これも後で整理しときますが、取り敢えず更新。
リアス・グレモリーは兵士と騎士を失った。
だが、誰も同情はしてくれなかった。
失った原因が、その兵士のストーカー行為によってであるからだと判明したからだ。
しかもよりにもよって、ストーカーした相手が悪魔という種全体が決して機嫌を損ねてはならない、赤い龍帝の名が文字通りの赤子となって霞む程の、冷酷な帝王の一の部下だったのだ。
その兵士の後先考えない行動。そしてその行動がいかに危険であった事をきちんと教育しなかったという意味で、リアスは同情どころか冥界の悪魔達全部から大バッシングを受ける事になってしまっていた。
そのお陰でリアスはここ最近表を出歩く事も無く、実家のグレモリー城の自室で引きこもっていた。
「イッセー……祐斗……」
『…………』
二人の眷属は戻ってこない。
それはつまり、二人と二人に付いた堕天使のアザゼルはクウラの部下である白音によって完全に殺された事を意味する。
あのクウラの部下が――冷酷なる帝王として教え込まれた白い猫が間違っても三人を見逃す訳が無いのはリアスもわかっていた。
故に、祐斗も……そしてもしかしたら自分の理想とする男性に成長してくれたかもしれないと思っていたイッセーの二人を失ったことはリアスにとって大きなショックとなり、女王の朱乃や僧侶のギャスパーとアーシア達と連日引きこもっているのだ。
それをリアスの両親達は責めなかった。
いや、責められなかった。
そしてそんなリアス達の引きこもりとは裏腹に、既に四大魔王達は名ばかりの傀儡となっていた。
クウラという強大な存在を前に何度も選択を誤った時点で信用ならないという上層部達によって彼等は発言権を完璧に消されていたのだ。
「ハーフ悪魔、ヴァーリ・ルシファーの身柄はクウラ達に渡す。
……もっとも、それで許されるとは思わないが、接触の機会はこれしかない」
「生命はなんとか維持させている状態だ。
それと堕天使達との連携も強めなければならん」
「我等の命を贄にするだけで済むのであるなら幸運と思わなければならんな
―――――無論、貴様等も下の悪魔達を守る為に贄となる事を覚悟して頂くが、まさか嫌だと抜かすつもりはありませぬな?」
「「「「…………」」」」
上層部達と魔王達の命を賭けた一大交渉。
上層部達の誰もが悪魔という種を存続させる為に、己の命を差し出す覚悟を示しており、若き魔王達は彼等の言葉に反論ができなかった。
「新しい時代を作るのは我々老人では無い。
だからこそ、その新たな時代を迎える為に我等の命が必要だというのなら差し出すしかあるまい」
「ああ、我等も十分に生きた。それこそ、老害と陰口を叩かれる程な」
「くく、その老害化した我等の命が、小僧や小娘共の尻拭いに必要とならば、それもまた定めよ」
良くも悪くも彼等は自身の種族に誇りを持っている。
種の存続の為なら己の命すら投げ出す覚悟もしている。
四大魔王達は、そんな覚悟を示す初老達に、当初は内心己の権威を示すために生きているだけと見下していた
。
「我等の最期に幸あれ」
だが、今の彼等は多くの悪魔達を守る為に己の命を捨てる覚悟を確かに持った
魔王達はそんな彼等の覚悟を目の当たりにする事で……何も言えなくなってしまったのだ。
そんな悪魔達が覚悟を決める頃、堕天使達もまた先代の総督が殺されたという事で、クウラ達との今後についた話し合っていた。
アザゼルが殺されたのは悪魔のせいだという声も確かに少なくは無く、即刻悪魔との縁を切るべきだという意見も多かった。
しかし新たにグリゴリを纏める立場となったシェムハザは、この状況だからこそ連携を強めなければならないと主張。
