色々なIF集   作:超人類DX

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ちょっと一旦鬼武者っぽいシリーズを切っておきます。

で、嘘一発ネタの小出しをしときます。


ちょっとだけ
記憶と力と人格を失った執事と守るママン


 両親は物心がついた時から居ない。

 けれどもそれを寂しいと思った事は、運の良いことな無かった。

 

 姉が居て。ちょっと個性的な友達が居て……。

 

 きっと俺は人との繋がりに関してはとても運良く持っている側なのだと思う。

 

 ……。二度目になるけど、真面目にその友達が個性的だが。

 

 

 

 

 

『適正確認できちゃったから、キミは強制的にあの学園に入学だからよろしくぅ!』

 

 

 みたいな軽いノリではないものの、言われた本人からしてみれば前例が無いからとりあえず人柱になってくれよとしか聞こえぬ宣告をされ、強制的な進路を決定付けられた15になったばかりの少年は、わりと憂鬱な気持ちだった。

 

 

「気が重すぎる……」

 

「良いんじゃねーの? お陰で一躍有名人だぜ? 未成年なのに顔写真つきでメディアに出たんだし」

 

「俺はそんな事望んで無いし……」

 

 

 あるものをうっかり触れたら動かせてしまった。

 それが理由で世界に名前と顔が発信されて一躍時の人にされてしまった少年は、近々入学する陸の孤島に建てられた学園生活のことを考えるだけで憂鬱な気分になり、その事を愉快な友人の一人に夕飯をごちそうするという餌でつり上げる形で愚痴と相談半々でしていた。

 

 

「第一作為的な臭いしかしないんだけど。

入試会場にアレがあるとか絶対おかしいだろ?」

 

「結果、お前の秘められた才能が表に出回れたんだから万々歳だべ。

いいよなー、間違いなく女の子しかいない学校で唯一の男子として入学すんだろ? 羨ましくてニタニタしちまうぜ」

 

「……………。真っ先に羨ましがる癖に、今回はやけにそうでもなさそうだな?」

 

「まー……女子高生っつーの? 同世代の小娘に魅力は感じないもの。

だから、素敵な女教師を発見したら写メよろな?」

 

「……………」

 

 

 

 自分より一回り以上は歳が上でないと嫌だと、4歳から知り合ってから一度も変えぬその性癖を持つ友人に、顔立ちの整った男前な少年こと織斑一夏は、コイツこそ自分がこれから強制的に入る事になるあの学園に入ったとしても平然としてられそうだと、おめでたそうな性格の友人が羨まく思ってしまう。

 

 

「ま、何事も経験ってことで頑張れば良いんじゃね?」

 

「他人事だと思って……」

 

「実際に他人事だからな? お前の事がワイドショーに取り上げられた時は腹抱えて爆笑したし?」

 

「友達なのに冷たいじゃねぇか……って、帰るのか?」

 

 

 そんな半笑いの激励と共に席を立つ友人に一夏は、何時もならもう少し入り浸る友人のお早い帰りを不思議がる。

 

 

「飯は食わせて貰えたしな。

それにとっとと帰らないとお前のねーちゃんが帰ってくるかもしれないだろ?」

 

「千冬姉なら確かに今日は早く帰ってくるって言ってたけど……」

 

「せっかくの姉弟の水入らずな時間を邪魔したらいけないしな、だから帰る」

 

「別にそんな寂しい仲では無いのに。

千冬姉もお前が居ると楽しそうだし……」

 

「楽しそう? あんなドS魔人が弟のお友だちである俺に苛めっ子魔王みたいな所業をしてくるのが楽しそうだと? 一夏……やっぱお前あの人の弟だぜ」

 

 

 一回り上の成人した姉の事を楽しそうだと表現する弟の一夏に、少し苦い顔をする少年はさっさと帰ろうと一夏宅のリビングから出る扉を開ける。

 

 

「………」

 

「げ……!」

 

「あ、千冬姉。いつのまに帰ってたんだな? おかえり」

 

 

 しかしそのタイミングでその姉こと千冬と鉢合わせしてしまい、少年は千冬なる女性を見るなり条件反射的な声が出てしまった。

 

 

「ご馳走さまです、そしておじゃましましたー……」

 

 

