色々なIF集   作:超人類DX

520 / 1034
無駄にクソ長くしてしまった。

理由? 感想頂けましたパゥワーよ。


踏み込む勇気

 孫策達――というか、その孫策達と一緒に居る三人組の男の内の一人が手からビームという、常識という概念に対して真正面から喧嘩を売るような事をして黄巾党達を消し飛ばしてしまったお陰で、思っていた以上に楽に倒すことが出来てしまった。

 

 

 まさかの金髪少女だった曹操が先に本陣を叩いて、黄巾党の首領格の首を討ち取った様だけど、その掲げられた首領格の首に変な違和感を感じるのは果たして気のせいなのか。

 

 いや、どちらにせよ、俺達は今回の戦いで今後台頭してくるだろう勢力の者達に名は知れ渡ったと思う。

 

 ……特にあの三人組の男とは話がしたいと俺は思っている。

 

 どこから来たのか、ひょっとして俺の様に未来から来たのか。

 勿論、俺が生きた未来の時代には、あんな手からビームを出せる奴なんてゲームかアニメの中での話なので、本当に未来から来たのかは疑わしい。

 

 けど、話をしなければならない――そんな予感はする。

 

 関羽……真名を愛紗はあの三人に近付くのは危険だから反対だって言っていたけど、言葉を交わせるのであるなら、いきなりビームをぶつけてくる事なんてしないと俺は思っている。

 

 だから俺は、討伐任も終わりを迎えそうになったこの状況を利用し、あの三人組が居るであろう孫策達のグループが集まる天幕を訪ねてみたのだけど……。

 

 

「今、ウチの兵は忙しいわ。

お引き取り願おうかしら?」

 

「私の目にはそうは見えないのだけど?」

 

「いい加減にして頂こうか。

いくら貴女であろうと、これ以上しつこいようなら、こちらにも考えがある」

 

「へぇ? どんな考えなのかしら?」

 

 

 

 

 

 

「…………先を越されたみたいだな、どうやら」

 

「その様ですな。

ご主人様、やはり連中と話をしてみるというのは止めるべきなのかと……」

 

「いや、俺も――そしてあの三人もきっと俺を知りたい筈だ。

あの三人がどこから来たかによっては……だけどな」

 

 

 孫策と周瑜、それにあの時見なかった孫呉の者達だと思われる人達が、天幕の奥で微妙な顔をしながらチビチビと水を飲んで小さくなってる三人組を守るように、曹操と護衛の者達の前に立ちはだかってるのを見て、愛紗が戻ろうと提案するけど、やはり俺はあの三人から同じ『匂い』を感じてやまない。

 

 

 だってその証拠に――

 

 

「!!! ヴァーリ、ジンガ! 北郷くんだ! ほら! 北郷くんがこっち来た!」

 

 

 俺に気付いた途端、曹操と孫策達の軽い修羅場めいた空気を我関せずな態度でいた三人組が、これでもかとハイテンションになったし。

 

 

「!? 祭! 穏!!」

 

 

 やっぱり向こうも俺と話がしてみたいのはわかった。

 三人が待ってましたな顔でこちらに近づいて来るのを、ずっと警戒心が強い愛紗が俺の前に出て三人を睨もうとするので、それを宥めて下がらせる。

 

 けれど、俺が来ている事に三人組の一人である……手からビームを出した方の男が思わず大声で言っちゃったもんだから、曹操達と睨み合っていた孫策達に気付かれてしまい、俺と三人組の間に割り込む様に、女の人が立ちはだかる。

 

 

「おっと、これは天の遣い殿? 我等に何かご用件でもおありか?」

 

「只今曹操さん方がすぐにでも帰られるので、それまでお待ちして頂けますかぁ~?」

 

「……う」

 

 

 と、笑ってるけど二人して全く目が笑ってないので、俺達は圧されてしまう。

 

 

「祭、良いから……」

 

「穏もだ、彼等には俺達の方から用がある」

 

 

 そんな二人を、黒髪で目付きが鋭い男と、暗めの銀髪で蒼い眼をした、どっちもイケメン枠に入りそうな男が止めに入る。

 俺はそんな二人に助かったと心の中で感謝をしようとしたのだけど――

 

