色々なIF集   作:超人類DX

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多分連投しとく。

連休やしね


平和的な夏休み……?

 あの血の様に冷たい眼は今でも夢に出る。

 

 眉一つすら動かさずに、何の躊躇いも無く目の前で仲間達を大勢消し炭にした光景は忘れたくても忘れる事は出来ない。

 

 

『チッ、虫けら共め。誰一人として俺に抗えんとは……所詮は下等生物か』

 

 

 自分以外の全てを下等生物と見下し、全てを平等に虫けら扱い。

 その言動に文句なんて誰も言えない。

 手から放たれる波動一発で仲間達は壊され――

 

 

『ふざけた格好をしているだけの虫けらが、そのまま死ね』

 

 

 目から放たれた光線は私の胸を貫いた。

 その瞬間全身を襲う、自身の魔力よりも冷たかった感覚は永遠に忘れない。

 だってあの日以降、私の中でクウラという男は永遠のトラウマとして脳裏に君臨してしまったのだから。

 

 永久に忘れることのできない、真の絶望と絶対的な恐怖の権化として……。

 

 

 

 

 

 

 魔王としての仕事は意外とめんどくさい。

 

 しかしそれでもセラフォルー・シトリーは、現・四大魔王のレヴィアタンとして、時折妹のソーナ絡みで私情が入ることはあるが、外交担当としてそれなりに頑張っていた。

 

 そんな彼女が最も嫌う時間は、現政権の悪魔の上層部を交えた会議にて、ほぼ間違いなく議題に挙がる『クウラ』についてだった。

 

 

「今回は私と妻のグレイフィアが彼等の様子を伺いに行った。

……見ての通り無事に帰ってこれたから特に何も無かったと思ってくれ」

 

「その様ですな。

カテレア・レヴィアタンが余計な真似をしたと聞いた時は生きた心地はしませんでしたが、今回は何とか乗り越えた様で……」

 

「そうならなければ、我々が出資した甲斐がありませんからな……」

 

 

 どうにも出来ない圧倒的なパワーを持つ、人の形をしたなにかことクウラに関する報告を、先日大量の物資を届ける役を果たしたサーゼクスが完了を告げると、出席していた名のある悪魔達はこぞって胸を撫で下ろしていた。

 

 誰も彼に対するご機嫌とりのような状況に文句を言うものは居ない。

 いや、文句のある者はそもそものこの席についていないといった方が正しい。

 

 無論セラフォルーもこの中の一人として話を聞いている訳だが、先程からトラウマが甦ってるせいか、震えが止まらない。

 

 

「……大丈夫かいセラフォルー?」

 

「う、うん……」

 

 

 一番クウラに対するトラウマが四大魔王の中で強いセラフォルーは、友人達の気遣いに頷きながら何とか心を落ち着かせると同時に、自身の胸元に残った傷跡が疼く。

 

 

「カテレア・レヴィアタンはその……彼の部下の少女によって殺されたと?」

 

「ああ、上半身だけをわざと残し、我々が見た時は既に虫の息だった。

私の妹やセラフォルーの妹さんと歳は近いのに、他を殺す事に対する躊躇いも一切無かった。白龍皇の腕を破壊し、そのままトドメを刺そうとしたからね」

 

「クウラの部下だけある。

その、どこかネジが外れた感覚というべきなのか……」

 

 

 数年で最早手が付けられないパワーを身に付けていたクウラの部下こと白音についても話題に挙がるが、とても中身はポジティブなものでは無かった。

 

 

「堕天使と天使も恐らく我々と同じ様に彼等への謝罪に全力を尽くすだろう。

ある意味彼という絶対的な存在のお陰で、彼等との仲が徐々に友好的なものへとなっているってのは皮肉だけどね」

 

『…………』

 

 

 これからも彼等の機嫌を損ねる真似はしないという何時もの結論を出して幕を閉じた会議。

 しかし、彼等はまだ気付いてない。

 

 後の禍根は一切残さない性格をしていて、本当ならとっくに絶滅させられていた筈が何故生かされているのかを。

 

 部下の少女の特性を把握した今、自分達がその為の『餌』として認識され始めている事を。

 

 そして悪魔となった赤龍帝がクウラの部下である少女に対して拘り過ぎて危ない真似をしでかす危険性を孕んでいる事を……。

 

 

「…………」

 

 