先日届いた悪魔の上層部達の書状に『覚悟の強さ』と『アザゼルの死は我等の責任』という謝罪の意味が籠った言葉が書かれていた。
恐らくサーゼクス達ではなく、彼等の補佐をする者達が動き出したからだろう。
故にシェムハザと新たに繰り上げで副総督となった堕天使バラキエルは、今こそ悪魔と連携し、この危機を乗り越えなければならないと宥めていく。
ましてや、この副総督のバラキエルには転生悪魔となった……人間の女との間に生まれた大事な娘が居るのだから……。
そして今回殆ど無関係である天界――熾天使のリーダーであるミカエルは、旧知の仲であるアザゼルが死んだという報告を受け、自身を含めた四大天使全員を引き連れ、クウラの屋敷へと訪れていた。
「まずはお話を聞いていただける事を深く感謝いたします、クウラ殿」
「……………………」
熾天使のリーダーであるミカエルが深々と頭を下げながら絶対零度の赤い目を持つクウラに挨拶をする。
既にミカエルはアザゼルのみならず、赤龍帝や白龍皇がクウラ達によって完全に壊滅しかけている事を知っている。
その赤龍帝が、この町に滞在させていた御使いになっている紫藤イリナとゼノヴィア・クァルタの知り合いで、イリナとは幼馴染みだったことも知っている。
転生悪魔とはいえ、幼馴染みが殺されたというショックが大きいイリナは勿論ゼノヴィア共々この場には居ない。
世間を――いや、クウラ達の冷酷さを甘く認識している二人をこの場に同行させれば危険な事になるのはわかりきったことだから。
故に彼は四大天使であるガブリエル、ラファエル、ウリエルと共に挨拶をしに来たのだ。
「天界陣営のトップ達が揃って来られるとは思いませんでしたよ。話というのはアレですか? 悪魔と堕天使を殺した事についてでしょうかね?」
石像の様に冷たい無表情で足を組んで頬杖を付くクウラに代わり、ゼノヴィアやイリナとそう年の変わらない――何故かメイド服を着た猫又の少女が話を進める。
いや、彼女だけではなく、今ミカエル達が座っている長テーブルを取り囲む様にして立つ女性達の全員がメイド服だった。
(今は少女の姿になっているとは聞いていましたが、まさかオーフィスまでもが、クウラに付いているとは思いませんでしたよ。
最近急激に禍の団の勢力が消えている理由も納得です。
それに京都の総大将も……)
ひょっとして彼女達の服装はクウラの趣味? ……なんて聞いたら即座に殺されそうなので死んでも聞かないが、改めるとクウラの下に付いたとされる人材の異質さにミカエルは厄介どころではない事に気付かされる。
仮に京都に対して襲撃を噛ませば自動的にクウラを敵に回す。
禍の団については不明瞭な点は多いが、もしあの組織を丸ごと配下にしたとなれば……自分達は禍の団に対して何も無抵抗を余儀なくされてしまうという事にも繋がる。
「堕天使と悪魔については、恐らく向こうがアナタ方の意に沿わぬ真似をしたのだと思っています。
我々は無論、アナタ方の意に沿わぬ真似はしないと誓えますが、世間では我々天使は堕天使と悪魔をひとくくりに三大勢力と呼ばれています。
なので、アナタ方に誤解されないようにとこの場を設けて頂きました」
「つまり、三大勢力とは呼ばれているけど、堕天使と悪魔とは同盟でもなんでもない……と?」
「はい」
「ふーん? ミカエルさんでしたっけ? アナタは確かその昔、アザゼルさんとはそれなりの仲ではありませんでしたか?」
「アザゼルが堕ちる前から仲は悪いですよ。
……仮にそうであったとしても、アザゼルが死んだ今、残りの堕天使と同盟なんて組む理由もありません」
「……。要は絶滅を免れる為に彼等を切り捨てるというう事ですか。
