感想で気付いたぜ……。
てことでIFをひとつ。
※突破してたよ記念単発
猿と見下したサイヤ人に二度も敗れた。
宇宙で最強なのは己だという自負は粉々に打ち砕かれた。
(おのれ……おのれぇ……! おのれぇぇっ!!! この俺が二度も猿ごときに敗れるのか! こんな事があってたまるかァ! この俺が……俺こそが宇宙最強なのだ!)
弟のフリーザを甘いと見下した自分こそもあった甘さが招いてしまった末路は機械惑星と共に消滅。
脳と左目の一部しか残らなかった僅かな肉体も、機械惑星の爆発と共に消え去るその寸前まで宇宙最強を求めた――ある意味で純粋な男は自分に勝利したサイヤ人達に呪詛の言葉を吐きながら消え去った―――
―――筈だった。
(このままで済ませてなるものか……! 俺は死なん……! 例え肉片だけとなっても必ず俺は――)
完全に消滅する寸前まで抱いた強大な憎悪。
敗北を認めた上での復讐。
屈辱を味わった上で、辛酸を舐めた上で、それでも尚彼は宇宙最強を諦めきれないという想いがきっと、彼に最後の奇跡を与えたのかもしれない。
この世界とは違う世界への転生による復活という形で。
それは全宇宙を束ねるとある神がやった事でも、更に上の全ての王がやった訳でもない。
彼の執念の強さが何かに呼応し、彼に最後の奇跡を与えたのだ。
……………。正直、その世界にとっては死ぬほど傍迷惑な事だとしてもだ。
サイヤ人に敗れた現実は、彼のプライドを打ち砕いた。
しかしそれでも、肉体は滅び、全てを失って散々見下した下等生物と同じ姿になって復活した彼は、その自らの姿に嫌悪をしながらも、宇宙最強を求めて再び歩みだした。
栄光ある一族としての肉体を失い、分かりやすくて手っ取り早かった『変身』によるパワーアップを失っても、彼は人でありながら信じられない程の不老じみた長寿という特性を持ったが故に、ただひたすら孤独に失った戦闘力を取り戻す為に、文明がまるで異なった地球にて生き続けた。
その結果、彼の戦闘力は恐らく彼の元の持つ才能も相俟って―――それでも彼にとっては歯噛みするほどに落ちたものとはいえ、他人から見れば異質で異常な領域へと到達した。
人に見えて人ではない。
それは奇しくもこの星に蔓延る人ならざる者達と似ているが、彼はその者達のどれにも属しない――謂わば彼だけの種族として確立していた。
地上に住む人間達の文明がまだ低すぎた時代。
彼は孤高の存在として人ならざる者達を狩って力を増しながら、その存在を知らしめ、遂には彼という力を対価によって雇いたいという者まで現れた。
その者は悪魔という種族であり、どうやらクーデターを起こした同族との争いをしているらしく、既に異質の存在として認識されていた彼は、彼等に膨大な報酬を引き換えに雇われる事になった。
もっとも、偉そうに上から目線で接してくるその悪魔共は後で皆殺しにして糧にしてやろうと考えてる辺り、接し方を、雇った側の悪魔達は間違えたとも言えなくもないが……。
そして幕開けとなった争いの中へと参戦した青年は、既にその名を知られていたせいか、クーデターを引き起こした側の悪魔達から驚きの目で見られた。