 貫かれた部分に触れながら恐怖に震えるセラフォルー・レヴィアタンのトラウマが復活してしまう地雷が意外と多いことに彼等はまだ気付かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、三大勢力のトラウマ製造機扱いされているクウラ一味といえば、夏休みだからとはしゃいだりなんて当然ある訳もなく、寧ろ学校に行く必要が無いというのもあって、ほぼ毎日を修行に費やしていた。

 

 殆ど白音とクウラによる模擬戦で、一方的にクウラに白音がボコボコにされる流れだが。

 

 

「北欧神話の主神? なんだそれは?」

 

 

 そんな毎日を送る彼等は、只今北欧神話の主神の使いの者を自称して訪ねて来たとある者と対話していた。

 もっとも、数年前その北欧神話系統を壊滅寸前まで追い込んでおきながら、一切彼等の事をクウラは覚えてなかったが。

 

 

「前にクウラ様が壊滅寸前まで追い込んだ組織ですよ」

 

「この星は自称神を名乗る下等生物共が多すぎる。

それに一々雑魚の名前なぞ覚える必要があるか?」

 

「クウラ様にしてみれば確かにそうですけど、見てくださいよ、特使の方が完全に凹んで怯えてるじゃないですか……」

 

「知るか」

 

 

 北欧神話系統組織をひとくくりに下等生物の雑魚共と言い切るクウラに白音は、完全に凹む特使の人を然り気無くフォローしながらも同意する。

 聞けば特使としてやって来た理由は、近々この町にオーディンなる神が訪問して、三大勢力達となにやら会合するとかしないとかで、この町にクウラ達が住んでる以上、まずはその挨拶をしなければならないから――と、わざわざお土産まで持参してやって来たらしい。

 

 特使の名前はロスヴァイセという、ヴァルキリーらしいが、クウラは一切どうでも良さげに、下等生物と括って覚える気も無いので白音が代わりに対応する。

 

 

「わざわざご挨拶なんて要りませんよ? 変にちょっかいさえ掛けてさえ来なければ、今のところ我々は何もしませんし」

 

「い、いえいえ、クウラさんの事はオーディン様からよく聞かされていましたので、失礼が無いようにと……」

 

 

 凍てつく様な赤い眼光にすっかりビビってしまっていたロスヴァイセは、比較的話の通じそうな彼の部下で、メイド服を着た自分に似てる髪の色をした少女の存在をとてもありがたいと思いながらペコペコと中間管理職の哀愁を漂わせながら頭を下げまくる。

 

 

(うぅ……ちょっと怖い目付きだけどカッコいいと思ってたのに、こうして見るとやっぱり怖い)

 

 

 特使として派遣された――なんて聞こえは良いが、実際はトップ達の誰もがクウラのもとに行きたがらず、オーディンの秘書をやってたロスヴァイセに無理矢理押し付けたというだけの事であって、見事なまでに貧乏くじを引かされたロスヴァイセは、実際初めて実物で見るクウラの容姿に『あ、目付きとか怖いけど、ちょっとカッコ良いかも……』と思ったのも束の間、着地に失敗してひっくり返った挙げ句干からびて蟻の餌になったカブトムシでも見てる様な……とどのつまり虫けらを見るような眼を終始していたクウラの放つ雰囲気にすっかり萎縮してしまったようだ。

 

 

「とにかく何もしませんから大丈夫ですよ。

その方が気にくわなくて、クウラ様から消せという命令が無ければですが……」

 

「な、何卒よしなに! 変な真似なんて絶対にしませんからっ!」

 

「……………」

 

 

 

 冥界にて若手悪魔達の会合なんかが行われてる頃、クウラと白音は一々顔色を伺う他の連中達の対応をしている。

 もっとも、向こうが勝手に頭を垂れてるだけで、気紛れが起きれば直ぐにでも徹底的な壊滅作業が始まる事を考えれば、彼等のこの神経質にも思える態度は仕方ない気もするのだが。

 

 

「で、では私はこの辺で!」

 

 

 結局、終始土下座の勢いでペコペコやってたロスヴァイセを送り出した白音は、大広間の椅子に座っていたクウラの傍まで戻る。

 

 

「もしかして、あの連中も私の餌か何かに出来るとお考えですか?」

 

「仮にも神を自称するのだ。カスにもならんだろうが、一応餌として肥やしてやるのも手ではあるだろう?」

 

