色々なIF集   作:超人類DX

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続きの続きの続き。
まあ、グダグダとね……。

※ちょっと加筆と修正


義息子達の昔

 リアス・グレモリー

 俺はこの女が若干――いやかなり苦手だ。

 強さは申し分無いし、性格が悪いとかという訳では無いんだが……。

 

 

「ええぃ離せ!」

 

「~♪」

 

 

 この女……この俺を子供扱いするのだ。

 確かにこの女より年はちょっと下かもしれんが、だからといってこんな奴に子供扱いをされると、何か嫌なのだ。

 しかしリアス・グレモリーは俺の抗議をまるで聞き入れず、何でそんなに機嫌が良いのか理解できない笑顔でアザゼルの発明で幼児化した俺を無理矢理抱え、周りの人間連中の視線を物ともせずに廊下を歩いていく。

 

 

「そういえば初めてアナタに負けた時が、ちょうど今の姿だったわねー?」

 

「ふん、お高く止まってた魔王の妹で余裕だったよ」

 

「あはは……それを言われると若干否定できないわね。

当時自分でも『同年代には負けない』って自負してた所もあったし」

 

「……」

 

 

 いくら暴れてもまるで引き剥がせないこの状況に、やがて諦めにも似た気分のまま抵抗をやめた俺は、弾んだ声で昔の話を切り出すリアス・グレモリーに一種の嫌味を飛ばしたが、あまり効果は無いようだ。

 

 

「チッ……」

 

「あらら、すっかりご機嫌斜めね? 確かに無理矢理連れたのは私が悪かったわ……ごめんなさい」

 

「ぐ……だったら初めからするな」

 

 

 今でこそ幼馴染みである朱乃とは俺も一誠も当時は面識は無かったし、アザゼルとコカビエルに連れて来られる事に同意したのも、冥界最強の魔王で現・ルシファーのサーゼクス・グレモリーを一目見て、あわよくば戦おうとかそんな理由で一誠と一緒になって付いていった。

 だが、結局その時はコカビエルがサーゼクス・グレモリーの相手となって戦えず、食傷気味となった俺が何と無く喧嘩を売ったのが、サーゼクスの妹であるリアス・グレモリーだった。

 

 魔王の妹だし、家出した朱乃が冥界に居てリアス・グレモリーの眷属になっていた話も聞いていたので、多少は期待できるだろうと……恥ずかしい話油断と慢心を抱えたまま軽く喧嘩して軽く打ち負かしてやろうとしたんだよ俺は。

 だけど――

 

 

『ま、負けた……?

お兄様とグレイフィア以外に初めて……それも年も変わらない男の子に……』

 

『ふん、こんなものか』

 

 

 コカビエルとサーゼクスが上空で激しくぶつかり合い、バラキエルが朱乃に必死に土下座噛ましてまで話をしようと努め、アザゼルはグレモリー家の城から掻っ払った酒を飲みながら双方の応援をしてる隅っこで、俺は確かにリアス・グレモリーを下した。

 白龍皇の光翼に頼らず、一誠を真似て自分自身の肉体の力のみで戦い、そして勝利した俺は状況が分かってないといった顔で倒れ伏すリアス・グレモリーを見下ろし、余裕で勝ちました的な声と態度をしていたのだが、内心はまるで逆だった。

 

 

(……。白龍皇の光翼を使わなかったとはいえ、一誠以外で此処まで強い同年代の奴が居たとは……。サーゼクス・ルシファーの妹だけあって、一歩遅れてたら俺がやられていた……!)

 

 

 強い奴の身内が強いとは限らない……そう勝手に思い込み、サーゼクスに対する挑発目的で戦ったリアス・グレモリーは後ろで目を見開いて驚いていた一誠や、直接戦ってその水準(レベル)を認識した俺の予想を遥かに越えた実力を見せたのだ。

 

 サーゼクス・グレモリーと同等の滅びの力、そして何度も見失うほどの速力……。

 ハッキリ言って認めざるを得ない強さを確かにリアス・グレモリーは俺と一誠に証明したのだ。

 

 

『ふん、サーゼクス・ルシファーとの戦いの肩慣らしにもならなかったよ』

 

『………』

 

 