 

「あぁ、ジンガ!? 怪我をしとるではないか!? ほら、顔が!」

 

「ぐも!?」

 

「ヴァーリさんもこんな所に寝癖が、ダメですよー?」

 

「みゅ……!!?」

 

 

 二人の男は、二人の女の人にいきなり抱き寄せられたかとおもったら、かなり大きな胸に顔を突っ込まされ、窒息するのでないかと心配になるくらい抱き締められててしまった。

 

 

「ふん、甘い。俺が残ってる事を忘れるとはねぇ?」

 

 

 が、バタバタと手足を動かしてもがく二人が、力尽きたかのようにその内動かなくなってしまったのを、若干羨ましそうに睨んでいた――そう、手からビームを出した茶髪の男が間を悠然と歩く。

 

 

「! よせイッセー!」

 

 

 何故かしまったという表情で焦る女性だが、ジンガは離してないのでシュールだ。

 そんな女性にイッセーと呼ばれた男はニヤリと笑う。

 

 

「残念だね黄蓋さんに陸孫さん。

俺はそこの甘い二人と違って、わざわざ止めてくる様な仲良しさんは居な―――」

 

 

 そう、イッセーという男は誰にも止められてない。

 つまり俺と話が出来るフリーの状態。

 

 勝ち誇った様な顔で、俺達の前に立ったイッセーという男は、満を持した顔で――――

 

 

「思春、小蓮」

 

「はっ!」

 

「わかってるよお姉様!」

 

「うげ!?」

 

 

 後ろから思いきり一人に押さえつけられ、横からもう一人に腕をきめられ、最後、小さな女の子に顔面に飛び付かれて視界まで封じられ…………あれ?

 

 

「邪魔すんなぁ!! つーか小蓮ちゃまが何で……!?」

 

「こっそり着いてきたの! そうしたらイッセーがもしかしたら居なくなるかもしれないって蓮華お姉様に言われて、それを聞いて黙ってられなくなったの!」

 

「れ、蓮華ちゃまめ、余計な事を……!

クソ、放せぇ!! ちょっと話を聞きたいだけなんだよ!」

 

「ダメー!! もしこの天の遣いとかいうのが、イッセー達の知りたいことを知ってたら、イッセー達が居なくなっちゃう! それだけは嫌!!」

 

「お願いだから今だけは……!」

 

「今更中途半端なまま逃がすか……!」

 

 

 小さな女の子が半泣きになってイッセーという男に抱きついたまま一切離れない。

 

 

「………。どうやら、相当この人達と仲が良いんだな」

 

「………」

 

「そうみたい」

 

「いいなー……あんな風に遊んでみたいのだ」

 

 

 うーん、ただの戦力としてではなく、孫呉の人達からは相当信頼されてるのが見てわかる。

 それと、今のやり取りを見てわかった。

 

 ……間違いなくこの三人は俺と同じ様な者達だったんだと。

 

 

 

 

 

 

 お気に入りの餌を取られてなるものかと、守る獣そのものだ……。

 曹操や、後から来た一刀は、三人を背にして守るように立ちはだかる孫策達にただただそう思った。

 

 

「ここで騒いでも仕方ないのは理解してあげる事にしたわ」

 

「ええ、別に私達も長居するつもりはないもの」

 

「お、俺も、ちょっと三人に確認してみたかっただけだから……」

 

 

 お気に入りの餌……というよりは、我が子を守ろうとする母虎のような激しい威圧を放つ孫策達に、曹操と一刀は刺激しない様な言葉を選ぶ。

 

 

「お先にどうぞ?」

 

「あ、はい……」

 

 

 主導権を握ったかの様に、曹操が一刀から先に言えと促すと、一刀は不満タラタラな顔して孫策達を見ていた三バカに話しかけた。

 

 

「あの……俺って天というかさ、未来から来たんだけど、キミ達もそうなのか?」

 

「「「!!!?」」」

 

『………』

 

「未来……?」

 

 

