色々なIF集   作:超人類DX

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な、なんてこった!


 なんてこった……マジで


ここからが本当の地獄だ

 突然現れた異邦人は圧倒的なパワーと慈悲の欠片も無い冷酷さを兼ね備えた冷たき男だった。

 

 

『チッ、少しは抵抗するものだから期待はしたが、所詮は猿にも劣る地球人だったか』

 

 

 自分達のテリトリーを守るために全力を尽くした。

 自分達が滅ばない為にありとあらゆる手を尽くした。

 

 それこそどんな汚いとされる真似をしてまで抗った。

 

 しかし異邦人は持ちうるこちらの手札全てを駆使しても埃ひとつすら付けられなかった。

 

 戦友達が次々と破壊されていく。

 築き上げた歴史が踏み潰されていく。

 

 

『もう良い、貴様等はここで消えろ』

 

 

 掌に太陽と変わり無い力を一瞬で作り上げる事も可能にする異邦人の力は誰にも止めることなんてできなかった。

 神であろうと、悪魔であろうと、何者であろうとも……。

 

 

『……。いや待て、ここで雑魚共を全滅させるのはたやすいが、それでは白音の戦闘力向上の手立てが消えるな。

良いだろう、幸運に思うが良い地球人共。貴様等は今のところ生かしてやる……俺の駒の餌としてな』

 

 

 災厄そのものであるただ一人の男に、世界は――地球という星は平伏したのだ。

 そしてこの日より、世界中の生物としての強さのランクが『二段階』下がる事になる。

 

 

『数年時間をくれてやる。

白音、お前は戦闘力を300万に上げ、この連中を捻り潰せ』

 

『さ、300万ですか? 今の私が6万なのに出来るのかな……』

 

『無理ならそれまでだ。

駒としての価値も無い』

 

『う……りょ、了解しました』

 

 

 異邦人と、その異邦人によって当時の時点で異質なパワーへとたどり着いた白い猫によって……。

 

 

 

 

 

 かつて争いが絶えなかった三大勢力である悪魔・堕天使・天使は、ただ一人の異邦人の絶対的なパワーによって争うべきではないと暗黙の不可侵条約から完全なる不可侵条約を結ぶ事になった。

 

 たった一人の男によって三勢力がある意味ひとつになった理由は――絶滅を免れる為。

 

 その気になれば数年前の時点で種族を滅ぼされていた三竦みは、ありとあらゆるご機嫌取りをその男――クウラにする事で今日までなんとか絶滅を免れた。

 

 人間界の町に住まいを提供したのもそうだし、物資を定期的に捧げるのも絶滅を免れる為に、自分達は決して貴方の意に添わぬ真似は致しませんという意思表示のアピールだ。

 

 無論、各勢力の一部はそんなトップ達の腰抜けにも見える対応に異を唱える者も居るが、それでも彼等は最善を尽くしているのだ。

 

 

「……さて、この町でコカビエルの馬鹿がやらかしやがった訳だが、そのコカビエルは今日まで行方がわからねぇ。

恐らく――いや、間違いなく奴によって消されたと思う」

 

「間違いは無さそうですね、私も同意します。

聖剣を奪還して帰還した二人の悪魔祓いの証言とも合致しますし」

 

「この町の管理を託している妹と眷属達の証言だと、クウラ本人ではなくて、彼の部下がコカビエルを始末した可能性が高いらしいよ。

両手両足を切断されて放置されていたはぐれ神父達もそう言っていた」

 

「クウラの傍に居る白猫か……。

あの年齢で異常な強さを持っているのは噂では聞いていたが、あっさりとコカビエルを殺すとはな……」

 

「うぅ……」

 

 

 本来ならコカビエルの起こした騒動と、それにより発覚した聖書の神の不在を理由にした三勢力の会談。

 しかしこの世界ではクウラという共通しての、手出しできぬ存在の部下である白音があっさりとコカビエルを消してしまった為発覚も何も無いし、会談の主な理由は、今のところ目立った動きは無いクウラ達に対する今後の傾向と対策についての話し合いがメインだ。