 ドS魔人。または理不尽大魔王。

 一夏とは小さな頃から一緒で、その繋がりとして千冬ともそれなりに知らぬ仲である訳なのだが、年上好きを公言しているこの少年も、この千冬ともう一人のとある女性だけはかなり苦手意識があった。

 

 故にニコニコとしながらその場に突っ立って居た千冬と横を通りすぎてお暇しようとしたのだが……。

 

 

「来てたのなら話が早い、まだ帰るな」

 

 

 とても良い笑顔で肩を掴み、帰ることを阻んだ。

 

 

「ちょうどお前を呼び出して貰おうと思っていて、大事な話もある。

だからまだ帰るな」

 

「嫌です。

でき損ないのホストみたいにアナタ様の酌をしなけりゃならないし、サービス料があったとしても断ります」

 

「じゃあタダでやれ。それとも今ここで食った分の飯代を請求されたいのか?」

 

「払いましょう? おいくらです?」

 

「500万円」

 

「ふざけんな、行き遅れ確定ゴリラ女めがっ!! 弟の親友に言う台詞かそれは!?」

 

「あー、今の心ない暴言で私の心はとても傷ついてしまったな。

精神的苦痛の慰謝料を含めて700万だ」

 

「おい一夏!! この超理不尽大魔王をなんとかしてくれよ!?」

 

「今までなんとかなったことなんて無いだろ? うん、諦めてくれ。

なんなら泊まって行けよ今日は?」

 

「接客確定じゃねーか!? ぜってーやだ!!」

 

「あ、お義母様ですか? いつもお世話になっております。

はい、今ウチに居るのですが、今日はこのまま泊まって貰いたいと……はい……はい、ありがとうございます。では――――――良かったな、今お前の母から許可が降りた。喜んで世話になれだとさ?」

 

「かーちゃぁぁあん!!!!」

 

 

 

 外堀から詰みを掛けられてしまった事へ、千冬に許可を簡単に出してしまった母に対する少年の叫び声が織斑家全体に木霊するのだった。

 

 

 

 

 

 

 結局お泊まり確定となってしまった少年は、千冬の接客をしなければならないのかと深い深いため息を吐くのだけど、風呂から上がって来た千冬と共に、未だ納得出来てない顔をしながらお茶を飲んでいた時に、突然テーブルの上に分厚い本を一冊置いた。

 

「……。なんすかこれ?」

 

 どうポジティブに思おうとしても、小難しそうで眠くなりそうな羅列が並べられていそうな本を出して来た千冬に対して少年は訝しげな顔をする。

 

 

「見ての通り、コイツがこれから通うことになっている学園の案内書だ」

 

 

 少年が、小難しい本は読む前に寝たフリをして逃げようとすることを知っている千冬は風呂上がりばかりで少し頬を上気させながらコイツと指した一夏の通うことになってしまった学園についての説明だと明かす。

 

 

「高校の案内書ってもっとこう、明るいもんだと思うんですがね。

俺が今年から入学する駒王学園の案内書とかそうでしたし」

 

 

 自宅から電車無しで通えるという理由で選んだ、自らが今年通うことになった学校を引き合いに出す少年に、千冬は空になったグラスを少年に向けながら口を開く。

 

 

「あの学園は一般の高校とは事情が異なる事は知っているだろう? 世界中から適正者が入学するし、ある意味で国家機密みたいなものだ」

 

「確かに、あの学園についてニュースになったとこは見たことがないかも……」

 

「故に生徒となった者達は入学する事になった際はこの本に目を通す事が決められている」

 

「マジすか? うっへー、そんな堅苦しそうな所で三年も青春を棒に振るとは、一夏も大変だのぅ?」

 

「……今言わないでくれよ、余計気が重くなってきた」

 

 

 顔立ちハンサムで、同性の友達は何故か少ないものの女子にモテモテしてた一夏の通う学校が軍隊訓練場みたいな場所かもしれないと知った少年が、ズーンとなってる一夏の背中をパシパシ叩きながらニヤニヤしつつ、向けてくる千冬のグラスにとくとくと飲み物を酌する。

 

 幼い頃から色々含んだ意味でこの千冬ともう一人の歳上のおねーさんには頭が一夏共々上がらない少年の、無言の千冬からの要求に対する動きの早さはプロのようだ。

 故に実弟の一夏程ではないものの、それに準ずる程度には千冬の事は知っている。

 

 

「少しはポジティブに考えてみろよ? 例えば……女の子しか居ないからハーレム気分に浸れるとかさ?」

 

「現実はそんなに甘くないと思うし、絶対肩身が狭くなるに決まってる……」

 

「鈍い癖にそういう所は気にしいだな一夏は。

けど決まってしまったもんは仕方ないんだし覚悟しろよ?

