色々なIF集   作:超人類DX

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ディンプスが製作したPS2最初のドラゴンボールZのIFストーリーのタイトルが『怒るフリーザ様』。


他にもIFはあるんですが、傑作がやはり『セルリン』だな。

意味がわかる方は……わかる筈。


怒る白音たん

 『頼む』

 

 そう言われたからには最早やるしかない。

 

 今までクウラ様に命令されて来た事は山ほどある。

 

 けれど、初めてだった――クウラ様が『やれ』とは言わずに『頼む』と言ったのは。

 

 クウラ様にとって、その言葉の違いなんてほんの誤差の範囲でしかないのかもしれない。

 

 けれど私にとっては違う。

 

 クウラ様の駒として――所有物としてそのお言葉はとても嬉しい。

 たったその程度の一言で何を大袈裟なと誰もが思うだろうけど、私にとってはとても特別。

 

 

 だから私は確実にこのお仕事を完了させる。

 

 クウラ様に己の全てを命もろとも差し出す覚悟をしたあの時から、私の存在意義は決まっているのだから……。

 

 

 

 

 

 

 ディオドラ・アスタロトによるアーシア・アルジェントへのストーカー被害は、ディオドラが殺害されるというとても後味の悪い結果に終わった。

 

 だからアーシアもストーカー行為に悩まされる心配が無くなってひと安心………とは素直に思えず、アーシアの仲間達もまた同じ心境だった。

 

 

「上層部はディオドラの死を事故死で処理したそうよ。

……実は禍の団の旧魔王派と裏で繋がっていたと発覚したかららしいけど」

 

「そうだったんですか……」

 

「そうだったとしても、あんな殺され方をされたのを目の前で見せられてしまったせいか、逆に同情しかしないですよね……」

 

「…………」

 

「あの光景がずっと夢に出てきてよく眠れませんよ……」

 

 

 リアスの実家パワーによって町の郊外にあるクウラの屋敷並みの大きさに魔改造された兵藤邸の最上階の大部屋に集まるリアス達やアザゼルは、先日ディオドラがクウラによって殺された事による悪魔の上層部の対応について話をしている様だ。

 

 

「誰もクウラに敵討ちをしようとは言わないんですね……」

 

「そんな真似をしてみろ。その時は即刻俺達堕天使はお前等悪魔との関係の全てを切らせて貰うし、ミカエル達も同じだろうよ。

全員で挑めば勝てるだなんて夢物語は、数年前の時点で砕かれてるんだ」

 

「じゃあ俺達はクウラの意向に一々顔色を伺ってゴマを擦らなければならないんすか?」

 

「それが穏便に済ませられる唯一の道だ。

そもそも、今回のディオドラが殺された件にしたって、奴がアポも無しに勝手にクウラ達のテリトリーに土足で踏み込んでヘラヘラしてやがったからだろ。

アジュカの馬鹿がクウラの事について何を教えたのか知らねーが、あんなもんは全て自業自得だ。

そもそも、お前らが未だに五体満足で無事なのが奇跡なんだよ」

 

 

 ……兵藤以外は。

 

 と内心イッセーのパワーが信じられない程に弱体化しているのを感じながら、アザゼルが語ると、イッセーもリアス達も何も言い返せずに口を閉ざしてしまった。

 

 

「そのミカエルの所も、クウラのやばさを何一つ理解してなさそうな悪魔祓い二人を使いだなんて表して町に寄越したみてーだが、お前等はあの二人組の知り合いなんだろ? くれぐれもクウラ達に余計な真似だけはするなと言っておけ………巻き込まれて死にたくないならな」

 

『………』

 

 

 正直、人と同じ姿をしているものの、誰もがクウラを純粋な人間とは思っていない。

 神器を持っている訳でもなく、イッセー達の様に駒による悪魔化もしていない。

 

 それにも拘わらず、彼の力は異質と言わざるを得ないものだ。

 

 

「以前俺達に対し、奴は総じて『下等生物』と言っていた。

人という種の突然変異化した存在なのか、それとも俺達ですら知らない新種の生命体なのか……。

どちらにせよ奴の力は個であろうと団であろうとどうにもならねぇ」

 

『………』

 

 

 アザゼルの言葉が重苦しい空気を作り出す。

 

 

「そんな存在に何で小猫ちゃんみたいな子が……。

それに他にも……」

 