 

 

「大丈夫かいセラフォルー?」

 

「だ、大丈夫だけど、久し振りにあの冷たすぎる目を見たせいでまだ震えが……」

 

「……。相当なトラウマになっちまってるな」

 

「無理もありません、下手をすれば死んでいた程の重症を負わされたともなれば……」

 

 

 会談開始から――いや、授業参観日にクウラと予期せぬ遭遇をしてから、以前一撃で殺されかけてトラウマを植え付けられたセラフォルー・レヴィアタンは、彼の名前が出てくるだけで震えが止まらず、周囲に心配される。

 

 

「ともかくだ、俺たちはある意味で奴のお陰で今までの柵も乗り越えて協力し合える関係になれたんだし、これからも継続すべきだ。

奴が居ると分かってるのに、これ以上無駄に争って無駄な血を流すわけにもいかねぇだろ?」

 

「アザゼル同意に出来る日が来るとは思いませんでしたが、こればかりは仕方ありませんね」

 

「僕達も不満は無いよ」

 

「わ、私も……。出来れば二度と会いたくないし……」

 

 

 皮肉な事に、クウラという存在のお陰で纏まりを見せる三勢力。

 他の勢力は完全にクウラに対して干渉しないことを条件に何とか攻撃するのをやめてもらっているという話であり、まるで彼がこの星の支配者の様だった。

 

 しかしそんな中でも彼の極悪さを直接見ていないせいで理解できてない愚か者は多い様で……。

 

 

「クウラの事を抜かせば、今一番俺達にとって害になりそうなのが、禍の団って組織だろうな」

 

「禍の団?」

 

「聞かない名前だけど、どんな組織なんだい?」

 

「おいおい、情報収集をクウラに集約させすぎだぜ? 確かにクウラに比べたら大した事にもならないと思いたくなるのもわかるが、この組織もそれなり規模が大きいんだ。

しかもその組織を纏めているのが、クウラが現れるまで世界最強と呼ばれた無限の龍神……オーフィスだ」

 

 

 堕天使・アザゼルの開示する情報と名前に天使・ミカエルと悪魔のサーゼクスとセラフォルーの顔色が変わる。

 

 

「オーフィスがそんな組織を? 目的は?」

 

「そこまではまだわからないが、無視はできねぇだろ? クウラの事もあるが、こういう輩が出てくる以上、やはり俺達は争うべきではないって事だ」

 

「貴方が神器使いをかき集めている理由はそういう事ですか?」

 

「いや、神器は研究目的だ。

お前らにもその研究結果を見せても良い」

 

 

 クウラ以上の脅威にはならないにしても、アザゼルの話からして厄介な規模を持ってそうな組織についてを聞いて、天使と悪魔は難しそうに唸る。

 

 

「その組織がクウラ達にちょっかいを掛ける可能性は?」

 

「低くは無いな。

何せ構成員にはグリゴリを抜けた堕天使や、はぐれ悪魔も存在してる様だし……」

 

「では我々天使の構成員が間違いなく存在しない訳ですし、もしもの時は我々は彼に―――」

 

「クウラにしてみれば俺達の種族差なんてあってない様なもんだろ。

組織がクウラにちょっかいを出して、クウラが報復に動いたら、恐らく俺達もまとめて終わりだ」

 

「そ、そんな理不尽な……。

彼に事情を説明するとか――」

 

「説得が通用する相手じゃないのは、お前が一番よくわかってるだろうがセラフォルー?」

 

「う……」

 

 

 確かに。と、以前クウラに半殺しにされたセラフォルーは洒落や冗談や説得が一切通じる気がしないと、アザゼルの言葉に反論できない。

 

 

「危ない芽は先に俺達で摘むべきなんだよ。

禍の団がバカをやる前にな……」

 

「「「………」」」

 

 

 どこに居てもついて回るクウラという絶対的な脅威に、胃が痛くなってくる三勢力のトップ達。

 この会談の結果、三大勢力達が協力し合う形で対テロチームを結成する事になったのだが……。

 

 

「悪いなアザゼル。俺は今より禍の団に渡る事にしたよ」

 