友達が高校デビューに失敗して引きこもりになりましたとか俺嫌だぞ。

弾の奴と引きこもりになったお前を励ますのも嫌だわ」

 

「…………」

 

 

 と、何か良いことを言って終わらせようとしている少年だが、その顔はニタニタと人の悪そうなものなので説得力が死んでいた。

 

 

「話を戻させて貰うが良いか?」

 

 

 そんな、明らかに気落ちしている弟とその親友を暫く見ていた千冬が口を開く。

 

 

「うぃ」

 

「…………」

 

 

 そう、此処からが本題。

 わざわざ無関係の彼に入学案内書を見せたのも、全てはこの一言を言う為だった。

 

 

「お前も駒王学園では無く、一夏と同じIS学園に入学して貰う」

 

 

 唯一弟の一夏と自分のルーツと『酷似』している彼を守る為に。

 

 

「……………。えーっと? 耳がおかしくなっちまったのかな? この大魔王様がまたおかしな事をほざきはじめてるんだが?」

 

「おかしくなってるのはお前の性癖だ。

お前もIS学園に『急遽出現した適正者』として入学するんだ」

 

「………。あのですね千冬大魔神様? なんでもかんでも貴女様の思う通りに世の中は動かないという事を少しは学んで頂きたいのですよ? そもそもの話、俺別にIS動かしてませんし? ……さわった事もないけど」

 

 

 勘弁しろよこの理不尽ゴリラ女……みたいな目をする少年の言葉は尤もである。

 しかし千冬はそんな少年の意見をねじ伏せる。

 

 

「束曰く『この天才の束さんに掛かれば、いーちゃんがISを起動させられる様にするのもちょちょいのちょいだぜ!』………だ、そうだ」

 

「うわそこであのマッド女を出すのか……!」

 

「確かにあの人なら可能かもしれないし、俺としては正直かなり助かる話かも……」

 

「冗談じゃねぇ! 俺は駒王学園に入学して、三十路迎えた独身女性教師とキャッキャウフフするという薔薇色の青春が待ち構えてるんだ! なにが悲しくて刑務所みたいなイメージしかない学校に、しかも裏口入学みたいな感じで入らなきゃならねーんだよ!」

 

「一夏に続いて男であるお前が起動したとなればその時点で入る資格は満たされる。

それに、もう学園長には話を通してある」

 

「なにから何まで勝手だな!? いくらアンタからの話でもこれだけはダメだ! 家から手軽に通えるから選んだ高校なのに、全寮制の高校なんぞ通わされたら休みの日に母さんのお手伝いができない!」

 

 

 母子家庭で、しかも『血が繋がらない』母と二人暮らしである少年は、血の繋がりこそないものの、自身の母を本当の母の様に想い、そしてちょっとマザコンが入っていた。

 休日になれば仕事に出てる母の為に色々としてあげる――という基本的には良い子君な彼からしてみれば、母と過ごせぬ休日なぞありえぬのだ。

 

 

「だがこれはお前とあの人を守る事にも繋がる。

…………………意味はわかるだろ?」

 

「!」

 

「?」

 

 

 だが千冬の真面目な顔をした言葉に少年は勢いを削がれてしまった。

 そう……一夏だけはまだ知らぬ事だが、織斑姉弟と――そしてそれ以上にこの少年の出生は複雑だった。

 事実を知るものは少ないが、知る者はその身をねらう者が多い。

 

 

 

「ヴェネラナさんには私からきちんと説明する。

……脅す訳ではないし、そもそもあの人によからぬ真似してタダですむわけがないのは重々承知しているが……な」

 

「…………」

 

「えーっと、何の話だ? ヴェネラナさんがどうかしたのか?」

 

 

