色々なIF集   作:超人類DX

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この世界では殆どの事が前倒して進んでます。

故に…………


義息子のライバルと学校見学と……

「会談?」

 

「あぁ」

 

 

 親同士が悪友であり、その縁で結んだ幼馴染みと遊んでから暫く経ったある日の朝。

 慣れすぎてそれが当たり前――というか、来ないと逆に何かあったのではないかと心配にすらなる程には毎日来てくれるガブリエルさんを加えた朝食の席にて、唐突に朝刊を読みながらコーヒーを飲んでるオッサンが口にした言葉に、俺は葡萄ジュースを飲みながら聞いていた。

 

 

「悪魔・天使・堕天使――所謂三大勢力と呼ばれる種族の代表者達による会合だ。

何でも、バラキエルの娘――つまり朱乃が今サーゼクスの妹と共に通ってる学校で行うらしい」

 

「へー?」

 

「天界側からは私とミカエル様。悪魔側からはサーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタン。そして堕天使陣営からはアザゼルとバラキエルと……そしてこのコカビエルが出席するのよ一誠君」

 

「え、オッサンも?」

 

 

 政治の紙面を読みながら簡潔に説明するオッサンに続き、めちゃめちゃ行儀よく食べてたガブリエルさんが補足する。

 だが俺は、その補足に出てきたオッサンの名前にほんのちょっぴりだけだが驚いてしまった。

 

 

「珍しいじゃん、オッサンがそういうのに出るなんて」

 

「俺も最初は嫌だと言ったのだが、アザゼルとコカビエルが出てくれとな……。まあ、神の子を見張る者(グリゴリ)を辞めてから悠々自適に暮らして時間が無かった訳じゃ無かったし、出るだけならなと……」

 

「そういう事です」

 

「ふーん?」

 

 

 言った通り、オッサンは確かに堕天使だけど、アザゼルさんやバラキエルさんみたいに堕天使の組織から脱退し人間界に移住してるという、半ば引退した身なので、そういう会合だなんだのの話に殆ど縁の無いと思っていたんだが、どうやらガブリエルさんの話もあるし、本当に会合に出席するっぽい。

 面子がかなり豪華な会談にだ……。

 

 

「そっか、まあオッサンなら問題なんて無いんだし頑張ってくれよ。ガブリエルさんも」

 

「ふふ、ありがとう。

でも会談と言ってもそんな殺伐としてる訳じゃないから難しく考えなくても良いんですよ?

10年前に和平を完了させ、今では三大勢力間の交流も盛んになってますし」

 

「そういう事だ。

どうせ今回の会談でやる事など、顔馴染みの代表者同士が集まって飲み食いしながら話をするだけだろう」

 

 

 とにかく、そんな会談とやらにオッサンが参加する事になったという話を聞いた俺は二人に頑張ってくれと言いつつ半分まで減ったジュースを一気に飲み干した。

 

 オッサンが参加する事に対して反対するなんて気持ちは無いし、何より参加する側は違えどガブリエルさんも居るのだ。

 ウチの鈍ちん親父をよろしくお願いしますぜ……にも似た気持ちで気持ち良く送り出すのが子供の務めって奴だ。

 それに加えて俺自身はオッサンの子ってだけであった単なる人間のガキだからね、やる事と言えばオッサンとガブリエルさんが帰ってくるまでにご飯を作って待ってることくらいしか無いのさ。

 

 

「ぬ……『◯△選手が戦力外通告を受け、年内に引退』だと? むぅ……割りとファンだったのに残念だ」

 

「……ふふ♪」

 

 

 だから関係ない。強いて言うなら、会談よりもさっさと仲深めろや……と渋そうにスポーツ面を読むオッサンを相変わらずチラチラ眺めながら微笑んでるガブリエルさんを見て、少なくともこの時までは思っていたよ。

 この時までは――

 

 

 

 

 秘密裏に三大勢力の各トップが会談を行う、駒王学園という高校は本日の昼間は父兄参観日だった。

 生徒の他にも父兄が校内に入り、自分の子供の授業風景を眺めるのが主な概要であり、そうなってくると、学校に通わず通信教育で学習をしてたりする一誠には関係の無い話なのだが――

 

 

「え、どうしたのかしらあの子達?」

 

「迷子……かしら?」

 

 

 父兄を交えつつの授業が半分程終了したお昼休み。

 いつも以上に廊下や教室が賑やかになっているこの時間にとある女子生徒達は、廊下を歩く少年『二人』を発見し、首をかしげていた。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 父兄参観日なのだし、連れられてきたという推測は十二分に合ってると思う。

