反応されて嬉しくて突貫作成よ。
何故か会議に参加した雪蓮の冥琳がぼーっとしてたお陰で、囮役を完全に押し付けられてしまった。
それはまあ三バカにしても、自分達が適当に大騒ぎしてそれっぽく暴れてしまえば問題はないので別に良い。
敵陣に向かって、真正面からバカみたいにお気軽な、それこそちょっとファミレスに行って駄弁りに行こうぜ的なノリで歩いていく姿は、一見すればただの自殺願望持ちのバカにしか見えない。
ていうか、陣に引っ込んで迎え撃とうとしていた黄巾達も、たった三人でのほほんとこっちに向かって歩き、何やら世間話をしてる姿に戸惑うしかない。
「一応確認するけどよ、お前らは彼女達に対して情を抱いちゃいねーよな?」
「「…………」」
「…………。オーケー、わかった。
チッ、どうする気だよ? 俺達と彼女達は文字通り住む世界が違うし、いつかは帰るんだぜ? 帰る方法がわかればこの世界に留まる訳にもいかねぇぞ」
「そういうイッセーはどうなんだ? さっき相当焦っていたじゃないか」
「随分とお前流の戦い方を仕込んでいたみたいだしな」
「……。成功すりゃあ、俺が不必要になるだろうが。あの子達が強くなりさえすれはな」
「それだけでは無い様子だったがな」
「それに、孫尚香にはなんて説明する気だ?」
「ちゃんと事情を言えば良い。小蓮ならわかってくれると思うし」
「「…………」」
「……。なんだよ二人して、その目は?」
「この前、お前が祭の胸を目で追って鼻の下を伸ばしてる所をその子が見ていたのを知ってるか?」
「? そうなの?」
「偶々俺とヴァーリが見てしまったのだが……その時のあの子の目が、嫉妬に狂った女そのものみたいな……」
「んなアホな。
良いとこ遊び相手が暇じゃなさそうにしててつまんなかったとかそんな所だろ」
今まさに目の前で剣や弓を構えた賊軍がざっと数千人規模で待ち構えているというのに、ジンガ、ヴァーリ、イッセーは、今までの孫呉の者達に対する対応の甘さを三人の間で指摘し合っている。
別の場所から様子を伺っている、囮を押し付けた者達もまさか三人だけしか出撃していないとは思わなかった様子だが、この三バカにしてみればそれこそ『知るか』な話だった。
「俺よりも、ジンガがやべぇよ。
ナチュラルにセクハラしてるしよ」
「セクハラじゃない! あれは事故だ!」
「ヴァーリは天然でやらかしてるしよー」
「俺は何もしていないからな、本当に。
強いて言うなら、冥琳が実は内臓の機能不全の病にかかって、そのままにしておいたら確実に死ぬと思ったので、軽く白龍皇としての俺の血を無理矢理飲ませて、機能を回復させて免疫を強めてやった事くらいで……」
「はっ!? お前、そんな事してたの!?」
「え、いや、早死にされたら逆に厄介じゃないのかと思って……」
「だからか! あの厳しそうな知的美人がお前に妙に優しいのは!?」
「え、やはりダメだったのか? 確かにまずいかもとは思ったが、顔色が悪くて放ってはおけなかったんだ」
「いやダメじゃねーけど……! ほ、ホントこいつはやることが天然だな」
「軍師といえば、ヴァーリはこの前、陸遜に膝枕されながら寝てなかったか?」
「はぁっ!? 俺知らねーぞその話!? テメーどいう事じゃコラ!!」
「勘を鈍らせない修行の休憩で一休みしてたら、寝オチしてしまい、その間に何故か穏にされてたんだよ。
首が疲れるだろうからってな……」
「お前ホントっ! ジンガもだけど何なんだ! 俺にはそんなエピソード皆無なのになんなんだよちくしょーめ!!」
帰る時が来る。
仕事を与えて食わせて貰ってる恩はあれど、住む世界が本当の意味で違うのだから、別れの時は必ず来る。