 そう強がってるものの、正直いってそのままサーゼクス・グレモリーと戦うなんてとんでもない程疲弊している。

 外傷は殆ど負わなかったが、恐らく一誠は気付いてるだろう……。

 しかしそれでも、何と無くその強さを称賛するのが嫌だったので、俺は精一杯の強がりを吐き、それを聞いたと思われるリアス・グレモリーは地面に伏したまま表情も見せず無言のままだったが、やがて伏せた状態で身体を震わせると――

 

 

『ね、ねぇ、アナタお名前は!?』

 

『え?』

 

『私とそんなに変わらない年っぽいのに強いのねアナタ! 凄いわ!』

 

『え、あ……あれ……?』

 

『な、何だこの人……負けたのに笑ってる……』

 

 

 跳び跳ねる勢いで立ち上がったと思ったら、弾けんばかりの笑顔で困惑する俺の両手を掴みながら、リアス・グレモリーは矢継ぎ早に聞いてくる。

 

 負け=悔しい。

 そしてほの悔しさをバネにして、相手を見返すためにもっと頑張って強くなる――それが俺と一誠の持論だった為に、このリアス・グレモリーのリアクションにはただただ困惑してしまうばかりだった。

 

 

『お、お前は俺に負けたんだぞ? 悔しいとは思わないのか?』

 

『……』

 

 

 それなのに、戦闘によってちょっと擦り傷が所々に負った姿なのに、玩具を前にしたガキを思わせるキラキラとした笑顔のリアス・グレモリーに俺は思わずそう聞いてみると、返って来た言葉は俺達にとってそれまでの立てていた持論をちょっとだけ曲げられるものだった。

 

 

『勿論悔しいわ。でもそれ以上に嬉しいの! 私より強くて歳の近い子が現れてくれたことに!』

 

『…………』

 

『……。あぁ、ヴァーリくんタイプかこの人……それなら納得』

 

 

 いや似てないだろ。

 リアス・グレモリーの笑顔を直視できず目を逸らす俺の後ろで、一誠が何やら一人納得した表情をしてるので、思わず心の中で突っ込みを入れる。

 だが、そんな俺の心の声に突っ込みを入れたのは、今回一切使わなかった俺の相棒であるアルビオンだった。

 

 

『いや、一誠の小僧の言う通りだヴァーリ。

所謂お前とリアス・グレモリーという小娘は似た者同士って奴だ』

(似た者……だと?)

 

『お前が一誠の小僧と初めて戦い、そして負けた頃を思い出せ……。

目の前の小娘が口にした事を思わなかったか?』

 

 

 何処か愉快そうな声のアルビオンに、俺は妙な意地が働いて認めたくなかった。

 強いけど女であるコイツと似てるだなんて、プライド的に許せなかったのだ。

 

 

『決めた! 私も今よりもっと強くなってアナタに挑むわ! だからまた遊んでね?』

 

『……………。イヤだね』

 

 

 だから俺はリアス・グレモリーの申し出を断った。

 強いのは認めるけど、似た者同士と指摘された事が気に入らず、突き放すように断った。

 けれどリアス・グレモリーはこの言葉に一度キョトンとしたものの、すぐにまた笑顔に戻しながら予想していた反応とは全然違う返事を返され、俺は多分短い人生の中でもトップレベルに間抜けな表情を不覚にも見せてしまったと思う。

 

 そう、こう言われてな――

 

 

 

 

 

 

 

「『それでも私はアナタが気に入ったの! ふふ、覚悟しないね……私はかなり我儘でしつこいわよ?』

……。そうアナタに言ったわねあの時は」

 

「ふん……まさか本当にそうなるとはな」

 

 

 人混みが嫌いな俺に気でも使ったのか、さっきまで居た人だらけの建物から移動し、妙に古い気がする建物の一室に連れてこられた。

 そして教室と呼ばれる部屋に似た部屋の小さな椅子にリアス・グレモリーの膝に乗せられた状態で座らされた俺は昔の話を思い返し、今の状況込みで苦い顔となっていた。

 

 

「おい、いい加減離せ」

 

「嫌よ。懐かしくて今思えば可愛い姿になってるヴァーリをこう出来るなんてこの先あるか分からないしー」

 

「くそ……」

 

 

 強いのは認めるがやり難い女……それが俺のリアス・グレモリーに対する俺の評価であり、バラキエルが娘の朱乃と何とか和解したあの時を境にちょくちょく出会しては戦った。

 