 前置き等無く、ドストレートに訪ねる一刀の言葉に曹操達が訝しげな顔をするが、それ以上に弾ける様な表情となったのはやはり三バカだった。

 

 

「ヒャッハー!! 大当たりィ!」

 

「キミ達もということはキミもそうなんだな!?」

 

「教えてくれ! キミはどうしてこの世界に!?」

 

『…………………………』

 

 

 あまりに歓喜が出まくりで、孫策達の大半が既に泣きそうな顔をしてるのだが、待ってましたとばかりに一刀の前に寄ってきた三バカは気づいてない。

 

 

「その前にキミ達の名前は?」

 

「兵藤一誠だ! よろしく北郷くん!」

 

「ヴァーリ・ルシファーだ、キミと出会えた事を光栄に思うよ」

 

「道外神牙。この世界に飛ばされて四季が多分二周してしまいそうだったが……えらく長く感じたものだ」

 

 

 一人一人が無駄に爽やかな笑顔で一刀に握手を求めるので、一刀は後ろの孫策達の怖い目になんともいえない苦笑いを浮かべながらも握手を交わしていく。

 

 

「教えてくれ北郷君! キミはどうやってこの世界に?」

 

「その前に、道外だったか? キミはさっきこの世界に来て四季が二周してしまいそうな時間留まっていたみたいな事を言っていたのって……」

 

「その言葉通りだ、この世界に飛ばされてから一年半は過ぎてると思う。

キミもそれくらいの時間居るのだろう?」

 

「いや、俺は来てまだ数ヵ月も経ってないんだが……」

 

「なんだって? ……いや、それは個人差という事で処理しよう。

して、どうやってこの世界に?」

 

「実家の倉の掃除を手伝ってた時、その倉にあった古い鏡が突然光って、気づいたらこの世界に……」

 

「「「鏡……?」」」

 

 

 鏡というワードを――やっと帰れる手立ての大きな一歩となる情報を聞くことが出来た三バカ。

 後ろで、雪蓮が蓮華達全員に『それらしきものを見つけたら三人に気づかれずに即座に隠せ』と命じてるのに気付いてない。

 

 

「キミ達はどうしてこの世界に?」

 

「え? ああ、かなり偶発的というか……今にして思えばくだらなかったというか……」

 

「まずコイツ、つまりイッセーが俺の大好物で楽しみにしていたチーズバーガーを目の前でムシャムシャ食べてな。

それに激怒して喧嘩をしたら、このヴァーリが、ラーメンの材料で炒飯を作って食った俺にキレて、三つ巴の殴り合いに発展したんだ。

そうしたら次元が割れて、そこに吸い込まれ、グレートレッドの頭の上に落下して、キレたグレートレッドを俺達が逆ギレで半殺しにしてたら、次元の歪みに吸い込まれて――」

 

「ちょ、ちょっと待った! 殆ど非現実的過ぎてわけわかんねーよ!? 次元の狭間!? グレート・レッドってなに!?」

 

「「「つまり、喧嘩してたら飛ばされました」」」

 

『……………』

 

 

 飛ばされた理由が難解過ぎて、一纏めにしたら単なる喧嘩の結果だった。

 無駄に揃って『キリッ』とした顔の三バカの吐露に、一刀のみならず、何気に聞き耳を立ててい曹操達もなんと言って良いのかわからなかった。

 

 

「つまり、アナタ達は天から来た訳じゃないと……?」

 

 

 ただ、何となくこの三人が天ではない所から来たのだけは察したので、曹操が訊ねると、三人は首を縦に振る。

 

 

「そんな仰々しいそうな場所とは無縁っす」

 

「天界なんて頼まれても入りたくないね」

 

「狂った子供呼ばわりする連中は嫌いだ」

 

『……………』

 

 

 思ってたよりファンタジーな連中なのでは? と、言葉の節々から感じた一刀。

 そもそも手からビームをぶっぱなせる時点で、そんな気はしていたが……。

 

 

「ところで、そこのアナタ」

 

「へ、俺?」

 

「そうよ。

先の戦いの際、妖術のようなものを扱っていたけど……」

 