「う、うーん……。

何気にクウラ様が私の成長の為に配慮して頂けてるのは嬉しいのですが、よくも知らない――下手したらおっさんだおじいさんを食べるってのはちょっと……」

 

「ならば連中の『力』そのものを食ってみてはどうだ? この前お前は俺の気功弾を喰らっただろう?」

 

「一か八かの賭けで試してみたら出来ちゃった奴です。

……クウラ様の気はとても美味しかったし、やっぱりあの味を知った今だと、その他の連中の味なんて……吐くレベルで間違いなく不味いですって」

 

「贅沢な奴め」

 

「クウラ様が美味しすぎるから悪いんです~」

 

 

 この星の生物達を餌としてしか見なくなり始めたクウラ。

 神だろうがなんだろうが、全てはクウラの気分によって星の命運は分かれるのだ。

 

 

「あ、ところでクウラ様。

仙術モードに常時なって身体を慣らす修行をしていたら、素の状態でもなんと胸が少しだけ成長したんですよ! ほら!」

 

「だから何だ、鬱陶しいから離れろ」

 

「むぅ……やっぱりクールですね」

 

 

 椅子に座ってるクウラに飛び付いて、何気に素の状態で成長に成功して自身の胸を押し付けて、それを鬱陶しがるという、変なやり取りをしてて一見平和そうに見えても……だ。

 

 

 

 

 小猫にはもう関わるな。

 

 クウラに劣らぬ冷酷さと残虐さを秘めた少女を見てそう判断したリアスに釘を刺されたイッセーは、確かにその通りだとは理解はしていた。

 しかし心の奥底ではどこか納得もしてない自分が居たことも確かだった。

 

 

(確かにあの時の小猫ちゃんは恐ろしかった。

けれどそれはクウラがそういう『洗脳』をしたからであって、本当はもっと普通の女の子の筈だ……)

 

 

 冥界に滞在している時も、様々なイベントごとがあっても、イッセーの頭の中には常に白音の事が焼き付いており、あの会談以降、終業式までの間に学校に来なくなった事もあってか、余計彼女の姿が頭から離れなかった。

 

 小柄で細身な美少女。

 メイド服を着た姿はとても似合っていたし、最近はなんと胸まで成長していた。

 

 ある意味で将来性を含めてイッセーの好みにとても合致するのが白音だったりする訳で……。

 故にイッセーは多かれ少なかれ、そんな白音を所有物と宣うクウラに嫉妬の様なものを抱いてるのかもしれない。

 

 

(なんだよ所有物って……。小猫ちゃんは物なんかじゃないのに……!)

 

 

 まだクウラという存在を知ってから少し経ち、ライザーとのレーティングゲームの対策の為に訪れたクウラの屋敷で言われた言葉。

 

 

『コイツは蹂躙される生き方は嫌だと俺の手駒になる条件として傍に置いてやっているのだ。

そこの小娘や悪魔共のやってる仲良しこよしのお仲間ごっことは違う。

俺が使えんと判断すれば、白音は切り捨てる。だが、価値がある内はこの俺の所有物だ。

そして俺の所有物に茶々を入れるのならその時は、そいつがどんなに泣き叫ぼうが、俺は容赦はしない――そいつを八つ裂きにしてやるまではな……』

 

 

 まるで奴隷だと言わんばかりの言葉に、イッセーは横暴だと憤慨した。

 けれどふと白音を見てみれば、クウラの言葉に苦笑いこそ浮かべど、決して嫌がる様なものは感じられなかった。

 しかも白音本人も『今の人生が楽しくて結構幸せ』と、強要された様に感じない自然な言葉で言っていた。

 

 

(あんな残酷な奴にどうして小猫ちゃんは……)

 

 

 それがイッセーを嫉妬させる理由だった。

 

 

(俺がクウラより強くなれば……!)