 思うのだが、発見した女子生徒二人の目測からして『5~6歳程の薄い茶髪の少年と、暗い銀髪と碧眼の少年』が並んで歩く姿は妙なアンバランスを感じてしまったのだ。

 しかし、そう考える間も無言で歩いていく二人の少年の姿は遠くなり、遂には見失ってしまう。

 

 

「結構可愛かったねあの男の子ふたり」

 

「うん、私は銀髪の子が好みかも……」

 

 

 階段を登って上の階に行こうとする後ろ姿を見たのを最後に見失った女子生徒達は、残念そうにしつつ二人の少年――つまりは『しょた』に変な気持ちを抱きつつ話を咲かせる。

 ……。その二人の少年が実はその見た目が偽造でしたとも知らずに。

 

 

 

 

 俺は強い相手と闘う事が何よりも好きだ。

 アザゼル然り、バラキエル然り、コカビエル然り――そしてライバルの一誠然り。

 運が良いのか、俺はそんな欲求を満たす環境に恵まれていて今の暮らしに十分満足しており、ソレ以上の事は求めないでいたんだ。

 

 だというのに――

 

 

「成長してから分かったが、小さいと色々と不便な事が多いのだな一誠……」

 

「あぁ……水道を使うにもこの『身体』じゃ手間ばかりだぜ」

 

 

 何故俺と一誠は一般の人間でごった返してる学舎に居るのか……そして何故姿が子供の頃のソレになっているのか……。

 原因は俺の義理の親であるアザゼルと、一誠の義理の親であるコカビエルの企みがそうさせていた。

 

 

「まったく……アザゼルの奴め。なにが『ガキらしく学校に行け』だ。俺はこんな煩いところに混じる勇気なんて無いぞ」

 

「同感。どうにと集団行動ってのが俺も苦手だわ」

 

 

 俺と一誠は年的には16~7の、此処でわいわいと騒がしい多くの人間とほぼ同年代だ。

 しかし当然俺と一誠は学校なんぞにこれまで一度たりとも通った事はなかった。

 

 学習にしても俺はアザゼル、一誠はコカビエルと通信教育とやらで賄ってきたので行く必要性が無かったのだ。

 が、ここ二年程は俺と一誠共通の幼馴染みである朱乃がこの場所に通うようになってからアザゼルが煩くなったのだ……『お前も行っとけよ』とな。

 当然そんなものは断り続けたよ……いくらハーフ悪魔だからといって、人間に混じった集団行動には興味も無かったし、純・人間である一誠ですら『とある事情』で行きたがらなかったのだ。

 

 なのでこれからも『行かない』と言い続けるつもりだったのに、俺達はアザゼルの発明品の犠牲の基、わいわいと喧しいこの場所を子供の頃の姿に擬態してまで足を踏み入れている。

 

 

「朱乃ちゃんは三年生と聞いたんだが……三年生の教室が沢山で何処に居るのかわからんぞい……」

 

「一つに纏めれば良いのに、わざわざ分けるからだ……まったく面倒な」

 

 

 そんな背景があったからこそ、三大勢力会談と父兄参観日を利用した俺達専用の『学園見学会』が密かに始まったという訳だが、ハッキリ言って朱乃がこの場所に通って無ければ絶対に断っていた。

 『一誠の事があるから、その見た目をこれで誤魔化せ』と変な錠剤を無理矢理飲まされ、成長してから気付かされる不便な身体へと戻され、後は二人で楽しめと放り込まれ……何処かいい加減な見学会なんて誰が好き好んでやるか。

 俺も一誠も朱乃の姿を一目見たら後は適当にやって帰る気満々だった。

 

 

「ぼく? 何処から来たの?」

 

「ぅ……え、えっと……そ、そっち……」

 

「……」

 

 

 それに加えて何故か歩くだけで女共が目を輝かせながら俺と一誠に近付いてくるのが実に鬱陶しい。

 今だって、本当なら身の危険を此方が感じる目で頬を染めながらしゃがんで目を合わせてくる女共とほぼ同い年というのに。

 

 

「やーん! そっちって可愛い~♪」

 

「う……」

 

「チッ、気安く触るな」

 

「あは♪ こっちの子はクールだけどやっぱり可愛い!」

 

 