 自分を含めて母を守る為だと言う千冬に少年は小さく俯く。

 

 

「強くなってあの人を守りたいのだろう? ……あの場所ならそれを学べる筈だ――一誠」

 

「…………………」

 

 

 一誠……。

 本当は誰と誰の間に生まれたのかすら解らずに居た自分にその名を与えてくれ、愛をくれた母の為になるという千冬の言葉に逆らえる訳もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い表情となった一誠が一夏にちょっと慰められながら眠ったその日の深夜。

 千冬は二人が寝ているのを見計らい、こっそりと自宅を出てある場所へと向かった。

 その場所とは一誠が住む家であり、彼女にとっての恩師が住む家でもあった。

 

 

「一誠にはとりあえず納得して貰いました」

 

「そう……嫌な役を押し付けちゃったわね千冬ちゃんには」

 

「いえ……」

 

 

 一誠に近い亜麻色の髪を持ち、尋常ではない美貌の妙齢の女性。

 それは千冬と千冬の友人である束が幼い頃から変わらず、一誠がマザコン化するのもなんとなく分かる気がした。

 

 

「ですが宜しいのですか? この事が世間に公になれば貴女の事も世間に……」

 

「大丈夫よ。

ある程度の詮索を受けるのは覚悟の上だもの。

それ以上にあの子には全てを思い出して貰いたいから……」

 

「……。生まれる前の記憶という奴ですか……」

 

「ええそうよ。

あの子が私を狂った連中から守る為に犠牲にしたもの。

本来の強さや過去の記憶を全て取り戻してあげないと――――でも、今のままの方があの子にとって幸せたとかもしれないって、アナタ達とのやり取りを見てると思ってしまうのよね……」

 

「それは――」

 

「だからこれは私のエゴ。

ふふっ、信じられないかもしれないけど、本来のあの子はもっと人見知りが激しくて、私に対して反抗期と子供そのものみたいな態度だったの。

呼び方もババァってね?」

 

「信じられないですね。アイツの貴女に対する慕い方を考えると」

 

「でしょう? ………………暫くあの子をお願いしても良い?」

 

「…………………。引き受けましょう。

アイツの性格に私や一夏が何度も助けられてきましたから」

 

 

 そんな恩師が頭を下げてきたとなれば千冬は引き受ける。

 人に対する奉仕がプロ並であり、そのルーツと力を失っている少年と恩師に対する返しの為に。

 

 

「なるべく休日は会わせる様に手配はします。

でないと煩いですからね、あのマザコン小僧は……」

 

「本当なら歳的には千冬ちゃんと束ちゃんと同年代なんだけどねぇ……」

 

「だからアイツは私と束に対して妙に遠慮が無いのでしょう」

 

 

 記憶と力を失って退行した少年と、その少年に最期まで守られた義母の別世界へと流れ着いたお話。

 

 

「でもアナタと束ちゃんは嫌いじゃないって言ってたわよ? それって結構好かれてるって事になると思うけど?」

 

「……。それを貴女に言われて私はどんな顔をすべきなんでしょうか?」

 

「さぁ? うふふ……♪」

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 裏口入学同然で、一夏共々女の園にぶちこまれてしまった一誠少年。

 

 

「えーと、何か適正があってしまったとかで、急遽入学してしまいました兵藤一誠です。

好きなタイプは年上の女性でっす。どうかよろしく」

 

 

 今時の世の中には珍しいタイプの男子にちょっと戸惑う女子達に、ちょうど聞いていた千冬が後ろからひっぱたく。

 

 

「誰がお前の性癖を暴露しろと言った馬鹿者、普通に紹介しろ」

 

「ってぇな! いきなりなにすりんだよゴリラ女――あべしっ!?」

 

 

 だがあの千冬に対して物怖じせずゴリラ女呼ばわりしたせいで変な目で見られ……。

 

 

「一誠、さっき箒と六年ぶりに再会したのに、何故か怒らせてしまったんだが……」

 

「はぁ? ったく、お前はホント駄目な――ぅぐっ!?」

 

「ど、どうしたんだよ?」

 

「い、いや、箒さんの声を聞いたら急に頭が……」

 

 

 何か本能的に訴えてくる箒の声に一誠が頭痛を発祥したり……。

 

 

 

「実力から行けば学年首席でありこの学年最強・・であるわたくしがクラス代表になるのが必然。

それを珍しいという理由で極東の猿にされては困ります!

