色々なIF集   作:超人類DX

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そうだ、京都に行こう


慰安旅行

 空から来た侵略者。

 圧倒的なパワー

 神すらもその力で捩じ伏せる究極的な領域。

 

 

 しかしそれでも本人は満足なんてする筈もない。

 

 

 何故ならその力はかつてのオリジナルのボディと比べたら話にならぬ程に落ちたものだから。

 

 例えこの世界では畏怖されしパワーだとしても、超サイヤ人に敗れ去る事で砕かれたプライドと自信は永久に取り戻せない。

 

 自分こそが宇宙最強であるという自負は二度と取り戻せない。

 

 

 だが人となった男はそれでも抗う。

 

 

 醜いと自身を嫌悪する姿と成り果てても……どんな屈辱の日々を送ろうとも……。

 

 

『サイヤ人とやらに敗けたとしても、私にとってはクウラ様こそが宇宙最強です。

それはこれからもずっと変わりませんから』

 

 

 己に師事するという、自殺にも等しき道を選んだ白い猫にとって、最強の道標であり続けなければならないのだから。

 

 

 

 

 冥界にてリアス・グレモリーとソーナ・シトリーが色々あった後にレーティングゲームをする事になった――という話はさておき、ここ最近クウラの屋敷は白音の姉である黒歌が出入りしまくっていて、今日も朝から来ていたので朝食の席に招いていた。

 

 そして黒歌を交えて何時も通りの朝食を取っていたクウラは、唐突に白音からこんな話を切り出された。

 

 

「旅行だと?」

 

「ええ。旅行気分で少し京都に行きたいのです」

 

 

 朝食も終わり、お茶を飲む白音からの提案にクウラは訝しげな表情をする。

 

 

「そんな場所に何の用がある?」

 

「本場の舞子さんが見たくなりましたので……」

 

「舞……なんだって?」

 

 

 リアル舞子さんが見たいから京都行きたいと宣う白音に、舞子の存在自体よく知らないクウラが珍しくシュールな顔をしながらチビチビとお茶を飲んでた黒歌を軽く見据える。

 

 お前が何か言ったのかと。

 

 

「私は何にも言ってないわ。

突然白音が京都で舞子さんを見たいと言い出しただけ」

 

「その舞子とやらは戦闘力を上げるのに必要な事なのか?」

 

「あー…………ある意味?」

 

 

 軽く目を逸らす時点で戦闘力向上とは何の関係も無い事を見抜いたクウラ。

 しかし、所謂慰安旅行みたいなものをしたいという意思だけは何となく察したので、弟のフリーザの様に大軍を率いていた訳では無いが、それでも一応かつては軍のトップの位置に座っていた事があるクウラは、行きたいなら行けば良いと許可を出す。

 

 

「好きにしろ」

 

 

 宇宙船さえあれば、日頃の働きの見返りとして惑星のひとつやふたつ辺りを、原住民を絶滅させた後にくれてやっても良かったが、生憎今はそういった活動は不可能だったので割りと簡単に許可する。

 

 一応戦闘力も上げ続けてはいるし、何だかんだこちらの期待にはそれなりに白音も応えてはいるのだから……と。

 

 

「ありがとうございます! では準備しましょう!」

 

「は?」

 

 

 許可はしたけど、まさか自分までそれに付き合わされる事になるという事に気付くまで、残り三秒。

 

 

 

 

 

 

 朝食を終え、白音に急かされるがままにたった数分で京都の駅に空を飛んで到着したクウラ。

 

 

「ある筋からの情報によると、昼間闊歩する舞子さんは単なるコスプレの類の様ですね。

本物は日が暮れてからだそうです」

 

「………………」

 

「なので、夜まではのんびり観光でもしましょう」

 

「………………………」

 

 

 夏休みでしかも観光地なせいか、いっそ消し飛ばしてやりたくなる程にうじゃうじゃと居る人間達の固まりに混ぜられながら、紫色の頭髪をした目付きが悪い青年は、妙にニコニコしてる白髪で金眼の美少女に手を引かれながら、凄まじく嫌そうな顔をしていた。

 

 

「うーん、やはり京都。

外国人観光客で賑わってますねー」

 

「……。お前一人かソイツと行けば良いだろう。

何故俺を巻き込んだ?」

 

「え、だって京都の舞子さんは見たいですけど、それ以上にクウラ様とこういう事もしたかったからですけど?」

 

「……………」

 

「わ、私を睨まないでよ……」

 

 