「わからねぇ。

ただ、間違いなく言えるのは、別にクウラの好みの女のタイプだからって理由な訳はない。

偶々なのか、それとも奴等の間にしかない特別なものがあるのか……」

 

 

 クウラの側近を自称する白音。

 後で調べたら、SS級のはぐれ悪魔だった黒歌。

 京妖怪の総大将である八坂とその娘の九重。

 

 白音を抜かしても、一筋縄ではいかない力を保持しているその者達が何故クウラの下に付いているような振る舞いをしているのか。

 どちらにせよ、彼女達に下手な真似をしてはいけないことも含めて厄介な事は変わりない。

 

 

 

「兵藤、お前はまだあのクウラのそばに居る猫娘に拘ってる様だが、もう奴に関わろうとするのはやめろ。

お前だって自分のせいでリアス達を死なせたくはないだろ?」

 

「それは……」

 

 

 クウラが自ら、価値がある内は己の所有物であると言っている、そして言われている本人もそれを望んで受け入れている以上、白音をどうこうできるのは不可能。

 

 イッセーはそんなアザゼルの忠告の言葉に視線を落とす。

 

 

「そもそもそこまで拘る意味なんて無いだろう? 奴は悪魔でもなんでもないんだ」

 

「あんな子がクウラに使われてるのは、何か事情があるんじゃないかって思って……」

 

「そんなものはねぇ。

クウラがあの猫娘を洗脳してるなんてのもありえねぇ。

奴は進んでクウラの手駒になっているのなんて見てるだけでわかる。

それはお前の勝手な妄想でしかない」

 

「…………」

 

 

 そうで無ければ、あんな歳でクウラを思わせる異質な力を持つ訳がない。

 アザゼルはハッキリと言い切ると、イッセーも何も言えずに俯いてしまう。

 

 

「今は奴等の事は忘れろ。

ディオドラが殺られた以上、奴とのレーティング・ゲームは中止で、サイラオーグとのゲームが代わりに始まるんだ。

お前等が集中すべき所はそこにあるんだぞ」

 

 

 

 そう無理矢理クウラ達についての話題を逸らそうとするアザゼル。

 だがしかし、その苦労も部屋の窓ガラスを勢い良く破壊しながら飛び込んできたモノによって無駄に終わることになる。

 

 

「な、なに!?」

 

「きゃあ!?」

 

 

 耳をつんざくような破壊音と飛び散る窓ガラスに驚いて軽くパニックになるリアス眷属のアーシアとギャスパー

 それとは反対に、反射的に椅子に座っていたリアスを守ろうと前に立つ木場祐斗と姫島朱乃。

 

 そしてイッセーは…………

 

 

「な、なんだよ……これ……」

 

 

 窓から飛び込んできた塊に見えたそれが、人であり、そして人の形をかろうじて保っていたモノだったと認識し、その場にただ立ち尽くしていた。

 

 

「ご、ごふ……! お、おじゃまするぜぃ……」

 

「……………」

 

 

 右半身が消し飛んでいるモノと、それを支えながらも片腕と片足が無く、大量に血を流している……前に会った事のある青年だったのだから……。

 

 

「お、おぇぇっ!?」

 

「ひぃぃぃっ!?」

 

「うっ……!?」

 

「こ、これは……!」

 

 

 いっそ死んでしまった方がどれだけ楽に思えるかと思えてしまう姿を認識した瞬間、アーシアとギャスパーは口を押さえながらも、押さえきれないものが胃の中から溢れてしまった。

 無論、まだ耐性のあるリアスや朱乃や祐斗ですら、目の前の惨劇を前に顔色が真っ青だし、何より最初に気付いたのはアザゼルだった。

 

 

「ヴァ、ヴァーリ……!?」

 

 

 夏休みの最中、冥界にちょっかいをかけに来たヴァーリのそばにいた美猴。

 そしたその美猴が抱えてるナニかがヴァーリだと認識したらしいアザゼルは、急いで駆け寄る。

 

 

「な、何があった!? 何故ヴァーリが!」

 

「よ、よー……流石にアンタは判別できるみたいで安心したぜ。

へへへ……最悪な展開を前に揃って下手こいちまったぜ……」

 

「ふざけてないで答えろ! 誰がヴァーリをここまで――」

 

「く、クウラ……だよ……」

 

『なっ!?』

 

 

 腹部は向こう側が見える程の穴が開けられ、右半身が消し飛んでいて虫の息であるヴァーリを離しながら、こうなったいきさつを、片腕と片足から血を噴き出しながら死にかけている美猴は話す。