わたくしはこんな島国までIS技術の修練に来ているのであって、遊びに来たつもりはありませんわ!」

 

「ボロクソ言うなぁあの子」

 

「てかさっき絡んで来た奴だろ……めんどくせー」

 

 

 クラス委員だかなんだかを決める話になって、周りから男子である一夏や一誠が推薦されるので我慢出来なくなってキレるステレオお嬢様だったり。

 

 

「はいはーい! じゃあ俺は………えっと……やべぇ、名前が出てこないけどそこの子を推薦しまーす!」

 

「俺も俺も! 経験者の方が絶対良いですし!」

 

 

 マジでキレてるので、二人が推薦したのだが、それはそれでバカにされてると感じたその女の子が余計怒ってしまって、結局総当たりのバトルに発展してしまったり。

 

 

「頼む箒! ISの事を教えてくれ!」

 

「な、何故私が!?」

 

「お前しか頼れるのが居ないんだ! 一誠も俺と同じで初心者だし……」

 

「む……わ、私しか頼れないか……。し、しかたないな! 教えてやらんこともない!」

 

「ほんとか!? やったぞ一誠! 箒が教えて……」

 

「あー……二人いっぺんに教えるのも大変だし、一夏だけ教えて貰いなよ」

 

「え、そんな事……」

 

「いいからいいから! (空気読めよ的な目で箒さんがこっち見てんだからしゃーないだろ……)」

 

 

 独学でなんとかしないといけなくなってしまったり。

 

 

「はぁ、寮かぁ。

母ちゃん大丈夫かなぁ……」

 

「お前に心配して貰うまでも無いのは、お前が一番よく知ってるだろ。これが鍵だ」

 

「とりあえず部屋行こうぜ一誠? 一息つきたいし」

 

「ん……そうだな」

 

 

 寮である事に落ち込んだり。

 

 

「部屋の鍵が違うだと……?」

 

「んなバカな……。男は俺と一誠しかいないのに何で……」

 

「取り敢えず渡された鍵のナンバーの部屋に行ってみるべ」

 

「そっか、一人部屋だったんだな」

 

 

 何故か部屋が互いに違うナンバーの書かれた部屋になってたり。

 

 

「うーん、金が掛かってるだけに良いお部屋。

大浴場もあるみたいだし、母ちゃんを連れて来てあげたいくらい――」

 

「遅かったな。

来るのが遅かったから先に頂いてたぞ」

 

「………………………。間違えましたー」

 

 

  部屋に行ってみたらバスタオル一枚の千冬が普通に出迎えたり。

 

 

「えー!? 逆だろが! 弟の一夏と同室なのはわかるが何で俺!?」

 

「お前ら二人の部屋が用意されてなかった結果、顔見知りの一夏と篠ノ之と同室にすればギリギリなんとかなると思ってな。

で、お前の場合は唯一この中では私が御せるだろう?」

 

「……えぇ? じゃあ箒さんとアンタを同室にして余った部屋に俺と一夏をぶちこめばよかったじゃん」

 

「それでは篠ノ之が私に遠慮して可哀想だろう?」

 

「俺は良いのかよ!?」

 

「だって気なんて使わないだろうお前は私に。それこそ一夏以上にな」

 

 

 千冬と同室にされてテンションが下がったり。

 

 

「た、助けてくれ一誠!」

 

「な、なんだ血相変えて……」

 

「へ、部屋入ったら風呂上がりの箒が居て……お、怒らせてしまって……!」

 

「落ち着け一夏。

はぁ……まったく間の悪い奴め」

 

「え、ち、千冬姉がなんでここに? まさか一誠は千冬姉と?」

 

「まことに遺憾ながらね」

 

「そ、そうなんだ。

あれ、急に俺の方がマシな気がしてきたぞ?」

 

「おい、それはどういう意味だ?」

 

 

 箒をまた部屋で怒らせて逃げてきた一夏が、自分以上に地獄環境になってる一誠を見てマシだとポジティブに考えてしまったり。

 

 

「専用機? 俺にもすか?」

 