 

 

 だからイッセーは密かに決意していた。

 クウラを越えて、白音の関心を向けさせると。

 

 白く、儚げに見える少女に見て貰いたいから。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クウラの側近として。そして新生クウラ軍のNo.2としての地位を不動のものへとした白音。

 その力も際限無く高まり、クウラが珍しく褒める程にまで昇華した。

 

 

「く、クウラ殿! く、九重が拐われてしまいました……」

 

「なに? 誰にだ」

 

「元・禍の団の構成員の様です。オーフィスにより解体されたとはいえ、残党がまだ残っていたみたいです」

 

「申し訳ありません、いくら新生・機甲戦隊候補とはいえ、まだ娘は子供です。

集団に襲われてしまえば九重も……」

 

「…………。白音」

 

 

 それは少数でありながら大国をもひれ伏せさせる程の圧倒的な存在であり、そのトップたるクウラの右腕との呼ばれる様になった少女は、とある理由で面倒を見ていた狐妖怪の親子の内の子の方が拐われたと聞かされ、暫く目を閉じていた主に呼ばれ、その傍に一礼しながら近寄る。

 

 

「直ちに出発。

九重を連れ戻し、その下等生物共を徹底的に壊滅させる!! ……この前の連中の様にな」

 

「畏まりました」

 

 

 クウラ自らが出陣する。

 それはつまり相手への死刑宣告に等しいものだ。

 

 

 出陣し、あっという間に九重を連れ戻したクウラ達。

 しかし彼女を拐った連中の内の数人は見当たらず、残りの数人は無惨な死体と成り果てた。

 

 

「く、クウラ様~! ごめんなさい、弱いから捕まっちゃって……」

 

「別にお前を助けるつもりで来た訳ではない。

またこんな事があるようなら、次は確実に切り捨てる――良いな?」

 

「はい……」

 

 

 しょんぼりしながら母に慰められる九重は無事だった。

 しかしクウラは腕を組みながら白音へ更に命じた。

 

 

「残りの連中を探しだし、俺の前に連れてこい。

この場所ごと奴等を消すのは容易いが、俺のプライドが許さん」

 

「こ、今回は随分と過激にゃん……」

 

「あ、あのークウラ殿? 九重も無事ですし、そこまでしなくても……」

 

「俺は九重を助けるつもりで来たのではなく、俺の配下たる九重を拐う事で、俺の顔に泥を塗ってくれた連中を八つ裂きにする為に、こんな場所まで出向いたのだ――――白音よ、お前ならわかるな?」

 

「はぅ!? も、もちろんですクウラ様……」

 

 

 ほんのちょっぴりマイルドになったとはいえ、嘗められるのはやはり嫌いなクウラは、白音曰く『妊娠しそうな低くて良い声』で訪ね、訪ねられた白音は頬を紅潮させ、下腹部に触れながら何度も頷いた。

 

 

「おっふ……クウラの声って何気に良いにゃん……」

 

「こ、こうゾクッとするというか……」

 

 

 二人の女性もそんなクウラの声質にハマったらしい。

 ちなみに、九重を拐った連中は皆殺しにされましたとさ。

 

 

 

 

 

「み、未亡人にロリっ娘、姉属性に妹属性……な、なんであんな冷酷男の周りにばっか集まるんだ……!」

 

 

 周りが全部女性に囲まれる帝王を、遠くから歯軋りしながら見てる――帝王から陥落した赤龍帝が居たりしたが、それはもうどうでもよかった。

 

 

「あ、あのクウラ殿……?

もし宜しければ一緒にお酒を……」

 

「飲みたければ勝手に飲めばよかろう」

 

「で、ではお注ぎさせて貰います」

 

「うむ」

 

 

 そして最近、お酒が飲める者同士てな具合で変な空気感とはいえ未亡人と飲む事が多くなったとか。

 

 

「………………………」

 

「や、あの、白音殿……違いますからね? 別にその……この前のお礼みたいなものですので……!」

 

 

 それを見て微妙にムカッと白い猫はしたとかなんとか。

 慌てて弁解しようとする姿が余計怪しいのもあって。

 

 

「ひっく……うぃ……く、クウラしゃま~?」

 

「………オイ、誰が白音に酒を飲ませた?」

 

「私から奪い取ってそのままらっぱ飲みを……」

 

「いーやーでーすー! そんな中古のおばさんじゃなくて私を見てくださいよー!」

 

「ちゅ、中古!? ちゅ、中古のおばさん……」

 

「チッ、弱い分際で面倒な酔い方をしやがって。

鬱陶しいぞ白音……!」

 

「ひっく……だ、だって八坂さんと最近仲良しになってて嫌なんだもん……!」

 

「何の話だ……」

 

 

 多分平和に生きるだろう。これからも。

 

 

 

 

 嘘です




補足

夏休み中に京都の舞子はんを見たいと言い出せば……?


………さぁ、どっち!?


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