリアスと一誠。

 どうやらかつての世界のライザーとは差異があったらしい。

 

 まさかそれがハーフ幻魔の存在が故だったとは思わなかったが。

 

 

「あの子は人にも幻魔にもなりきれずにずっと独りでな、だから一端の魔に属する俺が保護した。

今度紹介できたらしたいのだが……」

 

「名前は?」

 

「ジュジュって名前だ。

人間の父と幻魔の母の間に生まれたらしい」

 

 

 ただ、その名前は――知ってる者からしたらギョッとなる名前らしいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 信長の右腕として活躍し、かつて幻魔界最強の闘士とまで吟われた幻魔が居た。

 その幻魔はかつて鬼であり、鬼でありながら幻魔へと堕ちた過去があるのだが、伝説の赤き鬼武者との壮絶な一騎討ちの果てに破れ去ったはずだった。

 

 

「久し振りだな我が盟友ガルガント! まさかこんな未来の異界の地でお前と再会できるとは思わなかったぞ!」

 

「……お前は随分小僧になってしまったなゴーガンダンテス?」

 

「うむ、拙者は幻魔から人間になってしまった。しかーし! 人間になったからと言っても拙者の剣自体は錆び付いてはいない! 試してみるか?」

 

「良いだろう……」

 

「よし! あ、だがその前に一言………。

拙者の名前はフリード・セルゼン! 悪魔祓い界最高の剣士!」

 

「……………。お前、名を変えてもそのふざけた名乗りは変わらんのだな」

 

「当たり前だ! お前こそ今はガルガントとは別の名前なのだろう? だったら共に名乗らないか? 堕天使界最強の闘士! とか」

 

「断る」

 

 

 ガルガントは生まれ変わった。

 幻魔かは堕ちた天使へと。

 しかも幻魔という種族自体が悪魔という種族にとって代わられてる――いや、きっと幻魔自体が存在しなかったのかもしれない奇妙な世界に。

 

 

「ぬぅん!!」

 

「ふんっ!!」

 

 

 だが姿や種族は変わったとしても、ガルガントはかつての盟友と再会し、その再会を祝して剣を交えた。

 華麗な剣劇と身のこなしをするゴーガンダンテスとは反対に、力強く前へと押し込む戦いをするガルガントは性格も違うというのにどこか馬が合ったのだ。

 

 

「ふ、フリード神父!」

 

「ん? なんだあの小娘は? 人間か?」

 

「ああ、ひょんな事から例の悪魔に襲われてる所を助けてな。

それ以降気ままに旅をしてる俺についてくるのだ」

 

「お前らしい。

お前は女には昔から甘いからな」

 

「否定はせんよ」

 

「ジュジュドーマには近寄りもしなかった癖に」

 

「アレは女性じゃないだろ。

信長に同情すら覚えたくらいだ」

 

「ふっ、違いないない」

 

 

 幻魔時代と違い、フィジカルの面では堕天使として生まれ変わったガルガントに軍配が上がった。

 しかしガルガントは勝った気にはならないし、この一々無駄の多い友人は絶対に種族の力の差を越えて来ると信じていた。

 故にこの勝負は一旦お預けとなる。

 

「それよりもこれからどうする? 互いに立場も違うし、これといった目的も無いだろう?」

 

「あぁ……なんとなく生きてるだけだ」

 

「拙者はとりあえずこのアーシアを保護してくれそうな場所を探しているのだが――」

 

「い、嫌です! フリード神父と一緒に旅を続けたいです!」

 

「…………とか言われてるぞダンテス?」

 

「うぅむ……」

 

 

 再会後、これからどうするかについて元幻魔界最高の剣士と幻魔界最強の闘士は、答えの見つからぬ話し合いをしていた。

 

 

「幻魔に近い悪魔に戦いを挑んでみたいが、今の拙者では返り討ちにされてしまうだろうしなぁ」

 

「連中とは数百年前程に戦ったが、勝てない相手では無かったぞ。

それにどうやら鬼の一族は存在してるらしい」

 

「なんだと!? …………では十兵衛の様な者が生きているかもしれぬのか!?」

 

「それはわからないが――」

 