 古今東西、クウラを引っ張り回すという宇宙的快挙を成し遂げられたのはある意味この白音だけという状況に、軽く睨まれた黒歌は困った顔をしながらビクビクする。

 

 それは京都に蔓延るとある連中にではなく、その京都に蔓延る連中がクウラの姿を発見して大騒ぎになりはしないか的な心配の意味で。

 

 

「あのさ白音、ここら近辺の妖怪達に鉢合わせしたらヤバいんじゃないの? ほら、クウラとかが特に……」

 

「そうかな? 逆に聞くけど、ここら辺の連中がクウラ様が来たからって襲い掛かってくる勇気持ちが居ると思う?」

 

「……無いかも」

 

「…………」

 

 

 この京都には西の大妖怪と呼ばれる狐が居る的な話で有名だが、確かに白音のさも当たり前的な顔で言った通り、今自分の真隣には、西も東も――言ってしまえば世界全てを引っくるめても捩じ伏せられる気しかしない理不尽男が居たと、何気に京都の町並みを見渡しながら白音に手を引かれてるクウラを見る。

 

 

(………京都が地獄にならなければ良いけど)

 

 

 別に京都の妖怪達に対しての思い入れなんて無いが、一度抗争に突入したら、あっという間にこの二人によって京都の妖怪が絶滅してしまう未来しか読めなかった黒歌は、取り敢えず白音に倣って京都観光を楽しむ事にした。

 

 

「こっちですクウラ様! ふふっ!」

 

「……………」

 

 

 付き合わされるクウラの表情は終始無表情だったが。

 

 こんな調子で京都の観光スポットに粗方付き合わされたクウラ。

 別に途中で帰っても良かったのだが、白音の気分の高揚に水を挿すのも何となくアレな気もしたし、事実暇でもあったので大人しく付き合って上げていた。

 

 これもかつてのクウラならあり得ぬ行動だし、本人も全く自覚はしていない訳だが、やはりサイヤ人への復讐が叶わない現実と白音を鍛え上げていった過程で何かが彼の中で変わったのかもしれない。

 

 もっとも……。

 

 

「なっ!? 何でここに――ギィ!?」

 

「………………………」

 

 

 通り道の邪魔になるとなれば容赦なく惨殺するのは変わってないのだが。

 

 

「クウラ様、どうやら今始末したこれは姉様の話によると、禍の団の構成員の様です」

 

「何?」

 

「うん、禍の団の中に派閥があるんだけど、確かこれは英雄派って名乗る派閥の者だった気がする」

 

「英雄派? これまた自信に満ち溢れたネームだね」

 

 

 この世の終わりを表現した顔で事切れてる遺体を見下ろしながら、最近はオーフィスに付き合って組織の後始末なんかをしていた黒歌からの情報を得るクウラと白音は、英雄派なる組織内の派閥の者と知る。

 

 

「でもその英雄派さんがいったい何の為に京都に?」

 

「さぁ、それはわからないけど、さっき誰かを追いかけ回してた気が……」

 

「…………」

 

 

 別にオーフィスの組織の事なんてどうでも良い白音とクウラだが、京都に来ていた理由は気になったので、遺体を消し飛ばしつつふと視線を横に向けると……。

 

 

「あ、あわわわ……! け、消し飛ばしたのか……?」

 

 

 金髪の少女が涙目で腰を抜かしながらこっちを見ていた。

 

 

「……………。まさかこの子供に変な事をするつもりだったとか?」

 

「さ、さぁ……? でも状況から考えるとそんな気もするわね」

 

「だとしたら英雄派ってのは変態の集まりなの?」

 

「…………」

 

「あわわわ……!」

 

 

 いたいけな少女を追いかけ回していた疑惑が浮上し、英雄派に変な風評が取り付けられてしまったが、黒歌もあまり英雄派の面々とは面識も無いので否定ができない。

 

 

「まあ、変態だったとしても我々には関係ないですし……」

 

 

 とはいえ、今は京都観光をしているので、それ以上考察しても無意味と判断した白音は、あわあわしてる金髪少女をそのまま放置して観光を再会しようとクウラに提案する。

 

 

「お、お前……もしかして……クウラという名ではないか……?」

 

 

 震える少女が何故かクウラの名を呼ぶまでは、少なくとも価値なんて無かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 突然現れた変な連中に母親が連れ去られた挙げ句変な事をされている。

 

 てな具合で実は大騒ぎになっていたりする京都内を少女は走り回り、なんとか母を助けられないかと頑張っていたのだが、まだ子供である彼女は母を連れ去った変な奴等に捕まりかけていた。

 

 