 朱乃の居る場所を探してるだけなのに、こんな輩にもう12回も出会したせいで全然探せやしない。

 この姿だから嘗められてしまうのか、いくら凄んでも全然効かないし、それどころか俺の態度にますます悦んでるのが気色悪い。

 言うだけ番長の一誠も女の態度に顔を引き吊らせて困ってしまってるし……いっそ此処で大声でも出して朱乃から来てもらうかとすら思うくらいだが……此処は子供を演じて利用してやる。

 

 

「なぁお姉さん。姫島朱乃はどこに居る?」

 

「え? 姫島さん……?」

 

「あ、は、はいそうなんです……俺達朱乃ちゃんを探してて……」

 

「?? もしかして姫島さんの親戚だったの?」

 

「まぁ、そんな所だ……。

で、何処に居るのかわかるのか?」

 

 

 理由があって何時もの自然に下ろした髪型じゃなく、更には度の無い眼鏡を掛けてる一誠が半分ショートヘアーの女からおもちゃにされてるのを見て、微妙にムカついたのでちょっと威圧的にさっさと教えろと言うと、もう一人の長い髪を二つに結わえてる方の女が俺の言葉に何故か驚いていた。

 

 

「へぇ、姫島さんにこんな可愛い親戚が居たんだ……お父さんが物凄い厳つかったからちょっとビックリ」

 

「む」

 

 

 固まってる一誠を抱き抱えてるショートカットの女が俺とを交互に見ながらそんな声を出す。

 厳ついお父さん……あぁ、バラキエルの事かと思いながらな。

 

 

「良いよ、私達は姫島さんのクラスメートだから連れてってあげる」

 

「ついて来て! 君はお姉さんが抱っこしてあげる♪」

 

「いっ!? い、いや良い自分で――」

 

「遠慮しない遠慮しなーい!」

 

 

 この二人、朱乃の知り合いで場所まで知ってて案内までしてくれる様で、今まで絡まれた連中の中では大当りみたいだ。

 一誠は大変だがな……ククク。

 

 

 

 

 朱乃は聞いてなかった。

 決して父兄参観日に父親のバラキエルが来てハシャイでました……とかでは無い。

 そんなものは同じく父兄としてやって来ては妹である自分の主に向かって父親と同レベルにハシャイでた紅髪の魔王とその家族も居たので、父親が見た目に添わないテンションを他の父兄や生徒達に堂々晒していようと、慣れてしまってるのでどうとも思ってない。

 

 なので問題はそこじゃない。

 朱乃にとってビックリなのは、その父兄参観日に紛れてわざわざ姿まで擬態して来ていた幼馴染み二人が、一人はパンクした顔でクラスメートに抱えられ、一人は手を繋がれた状態でやって来た事だった。

 

 

「や、やぁ朱乃ちゃん……。

やっぱり学校というのは賑やかで困るね……」

 

「一誠に同意だ……」

 

「い、一誠くんにヴァーリくん? ど、どうしたのよ? その姿もそうだけどこんな所で……」

 

 

 玩具にされて疲れた様な表情で笑う一誠と、腕を組ながらぶっきらぼうに挨拶するヴァーリに朱乃は心底驚き、まだ途中だった昼食も放り投げて幼い頃の姿となってる二人にその理由を問う。

 特に一誠がこの場に来るのは『二学年に在籍している一誠と瓜二つの容姿を持つ少年』の事もあって来たがらないと思っていただけに余計驚いたのだが、小さくなった二人の幼馴染みは、今現在も教室に残っているクラスメート(特に女子)から向けられる『その手』の視線を流しながら其々口を開く。

 

 

「コカビエルのおっさんに『人間の学校の様子を体感してこい』と言われて……」

 

「同じく」

 

「あら……」

 

 

 何時もの髪型を無理矢理変え、伊達眼鏡まで掛けてる一誠と現在の姿をそのまま幼くしたヴァーリの説明に朱乃は察した様に目を細めた。

 なるほど……隠せてない子煩悩なあのお二人がやりそうな事だわ……と、今頃三大勢力会談の準備でもしてりはだろう二人のおじ様を思い浮かべて苦笑いをした朱乃は、取り敢えずと二人を連れて教室を出て、人気の無い場所を案内してあげる事にした。

 

 

「まさか、二人揃って懐かしい姿にまでなって学園に来るとは思わなかったわ」

 

「気は進まなかったけど、朱乃ちゃんがいるしと思ってちょっと我慢した」

 

「そういう事だ。でなければ絶対来ない」

 

 

 右に一誠。左にヴァーリ。

 幼い姿の二人を左右に朱乃が其々手を繋ぎながら歩く姿をすれ違う生徒や父兄達に見られながら話をする朱乃の表情は普段以上に穏やかだ。

 

 