「く、クウラだって!? 同族ではない彼を雇ったというのか!?」
理想を掲げてこの戦いに臨んだ赤髪の青年、サーゼクス・グレモリーとその友である三人の悪魔達は、崖の上の上から此方を冷徹な眼差しで、腕を組ながら見下ろす紫色の頭髪を持つ青年の姿を見て、同志達と共に息を飲んだ。
数年前に突如出現し、数多の勢力達を皆殺しにする破壊者と畏れられる様になった青年。
その存在は当然彼等にも知れ渡っており、現政府が自分達の排除の為に雇ったという現実を前に、一気に旗色が悪くなったと感じた。
「居場所を探して事情を説明し、我等と共に戦って頂けると承認して頂くにはかなり骨が折れました。
しかしながら、それだけの価値はあるのは……アナタ達にも分かるでしょう?」
そんなクウラの横に、銀髪の女性が姿を現し、サーゼクス達を同様に見下ろす。
「グレイフィア・ルキフグス……」
現政府の戦力のひとつにて、ルキフグス家の悪魔を前にサーゼクス達は本当にクウラが向こう側に雇われたのだと実感させられる。
そして――
「…………」
たった一瞬の出来事だった。
「っ!? み、皆避け―――」
赤い両目が妖しく輝き始めたと同時に放たれた光線がサーゼクス達の居た場所一体を広範囲に渡り破壊した。
そればかりか、クウラは崖から飛び上がると、両手にエネルギーを貯め、そのまま振り下ろす様に破壊した箇所へと撃ち込んだのだ。
その凄まじき破壊力に、お目付け役を周囲に押し付けられたグレイフィアは素直に感嘆する。
何故なら爆発の煙が晴れたその場所の地面は広範囲に渡って抉られ、サーゼクス達の姿は綺麗さっぱり消えてなくなっていたのだから。
「流石、噂に違わぬパワー……お見事ですクウラさん?」
「………………」
息をするように放ったものが都市をも一瞬で破壊できる規模のパワーを目の当たりにしたグレイフィアは、素直に降りてきたクウラに言う。
しかし……。
「愚か者め……」
「え?」
クウラは低く、よく通る声でグレイフィアにそう一言告げる。
「俺の破壊光線を浴びる直前、奴等は別の場所へとワープしたのだ。
すぐ近くと判断して二撃目に周辺一帯を破壊してみたが、奴等は居なかった」
「ですから、今ので蒸発でもしたのでは……?」
全然しゃべらない無口な男で面白味がまるでないと思ってて、やっと喋ったかと思ったら愚か者呼ばわりされたグレイフィアは、ちょっとした対抗心のつもりで言い返すが、クウラは自身が破壊した箇所を見つめながら一言。
「奴等はまだ生きている。すぐに探し出せ」
死体を見るまでは絶対に己の勝利を認めぬ性分は、人型へとなっても変わらず、偶々居たグレイフィアにそう命じた。
「探せと言われても……」
さも当たり前の様に命令されたグレイフィアもこれには若干渋る。
「貴様はその為に俺の近くに居るのだろう? さっさとしろ、役に立たぬのなら貴様をこの場で殺しても良いのだぞ?」
「う……!」
しかしその赤い両目が向けられた瞬間、グレイフィアの身に異質なプレッシャーが襲い掛かり、気付けば彼の足下に膝まづいていた。
(な、なんていう圧力……! こ、これがクウラ……!)