と、申されてますが、如何いたしましょうかクウラ様?」
「……………」
ズケズケと本音を見透かすような事を言う白音が、クウラへと向き、ミカエル達はごくりと喉を鳴らした。
残っている組織の全戦力――いや、仮にこの世界の全勢力が組んで戦いを挑んだとしても、瞬く間に彼一人に壊滅させられる程の差がある事はわかりきっている。
神ですら、その異質なパワーに殺されたのだ。
もし今ここで彼が『死ね』という言葉を発したら、自分達は確実に殺される。
その緊張感にミカエル達は圧される中、赤い眼をした濃い紫髪の青年は、低く、威圧的な声を放つ。
「白音、コイツ等の技術力はどの程度だ?」
「堕天使側が多少頭ひとつ抜けていると仮定し、人間達よりかは上だと思いますが」
「ふむ」
技術力? 何の事だろうかとミカエル達は互いに顔を見合わせながら首を傾げていると、クウラが口を開く。
「最低5年の期間をくれてやる。
俺達に壊滅させられたくなければ、此方が満足する宇宙船を作れ。
それこそ堕天使共や悪魔共と協力してでもな」
「う、宇宙船を……ですか?」
「そうだ。出来るのか? それとも出来んのか?」
「そ、それはそちらの提示するクオリティ次第と言いますか………」
「ちなみに、5年経っても出来なかった場合は……?」
「堕天使と悪魔もろとも皆殺しにする」
『!』
今の貴様等には其れほどの価値しか無い。
恐る恐る訊ねたガブリエルに、はっきりと冷酷に言ったクウラに、ミカエル達は頷く他無かった。
5年の間に宇宙船を作れば少なくとも絶滅だけは避けられる……。
だが、提示された技術力ははっきり言って未知の領域の科学力の結晶だった為、ミカエル達は絶望するのだった。
完全に意気消沈した状態で帰っていった天使達をお見送りした白音達は、広間に残って酒を飲んでいたクウラに、彼等に提示した条件について聞いてみた。
「宇宙船を作らせるという事は、この星から出ていくつもりなのですか?」
「ああ。
それと確認の意味もある、俺が生きた世界と同じく、果たしてこの世界は他の惑星で生きる生物が居るかどうかのな……」
「サイヤ人の様な……ですか?」
「そうだ。
もし居れば最早この星に用は無い。
徹底的に生命エネルギーをお前と喰らい尽くしてから壊滅させる」
ちょっとコンビニ行ってくるわ的な感じで、地球という星そのものを破壊すると宣言するクウラに、白音は特に反対する気は無く頷いていると、白音と同じデザインで、ちょっと胸元が窮屈そうなメイド服を着ていた黒歌が質問をする。
「宇宙に出る時って私達は連れていってくれるの……?」
基本的にクウラは一番戦闘力の高い白音を優遇して、黒歌や八坂達などは割りと放置している事が多い。
なので彼が浮かべてる構想には自分達も含まれているのかという不安があったのだ。
八坂が持ち込んできた日本酒を白音に注がせるクウラは、一口煽りながら口を開く。
「5年後、お前等が使えると判断できる戦闘力を持ったのならな」
つまり、達してない場合はクウラと白音によって死と化した地球に取り残される可能性がある。
それは実質的な死刑宣告にも等しき言葉であり、黒歌は顔を真っ青にした。
「最低値はどれくらいじゃ?」
しかし八坂は変に度胸があるのか、黒歌よりも更に胸が窮屈そうなメイド服姿でクウラに、5年後までに到達しなければらない戦闘力の目安を訊ねる。
「1000万」
「はぁっ!?」
「果てしないの……」
「いっせんまんってどれくらいだ?」
「多分すごく大きいんだと我は思う」
無茶にも程があるハードルの高さに、黒歌は勿論、流石の八坂も苦笑いだった。
だがクウラは本気だった。