「え? アレは妖術ではないっす。

身体の中にある気力をそのままぶつけただけなんで、修行すれば誰でもある程度は――」

「! へぇ? 例えば私達でも?」

 

「? ええ、現に俺は三人程扱える領域に修行させましたし……」

 

「…………。間抜けな男とは思っているけど、中々突拍子が無いわねやはり。

けど、面白いわ、アナタ、先程のやり取りを見ていた限りでは元の世界とやらに戻りたいのでしょう? どう? 私に遣えたらそのお手伝いをしてあげても良いわよ?」

 

『……!』

 

「か、華琳様!? こんなバカそうな男共の言う事を信じるのですか!?」

 

「謹みなさい春蘭。

言葉を交わせるのであるなら、理性の無い獣とは違うのよ。

それで、どう? 随分と孫策達に縛られてるみたいだし、私に遣えたら自由は保証できるわよ? ……ちゃんとお仕事さえできれば――」

 

「華琳様、華琳様……」

 

「なによ秋蘭。今私は……」

 

「そうではなく……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「訓練すればこうやって……」

 

「わっ! お兄さんの手がピカピカしてるのだ! それに凄く暖かい……」

 

「火起こしなんかこれでいけるんだぜ?」

 

「すごーい! 他にはどんな事に使えるんですか?」

 

「他? うーん……ある程度の傷を癒すとか、自身の気力を分け与えて、その者を一時的に強くさせるとかか?」

 

「その気力って、鈴々にも使えるの?」

 

「……えーっと、この子の真名かな?」

 

「張飛だよこの子は、ああ、こっちが関羽で、こっちが劉備」

 

「……………………うん、散々孫策さん達で驚いたからもう驚かんぞ。

そっかー、キミ張飛さんだったんだなぁ……」

 

「え……」

 

「やべ!? 小蓮と喋ってる時の癖がつい……! ご、ごめんごめん!」

 

「ぃ、ぃゃ……別に良いのだ……うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………ご覧の通り、途中から一切華琳様のお話を聞いてません」

 

「………………」

 

「あの大馬鹿者め! やはり今すぐ斬り倒してくれるわぁ!!」

 

 

 やはりパラレルワールドとはいえ、神牙の祖先であるだけあり、人材コレクター気質だった華琳は、程度はどうであれ使えると思って勧誘しようとした。

 が、勧誘されてる本人は一刀達との会話に華が咲いてしまい、全然聞いてもなかった。

 

 それを側で見ていた雪蓮達――特に蓮華と小蓮が、仰々しく演説してたのに無視されてる華琳を見ながらクスクス笑っていたり……。

 

 

「天誅!!」

 

「ん?」

 

 

 華琳が馬鹿にされたと感じた春蘭――つまり夏侯惇が激怒と共に剣を抜いて、イッセーに斬りかかった。

 が、首を狙った一閃は届いたものの、ポカンと間抜けな顔をしたイッセーの首は斬れず、逆に春蘭の剣が真ん中からへし折れてしまった。

 

 

「な……!?」

 

「……? なんすか?」

 

「な……な、なんだお前!? く、首に鉄でも仕込んでいるのか!?」

「へ? いや別に……」

 

「う、嘘を言うな! 仕掛けだ! 我々を驚かす為の仕掛けだ!!」

 

 

 

 フィジカルがこの世界で大分弱体化しているとはいえ、それでも人を辞めてしまっているイッセーにビビる春蘭。

 結局華琳の勧誘は有耶無耶にされ、今回の騒動は幕を閉じるのであった。

 

 

「それらしき物が流れて来た場合、真っ先に報告しなさい。勿論、三人には内緒よ?」

 

『はっ!!』

 

 

 情報は手に入れられたけど、余計帰れそうも無いフラグが立ちまくったというオチで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰る為の情報を手に入れられた。

 そんな訳で、銅鏡みたいな骨董品をこの日以降探し回る三バカだが、雪蓮達の密かな妨害もあって、やはり見つかるわけも無かった。

 

 そもそも、一刀の見たものとそっくりそのままな鏡を仮に手に入れられたとしても、帰れる保証があるのかも怪しい所だったし、この日を境に孫呉の者達が露骨になってきた。

 