 

 横にひっついて離れないアーシアを置きながら、話し合う二人。

 すると突然なにかを感じ取ったガルガントが空を見上げると、そこには純白の翼を広げた天使族の女性が、何故か不満顔でゆっくりと降りてきた。

 

 

「アナタの自宅を尋ねたら居なかったので、随分と探しましたよガルガント?」

 

「またお前か……」

 

「おっ!? おいおいガルガント! お前、拙者の知らぬ間にこんな女性と!?」

 

「ただの顔見知りだ」

 

「て、天使様……ですよね?」

 

 

 目の覚める様な美女にアーシアは天使な事も含めて驚き、フリードは別の意味であのガルガントが女性と知り合いになっていることに驚き半分のちょっとした茶化し心半分で彼の肩をポンポンと叩く。

 

 本人はそっけない態度だが。

 

 

「えーっとガルガント……? そちらの子達は?」

 

「……。片方はちょっとした知り合い――」

 

「よくぞ聞いてくれました麗しのお嬢さん! 拙者の名前はフリード・セルゼン! 悪魔祓い界最高の剣士!!」

 

「わ、私の名前はアーシア・アルジェント! え、えと……最高の剣士様の子分!」

 

「は、はぁ……」

 

 

 剣を片手に変なポーズをしながら自己紹介する少年と、若干恥ずかしそうにしながらもそれに続いてポーズしてる少女に圧された女性は無言のガルガントを見る。

 

 

「…………。前にしつこいお前に仕方なく話してやっただろ。

俺がガルガントという名の幻魔だった時の盟友のゴーガンダンテスだ、姿は小僧になってしまったがな。

それとその隣の小娘は今初対面だ」

 

「! そう、彼が……! 初めまして、私はガブリエルと申します。

え、えーっとガルガント……というかコカビエルとは友達以上といいますかなんというか……」

 

 

 ガルガント――コカビエルとも呼ばれる堕天使の説明に理解を示したガブリエルなる天使は早速自己紹介をするが、若干後半辺りで声が小さくなり、チラチラと無表情で腕を組んで立ってる彼の様子を伺いながら人差し指同士をちょんちょんし始める。

 

 その反応にゴーガンダンテスことフリードは面白そうに笑みを浮かべてた。

 

 

「ほほぅ? ガルガント、お前も中々隅に置けんなぁ?」

 

「何の話だ」

 

「誤魔化すな誤魔化すな! 名前も姿も変わったというのに、ガルガントの名を教えてるということはアレだろう? それだけに彼女を認めているということなのだろう?」

 

「一度叩きのめしてやったら、しつこく付け回してくるから仕方なくだ。

それに俺はガルガントという名の方がしっくる来る」

 

「確かになぁ」

 

 

 武人というか、女っ気皆無の堅物。

 流石幻魔界最強の闘士と呼ばれただけあって、ガブリエルの心は一切察してない様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「が、ガルガントとは天使時代に知りまして。

その時から他の者とは違う気配を感じ、堕ちて敵同士になって戦った時は、その強さに屈服したけど、別に何もされませんでした。

あ、いえ別に何かされたかったとかそんな訳ではなくて……! それ以降はこうして友人以上の関係になれたのでそろそろそれ以上の関係になりたいなぁ……とか思っていたり……」

 

「あ、あの天使様?」

 

 

 幻魔界二大最高峰……合流




補足

ハーフ幻魔を過去に保護してたので一族達の事は実は知ってたライザーさん。

無論戦う気な無く、そのハーフ幻魔さんの為に土下座決行しただけで結婚なんてとんでもないと思っていたらしい。


その2
ジュジュというのは漫画版に出てきたらしい……あのジュジュドーマ様と人の間に生まれたハーフ幻魔少女なのだ。

……まあ、ジュジュドーマ様って若い頃めっさ美人な上に声も17歳さんだからね。仕方ないね


その3

はい、ガルガントさんです。

無論ボイスも3のOPの渋いボイスの方です。

久し振りだなァ……左馬介……

渋すぎて悶えるね。


その4
…………………ある種コカビーそのものより難易度上昇したガブリーさんなのだった。

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