だから決して情は持つべきではない――と言ったのは寧ろジンガとヴァーリなのに、聞いてみればイッセーにとって羨ましいエピソードばっかり。
「イッセーこそ、孫権とか甘寧か孫尚香達とほぼ毎日一緒に何かやってるだろ?」
「オメー等と違って俺は真剣にあの子達に、この先俺達の存在なんて要らなくなるくらいのパワーを身に付けさせる修行をしてあげてたの! そらビシバシとフェミニストに真正面から喧嘩売ってやるレベルのな!」
「………と、本人は言ってるみたいだが、ヴァーリはどう思う?」
「厳しいのは事実だが、どうせイッセーの事だから、出来ないと弱音を吐いても途中で投げ出す事もせず、無自覚に親身になって根気強く教えてやっていたのが目に見えてる。
で、ひとつの段階を乗り越えたら誉めて何かしてやったりしてたとかな」
「してねーっ……!! …………いや、多分ちょっとはした気はするけど、それでもオメー等みてーにモテモテしてねーし!」
「じゃあ何で孫権があんなお前に素直なんだよ?」
「知るかっ!! 俺が聞きてーよそんなもん!! ちくしょうめ、ギャップ萌えに俺は負けねぇ!!」
ぷりぷりと怒るイッセーを、ヴァーリとジンガは生暖かい目で見る。
『俺はそんな甘くねぇ』とか『俺はスゲー悪い人』だとか『俺はムカついたらそいつを女だろうが子供だろうがぶちのめす』だとかと、嘯く事があるが、その実、悪魔達に見捨てられてしまった現在でも、結局はお人好しな所が残ってしまっている。
人に裏切られるのもそうだが、人を裏切ってしまう方を恐れているからこそ、誰よりも誰よりも壁を乗り越える事を目指し続けていた事も……。
その気質と真正面から誰よりも向き合ってきた事も……。
「俺も年上のおねーさんと良いことしてーっつーの!!」
「というより、何の障害も無く敵地まで来れてしまったが、囮になれてるのか?」
「囮役を俺達のみに振って、彼女達を曹操や例の北郷君側にと思ったが、割りと失敗なんじゃなかろうか……?」
挫折の壁に当たってしまった者にしてみれば、バカみたいにそれでも乗り越えようとするイッセーの疲れそうな生き方は余計に魅力を感じさせる――という事実をイッセー本人は知らない。
「知らん知らん! おねーさんとイチャコラやっとるアホ二人のせいでやる気も何もあったもんじゃねーってんだ! だから……囮と言わず全開で花火でも打ち上げてやらぁ!!」
聞いて損したとばかりに怒り続けるイッセーが、両手を胸元の前に出し、赤く輝く小さな気の球体を生成する。
赤龍帝の籠手は使わず、己の現在の弱体かした気力徐々に大きくさせながら練り上げ、全身から紅蓮に輝く闘気を放出させながら、練り上げた赤い気を腰に持っていく。
「行くぞ!!」
全身のオーラが激しさを増し、大陸全土を揺るがす程の気の奔流と共に、両手の間に輝く赤き球体が一気にサッカーボール程の大きさへと成長。
「ドラゴン―――――」
まだ何も知らぬ子供だった頃に、テレビアニメを見て夢見た、アニメ主人公の
ジンガとヴァーリとの出会いによって再現させ、完成させたイッセーの力。
「波ァァーーーッ!!!」
ヤケクソな気持ちで練り上げた、現状持つ全ての気を赤い光線へと換え、突き出した両手から放つ。
「な、なんだアレは――」
そして地を抉りながら放たれた血の様に赤き光線は、敵陣の賊達をまとめて――山を含めて丸ごと……………消し飛ばしてしまった。
「フン!」
「あーぁ……」
「どうする気だ? 他の勢力の連中の唖然とした顔が思い浮かぶんだがな」
「知らん、本陣は別にあるし、囮どころか一角を落としてやったんだから文句言われる筋合いはないぜ」