今の魔王達ですら持たぬ絶対者の圧力を体感してしまったグレイフィアに逆らう気力は一瞬で壊された。
雇われただけの傭兵と高を括るにはあまりにも異質で、異常なものを感じてしまうと同時に、今まで出会った同族には無い不思議な魅力も感じてしまった。
(同族とは違う、初めて会う――それもこの先二度と会うこともないだろうものを彼に感じる……)
血の様に赤い両目に見据えられたグレイフィアは、そんな気持ちを持ちながらゆっくりと立ち上がり、クウラに一礼する。
「畏まりました……」
上の連中が使い方を間違えなければ、確実にこの抗争は勝てる。
そんな確信をも抱いたグレイフィアは、深々と頭を下げると、サーゼクス達の行方を追った。
これがクウラとの初めての出会い。
抵抗せし者達の拠点を次々と破壊していくクウラの背を近くで眺め……。
そのあまりの異質さに雇った側の同族達からも距離を置かれていく中でも彼女は彼の傍に付き……。
「俺の役目はここまでで良いんだろう? 報酬分の仕事はした。
余程の無能でなければ貴様等だけでもトドメは刺せる筈だ」
契約期間が切れ、去っていくクウラを寧ろ喜んで見送る同族達が居る中を彼女は追いかけ……。
「あの……私個人の資産を差し上げますので、もう少し契約の延長を……」
何故か自分でもわからないが、この先二度とこの青年とは会えなくなる。そしてそれが嫌だと思ったグレイフィアが私財を盾に延長を申し出るが……。
「そんな微々たる物で俺を雇えると思うな女」
「ぁ……」
クウラは底無しに冷たい目でそれだけを言うと、そのまま去ってしまった。
断られた……それが心底残念で、心底寂しい。
去った後にその気持ちに気付いたグレイフィアは、心に少しだけ開いてしまった穴を塞げぬまま、既に勝った気でいた同族達と抗争の終わりへの道を突き進んだのだが……。
グレイフィア達の勢力は敗北した。
後に超越者と呼ばれるサーゼクス・グレモリー達の必死の抵抗と、クウラによる圧倒的な有利な状況による慢心が、まさかの逆転を許してしまったのだ。
もしクウラとの契約が延長できていたらこんな事にはならなかっただろう。
まさしく無能を晒してしまった旧体制の政府の限界だったのかもしれない。
サーゼクス・グレモリー達を筆頭に発足された新体制の政権により、この戦いに敗れた勢力達は冥界の隅へと追いやられてしまった。
徹底的な監視の受けながら生きなければならないものの、処刑を免れたのはサーゼクス達なりの温情だったのかもしれない。
本来ならばここからサーゼクス・グレモリーとの交流の果てに手にする家庭が待っている。
しかしグレイフィアが取った行動は――――
「やっと……見つけましたよ」
居を構えず、気儘にどこかへ行っては強い者を八つ裂きにして力を増し続ける異邦人のもとだった。
追われ、傷つき、それでも彼女は同族や他の者達には無い強い個を持った彼を求めてさ迷った結果、最後に別れた時よりも更に強靭なパワーへと成長していたクウラへと辿り着いたのだ。
「あの時の女か。
どうやら俺との契約が切れた途端してやられた挙げ句無様に敗北したらしいが……」
「ええ、アナタの言った通り、どうやら我々が無能だった様です。
今では我々は冥界の隅に追いやられてしまいました……」
「処刑をしなかったのか、あの赤髪共は。どいつもこいつもやはり甘い」
「しかしその甘さのお陰で私は逃げ出せました。
そしてアナタとこうしてまた会えた……」
「俺と会う? 何の為に?」
「私はもうただの悪魔というだけの女です。
背景も何もありません……故にアナタのお側に仕わせてください」
絶滅させたどこぞの勢力が使っていたとされる半壊した城の玉座に腰を下ろすクウラに、傷だらけのグレイフィアは笑ってそう言った。
「俺の部下になる気か? 生憎だが、俺は雑魚を部下に使う程暇ではない。
他を当た――」
「強く! アナタが私を使っても良いと思えるくらいに強くなります! だから……アナタの傍に居させて……!」
「……………」
ここで別れたらもう二度とこんな奇跡は起こらない。
そう思ったグレイフィアは悪魔として教えられてきた教えも気構えもなにもかもを投げ捨てて懇願した。
初めて抱いたこの気持ちを手離してはならないと……何度も。
これが始まり。
そして月日は流れ――