「はぁ!? な、何でだ!?」

 

「『より強い存在と戦わないか?』と言われてな。

それにあの組織に所属すれば、あのクウラと敵対できる気がする」

 

 

 コカビエルの回収を出来なかった白龍皇のヴァーリが組織に寝返るという展開になってしまった。

 しかもその理由がクウラと敵対できるからという、若さ全開な理由で。

 

 

「ば、馬鹿! あれだけ言ったのにまだそんな事を宣う気か!? 奴には手を出すなと――」

 

「そこまで頑なに言われたら逆に気になるし、その強さも本物だと思うものだろう? それに、組織に入れば自動的に悪魔勢力の赤龍帝の彼とも思う存分戦えるしな」

 

「こ、この戦闘バカめ!」

 

「最上の褒め言葉だよアザゼル。

赤龍帝の方はまだまだ力を使いこなせてないようだから今は様子を見てやるが、クウラの方は―――――」

 

 

 直接見てないせいか、イマイチ把握できないヴァーリはアザゼルの言葉に全く耳を貸そうとせず、そのまま去ろうとした……その時だった。

 

 

「っ!?」

 

 

 重苦しい威圧が突然現れ、強制的にその場に居た者達の視線を釘付けにする。

 会談の警備をしていたリアス・グレモリーやソーナ・シトリー……そしてその眷属達も、空から降りてきた二つの人影を見てそれが何なのかをすぐに理解出来てしまった。

 

 

「く、クウラ……!」

 

 

 そう、紫の頭髪。血の様に赤い瞳。

 刃の様に鋭い目付きを持つ青年が、メイド服を着た白い少女を引き連れて現れたのだ……。

 

 

「なっ!?」

 

「か、カテレアちゃん!?」

 

 

 しかもただ現れただけでは無く、クウラの傍らに居る白い猫が、ボロクズの人形みたいに動かない女性を片手で引き摺りながら此方に近づいて来たので、その哀れな姿を見たサーゼクスやセラフォルーは、それが現悪魔社会から離反した先代魔王の血族の一人である事に絶句してしまう。

 

 

「……!」

 

「こ、小猫ちゃんが女の人を……」

 

「ひっ!?」

 

「か、下半身が無い……」

 

 

 騒ぎを聞き付けてやって来たリアス達も二人の襲来と、白音に引き摺られてる下半身の無い女性に吐き気を抑えるように口を覆った。

 特にまだそういう耐性の無い眷属達は耐えきれずにその場で吐いてしまった者も居る中、来訪者は三大勢力のトップの前に立つ。

 

 

「く、クウラ……彼女に何をしたんだい?」

 

「あ……ううっ……!!」

 

 

 一切の感情が分からない表情のクウラを前に完全に圧されてしまい、ガチガチと歯を鳴らしながら怯えるセラフォルーの代わりにサーゼクスが恐る恐る訊ねる。

 アザゼルとミカエルは口を挟むと何をされるか分からないので黙って見ているだけしかできないし、クウラと戦うと息巻いていたヴァーリは異質な威圧を前に身体が硬直していた。

 

 

「先程、雑魚共を引き連れてこの女が俺達の屋敷に来た」

 

「ぅ……」

 

 

 クウラが喋ると同時に、横に居た白音が下半身が消し飛んだものの辛うじてまだ生きているカテレア・レヴィアタンを前へと放り投げる。

 

 

「コイツは貴様等と同じ悪魔と吐いたが……」

 

「! た、確かに悪魔だ。

しかし彼女は私達の社会から離反した者だ……!」

 

 

 もしここで彼女を仲間だと庇ったら完全に終わる。

 今の社会を否定して自ら離反した旧派の者達であるのは確かに事実だし、ここで庇ったらその瞬間皆殺しにされる可能性を考えたら、妹のリアスとて容赦なく殺されてしまう。

 

 それだけは何としてでも阻止しなければならないと、サーゼクスは必死にカテレアと自分達は立場と勢力が違うと訴えた。

 カテレアと因縁もあるセラフォルーですら、何も言えずに死人の様な顔色で震えていて言及できない。

 