 

「最後戦った時は負けちゃったけど……今度は負けないわよ?」

 

「ふん」

 

 

 その都度強くなっていくリアス・グレモリーに驚かされ、時には負けたりもした。

 まあ、今のところ俺が勝ち越してるので、俺が強いわけだが、この女はいくら叩きのめしても全然堪えてくれない処か、嫌に嬉しそうに『また来るわ』と宣う始末。

 最初は只の頭のおかしな女なのか? と思ってたのだが、どうも違うらしいと最近になって分かってきた。

 

 

「これでも鍛練は続けてる。にも拘わらずヴァーリはそれ以上に高い壁とした私を跳ね返す……ふふ……」

 

「……。何がおかしい?」

 

 

 どうやらこのリアス・グレモリーという女――

 

 

「ふふ……おかしい訳じゃないわ。

寧ろ全力で戦っても勝てず、決まってボロクズになるまで叩き潰されるなんて……うふ……悔しい……悔しいに決まってるわよ……あはは♪」

 

「…………」

 

 

 俺に叩き潰される事に、若干の悦を感じてる気があるっぽいのだ。

 今だって小さくなってる俺の身を後ろから許可も無しに勝手に抱き寄せながら、変な声で笑ってるのが何とも気色悪い。

 ……。今日の朝も素っ裸で勝手に自室のベッドに入ってきたのを放り投げてやった黒歌然り、今の嬉しそうに笑いながら勝手に俺の頭を撫でるリアス・グレモリー然り、本当に俺の知る女は変な女ばかりだ。

 

 

 

 

 

 ヴァーリくんがリアス・グレモリーさんにラチられるのを見送った俺は、暫く朱乃ちゃんと手を繋いで校内を案内されていた。

 どうやら当然の如く可愛い……いや今は美人というべきか? とにかく誰もが羨む容姿を持つ朱乃ちゃんは学校で大人気な様で、連れられて校舎を歩く際もずっとすれ違うこの学校の人達から黄色い視線を浴びていた。

 

 

「おお、姫島先輩……!」

 

「む、子供を連れて歩いてるぞ!」

 

「くぅぅ、姫島先輩に抱っこされてるあの餓鬼オレと変われし!」

 

 

 お姉様と持て囃す同性の女。

 朱乃ちゃんの容姿しか見ずにゲスな視線を向けるクソ野郎共。

 

「……………。すっげぇイライラするんだけど……何故か」

 

「イライラって……気にしなければ何もされないから心配しなくても良いのよ?」

 

 

 取り敢えず俺はそれらの視線を向ける連中が妙に気に食わず、さっきから変にイライラしてしまう。

 なんつーか、バラキエルさんの気持ちが今なら解るような気がするというか……外見だけで判断してるのが無性に腹が立つ。

 朱乃ちゃんは気にする必要は無いと言ってるが、それを言われても俺のこのイライラが止まることはなかった。

 

 

「ふふ……最初の頃は無愛想だったのにね?」

 

「……。今も昔も人見知りする性格なの俺は」

 

 

 イライラする俺を抱えて歩く朱乃ちゃんが後ろから頭を撫でてくる。

 ……。確かに朱乃ちゃんが言った通り、最初会った時はまさか此処まで仲良しになれるとは思わない程いい関係とは思えないものだった。

 

 アザゼルさんとコカビエルのおっさん……そして二人に檄を飛ばされたバラキエルさんの堕天使三人衆とついでに俺とヴァーリくんで冥界に乗り込んだ時の俺は、正直バラキエルさんの娘である朱乃ちゃんの事なんてどうだって良く、付いていった理由も『最初の師匠』である安心院なじみの分身であるサーゼクス・ルシファーとあわよくば戦えたらなと思ってただけだった。

 

 その横でバラキエルさんが娘に頭下げてようが何しようがどうでもよく、あくまでサーゼクス・ルシファー……そう思いながら、何故かヴァーリくんが想定以上の力を見せたリアス・グレモリーさんと戦うのを横目にタイミングを図ってたんだが、結局は戦えずにバラキエルさんの土下座ショーを見てただけだった。

 

 

『嫌! お父様なんてだいっ嫌い!』

 

『あべしっ!?』

 

『おいおい、もうバラキエルのライフポイントは0だぜ』

 

『…………』

 

 