 

「さぁジンガ、訓練よ訓練!」

 

「ヴァーリ、お前は私を手伝ってくれ。くれるよな?」

 

「「………」」

 

 

 本当に露骨だった。

 逃げたら許さんみたいなオーラがビシバシ出まくりだった。

 討伐からの帰還を境に、引っ張り回される頻度がかなり多くなってしまったのだ。

 

 

「露骨に北郷君の話を聞いて喜んでたのは謝るから――」

 

「あら、別に怒っては無いわよ? ジンガ達が帰りたいと思っているのはよーく知ってるもの? 例えジンガに押し倒されて胸を鷲掴みにされても、それは仕方ない事だもの?」

 

「…………」

 

 

 これまで雪蓮達にやらかしてしまったラキスケの呪いを盾にされてしまうジンガは、これ以上なにも言えない。

 事故と言い張っても事実は事実なのだ。

 

 

「冥琳も、帰ると言い張っている事をまだ怒っているのか? 何時かは訪れる話なんだぞ?」

 

「別に怒ってはない。

雪蓮だって理解してるし、私だってわかっている。

だからさ、何時お前達が消えてしまうかわからないのだから、今の内にやるべき事をするのさ」

 

「そうですよ~? ヴァーリさん達がもしも突然帰ってしまわれたら我々の士気が0に下がったまま永久に上がることなんて無くなりますから~ ですから、そうならない為にこの日々を大切にするんですよ?」

 

「だからといって、何故、座ってる俺にわざわざ引っ付くんだ。

離れて座ってくれよ、かなり動きづらいんだが……」

 

 

 天然でやらかしてるヴァーリもまた然りだし。

 

 何よりイッセーは……。

 

 

「さて、キミ達は見事に気力の扱いをマスター……じゃ伝わんないな、ええっと熟達した。

後は各々がその扱いを上達させていくということで、今日より俺はキミ達とは別の部隊か何かに配属して貰える様に、孫策のお姉さんにお願いしに――」

 

「雪蓮姉様が頷くと思う?」

 

「今更無理だと思うが?」

 

「………………思わないと思えてしまうのが悔しいぜ。

ちくしょう、そもそもキミ達は俺が死ぬほど嫌いだったんだろ? その信念を貫き続けろってんだ」

 

「え、シャオは最初からイッセーが好きよ?」

 

「……………。あ、うん……そうなんだね」

 

 

 あの手この手で蓮華の護衛的お仕事から降りる為に、自分の戦闘技術を叩き込んだだけのつもりが、すっかり蓮華護衛軍の一員扱いされてる事に――そして抜け出せなくなってる現状に乾いた笑いしか起きなかった。

 

 

「俺がキミ達基準だと化け物みたいな力を持ってるから、妙に頼りにしてる気なんだろうけど、仮に俺が力を持たない奴だったら見向きもしないだろうに」

 

「力があるからこの地に降りて出会えたのだから、そんな仮の話をされても無意味だな」

 

「お前は確かにいい加減だし、女にだらしないし、大体年の行ってる者ばっかりに声を掛けては呆気なくかわされてしまう情けない奴なのかもしれないが……」

 

「思春さんだけずっとこんな調子なのが、まさか救いに思えるなんて……」

 

「シャオは思わないよ? イッセーはイッセーのままで良いし、変わる必要なんて無い。ずっと一緒に居たい……」

 

 

 ズケズケとダメな所を指摘してくる思春こそがある意味一番イッセーにとって、気が楽に思える。

 というより、イッセーにしてみれば、何でそこまで帰って貰っては困るのかが解せない。

 

 離れにある家屋の庭の縁側でのんびりしながら、膝に乗ってる小蓮を優しく撫でてて、現在進行形でなつき度メーターをカンストさせ続けさせてる自覚がまるでない。

 

 周泰こと明命辺りは大体一線引いてくれたやり取りが出来るのに、この三人は本当に、簡単に、楽々と自分の中に踏み込んでくる。

 