「あれ、そういやバラキエルさんは一緒じゃないの? 父兄参観日なのに」

 

「お父様なら魔王様へご挨拶して今は居ないわ……その前は何時もの発作でちょっと大変だったけど」

 

「あぁ、発作ね……。相変わらずの娘バカなのに強いから馬鹿に出来ないのが悔しい」

 

 

 主に授業中にバラキエルが発作を起こしたと聞いた一誠とヴァーリは容易に想像できてしまう自分を含めて思わず笑ってしまいながら、朱乃に連れられて行く。

 すると暫く歩いていた三人の前に綺麗な紅い髪を靡かせた美少女が姿を現した。

 

 

「あら朱乃どうしたの? そんな小さな子を連れて……?」

 

 

 長い紅髪と頭頂部に一本のアホ毛。

 少なくとも朱乃と同等の美しい容姿とボディラインを持つこの少女の名前はリアス・グレモリー

 朱乃が主と呼ぶグレモリー眷属の王にして、コカビエルと5日以上拮抗した殴り合いをし続けた最強の魔王、サーゼクス・ルシファーの妹である。

 

 

「リアスこそ今まで何処へ?」

 

「いえ……さっきの授業中に騒いでた兄に苦言を少しね……」

 

「あ、なるほど」

 

「まあ、全然聞いてくれなかったし、今はバラキエル殿とお話をされてたので仕方なく戻ろうとした時に、こんな小さな子を二人連れてる朱乃を見たって訳」

 

 

 少々苦い顔で話すリアスに朱乃は納得したように頷いた。

 互いに『溺愛されてる身』として通じるものがあるらしく、聞いていた一誠とヴァーリは内心『相変わらずのシスコンだなあの魔王……』と、以前勝負を挑んで完膚なきまでに叩き潰された苦い思い出と共に思い出していると、そのリアスと目が合う。

 

 

「へぇ……?」

 

「ぬ」

 

「む」

 

 

 そして顔を合わせるや否や、急に意味深な笑みを浮かべたリアスはその場にしゃがんで変装してる一誠と別にしてないヴァーリと視線を合わせる。

 

 

「ふーん、こっちが一誠くんで、こっちの小生意気そうなのがヴァーリね?」

 

「あらあら、やはりリアスにはお見通しですか?」

 

「当たり前じゃない。

会う頻度は一誠くんとヴァーリとじゃ違うけど、だからといって分からない訳じゃないもの。

恐らくアザゼル殿の不思議な発明で小さくなったんじゃない?」

 

「……。ほぼ当たってます」

 

「ふん、当てたくらいでそんなドヤ顔されてもな」

 

 

 雑とはいえ変装までし、殆ど会うことが無い自分まで見抜いてきたリアスに一誠は素直に驚き、ヴァーリはぷいっとソッポ向きながら悪態を付く。

 このリアスとはバラキエル父親復帰事件の際に、アザゼルとコカビエルに連れられて冥界入りした際に出会った。

 

 当時から並の最上級クラスの悪魔や堕天使やら天使なら倒せるレベルまでの実力があった一誠とヴァーリは、初めて見る純血悪魔に……特にヴァーリが興味を示して戦いを挑んだのだが……。

 

 

「相変わらず言うことが生意気ねぇ。まあ、そこが可愛いんだけどね、うりうり……♪」

 

「さ、さはふぁ!!(触るな!)」

 

 

 結果……あのサーゼクス・ルシファーの妹であり、尚且つ常日頃から兄の妹して自分を高めていたせいで、ヴァーリや一誠が苦戦するレベルの水準(レベル)を誇っており、今現在もその実力はリアスと同年代の若手悪魔を遥かに越え、最上級悪魔としての地位を確固たる物にしてる程であった。

 

 

「俺は貴様の玩具じゃない!」

 

「玩具だなんて思ってないわよ? ただ普通に可愛いと言っただけじゃない。あらら、もしかした照れてるの?」

 

「こ、この女……やはり黒歌並みに話を聞かない……」

 

 

 そしてそのリアスは妙にヴァーリを気に入っていた。

 いや勿論一誠も気に入っているのだが、それ以上に自分と互角以上に戦ったヴァーリが特に気に入っていたのだ。

 

 

「決めた! ねぇ朱乃に一誠くん、暫くこのヴァーリ貸してくれないかしら?」

 

「なっ……! ふ、ふざけるなよリアス・グレモリー! 俺は貴様みたいな話を聞かない女――むぶっ!?」

 

 