「ああ、その専用機の説明がしたいからとアイツが来てる。

だから一緒に来い」

 

 

 一夏に続いて一誠にも専用機が与えられると千冬直接言われながら連れていかれた場所は学園の隅っこにある寂れた空間。

 

 

「やっほーちーちゃんといーちゃん! 束さんからのハグをプレゼントだぜ!!」

 

 

 そこに現れたのはマッド女こと篠ノ之束で、千冬と一誠にいきなりとびついて来たので全力で避ける。

 

 

「あのテンション、何かどこかで見た気が……」

 

「……………。おい束、時間もあまり無いのだからとっとと済ませてやれ」

 

「えー? こちとらせっかくいーちゃんに合わせた専用機をこしらえてあげたのに、お礼のちゅーとか無いの?」

 

「あってたまるか。

未成年に手を出す気かお前は」

 

「未成年……ねぇ? ま、そういう体にしとくよ今はね」

 

 

 千冬を盾に背中に隠れる一誠に意味深な笑みを浮かべる束は、一誠に専用機を与える。

 

 

「今まで束さんが開発してきた世代ごとの機体とは全くの別方向。

ある意味ではISであってISではない新たな世代の機体だよ。

その名も赤帝! フィッティングの作業をしながら機体の説明をするから覚えてね?」

 

「基礎知識すら俺ないんすけど……」

 

「基礎の部分は私が後で部屋で教えてやるから安心しろ」

 

「はぁ……どうも」

 

「ん? 部屋でって! あー! まさかちーちゃん、私にさっき未成年に手を出すなとか言っておきながら、自分はエロエロな事をしようとしてるな!?」

 

「誰がするか」

 

「同じく。やるなら三十路以上じゃねーと」

 

 

 部分展開ではなく、左腕のみに装甲が展開されるだけで他の部分は全て生身という機体を貰う事になった一誠。

 

 

「ほーほっほっほっ! 専用機だというからどんなものかと思いきや、明らかに未完成な機体でどう私に勝つ気なのでしょうか!?」

 

「一応あのマッド女お手製だからな! 負けましたなんて言ったらまた身体をこねまわされる! 故に何をしてでも勝つぞ俺は!」

 

 

 当然機動力が死んでいて防戦一方な展開だが、束に負けたと言うのは嫌だった一誠は、何故か自然と動く身体で避けながら活路を探し――

 

 

『Boost!!』

 

「よしうまく行った! 赤帝の単一仕様能力である倍加 を発動!!」

 

 

 そのISに適応していく。

 

 

「うっしゃあ!!」

 

『Boost! Boost!』

 

「んなっ!? く、空気の壁を蹴って駆け上がって来たですって!? なんて野蛮な――」

 

「野蛮で結構コケコッコー!!!」

 

 

 それは彼が忘れてしまった魂の力によるものなのか。

 異常な速度で束のISの特性に適応していく一誠は、使用者の力そのものを倍加させていくISの能力により、空を駆け上がり、セシリア・オルコットと戦う。

 

 

「シールドエネルギー残量0」

 

「え……」

 

「へ?」

 

 

 まあ、スタミナ切れで普通に間抜けな負け方をしてしまったのだが。

 

 

「倍加にも限界があるらしい。

束から後で送られたデータによると、この機体は使用者――つまりお前自身の成長によってその力の発揮できる限界も大きくなるらしい」

 

「……。それって最早ISなんすか?」

 

「だから束も言っていただろう? 全くの別方向に向けた機体だと。

精進するんだな」

 

「ちぇ、一夏も負けたし、俺達は明日からあの金髪お嬢様の小間使いかぁ…」

 

 

 忘れたが故に全てを一度失う前の少年の性格へと戻った少年のお話。

 

 

「はいはーい、二年の黛薫子でーす! お二人にインタビューを……きゃあ!?」

 

「ぐぉぉっ!?」

 

「お、おい一誠!?」

 

「お、おお……な、なんでもねぇ……」

 

「な、なんでもない顔じゃないだろ!」

 

「あ、あのー……私なにか?」

 

「い、いえ……何か急に声を聞いたから頭が――あ、あぁ? ぐ、グレイフィア……? なんだ急にそんな言葉が頭の中で……?」

 

「は、はぁ……」

 