赤き光が晴れ、見事に只の荒野と化した敵陣を前に、ふて腐れた顔で手に残留していた赤い気を振り払うイッセーに、ジンガとヴァーリは微妙な顔だった。
「戻るぞ、後は他の人達が後始末でもなんでもすんだろうしよ」
「説明を求められたら面倒なんだが」
「修行したら出せたで良いだろ。
あーやってらんねー! 堕天使なおねーさんとデートしてー! ケッ!!!」
「そんなにやさぐれなくても良いだろ……」
恐らく今の光景を見てしまった者達は多いだろう。
特にどう見ても一般人の人間だろう北郷一刀に怯えられてしまったらと思うと、話しかけるのが困難になるし……と、ポケットに手なんて突っ込みながら、更地にしてしまった戦場を後にしようとするイッセーに付いていこうとした二人だが……。
「あ、あれ?」
「お、おいイッセー!?」
「どうした!?」
「や、やばい……弱体化してんのは把握してたけど、今ので完全にガス欠になったかも……」
どこぞの爆裂魔法使いのチビッ子みたいに、一発撃っただけでガス欠を起こしたイッセーはその場に倒れてしまい 、間抜けにも二人に肩を貸して貰いながら、改めて戻るのであった。
ただの田舎者な間抜けか何かだと思っていた。
というか、体よく孫策を囮にさせたら、そのバカそうな三人だけしか出てこなかったので、最初は当然孫策に文句を言ってやる気だった。
しかし何なのだアレは? あの光景は? あの赤い輝きは?
深い茶色の髪をした、三人の中でも一際バカそうで、顔も三流程度の男が妖術のようなものを放ち、敵陣を……敵陣の後ろにあった岩山ごと消し飛ばした。
「か、華琳様……? あれはなんだったのでしょうか?」
「……。わからないわ。孫策の所の間抜けそうな三人組の男の中でも一番頭が悪そうな男がやったのはこの目で見たので間違いは無い」
「仕掛けか! 我々を今後脅す為の仕掛けに決まっている!!」
「落ち着け姉者、罠や仕掛けだとしてもあんな岩山をも更地に変えるのだぞ?」
「そ、それはそうかもしれないが……!」
黒髪の女性が、どこぞの世界チャンピオンが登場した当初言いまくってた『トリックだ!』に似たリアクションで喚いていて、妹に宥められてる中、ジンガが知った瞬間泡吹いて気絶する理由となった少女――曹操は、あの男が可能なら、残り二人もそれに相当するものを持っていることを予測付ける。
「孫策の所にとんだ得体の知れないのが紛れていたとはね……。
そういえば天の遣いの男に対してやたらと気にしてる素振りを見せていたけど、ひょっとしてあの三人も天の者なのかしら」
「まさか、妙な占いによれば、天の遣いは一人しか存在しない筈です」
「じゃあその天の遣いが関羽の所にいるあの男が名乗っているけど、あの男もあの間抜けそうな顔の男と同じ真似ができると思う?」
「……それは」
「まあ、今その事を考えてるよりは、この凍りついた空気に乗じて一気に賊達を攻めましょう。
麗羽の邪魔も無い今のうちにね」
「はっ!!」
考えるのは後、今はこの先の足掛かりとなるものをかき集めなければらないと、曹操は他の軍達よりも早く現実に還り、進軍していく。
天の遣いなんて仰々しいものを名乗らなければならなくなった青年の北郷一刀は、孫堅ではなく、既に孫策が代表となっている孫呉の中に居た、謎の三人組の男はひょっとして自分の様に未来から来たのではと、淡い期待を実はしていた。
だって自分が名乗った瞬間、その三人は目の色を変えながらはしゃいでいたのだ。
その後、ステレオタイプのお嬢様といった風体の袁紹が目立つ事をするとかなんだで全然話が進まない中、曹操が口を挟んで孫策達に囮役をやらせて、その間に本陣を叩けば良いだろ的な流れにされてしまった時は、まずいと彼等を心配した。