 

 

「や、奴等に近づくのはよそうとは俺もヴァーリも思ってたんだけどよ……。

奴等が、グレートレッドを殺しに行くってのを聞いちまったヴァーリが……」

 

「馬鹿な! グレートレッドを殺しに行くのに何故コイツが止めに入ったんだ!」

 

「ぐ、グレートレッドを倒して先に進むのがヴァーリの夢だからに決まってんだろ……。

へへ、でもよ……結果はこの通りだぜ……」

 

「クソッ!! コイツ等を治療するんだ!!」

 

「だ、だけど白龍皇は……!」

 

「まだ辛うじてだが生きてる! アーシア、お前の神器を使って少しでも回復させろ!!」

 

「う、うぅ……! わ、わかりました……」

 

「冥界に連絡してフェニックスの涙を取り寄せましょう!」

 

 

「あー……ごほっ! ぐぅ……そ、その前にひとつ良いか?」

 

 

 またしてもやってくれたヴァーリにアザゼルは怒りなのかなんなのか自分でもわからなくなる感情に支配されながら、リアス達を動かして治療をしようとする。

 すると消し飛んでる片腕と片足の止血を受ける事になった美猴が何かを言いたいらしく、声を出す。

 

 

「なんだ! あとにしろ! ヴァーリ共々喋れる様になったら覚えとけよガキ共が!」

 

 

 と、怒鳴り返すアザゼルに美猴は心底申し訳無さそうな顔をした。

 

 

「あ、アンタのお説教を受けるってんなら受けるさ。

けどよ……多分それも無理かもしれねぇ……」

 

「あぁっ!? 何がだ!」

 

「だってよ――」

 

 

 美猴の視線が、己が最後の力を振り絞って無理矢理入ってきた――壊れた窓へと向けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みーつけた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタ等まで巻き込んじまったから……さ……ははは」

 

 

 

 狩人がもうそこに居る事を、美猴はただひたすらに謝った。

 

 

「っ!? お、お前は……だ、誰だ?」

 

 

 新たに聞こえる第三者の声に全員の視線が一斉にそちらへと向く。

 するとそこに立っていたのは、長く伸ばした白髪と金眼のスタイルの良いメイド服を着た女性だった。

 

 

「んー? ああ、この形態だから気づきませんか? 私ですよ、アナタ達にわかりやすく教えるなら塔城小猫です」

 

「な、なんだって!? こ、小猫ちゃん!? キミがか!?」

 

 

 小猫と名乗ったその瞬間、わかりやすく反応したイッセーやリアス達が驚くのも無理は無い。

 何せ今の小猫――いや、白音の姿はまごうことなき成熟した女性そのものであり、髪の長さも目付きも、そしてその肉付きも、姉の黒歌やリアス等いった者達と同等以上のスタイルなのだから。

 

 猫又の証である猫耳くらいが精々彼女の名残りとしか思えない程、今の白音の姿は違い過ぎたのだ。

 

 

「最近、状況に応じて戦闘形態を変える事にしましてね。

謂わば普段の私が第一形態で、最近アナタ方が見たことのある、仙術を使って少し成長した姿が第二形態。

そしてこれが今のところの最終形態といったところでしょうか………っと、こんな話をしに来た訳じゃあ無いんで、とっとと本題に移らせて貰いますか」

 

 

 説明をされても唖然とする状況の中、白音は美猴と意識不明の重体状態のヴァーリに視線を向ける。

 

 

「そこの二人を今から完全に殺すんで、巻き込まれて死にたくないならさっさと渡してもらえます?」

 

「や、やっぱりそう来たか……!」

 

「な、なんで二人を殺そうとするんだよ……?」

 

「クウラ様に牙を剥こうとしたからですが? それ以外にある訳も無いですよ。

だからさっさと渡して貰えます? それともアナタ達もまとめて死にます?」

 

 

 金色の瞳の瞳孔が縦に開いた白音の全身から禍々しいまでの気のオーラが迸り、部屋の家具などを破壊していく。

 

 

「や、やめるんだ小猫ちゃん! キミがどうしてそこまで手を汚さないといけないんだ! クウラは……クウラはなにもしてないじゃないか!!」

 

 

 黒歌や八坂達をこの家の周辺に配置し、万が一でも逃がさない万全の状態で乗り込まれてると知らないまま、イッセーが彼女の前に立って必死に説得しようとする。

 

 