「クウラ様、グレモリー家の一人娘がクウラ様にご挨拶をしたいとの書状が届きました」
「グレモリー?」
「サーゼクス・グレモリーの妹の様です。
今回より人間界であるこの町の管理を任された様で、先に住む我々にその挨拶をしたいようですね」
「……。お前が適当に相手をしておけ」
「畏まりました」
グレイフィアはクウラの部下として、それこそ死んだ方がマシだったと思える程の修羅場を克服することで君臨した。
後にクウラから教えられた戦闘力という概念をひたすら地獄の特訓によって高め、悪魔という種族の持つべき力の概念を超越してみせた。
それはクウラが自身のパワーを『取り戻す』為に行った他勢力への侵略行為に付き従った賜物であり、気付けば絶滅を免れた勢力達が全てクウラに平伏していた。
「それよりもそろそろ訓練の準備をしろ」
「……………」
故にサーゼクス達の出資により手に入れた屋敷に居を構え、最近はもっぱら堕天使総督と天使長の技術によって再現させた超頑丈な地下施設にてクウラとのトレーニング生活をしている訳だが、最近のグレイフィアはちょっとだけ不満だった。
「なんだ? 何か言いたいことがあるのか?」
「いえ、アナタと訓練する事自体に不満はございませんよ。
ですが、こうしてアナタの部下になってから結構経ちますが、私は女でもありますので子供が欲しいんですよ」
女に全く興味ないどころか、敵ならば簡単に殺してしまうクウラの事は近くで一番見ていたので知っている。
が、こうして部下になれた身としては、ほんの少しくらいはそんな目で見てもバチは当たらないのではと思う訳で……。
「下等生物共の生殖行為を、俺にもやれとお前は抜かすのか?」
「かつてのお姿なら仕方ないにしても、今のアナタはその下等生物とほぼ同じなのですし……」
「………チッ、そうだったな」
冷酷で目付きは悪いが、顔立ちは結構良い今のクウラの姿を、クウラ自身は醜いと嫌悪しているが、グレイフィアはかなり愛着がある。
それに冷酷で残虐だとしても、グレイフィアにとってはクウラは魅力を感じる異性でもあるし、きちんとした愛情も持っていた。
「どうせなら近所に住むイッセーくんみたいにハーレム王になる! とか思えば良いのに―――は、ダメですね、仮にアナタに他の女が寄ってきたらそれこそ私が思わず殺してしまいそうだわ。
実際殺してしまったこともあるし」
「………急にお前が激怒したと思ったら、そいつを八つ裂きしたやつか」
「アナタになら抱かれても良いなんて嘗めた事を言ったので、つい殺ってしまったわ」
「……。で、お前の言ってた小僧はどうした? 最近見ないが……」
ニコニコしながらも言ってる事が物騒すぎる部下を見て、めんどくさくなってきたクウラは話題を逸らす。
「あぁ、彼なら最近グレモリーさんの眷属になったみたいですね」
「なんだと?」
「ですから、私達の正体もその内知らされるでしょう」
敗北した帝王は今も人型となって生きている。
クウラ
現在基本戦闘力・1億3000万
フルパワー(変身相当)・3億
サイヤ人に敗れ、人型として転生して数百年。
銀髪悪魔を部下に今も生きる元宇宙の帝王の兄。
グレイフィア
基本戦闘力・9700万
100%フルパワー・2億5000万
孤高の帝王の強さに惹かれ、全てを捨てて地獄の修羅場を潜り抜ける事で種族の限界を越えた者。
最近の不満……元が宇宙人のせいで異性に興味が無さすぎる主に、あの手この手で頑張っても相手にされない。
「アナタの傍に居られる事に不満は無いけど、もう少し欲しいのよね」
「またその話か、煩い女め……」
「当たり前でしょう? お風呂に一緒に入ってても無表情だし、一緒に寝ようとしてもなーんにもしてこないし……」
続かない
補足
白音たん達との戦闘力の違いは、年月の違いですね。
……てか、グレイフィアさんってなにげに世界でも二番目にヤバイ生物になっちまってるけど。
その2
お陰で訓練は余計に捗って更に成長していくという。
というか、この領域に入った時点でそろそろゴールデン的飛躍は―――元のボディじゃないんで無理だけど。
その3
思ってた以上の成長を示したせいで、割りと邪険にもできなくなってるクウラ様。
人間界のマタニティ本ばっか一緒に読まされて辟易してるとかしてないとか。