 蓮華に至っては、最早当初のツンツンさが嘘の様に無いのだ。

 

 

「ジンガもヴァーリも似た様な事で頭抱えてると思うと、はは……ハァ……」

 

 

 鏡なんて見付からないし、力は塞き止められてる様に復活の兆しも無い。

 

 全盛期のパワーさえ戻れば、無理矢理にでも次元を抉じ開けてしまえるのだが、ここに来て取戻しの修行をしていても進化が異質的に遅くて何年掛かるかわかったものではない。

 

 

「帰るのを諦めろとは言わない。

だが、蓮華様達の前ではあまり口にはしないでくれ」

 

「…………わーったよ。はぁ……」

 

 

 ならばこの地域から出ていけば良い話だが……。

 

 

(あの二人も言ってたが、若干鬱陶しい事もあるけど、居心地が良すぎるんだよなぁ)

 

 

 神滅具を宿すからと、他の勢力からの鬱陶しいちょっかいも無いし、不便な事は多いが腹一杯食べられる。

 優しくされ過ぎるのが怖いと思うとはいえ……一誠はここに居るとかつてのトラウマを忘れられるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『人の理を逸脱しなければ、これまで生き残る事なんてとても出来なかった。化け物? そりゃあ最高の褒め言葉だぜ』

 

 

 そうヘラヘラとした顔で言っていたイッセー。

 自分はどうしようもない奴だと態度で示しては、最近私達に幻滅される事を狙っているみたいだけど、結局の所、アイツの内面を少しでも知ってしまった今となっては、とてもじゃないけどそう思える事が私にはできない。

 

 

「帰らなければならない……か」

 

 

 外様だから。

 余所者だから。

 この時代に存在してはならないから。

 

 そんな言葉を並べて私達から離れようとしているのは、確かに理由としては理解できなくもない。

 けれど、本当の意味は別にあるのだと、私はもう知ってしまっている。

 

 それを確かめるのが怖くて――確かめてしまったら本当の意味でアイツが居なくなってしまうのだと思ったから今まで聞く事ができなかった。

 

 けど……私は先に進む『勇気』をイッセーが教えてくれた今だからこそ、確かめなければならないと思った。

 

 その為にはイッセーと二人の時でなければ聞くことはできない。

 これは思春や小蓮や明命の前で聞いてはいけない――そんな気がするから。

 

 

 だから私は、寝静まった夜を利用して、イッセーの部屋を訪ねてみた。

 

 

「あ、あれ? ひょっとしてこんな夜更けに男の部屋を訪ねるってイケナイ事だったかも……」

 

 

 その途中で、夜の時間に男の部屋に行こうとするのはアレだったと気付いた。

 雪蓮姉様が賊討伐の任を行ってた際、何気なくイッセーに対して、私と閨に入れば――的な事を言っていた事も同時に思い出してしまい、一気に緊張してしまった。

 

 けど、やはり戻るという考えはこの時私には無く、結局私は心臓の鼓動が喧しく鳴り響くのを深呼吸して落ち着かせながら、イッセーの部屋を訪ねてしまった。

 

 

「い、イッセー? 私だけど、もう寝ちゃった?」

 

 

 いきなり開けてしまうのはとても失礼なので、戸を軽く叩きながら声を掛けると、戸がゆっくりと開く。

 

 

「…………。こんな夜中になんだよ?」

 

 

 一応周りに配慮してるのか、小声のイッセーはかなり怪しんだ顔を私に向けている。

 

 

「ちょっと二人だけで話がしたくて、入っても……?」

 

「……………。別に良いけど」

 

 

 考えてみればこんな夜にイッセーと話をするなんて初めてな気がする……なんて思いながら、中へと招き入れてくれたイッセーに促される形で部屋へと私は入る。

 

 するとイッセーは、入った私を部屋の隅にあった椅子に座らせ、自身は使ってる寝具に腰掛けながら口を開く。

 

 

「あのさ、キミは天然ちゃんか何かなの?」

 

「え?」

 

 

 少しだけ怒ってる声色のイッセー。

 

 