 

「白音」

 

「はっ」

 

 

 暫く顔が青いサーゼクスを無言で見据えていたクウラは、やがてサーゼクスの言ってることが本当なんだろうと判断したのだろう、横に居た白音を呼ぶと、そのまま目の前に転がってる虫の息のカテレアを顎で指す。

 

 

「生かしただけ無駄だった、今すぐ消せ」

 

 

 すると即座に白音がカテレアに向かって手を翳し、蒼白いエネルギーの塊を放てば、なすすべも無く、断末魔すら叫ぶ事すら叶わず、カテレアはこの世から蒸発して消え去った。

 

 

「か、カテレアちゃんが……カテレアちゃんが……!」

 

 

 他人の命なんてなんとも思ってない無慈悲すぎる一撃に、セラフォルーは震えを止められずにその場に蹲った。

 無論、見てしまったリアス達やソーナ達も、クウラとその部下の――自分達と殆ど歳の変わらない白音の躊躇の無さに戦慄した。

 

 

「偶然とはいえ、貴様等の離反者をひとり始末してやったのだ。文句はあるまいな?」

 

「あ、ああ……」

 

 

 完全に場が凍りついてしまった中、淡々と話すクウラにサーゼクスは頷く他なかった。

 サーゼクスだけでは無く、アザゼルも、ミカエルも、リアス達もソーナ達もセラフォルーも――他人の命をゴミグズの様に消させたクウラの冷酷さに意気消沈になる他なかったのだ。

 

 

「帰るぞ白音」

 

「はっ、気を取り直しての晩御飯ですね」

 

 

 そんな中を悠々と帰ろうとする二人の化け物に、先程までカテレアが転がされていた焦げた地面とを交互に見比べていたイッセーが思わずといった様子で大声をあげた。

 

 

「ま、待ってくれ! こ、ここまでする必要が本当になったのかよ!? しかもそれを小猫ちゃんにやらせるって……!」

 

 

 どうやらカテレアを白音に殺害させたクウラに思うところがあったらしい。

 振り向きはせずとも、立ち止まったクウラと、一応振り向いた白音にイッセーは周囲がギョッとした顔をするのも無視して、白音に言った。

 

 

「こ、小猫ちゃんは本当に自分の意思で殺したのか? 本当はこんな事なんてやりたくないんじゃないのかよ!?」

 

「はあ……」

 

 

 また自分にかと、間延びした返事をする白音。

 

 

「やりたく無いも何も無いんですけど。

自分達の生活圏を侵害してきたから駆除をしたまでですもの。

貴方達だって、自分の部屋に蝿や蚊が飛び交ってたら、殺虫剤を撒いて対応するでしょう? それと同じですよ」

 

「は、蝿や蚊って……」

 

 

 心底自分の本心だと云った表情の白音に、カテレア・レヴィアタンを少なくとも蝿扱い出来るのかとショックを受けるイッセーの周囲は、間違いなく彼女がコカビエルを消したのだと断定する。

 

 

「別に強制されてクウラ様のお側に遣えている訳ではありません。

勘違いなされてる先輩さん達にはこの場を借りて宣言させて頂きましょう」

 

「…………」

 

 

 そう言って絶句するイッセー達にお辞儀をした白音は再び背を向けてクウラの後を追い掛けようとするが……。

 

 

「待ってくれ」

 

 

 今度は白龍皇のヴァーリが白音とクウラの両方を引き留めようと声を掛けた。

 

 

「……はぁ、今度は何でしょうか? というより何方でしょうか?」

 

 

 二度も引き留められて段々うんざりしてきたのか、白音の対応が少し雑なものになる。

 しかしヴァーリはそんな事は気にせず、不敵な笑みを浮かべながら振り向きもしないクウラや、めんどくさそうな顔をしてる白音に宣戦布告をしようと口を開いた。

 

 

「名はヴァーリ、白龍皇だ。

クウラ、貴方の噂はアザゼルから聞いていてね、是非とも戦ってみたい」

 

 