 バラキエルさんの身内? だったかの堕天使が人間であるバラキエルの奥さんとその間に生まれた朱乃ちゃんが気に食わず、本人が留守中に襲撃して奥さんは死に、ギリギリ生き残った朱乃ちゃんは心に深い傷を負い……取り敢えずドロドロで複雑な事情があって家出してグレモリーの人達に保護されたってのは聞いてたが、基本的に人見知りと興味の無い相手には無関心だったりする俺にはどうでも良いと思ってしまう騒動だった。

 

 なので、ヴァーリくんが徐々に楽しそうな顔してリアス・グレモリーさんと殴り合いをしてるのをちょっと羨ましく思いつつ、じーっと時間が過ぎるのを待ってたのだが……。

 

 

『へん、偉そうな言っといて、一人で生きても行けねぇ甘ったれが……!』

 

『『『『!』』』』

 

 

 嫌いだ、消えてだ、帰らないだとバラキエルさんに言い放っていた当時の朱乃ちゃんに、ちょっとばかり我慢できなくなってきたせいか、土下座するバラキエルさんに嫌悪感を顕にする朱乃ちゃんに向かって、ついつい余計な事を言ってしまい、殴り合いをしてたヴァーリくんとリアス・グレモリーさん以外の全ての人達に視線を向けられた。

 勿論、聞こえていた朱乃ちゃんも怒った顔になってね。

 

 

『な、なによアナタ……今なんて……!』

 

『だから、母親を殺されたのをお父ちゃんのせいにして、それに向き合おうともせず家出しときながら、結局は悪魔に世話になってる我儘なお前に言ったんだよ』

 

『なっ……!?』

 

『お、おい……一誠君……キミは――』

 

『悪いバラキエルさん……。

後でしこたま殴っても構わないからこれだけ言わせてくれ』

 

 

 俺の言葉に顔を真っ赤にする朱乃ちゃんが俺を睨むのを流し、何か言いたげなバラキエルさんに頭を下げながらテキテク彼女に近付き、今にも殴りかかって来そうな怒り顔のその姿に指を差した俺は――

 

 

『独りで大きくなった気でいるなよ……この餓鬼が』

 

『……!!』

 

 

 コカビエルのおっさんによく言われてる言葉をそっくりそのまま、唖然とした朱乃ちゃんに送り付けてやった。

 

 

『へ、へぇ……あ、安心院さんがコカビエルに託したあの子……ず、随分とキミに似たんだね……ごふ……』

 

『あ、あぁ……この俺ともあろうものが、情を抱いてしまってな……。一誠との血の繋がりはないが、アイツはもう俺の子供だ……ごほっ』

 

 

 上空でやりあってるオッサンとサーゼクス・ルシファーが何か言ってるが、俺には聞こえない。

 唖然とする朱乃ちゃんと後ろで土下座したままフリーズしてるバラキエルさん……そして楽しそうに何処から調達したのか酒を飲んで眺めてるアザゼルさんやグレモリーの連中の目の前で俺は確かにそう言いながら――

 

 

 バシン!

 

 

『うっ……!』

 

 

 朱乃ちゃんの頬を叩いてやった。

 

 

『い、痛い……! な、なんで……』

 

『なんで、か……。

父親を拒絶するだけしといて逃げてるだけの餓鬼にはそれで充分だろう? まあ、アンタは俺より年上みたいだが』

 

 

 直ぐそこでヴァーリくんとリアス・グレモリーさゆが笑いながら殴りあってる音以外はシーンと静まり返る中を、俺は頬を押さえながら驚いた顔の朱乃ちゃんにそうハッキリとそう言ってやった。

 ……。何と無く、この時の朱乃ちゃんがコカビエルのオッサンの子になる前の自分に似ていたから。

 だからこそ俺は――

 

 

『決めたぜ、今からお前をズタボロにする。

どんなに泣き叫ぼうが、どんなに喚こうが聞かずにひっぱたいてやる……! 独りでデカくなった気でいる馬鹿には良い薬だ』

 

『ひっ!?』

 

 

 俺なりに考えたやり方で、悪者扱いされても構わないから父娘を元鞘に戻すことにした。

 

 

『ちょ、ちょっと待て! 朱乃に手出しは――』

 

 

 朱乃ちゃんをひっぱたき、あまつさえ今もまたやると宣言した俺に当然バラキエルさんが難癖を付け始めたが、俺に聞く気は無く逆にバラキエルさんに向かって啖呵を切る。

 

 

『じゃあアンタが守れや!