「こんな夜更けに野郎の一人の部屋を女の子のキミが訪ねてくるのはどうなんよ? って事だよ。

俺を野郎として見てねーってのなら全然構わないが、こんなの誤解を招くぞ?」

 

「そ、それは私も途中で思ったけど、イッセーはほら……何となく信用できちゃうというか」

 

「そーかい。

ふっ、別に何もしねーけどさー」

 

 

 イッセーこそ、私をそんな目で見てもないのに……。

 

 

「んで? 話って何だ? 夜更かしは美容の大敵らしいから、早く話して寝た方が良いぜ?」

 

「ええっと……」

 

 

 

 少しだけその事実を寂しく思いながらも、私は切り出す。

 

 

「………。その、リアスって名を知ってる?」

 

「……………………」

 

 

 イッセーを知ってから何度も見る夢に出てくる、イッセーと共に居た女達の事を……。

 

 

「姫島朱乃、白音、ギャスパー、木場優奈―――」

 

「…………。何故テメーが知ってる……!」

 

「っ!?」

 

 

 リアスとやだけではなく、夢の中でイッセー自身が口にした名前を次々と並べていく私を、当初イッセーは無表情で聞いていた。

 だが、その表情はやがて見たこともない憎悪のものへと切り替わり、その声も恐ろしいほどに冷えきり、そして低いものになっていた。

 

 そしてその瞳も、赤く――イッセーの気の色と同じ血の様に真っ赤に。

 

 

「あぐ……!」

 

「答えろ……何故その聞きたくもねぇ名前を知ってやがる……!!」

 

「ゆ、夢……! い、いっせーと出会ってから……よく、見る夢に、お前と、お前と一緒にいる女達が現れて……!」

 

「………ハッ!」

 

 

 憎悪を剥き出しに、私の首を掴んで締め上げたイッセーに、私は必死で知っている理由を話した。

 するとイッセーは正気に戻った様な顔をすると、その手を緩めた。

 

 

「げほ、ごほっ!」

 

「ご、ごめん……! お、俺……!」

 

 

 そして自分がやった事を後悔した顔をしながら後退りすると、そのまま座り込んで頭を抱えてしまった。

 

 

「まさかキミからソイツ等の名前が出てくるとは思わなくて……。

夢って……なんでそんな夢を……」

 

「それはわからないけど、やっぱり聞くべきではなかったみたいね。

ごめんなさい、嫌な事を思い出させたみたいで……」

 

「まさかドライグか? くそ、声が聞けねぇからわからねぇ……」

 

 

 自分の左腕――輝きと共に現れた、左腕全体を覆う真っ赤な甲冑を見つめるイッセーは、精神的にかなり動揺してしまっているらしく、声が少し震えていた。

 

 その様子を見て、そしてさっき我を忘れた姿を思い返し、私は夢の中身がただの夢では無いことを確信する。

 

 

「やっぱり私が見ていた夢は……」

 

「……。ちなみにどんな内容の夢?」

 

「幼いイッセーが両親と思われる二人に、力を持ってしまったが故に捨てられて……。

赤い髪をした女に拾われ、信じられないくらい広大な領土に建っている城で暫く生きていて、多分仲間だと思われる者達と楽しそうにしていて……」

 

「……………」

 

「………………。お前より強い力を持った者が現れて、また捨てられてしまう――そんな酷い夢よ」

 

「…………………やっぱり、ドライグだな。

修行とかで身体が触れ合った際、ドライグがキミに記憶の一部を夢として見せてるんだと思う」

 

「ドライグというのは、イッセーの中に宿る龍の事ね?」

 

「ああ、本来は声を聞かせる事が出来た筈なんだけど、弱体化のせいか、意思疏通が今日まで出来てない」

 

 

 苦い顔をしながら自分の左腕の赤い甲冑――というよりはそれに宿る龍を睨むイッセー。

 イッセーの話が本当だとしても、ある意味私達は納得できる気がする。

 

 イッセーに宿る龍が私達にイッセーの過去を夢として教えていると考えた方が、同じ夢を何度も見てる理由にも納得できるから。

 

 