しかも、直接戦場に出てきたのがその三人だけだと知った時は、捨て駒にされたのかとすら思ってしまった。
けど、彼は見てしまったと同時に、仲間達と一緒に強制的に理解させられてしまった。
彼等は――――
『ドラゴン――――波ァァーーーッ!!!』
自分とは違う……根本的に全てが違う存在だったのだと。
自分と同じく、未来から来てしまったのだとしても、彼等は―――化け物の類であったのだと。
「はわわわ……! どかーん! ってしましたあの方が……!」
「ばーんってなったら山も全部消えてしまいました!」
一刀も当初名を聞いた時はびっくりした、チビッ子軍師達が擬音だらけでしか会話が出来なくなるほどの衝撃は、痛いほどわかってしまう。
「ご、ご主人様、今のは妖術の類でしょうか?」
「わからない。
最初俺は、彼等も俺と同じ場所から来たのかと思ったけど、根本的に違いがありすぎる。
俺の時代にあんな真似ができる者なんて存在しない……」
関羽や劉備といった者達にもあの光景は衝撃的過ぎた様だが、手からビーム出して山ごと敵を――それも千単位で消し飛ばしたのだから当たり前だ。
「話が出来ればしてみたいんだが……」
「! 私は反対です! 危険です!」
こうして、一時のテンションに身を任せた結果、一瞬で得体の知れない危険人物認定されてしまったイッセー達だった。
個人個人の身に宿る気力を具現化する技術の事は知っていたし、教えられて来た。
しかし、大陸全土を震わせ山を根刮ぎ破壊する規模となる強大な気を直接撃ち放つ程の――恐らく本気となる姿は始めて見た。
勿論、誰しもがその強大さと、赤の他人に対する容赦の無さに恐怖する――――
「ここに飛ばされる前より相当弱っていたのはわかってたが、まさか、一発で体力の殆どを持ってかれるとは……ぜぇ、ぜぇ……思わんかった」
「そうでなくても、あの規模の気を放出すれば誰でもそうなるのは少し考えればわかるだろうに……やはりアホだなお前は」
「前はあの程度なら50発は休憩なしで出せたんだよ……ちくしょう……!」
雪蓮達の居る場所へと戻った際、疲労困憊な顔で二人に支えられてた姿を見た雪蓮達は、何事かと驚いた。
特に蓮華は、イッセーが山々を全力疾走してもここまで疲れた姿を見せたことが無かったので、思わず駆け寄って介抱までしており、思春は呆れた眼差しで息を切らしながらうなだれるイッセーと話をしている。
「大丈夫? 今水を……」
「俺の事は……良いから……それより、囮どころか敵陣の一角を消し飛ばしちまった後をどうするか、姉ちゃん達と……話し合えってんだ……」
「だけど……」
「俺の事は良いんだよ、こんなもの、暫く休めば元に戻る」
先程の事もあり、敢えて突きはなそうとするイッセー。
ヴァーリとジンガはそんなイッセーを見て、不器用な奴だと思うが敢えて言うことはしなかった。
「しかしどうする? 確かにイッセーの言うとおり、敵陣の一角は落としてしまったし、恐らく他の勢力達も、イッセーのやった事を見たから、必要以上の警戒をされるだろう」
「そうだったとしても、なるようになれだわ。
私達は、私達の『家』を守れればそれで良いし」
「随分と野心の無いことを言っているという自覚はあるのか?」
「あるわよ? 多分、あなた達のせいかも?」
「は?」
「俺達のせいって……」
野心が足りないという指摘をされてもあっけらかんとする雪蓮も、そんな言動を注意しようとしない仲間達までもが、雪蓮の言葉に同意するように頷くので、ジンガとヴァーリは微妙な気持ちになる。
別に世界征服を目指す悪の組織になれとは言っていないが、もう少し無いのかと思ってしまうので。
「三人が来てから今まで経った時は、決して短くは無いわ。