 アザゼルが必死になって止めようとするのを無視して宣戦布告をしてしまったヴァーリ。

 どうやら、カテレアを呆気なく葬ったのを見て火が付いてしまったらしいが……。

 

 

「……………………」

 

 

 クウラはといえば、ほんの少しだけ振り向いて白龍皇の光翼で宙に浮いているヴァーリを一瞥しただけで、すぐにでも再び背を向けてしまう。

 まるで偶々振り向いたら小鳥が一羽飛んでいたのを見た……みたいに。

 

 それを聞いていたイッセーも、自分の宿敵の大胆不敵な行動に息を飲む事になる中、一瞬だけ振り向いたクウラに白音が訊ねる。

 

 

「どれ程でしょうか?」

 

「恐らくは1000程度、所詮餓鬼の戯言だ」

 

 

 おおよその戦闘力を目視で計測し、話にならないと断じたクウラに、数値の意味がわからないヴァーリ達は何の事だと首を傾げるが、クウラが相手になる気が無いというのだけは態度でわかった。

 

 

「俺は貴方と戦うに値しないという意味か?」

 

 

 完全に見下されていると思ったヴァーリが白龍皇の鎧を纏う。

 

 

「クウラ様、姿が変わりましたが……」

 

「例の神器とやらの力だ。

しかしそれでも精々2000程度だろう」

 

「………それで良く無謀な事が言えますねあの人は」

 

 

 

 禁手化の鎧を纏った姿で多少戦闘力を増したヴァーリだが、それでもクウラは何の関心も示さない。

 下でアザゼルがヴァーリに対して何やら必死になって説得を試みている様だが、本人は聞く耳を持ってすらいない。

 

 

「それなりの自負はある。これでも戦うに値しないのか?」

 

 

 別に無視をしてやっても良かったクウラだが、そこまで言われると煩いし、相手をしてやろうと振り向く。

 

 

「白音」

 

 

 ただし、相手をさせるのは白音だが。

 

 

「畏まりました」

 

 

 名を呼ばれて白音が前へと出て空を飛ぶヴァーリを見上げ、クウラはその後ろで白音をジーッと見つめている。

 

 

「クウラ様と戦いたいのであるなら、まずは私を倒してみてはいかがでしょうか?」

 

 

 そう上空のヴァーリに向かって呼び掛けた白音は手を前で組んで小さくお辞儀をする。

 

 

「キミか……。

良いだろう、キミからも実力者の匂いがするしな」

 

 

 それに応じたヴァーリが地上へと降りると、白音は口を開く。

 

 

「ご忠告しておきましょう。最初から持ちうる全てのパワーを引き出した方が身のためです。

白龍皇の力――それは恐らく禁手化というものでしょうが、その程度のパワーでは私には勝てません」

 

「なんだと?」

 

 

 小柄なメイド服を着た少女の言葉にヴァーリは少しムッとなる。

 

 

「今の貴方の戦闘力を数値で表せば、精々2000程度。

これはそうですね……この場に居る方々――――三大勢力のトップの方々を抜かせば一番高いと思われます」

 

「…………」

 

 

 ハッキリ三大勢力のトップよりは多少劣ると言われてしまったヴァーリに白音は続ける。

 

 

「サーゼクス・ルシファーさんが4000と仮定し、参考までに私の戦闘力を教えておきましょうか」

 

 

 クウラによる地獄の特訓によって開花した――

 

 

「私の戦闘力は――130000です」

 

 

 駒である事を望む少女の持つパワーを宣言する。

 

 

「勿論、フルパワーで貴方と戦う気はありませんからご心配無く」

 

「何……?」

 

 

 左手をヒラヒラと小馬鹿にしたように振りながら、実質お前には舐めプでも勝てるよと言われたヴァーリはカチンとくる。

 だが白音はそんなヴァーリを――そもそも一々呼び止めてゴチャゴチャと言って晩御飯の時間を削ってくる個人的な恨みもあったのか、更に煽った。

 

 

「そうですねぇ? 私はこの左手だけで戦ってあげましょうか? ほんの少しくらいは楽しくなるかもしれませんよ?」

 