「退け、邪魔だ」

 

 

 恐ろしい連中に追い詰められ最早これまでかと思っていた少女。

 しかしそこにもっと恐ろしい奴が現れた。

 

 

 濃い紫色の頭髪と赤く鋭い眼光をした――絶対に良い人なんて思えない怖いくらいに冷たい雰囲気を持った男と、それに付き従うかの様に後ろに控える二人の女の人。

 自分を追い詰めた奴はその姿を見た瞬間、それまでのゲス染みた笑みから心底怯えた表情を浮かべた。

 

 そして何かを言う前に男の両目から放たれたビームで胸を貫かれて死んでしまった。

 

 しかもその挙げ句に白い女の子が手から波動を軽く放って死体を消し飛ばした。

 

 

 ハッキリ言って幼い少女にとって確定となるトラウマ物。

 しかるにこの理不尽で残虐な男を見た時、少女の脳裏にはある名前が過った。

 

 アレはそう……いっつも耳にタコが出来るくらい母から聞かされた特徴を覚えていたから――――

 

 

「お、お前……もしかして、クウラという名ではないか……?」

 

「「は?」」

 

「……なに?」

 

 

 本来ならもう少し後に起こる騒動は、宇宙の帝王という絶対的な恐怖の権化によってこうして早く始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 クウラという名前は裏的な界隈では恐怖の象徴的な意味で通っている。

 とはいえだ、こんな少女にまで知れ渡っていたというのは、イッセー達が知らなかったという事を考えたら割りと驚く話でもあったので、カタカタ震えながらも問い掛けて来た少女に足が止まった。

 

 

「小娘、何故お前が俺の名前を知ってる?」

 

「え……ぁ……」

 

 

 だから少しだけ気になったクウラはクウラなりに普通に問いかけたつもりだった。

 が、基本的に目付きが悪いのと冷たいその雰囲気はとても威圧的だったので、少女は言葉を詰まらせてオドオドしてしまっていた。

 

 

「お待ちくださいクウラ様。私が代わりに聞きましょう」

 

「一々クウラは怖いのよ」

 

「………」

 

 

 それを見かねた白音と黒歌が代わりに、笑みを浮かべながら少女に問いかける。

 

 

「どうしてアナタはクウラ様の事を?」

 

「……人間では無い様だけど、誰から聞いたのかな?」

 

「…………」

 

 

 人の良い笑顔を浮かべる二人の後ろで、クウラは明後日の方向に視線を流す。

 二人の後ろで少女を見てたら、何時まで経っても話が進みそうになかったからというのもあるし、子供は基本的に得意ではなかった。

 

 その証拠に、少女も二人の柔らかな態度に震えが徐々に収まり、辿々しく口を開く。

 

 

「は、母上がよく話してたから……」

 

 

 腕を組み、空を見上げるクウラをチラチラと気にしながら話す少女の言葉に、白音と黒歌はなるほどとそれだけで理解した。

 

 確かに人間では無い少女……それはつまり裏の存在である訳で、その母親ならばクウラの事はトラウマになる程に知っていても不思議ではない。

 

 恐らくこの少女はその母親から恐怖混じりに教えられたのだろう……クウラという理不尽を極めたパワーで一気に世界の頂へと到達した男の事を。

 

 

「なるほど、キミのお母さんが……」

 

 

 しかし、だからこそ白音は不可解だった。

 

 

「クウラ様はこの地域の者達と戦った事は無いはずなのですがね?」

 

「え、そうなの?」

 

「うん、少なくとも私はこの地域の者達と戦ってないし。

ですよねクウラ様?」

 

「……。まぁな」

 

 

 クウラの弟子となってからは、あらゆる種族やら団体と戦ってきたが、割りと近い日本のこの地域の者達とは戦った事も無ければ、そもそもこれまで足を踏み入れた事も無かった。

 

 これまで何も仕掛けては来なかったし、別に今更感もあったので特に白音も放置し、クウラも何も言わなかった。

 

 故にそんな地域の者が何故クウラの事を知っていて、それをこの世代の子供に教えているのか。

 

 確かに戒めという意味では教えるのは正解だが、悪魔なんかを例に出せば、自身の種族の権威を守るためにクウラと拮抗したなんてデタラメを流していたのだ。

 それを思えば、この地域の者達は事を構えてすらないのに偉く謙虚だ。

 

 

「そのお母さんの名前は?」

 

「や、八坂……」

 

 

 試しにその母親の名前を聞いてみても、やはり聞いたことも無いし会ったこともない。

 実に不思議だ……そんな事を思いながら白音がクウラの方へと振り向くと。

 