その過ごしてきた間に、其々三人には色々と学ばせて貰った事も多い。
アナタ達は自分を『所詮は他所から来た外様』とずっと思ってる様だけどね、我等にとっては外様と思うには時間が経ち過ぎてる」
「だが……」
「どこかの誰かさんみたいな覇道を目指している訳でも、皆が笑って暮らせる世にするのを目指している訳でもない。
私達は
未来ではなく、ありのままの今を守る為に生きる。
雪蓮の言葉に誰もが頷き、ヴァーリとジンガと……疲労で動けないイッセーは目を逸らした。
そう、三人の生き方にどこか似ていたから。
ふざけていて、嘗めていて、人をおちょくって笑って、年が上の女にすぐ鼻の下を伸ばして、城下の集落の既婚の女にすら、ド下手にしか聞こえない口説く文句ばっかり垂れてはにべもなく断れて……。
おおよそ誰が見てもダメ人間である一誠を確かに蓮華は虫が好かなかったし、バカにしたような呼び方をしてくるのも嫌だった。
「雪蓮姉様と神牙が先行して討伐を開始し、冥琳とヴァーリが指揮を取ってるわ」
「そうかい……って、何でそれについていかないんだよ?」
「足下もおぼつかないお前を放っておけるか。
半数をお前が消した時点で後始末をみたいなものだしな」
「だからそれをやれば良いじゃないかよ……。クソッ、高々一発でこうまで動けなくなるとは情けねぇ……」
「寧ろ何故今まで気が付かなかったんだ……」
「あの規模でぶっぱなしたのはこの世界で初めてだったんだよ。
今まであそこまで練り上げた事も無かったしな……。ドライグの力を借りてれば……」
何時もは無駄に自信たっぷりな態度は無く、疲れきった様子で歩いていた一誠は、見通しの良い崖の上から、戦場を見下ろしている。
「はぁ……」
「ため息ばかりつくな。
こっちまでお前のそのしょぼくれた気力が伝染する」
「そうよ、一瞬で大きな戦果をあげたのだからもっと堂々としても良いのよ?」
「……」
立っているのも辛くて、その場に座り込むイッセーを、思春と蓮華の二人が、自分達なりの言葉で励ます。
恐らく出会った当初なら罵倒でもされてた筈なのに……と思うとイッセーは余計複雑だ。
「……………」
完全に裏目だ。
何時もそうだ、思っていた通りに事を運ぼうとしたら大体失敗する。
何で何時もこうなんだ………イッセーは塞ぎ込む様に、やがて疲労の限界により眠ってしまう。
「………………」
「イッセー?」
「大丈夫です、眠ってしまっただけです。
しかし離れたとはいえ、戦場の前で眠るとは、やはり緊張感の無い奴です」
ピクリとも動かなくなったイッセーに、ちょっと心配する蓮華に、思春は安心させるように言う。
「…………帰る、か」
「蓮華様?」
「いや、そんなに未来へと帰りたいのかって思ってね。
私達が無理に引き留めてるから余計にそう思ってしまって……ね」
「…………」
イッセーからはこれまで、戦闘における技術を教え込まれた。
それこそ、壁を乗り越える為と、崖から落とされるとか、大きな湖のど真ん中に放り込まれたり、血に飢えた獣とサシで戦わされたり。
その段階が終わったら、容赦なく叩きのめされる組み手を休み無しでやらされたり。
「イッセーは初め、私に『俺が周りから不必要と思われる強さを持てば、喜んで永久に消えてやる』と言っていました。
それは恐らく本心でしょう、コイツは一度でも身内と決めた者には、どこまでも甘くなってしまう……私にはそう感じます」
「そうね。だから私達と似てるんだわ……きっと」
「ええ、一見すれば馴れ馴れしい奴ですが、ある程度深まると、私達に一線を引いているとわかります」
出来ないと思うことを根気強く教えてくれた。
無理だと諦めたくなる気持ちに喝を入れ続けていたくれた。