「俺の予測では白音はこのまま行けばその戦闘力を2000万までは上昇できる。
それでもまだ足りぬが、コイツの開花した才能ならば可能だ。
しかし、貴様等にはそんな才能は無い」
「そ、それはわかるけどさ……」
「黒歌、今の貴様の戦闘力は精々5000。
八坂、貴様は6000。九重は数百かそこらだ
オーフィスは1万を越えてるが………それでは話にもならん」
クウラから告げられた戦闘力のおおよその数値は、白音と時々クウラによって行われた訓練によって上昇した結果のものだった。
ここから5年で1000万は絶望的なものだ。
「ち、ちなみにクウラは……?」
「現状のクウラ様の基本戦闘力は1億。
これは最近クウラ様が力を喰らう能力を復活させた事で上昇した結果。
でもね、クウラ様はこの数値が基本であって、フルパワーを解放すれば1億5000万は越えるんだよ姉様?」
「い、いちおく……」
「流石クウラじゃ! ふふふ、頭を撫でても良いか?」
「やめろ鬱陶しい」
偉そうにしてるだけあって、白音よりも更に桁が違うパワーを持っているクウラに、黒歌は先日のプチToLOVEる――ならぬトラブルの時から抱き始めた頼もしさを感じてしまう……鬼畜だけど。
「むぅ、いけずじゃクウラは」
「ねぇクウラ、もしクウラの言うとおりに出来たら頭を撫でてくれるか?」
「出来たらな………」
「なら頑張る! オーフィスも頑張ろう!!」
「うん、我も九重と頑張る……!」
口を3の形にしながら飛び付こうとする八坂の頭を片手で押さえ付けて阻止するクウラの側に居れば誰に狙われる心配をせず生きることが出来る。
妹を逞しくさせ過ぎたのは、ちょっと複雑だけど、お陰で最早悪魔に怯える事も無くなった。
それに黒歌としても、クウラは鬼畜で冷酷だけど、それに見合った働きをすれば待遇は良い。
「や、やってやるわよ……!」
「その意気だよ姉様」
やるしかない。
黒歌は、自分に言い聞かせるように言う。
妹の白音に劣る才能――それは奇しくもたった4ヶ月のトレーニングのみで神の領域と同等のパワーへと進化したクウラの弟のフリーザとの才能の差を思い起こさせるものがあった。
新クウラ軍。
首領・クウラ(ヒューマノイド)
基礎戦闘力・9700万→1億(喰った事により)
フルパワー・1億7000万
???・3億(現状不可能)
側近・白音(猫又)
基礎戦闘力・2→50→135→558→1500→20000→60000→12万→23万→35万→73万(12万以降喰うことでパワーと特性を吸収)
第一形態(ノーマル白音たんモード)
戦闘力45万
第二形態(仙術白音モード)
戦闘力55万
第三形態(仙術活性化ブラック羽川さんモード)
75万→ブーストモードで220万(現状最終形態フルパワー)
第四形態(?)
不可能
戦闘員候補・黒歌
基礎戦闘力・5000
候補2・八坂
基礎戦闘力6000
候補3・九重
基礎戦闘力・120
候補4・オーフィス
基礎戦闘力・13000
終わり
補足
悪魔の上層部達が大人やってる件。
悪魔という種を守る為に己の命が必要なら簡単に差し出す覚悟は実は常日頃していたというね。
その2
リアス達は実質再起不能ですかね。
……戦線に出たところで一瞬で殺されるし、ある意味正解ではあるけど。
同じようにソーナ達も同じ感じです。
出たところで瞬く間に消し飛ばされるし。
その3
5年以内に宇宙船を作れ。さもなくば死あるのみ。
やったね三大勢力さん達! 5年は寿命が保証されたぜ!!
その4
黒歌さん達、その5年以内に戦闘力を最低1000万に到達しなければならないの鬼畜な巻。
まあ、クウラ様と白音たんが直々に鍛えるし……なんとかなるんじゃね?