 ハーフ悪魔にて現・白龍皇。

 しかし最初の死闘の時のヴァーリは白龍皇を一度も使わず自分と互角以上に戦った。

 既に冥界に居る他の同年代の悪魔ではリアスに太刀打ち不可能であり、彼女自身のタイプが『自分より強い人』という、無理難題過ぎる条件だった。

 

 しかしそれをあっさり打ち破るのが一誠……もしくはヴァーリであり、最初の戦いを皮切りに今まで何度も戦ったヴァーリが特に気になって仕方なかった。

 ヴァーリはかなりモテるとよく親のアザゼルから聞かされても居たし、自分の戦車の駒の眷属の少女の姉がチョロチョロしてるらしいし……。

 

 

「むぼぼ!?」

 

「ね、良いかしら?」

 

「は、はぁ……俺は別に……。(ヴァーリくんめ……あんなおっぱいに……くそぅ!!)」

 

「……。そのままお持ち帰りは駄目ですからね?」

 

 

 拮抗した実力……小さくなった事で退化した身体能力では、普通に本気のヴァーリに食らいついてくるリアスから逃れられる訳もなく、胸元に抱き寄せられてバタバタともがく情けないライバルに、若干の嫉妬を交えつつも頷一誠と、ちょっとジト目で釘を刺す朱乃にリアスは笑う。

 

 

「そんな事しないわよ~! まあ、逆に襲われたら分からないけど~!」

 

「――! ――!!」

 

 

 兄譲りの軽い空気を出しながら笑うリアスは、段々と弱っていくヴァーリをそのまま抱えながら何処へと去っていく。

 

 

「……。あー……だから何時も以上に嫌がってたんだなヴァーリくん。

今納得したぜ、あの人強いけど苦手って言ってたもんな」

 

「リアス曰く『初めて私を倒した男の子』と、ずっとマークしてたみたいだから」

 

「ちぇ、黒歌さんといいリアスさんといい……ヴァーリくんは妙にモテモテ羨ましいぜ」

 

 

 これから大変だろうヴァーリに同情はせず、ただただ妙にモテモテなライバルに嫉妬する一誠に、横で聞いていた朱乃は小さくなったその身体をひょいと後ろから持ち上げ、胸元に抱えながら口を開く。

 

 

「あらあら、気になる男の子に目の前でそう言われちゃうと妬いちゃうわよ?」

 

「え? あ、あはは……。(あ、朱乃ちゃんのおっぱいが……)」

 

 

 ちょっと悪戯っぽく微笑みながら小さくなってる身体を抱え、丁度後頭部辺りに胸を押し付けながら抱き締める朱乃に一誠は悶々としながら笑って誤魔化しつつ、バラキエルさんに見られてないよな? と戦々恐々だった。

 そうでなくても、このやり取りを見ていた周りの人間……特に男子から嫉妬の目で睨まれてるのだが、やはり一誠にとって色んな意味で怖いのはバラキエルだった。

 

 

「それにしても小さい頃の一誠くんも可愛いわ……♪」

 

「『も』って何だよ……? 複雑なんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。なんで此処まで『原作』と違うんだよ……。それにリアスに連れていかれた方と朱乃に抱えられてるあの子供……ヴァーリ・ルシファーと、朱乃が言った事が本当なら、力も立ち位置も俺が成り代わって、居なくなった筈の一誠が何で……」

 

 

 その中に、自分が想定していたシナリオが逸れてて最早ピエロ化している一誠のコピーが居て見ていたが、そんなものよりやはりバラキエルの方が恐ろしかった。

 

 

「あ、ヤバイ……朱乃ちゃんの良い匂いで眠くなる……」

 

「あらあら、小さくなって余計に甘えん坊さんになっちゃった? 私はそのまま寝てても構わないけどね……ふふ♪」

 

 

終わり




補足

原作より親子やってるので、やはりどこか子供っぽさが目立つヴァーリくん。そのせいか余計にモテモテよぉ!

その2
おっぱいは好きだけど、女性の免疫がぶっちゃけそんなに無かった一誠くん。

いや、ガブリエルさんやら朱乃さんやらと唯一気兼ね無い相手のレベルがものっそい高いですがね。

その3
リアスさんは超強化してます、具体的に本気だしたヴァーリくんとガチのタイマンして立ってられたり、そのヴァーリくんから実力だけならとライバル視されてたりと……。


その4
この世界の三大勢力は、人数こそ疲弊しましたが、いつの間にか戦争やる前に各勢力個人の力がエグい事になってます。

故に、ある意味三勢力共『黄金期』状態かもしれない。

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