いい加減で、だらしなくて、バカっぽい。だけど、どこか献身的で、親身になってくれる。
それを知ってしまったからこそ……蓮華も思春も認めたのだし、最初に認めた小蓮に至っては本気でイッセーを求めているのだ。
「あ……」
「んー……」
帰りたい。帰らなければ、受け入れてしまうのが怖い。
そんなイッセーの本心を知ってしまった……いや、知ってしまったからこそ、まだ色々な事を学びたいと思ってしまっている。
そんな事を思う蓮華に眠ってしまったイッセーの身体が傾き、もたれ掛かってしまう。
「…………」
「起こしますか?」
「……。いえ、たまには良いわ。
やるべき事はやってくれたのだしね」
「……わかりました。
しかし、イッセーめ、心地良さそうに眠って……」
身体を預けて来たイッセーを支え、そのまま膝を貸す蓮華と一緒にすやすや寝ているイッセーの顔を眺める。
「あっ……」
「! な、なにをしてるのだこのバカは! やはり今すぐ叩き起こして――」
「思春! 良いわ、私は構わないからこのままにしておいてあげなさい」
「ですがっ!」
「い、良いのよ。
普段のお礼なんてこれくらいしかできないから」
その内、蓮華の腰に腕を回して抱き枕にし始めたので、流石に叩き起こそうとする思春に、ちょっとビックリしつつも大丈夫だからと宥める蓮華は、おっかなびっくりにイッセーの頭に触れる。
そして……。
「ん……?」
「あら起きたの?」
「こんな場所で深く眠るとは呑気な奴だ。
蓮華様に感謝しろ」
「え…? ………………のわっ!?!?」
目覚めたイッセーがまず視界に入ったのが蓮華の顔と胸で、すぐそこに居た思春の言葉を徐々に理解し、一気に脳が覚醒させると、俊敏な獣の様に蓮華から飛ぶ様に離れた。
「な、なにしてた俺?」
「蓮華様に破廉恥な真似をしてたとだけ言ってやる。
お前でなければ寝てる間に首と胴体を永久に離してやってたぞ」
「………。じゃあそうしろよ……てか殴り起こせし」
「仕方ないじゃない。
本当に疲れてたみたいだし、起きてそんな驚かれたら逆に傷つくわ……」
「いやだって……。ぐぅ……悪い」
「平気よ。それよりも、そろそろ終わった様だし、雪蓮姉様達と合流しましょう」
「お、おう……」
「? 何だイッセー? なぜそんな挙動不審なんだ?」
「な、なんでもない……」
妙にやわっこい感触が夢に出てたとは言えずに、しどろもどろに目を逸らすイッセー。
「わ、悪かったな蓮華ちゃま……。
最近どうも調子が狂うというかよ……あははは」
「?」
「調子おかしいのは何時もの事だろうに」
「そういう意味じゃなくてだな……くっ、よし、こうなったら領土に戻って人妻をお茶に誘って――」
「…………………」
「いやだから、何でそんな捨てられた子犬みたいな目で俺を見るんだよ蓮華ちゃま……」
「自分で察しろ、この間抜け」
「そうそう! 思春さんみたいな反応が正しいんだぜ! 蓮華ちゃまも、さん、はい!」
「ええっと、女の人に声を掛けて回るイッセーを見てると、最近とても寂しく思うから、やめてくれたら嬉しいな……って」
「そうそう、そんな感じ――――じゃない! やめろやめろ! そ、そんなしおらしい事を俺に言うな!」
「だ、だってそう思うから……」
前途多難なイッセーだった。
補足
ドッカンバトルのLRゴジータブルーのアクティブ・スキル的なドラゴン波。
ただし、威力は兆分の一も良いところ。
その2
どっかのめぐみんみたいにぶっ倒れるという予想外。
ナンテコッタイ!
その3
後先考えないでヘラヘラしてっからこうなる。
蓮華様のデレがお強いのはもう知らん。
続きは――感想でも頂けたら乗れるかも