「大丈夫かお前……?」

 

「多分大丈夫じゃないな……すんません、先に部屋戻って寝るわ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、いーちゃんの記憶と人格を取り戻させてどうしたいのおば様は?」

 

「そうね……。元に戻る――は、もう不可能なのは分かっているのだけど」

 

「コミュ障で陰気で、口が悪い素直じゃない人格ないいーちゃんを昔一度会った事はあるよ。

いーちゃん自身は一瞬記憶を取り戻した事は覚えてないみたいだけど。

…………………とても冷たい目だったよ、私以上に」

 

「本当は優しい子なのよ?」

 

「どうかな? 記憶と人格を取り戻した瞬間、私やちーちゃんを拒絶するかもしれないと思うと、取り戻してほしくないんだけど」

 

「束ちゃんはひょっとして……」

 

「………………。私が天才で天災と揶揄されても一切態度も変えずにズケズケとものを言ってきて懐いてこられもしたら、多少は絆されるよ。

ヴェネラナ先生の子だもん……」

 

「…………」

 

「ふふっ……先生が初めていーちゃんを見せてくれて抱かせてくれた時、実は吸われちゃったしねー? あー、何時本人に言ってやろっかなぁ? 絶対慌てる顔するんだろうなぁ……あはは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へーっくしょい!!」

 

「ん? 風邪か一誠?」

 

「ずずっ、いや、人妻が俺をうわさしてるのかも……」

 

「人妻……お前は相変わらずそっちが好きなのか」

 

「年上に甘えた生活がしたいのかもな俺は。

一夏のねーちゃんと箒さんのねーちゃんは違うけど」

 

「違う? あれ、私の記憶だと、まだ小学生の低学年時に千冬さんと姉さんに学校の花壇から引っこ抜いて来たパンジーの花を渡しながら――」

 

「全っっ然記憶にございませんなぁ! 俺があんな怪力ゴリラ女とマッド女にそんなクサい真似をする訳がねぇ!! やるなら団地妻だろ!」

 

 

 

 始まらない。

 

 

 

「久し振り……本当に会いたかったわ―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――元士郎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、記憶と力を無くした一誠とヴェネラナ様以外に貴女が……! い、いや……本当に嬉しいです。

俺……俺は……!」

 

「お互い、顔も名前も変わってしまったけど、魂はあの時のままなのよ。

良かったわ私もアナタに会いたかった……」

 

「ええ……また一緒になりましょう―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――カテレアさん!」

 

 

 

 始まらないったら始まらない。

 

 

 

「だ、弾がのほほんさんのお姉さんと、こ、恋人繋ぎしてデートしてんぞ!?」

 

「学園祭の時か? 弾もやるなぁ……」

 

「わー、お姉ちゃんが男の人とデートしてるー!」

 

 

 

 

 

 

 

「妹? あの一誠と一夏とこそこそ隠れながら尾行してくる子がですか?」

 

「そう。

……一応魔力はカテレアの頃と変わらずに扱えるから、あの子達に見られない様に大変だったわ」

 

 

 

本当に始まりません。

 

 

 

 

「と、いう訳でいーちゃんや? おねーさんとデートしないかい?」

 

「そのデートという言葉の裏におぞましいものを感じるんですけど……」

 

「嫌だなぁ! ホントにただのデートだって! なんならおっぱいに包んであげるぜ?」

 

「いやぁ……こえーっす」




補足

記憶、人格、力、精神。

ヴェネラナのママンを守る為に全部を差し出した結果、肉体から記憶から全てが退行した元執事。

性格は限りなく近いものに戻ったのですが、性癖が……うん。

その2
そんなヴェネラナを先生と呼ぶちーちゃんと束ちゃま。

恐らく束ちゃまに関しては唯一といっていいほど先生と呼べる相手がママンという


その3
そのヴェネラナのママンからある程度事情を教えられたので、彼の本来の人格や性格や力の事は把握してます。

正味取り戻してほしくはないとも……。

もしかしたらその瞬間拒絶されるかもしれないから。


その4
で、水面下に彼と彼女が再会。

実は弾君が彼で、彼女は――――まあ、おわかりいただけるだろうか?



その5
続きはない。

最近ネタに行き詰まりを感じてるし

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