 

「八坂だと……?」

 

「え?」

 

 

 クウラは何故かその名前を知っているような反応をしたではないか。

 そして数瞬程少女を見た後、何かを思い出した顔をした。

 

 

「そうか、お前はあの時奴が生まれると言ってたガキか……」

 

「え、クウラ様?」

 

「もしかして知り合い?」

 

「この小娘の事は知らん」

 

 

 意外な所から出てきた情報に、今度は白音と黒歌がポカンとした顔になると、腰を抜かしたまんまだった少女が表情を明るくさせた。

 

 

「や、やっぱり母上の言ってたクウラなんだな!?」

 

「お前の言う八坂がそれならばな」

 

「た、頼む! 母上を助けてくれ! 変な奴等に連れ去られたのじゃ!」

 

 

 まるで希望の星でも見つけたかの様に、怯えていた態度から一変させてクウラにすがる少女に、途端に外様に追い出された感でしかない白音と黒歌はポカンとしたまんまだ。

 

 

「あ、あのー……クウラ様? 誰なんですその八坂って方は?」

 

「俺がこの星に流れ着いたばかりの頃に飯の面倒を見させてやった奴だ。

お前を拾う前だから、お前が知らぬのも当然だ」

 

「え、よ、よく殺さなかったね……?」

 

「この星の事情がまるでわからず、当時は貴重な情報源だったから生かしてやっただけだ。

ふん、しかし奴が捕まるとはな……甘さはどうやら抜けてなかった様だ」

 

 

 白音を拾う前のクウラの遍歴がちょっと明らかになった瞬間だったのかもしれない。

 もっとも、クウラの言動からして単なるパシりか何かに利用してただけだったっぽいが。

 

 

「当時は俺もまだ肉体が成体になる前で、奴は何を勘違いしたのか、俺をあわれな孤児扱いをしたのだ。

……まあ、雑魚に憐れみを持たれるほど俺も落ちぶれたつもりは無く、さっさと半殺しにして暫く使ってやったのだ。だからてっきり奴は俺を恨んでると思ったが……」

 

「え、母上はクウラを恨んでるって感じはしなかったぞ? とても楽しそうに何時も話してて、また会いたいって言ってた」

 

「………。どうやら白音よ。お前と同等に奴は変わった生物だったらしい」

 

「………む!」

 

 

 お前と同等に変わった奴と聞いた瞬間、白音の顔がムッとしたものになる。

 こう、何となく女的な勘がみたいな意味で。

 

 

「クウラ様のお話を聞いていたらその八坂さんなる方に会ってみたくなりました。

……よろしいでしょうか?」

 

「……………」

 

「お、お願いだ……母上を助けて欲しい……!」

 

「……………。まあ良いだろう。おいお前、例の連中の特徴はわかるのか?」

 

「いい加減名前で読んで欲しいんだけどな……。

えっと、英雄派は人間の神器使いで構成されてるっぽいわ」

 

「なるほど、では神器のパワーを白音が吸収可能かどうかの実験体にはうってつけという事か。

小娘よ、光栄に思うが良い。もののついででしかないが施しをくれてやろう」

 

「お、おおっ! ありがとう! 私は九重という! どうか母上を……!」

 

 

 救出RTA……スタート。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ九重さん。

八坂さん――つまりアナタのお母さんはクウラ様についてどんな感じで話をしてたのかな?」

「え……どうとは?」

 

「怖がってた感じだよね? そうだよね? そうって言って欲しいんだけど……?」

 

「な、なんじゃ? べ、別に怖がっては無かったぞ……?

母上は何時も、会えるものならまた会いたいって言ってたし……」

 

「むー! クウラ様!!!」

 

「やかましいぞ、なんだ?」

 

「どういう事なんですか!? クウラ様は鬼畜帝王でしょう!? 名前を聞いたら震えて精神崩壊するくらいの残虐さこそがクウラ様でしょう!? なんですかまた会いたいって!? 何をしたんですか!?」

 

「言ったろ、当時はこの星の情報が無くて、情報源として利用したと」

 

「じゃあ何で用済みとして始末しなかったんですか!? 基本クウラ様ってそうでしょうが!?」

 

「知るか」

 

 

 道中変な痴話喧嘩が発生し、黒歌はただただため息を吐いていた様だが。

 

 RTAモードにTASスイッチが白音の中に入ったのは多分間違いないのかもしれない。

 

 

「当時と性格が変わってなければ、お前も見てみればわかる。殺す気が失せるという意味でな」

 