 

 これ見よがしに左手をプラプラを振って見せつける白音に、ヴァーリは一気に動いた。

 

 

「なら、死んでから後悔しろ!!」

 

「よ、よせぇ!!」

 

 

 

 こうまで言われてしまっては男として廃る。

 ヴァーリは鎧を纏った姿で地面を思い切り蹴り、アザゼルやサーゼクス達の制止の言葉を完全に無視して、突っ立っているだけの白音に肉薄し、顔面に向かって渾身のパンチを突きだした。

 

 

「っ!?」

 

 

 ヴァーリの拳が、白音の顔面を叩く音が響き渡る。

 しかし……。

 

 

「な……!」

 

「ふふふ」

 

 

 白音はその拳を真正面から受けても微動だにせず、不敵に嗤っていた。

 まるで巨大な鋼鉄の壁でも殴ったかの様な感覚のヴァーリは、一切動かせなかった事に驚愕し、イッセー達もまたその異常な頑丈さに驚いている。

 

 

「折角先手をお譲りして差し上げたのに、この程度なんですか?」

 

 

 そんな中、額に拳を受けた状態の白音は力で押そうと全身を振るわせるヴァーリに向かって笑い続けると、左手で彼の突きだした腕を掴む。

 

 

「ま、しかしクウラ様の言っていた2000程度ではこんなものでしょうねぇ?」

 

「ぐっ!?」

 

 

 小柄な身体には到底似合わぬ万力で腕を掴まれたヴァーリは、咄嗟に相手に半減の力を発動させるが、白音はそれでも嗤いながら掴んだ腕に爪を食い込ませ、鎧を砕く。

 そしてそのままヴァーリの腕をまるで物でも掠めとるかの様に引きちぎったのだ。

 

 

「ぐぉぉぉっ!?」

 

「ヴァーリ!?」

 

「ひぃっ!?」

 

「う、腕を……!?」

 

 

 白い鎧が鮮血に染まり、肘から先を失ったヴァーリはちぎられた部分を押さえながら悲痛の雄叫びを上げようとするが、その雄叫びも途中で完全に止まった。

 

 

「が……ァ……ァ……!」

 

 

 何故なら腕を押さえて上を向いたヴァーリの腹部に白音の肘打ちが鎧を砕いて本体を貫く勢いでめり込んだのだから。

 

 

「ぐ……ぇ……!」

 

 

 口からも血を吐きながら、鎧を維持できなくなったヴァーリが膝を付き、その横に立っていた白音は悠々と膝をついて蹲る彼の前に立つ。

 

 

「おっと失礼しました。お返ししますよ」

 

「は……はぁ……ふぅ……!」

 

 

 そして引きちぎった腕を彼の前に放り投げる。

 この時点で決定的すぎる戦闘力の差を思い知ってしまったヴァーリは流れ出る血が多すぎて気を失い、勝負はついてしまった。

 

 

「何時まで遊んでる、早く終わらせろ」

 

 

 そんな茶番を見ていたクウラは、白音に命じた。

 とっとと消せと。

 

 

「はーい」

 

 

 無論白音はそれに従い、手から放つエネルギー弾をヴァーリに向け――――

 

 

「っ!? グレイフィア! 全員を移動させるんだ!!」

 

「あ、あんなもん喰らったら全滅だ! 全員逃げろォ!!!」

 

 

 巨大な爆炎が駒王学園を半壊へと導いたのであった。




補足

会談内容がクウラ様に対する傾向と対策なんで、多分纏まりはかなりある。


その2
若い者はクウラ様をあんま知らないので、無謀な者が多い…………。

てのは嘘で、一度絶滅させられかけた事実を伏せて格勢力とも、拮抗していたみたいなカバーストーリーを撒いてたので、何も知らぬ者達はクウラ様が精々魔王辺りと同等と思われてるとか。


まあ、アザゼルさんに散々言われて知ってたヴァーリくんは逆に火がついた模様だけど。


その3

白音たん……なんかフリーザ様になる。

まあ、530000ではありませんがね(笑)

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