「逆にアナタ方がそこの二人を庇う理由も無いと思いますがね?」

 

「そうかもしれない! けど目の前でキミが人を殺めたり、知らない相手ではない奴等が殺されるのを黙って見てられる訳が無いんだよ!」

 

 

 虫の息のヴァーリと美猴を庇いつつ、クウラの駒になりきる白音は見たくないと叫ぶイッセーは、更に続ける。

 

 

「クウラに言われたからって手を汚すのは違うんだ! キミだってリアス部長達のような女の子なんだぞ! アイツは何時か必ずキミの事を捨て駒にする! その前に、今ならまだ間に合うし、俺が助ける! だから――」

 

 

 ……………。そう、続けてしまった。

 

 

「…………」

 

 

 白音から禍々しい気のオーラが消えた。

 

 

「と、止まったの……?」

 

 

 美猴とヴァーリを背に隠しながら見ていたリアス達も、白音から殺気が無くなったのを感じて驚く。

 

 

「兵藤……お前……」

 

「すんません、アザゼル先生。

やっぱり俺は小猫ちゃんの事は放っておけません」

 

 

 アザゼルの何か言いたげな表情に笑みを浮かべて返すイッセー。

 

 

「だってほら、小猫ちゃんもわかってくれて――――」

 

 

 殺気とオーラが消えた事を、矛を収めてくれた。

 クウラと違って、話せば理解し合えると思ったイッセーが再び白音の方を見―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー聞こえるかな黒歌姉様。

八坂さん達にも伝えて欲しいんだけど、今すぐこの屋敷周辺から離れてって。うん――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ――――――――ターゲットを含めて、この屋敷の連中全員を今から八つ裂きにするからさ」

 

 

 

 笑いながら、白音は外を囲ませていた黒歌に携帯で連絡をすると、電話を切った。

 

 その言葉にイッセーも、リアス達も、アザゼルも……全員が一気に絶望の底へと叩き落とされた。

 

 

「こ、小猫……ちゃん?」

 

 

 無論、信じられないイッセーは無理矢理笑いながら白音に声を掛けた。

 

 

「冗談だよな? 小猫ちゃんはわかってくれたんだろ……?」

 

 

 ため息の出るような美貌の女性と化している白音に話しかけ続けるイッセー。

 すると、携帯をしまった白音は薄く微笑みながら口を開いた。

 

 

「初めてですよ、ここまで私をコケにしたお馬鹿さんは」

 

 

 その台詞は、奇しくもクウラの弟であるフリーザが、永遠の命を求めて強奪したドラゴンボールの願いを様々な妨害を受けた果てに叶えられず、怒りを噛み殺しているそれに酷似していた。

 

 

「さっさとそこの死に損ない共を渡してさえくれたら、私は貴方達には何にもしないつもりだったのに……。

渡さないに加えて、私がクウラ様の駒である事を一々否定し、挙げ句の果てに知った様な事をベラベラと……」

 

 

 白音にとってクウラに遣える事は、クウラの手駒であれる事は、クウラの所有物であり続けられる事は『誇り』だった。

 その『誇り』を……散々それを望んでいると教えてやったのに『間違っている』だの、『キミはそんな子じゃない』だの、挙げ句の果てには『俺が助ける』等と言い、自らの誇りに土足で踏み込んできた。

 

 

「誰も理解しろなんて言ってないのに、どうしてこうも煩いのか。

どうでも良い赤の他人ごときにクウラ様との繋がりを否定されると……本当に腹が立つ」

 

 

 それは白音にとってもっとも許してはならない事。

 

 理解なんて求めてない。理解して貰うとも思ってない。

 

 だけど、自分の誇りと夢と幸福を土足で踏みにじる輩だけは――

 

 

「だから、許さない……!」

 

 

 白音の表情が殺意に溢れ、再び――いや、先程よりも強大で禍々しい殺意の気を放出すると同時に一気に爆発させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に許さんぞ虫ケラ共がァ!!!!! じわじわとなぶり殺しにしてやる!!! 一人たりとも逃がさんぞ覚悟しろ!!!!」

 

 

 

 

 クウラの所有物として。白音は今出陣する。




補足
部下でありながらフリーザ様ムーブでしかもロリからスタイル抜群化まで!

一粒でどんだけ美味しいのだ白音たん!

………まあ、クウラ様だからそこら辺の反応が無いのが哀しいけど。


その2
人それぞれ地雷は持っている。

それを踏んでしまうのはよろしくないのだ。

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