くだらねぇ茶番は飽きたんだよ!!』

 

『『!?』』

 

 

 俺の豹変した態度に朱乃ちゃんは怯え、バラキエルさんは驚いたように目を見開く。

 自慢じゃないが、当時の時点で俺はそれなりやれる自負があった――更に言えば腑抜けたバラキエルさんに負ける気もなかった。

 

 だから俺は、何時まで立っても平行線な父娘関係を荒療治で治す為に――

 

 

『俺はコカビエルのオッサンの子だ! バラキエルさんならその意味がわかるはずだろ?

やると言ったらやる……その意味がなぁ!!』

 

『きゃあ!?』

 

『あ、朱乃! こ、この……させるかぁぁぁっ!!!』

 

 

 当初の予定も忘れてバラキエルさん父娘に戦いを挑んだ。

 これが朱乃ちゃんとの最初の出会いであり、お世辞にも良い出会い方ではなかった。

 それがどうだ……まさかこんな出会い方をしておきながら今では――

 

 

 

 

「ホントあの時の一誠くんは怖かったわ~ 私には手加減してくれたとはいえ、叩かれて痛かったし……」

 

「あ、うん……ごめんね……?」

 

「ふふ、良いのよ。

ああでもされなかったら私も理解しようとしなかったでしょうし」

 

 

 こんなにも仲良くさせて貰ってる。

 ヴァーリくんと同じか……もしくはそれ以上に気を許せる相手になってる。

 人生というのはわからないものだよね……ホント。

 

 

「今でもちゃんと覚えてるわ、一誠くんに叩かれた頬の痛み……。これが無かったら今も捻くれていたかもしれないわ……」

 

「大袈裟だぜ。バラキエルさんとちゃんと話し合ったのも、和解したのも朱乃ちゃんが自分で一歩進んだからさ。

俺は単なる切っ掛けに過ぎんさ」

 

「いいえ、私はそうは思わない……。あの叩かれた痛みがあったからお父様から逃げずに話し合えた。

あの頬の痛みがあったからお父様の真意を知ることが出来た。

あの頬の痛みがあったから……ふふ、一誠くんが気になる男の子になった」

 

 

 校舎裏の木に背を預けて座る朱乃ちゃんの膝の上に座らされた俺は、背中に感じる暖かい感触と安心する匂いに脱力しながら昔の思い出話に花を咲かせる。

 そう……朱乃ちゃんの言うとおり、あれがあったから仲良くなれたんだよな……。

 

 

「後にも先にも男の子にビンタされたのは一誠くんだけ……。他人を虐めるのが好きな筈なのに……うふふ、一誠くんに叩かれたり罵倒されたあの日の事を思い出すと何時もドキドキするの……」

 

「え"? それって――」

 

「お父様にもナイショだけど……私、一誠くんにだけなら虐められたいなって思うわ……あは♪」

 

「……。お、おおぅ」

 

 

 ただ……その、仲良くなるにつれ、成長するにつれて正直ドストライクな女の子になる朱乃ちゃんにこんな事言われながら後ろから抱きつかれ、おっぱい押し付けられると……貧血でぶっ倒れそうになりそうなんだよね。

 

 

「あの……朱乃ちゃん? おっぱいさんが……」

 

「どうかな? 一誠くんが大きいのが好きと聞いて頑張ってみたけど……」

 

「どう……そらベリーグッドと言いますか……。

バラキエルさんにこのままぶっ殺されても良いわと思うくらいには……」

 

「ホント!? 嬉しい♪」

 

 

 ……。これじゃあ俺もガブリエルさんの事言えないかもな。

 小さくなってる俺の身体を後ろから嬉しそうに抱き締める朱乃ちゃんの柔っこい感触と、好きだなと思う匂いに俺は、オッサンのコートを羽織ってアレしてたガブリエルさんの事を思い出し、思わず苦笑いしてしまいのであった。

 




補足
…………。どっちの娘さんも、義息子二人からナチュラル調教されたが故に……とまあ、大まかに言えばそんな理由でゾッコンというね。


その2
転生イッセー……諦めて最近は某テロ組織に売り込もうかと考え中。

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