「ぐ、ぐぬぬ……!」

 

「な、何を怒っているのだ?」

 

「もう少し大きくなったら、キミにもああいう女の子の心がわかるにゃん」

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 猫なのに鬼の形相で突撃した白猫さんは、数多の神器使いをそれこそ『シャクシャク』してしまった。

 それはもう殆どただの一方的な殺戮にも等しいもので……。

 

 故に呆気なく何かされていた八坂さんをお助けし、親子の再会も無事に済んだ――のだが。

 

 

「クウラ……!? おおっ……! こんなに立派な姿になって……! また会いたかったぞー!!」

 

「は、母上!?」

 

 

 意識を取り戻した八坂さんは、当時はまだ成体前のクウラを一瞬で成長した姿と看破し、いきなり飛び付いてきたのだ。

 これには娘も、クウラの部下も黒歌もギョッとするのだが。

 

 

「………」

 

「ぎゃふっ!?」

 

 

 当たり前の様にクウラは避けるし、間抜けな声と共に床にダイブする八坂を死ぬほど蔑んだ目で見下ろしていた。

 

 

「相変わらずふざけてるな貴様は。

雑魚に呆気なく捕まる失態まで犯して置きながら……」

 

「し、仕方なかろう、出掛けていた娘を人質に取られてしまったのだから……!」

 

「フン、雑魚の言い訳だなそれは」

 

「うぐぐ、相変わらずいけずな奴め……!」

 

 

 確実に虫けらでも見るような目をされてるのに、怯える事無く言い返す八坂に驚いたのは白音だった。

 

 

「ところでそこの二人は?」

 

「コイツは俺の部下だ。これは部下の姉というだけの関係ない奴だが」

 

「どうも初めまして。クウラ様の唯一の部下!!! ……の白音です」

 

「む……」

 

 

 部下と聞き、そして白音がそれを凄まじくニコニコしながら大きく主張するので、若干ムッとなる八坂さん。

 そのすぐ近くで単なる置物扱いされて凹んでる黒歌が居るが、誰も気にもとめられなかった。

 

 

「クウラの部下? ほほー?」

 

「コイツの戦闘力はお前の遥か上だ」

 

「ふふん」

 

「むむ……」

 

 

 クウラに軽く褒められてドヤ顔する白音に、何か面白くない気分の八坂さん。

 この後、礼を兼ねて京都観光の案内役を買って出る事になるのだが、終始白音と変な小競り合いをしたとかしないとか……。

 

 

 そして……。

 

 

「クウラよ、屋敷の外からこちらを覗く悪魔の少年が居るのだが……」

 

「………」

 

「いや、何でさも当然とばかりに親子揃ってここに住み着いてるんですか……。黒歌姉様は良いとしてもオーフィスまで……」

 

「オーフィス、テレビを見よう!」

 

「うん」

 

「まあ良いではないか。

それよりもあの悪魔の少年はなんとかならんのか? 偶然なのか知らんが、最近浴室の窓から見てきたりするし……」

 

「私も見られたにゃ。軽く目潰しした後、仙術の気で脳ミソ揺らして記憶をシェイクしてやったけど」

 

 

 白音に倣って全員して何故か巫女服からメイド服だったりを着て屋敷内を闊歩しまくる様になってしまったとか。

 

 お陰でクウラに変な風評が出て来はじめた様だが……。

 

 

「クウラ様、全員の戦闘力が10万を越えました。これでかつてクウラ様が持っていた軍の再結成も可能かと……」

 

「宇宙船は無いがな」

 

 

 全員の戦闘力が10万を最低でも越える化け物軍団になったので、表だって言える者は居なかったとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

嘘だ




補足

本来の時間軸よりも早い理由は、オーフィスたんが組織の解体作業を開始してるのと、クウラというヤバすぎる化け物をなんとしないといけないという各勢力達の勝手な焦りがそうさせたのかもしれない。


その2
 これね……迷ったんだよね。

迷った挙げ句、設定を白音たんを拾う前に実は八坂さんをパシりに使ってた時期があったに変更しました。

でないと、九重ちゃまに助けを乞われてもクウラ様だったらまず『知るか、そのまま死ね』で片付けちゃいそうだし……。

だったらこの世界に飛ばされた最初期に実は出会ってて、この星――ひいては世界の事情を知るために子供と勘違いして偶々拾った八坂さんをパシりに使って数年ほど把握作業をしていた的な感じにした方がね……。

 その代わり、一気に白音たんばりの強心臓持ちの八坂お母さんになっちまったが……。

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