「この分じゃ、思春さんや小蓮辺りも、あの胸くそ悪いもんを見せられてるかもね。

悪かったな、俺の相棒が……」

 

「……。それからあの女達とは?」

 

「縁なんかとっくに切られちまったから、音沙汰無しだよ。

ムカついて、俺が縁を切る理由になった野郎を目の前で惨殺してやったからな」

 

「残酷だとは思わないわ。

私だって同じ目にあったら、復讐を考えるもの」

 

「復讐なんてもんじゃない。

ソイツが単に気にくわなくて殺したかったから殺してやったんだよ。

復讐だなんて高尚なもんじゃない」

 

 

 自嘲するような笑みを浮かべて、気にくわないから殺したと吐露するイッセーを私は嫌悪する事なんて出来なかった。

 

 だから私は思う。

 イッセーは今でも、この夢に出た女達が……。

 

 

「今でも好きなの……? 彼女達を……?」

 

「……………」

 

 

 夢に見た、再び捨てられる前のイッセーは間違いなく彼女達を大切にしていた。

 それこそ命をかけてまで守るという大きな意思までも夢の中のイッセーから感じ取れてしまう程に。

 

 だから私は、その答えを聞くのが怖いと思ったけど、聞かなければ前に進めないと思い、遂に聞いてしまった。

 この答えによっては、私はイッセーが帰るのを止めることが出来なくなってしまったとしても、私はイッセーの気持ちが知りたかった。

 

 

「俺自身なんかでは無くて、俺の力だけを利用したかった連中だったと知った今、思い出したくは無い昔の主としか思ってない。

単純にその程度の繋がりに酔ってた――それだけだ」

 

「……………」

 

 

 部屋の外から射す月明かりを背に話したイッセーの、言葉に、私はきっと一番ホッとしたのかもしれない。

 そして同時に、私はきっとイッセーが…………。

 

 

「話はそれだけか? なら、そろそろ眠たいんだけど」

 

「………」

 

 

 そう。乱暴で、食い意地がはってて、女にだらしなくて、ドジで、不器用。

 

 でもそれは、誰よりも寂しがりやである自分を覆い隠す為のものでしかない。

 信じた者に二度も見捨てられたイッセーの癒えない傷……。

 

 

「……。なんだよ、話は終わったんだろ? 真面目に早く寝ろよ? 明日起きんのが辛くなんぞ?」

 

 

 私に背を向け、横になったイッセーは繋がりをまた失うのが怖いから、繋がりを拒絶しようとする。

 最初から持たない方が、きっと心の傷は浅く済むからと……。

 

 

「………」

 

「…………」

 

 

 今私にイッセーの抱える傷を癒せる事は出来ない。

 繋がる事を恐れてるイッセーを縛り付けているのは、他ならない私達だから。

 

 色々な心構えが技術を教えられてきたけど、私はそのお礼なんて何一つできてない。

 

 確かに最初は、こんないい加減な男なんて……と思ってきた。

 

 けれど、いい加減だけど、イッセーは飲み込みの特に遅い私に力の扱い方を、飲み込みが遅いと蔑む事もなく、ずっと丁寧に、親身になって教えてくれた。

 その時のイッセーの姿が、きっとイッセーの本当の面であり、優しさだったと気付くのに、不覚にも私は遅かったけど、今ならわかる。

 

 我を忘れて私の首を締めてしまった事を謝る、弱々しい姿もまた……本当のイッセーなんだと。

 

 そう思えば思うほど、私はイッセーに惹かれていき、自分でも驚く程躊躇いもなくイッセーのとなりに入っていった。

 

 

「!? な、はにしてんだよ? 眠くなりすぎてボケたか? ここはキミの部屋じゃ……」

 

「知ってるわ」

 

「じゃ、じゃあなんだよ……」

 

「自分でもわからない。アナタを憐れんでる訳じゃないのは確か。

ただ、こうしたいと思ったから……」

 

「俺を寝不足にする作戦だとするなら、俺がここから出ていけば――」

 

「そうじゃない! アナタを困らせてるのも自覚している。

けど、こうしたいと思ってしまったのだから、仕方ないじゃない……」

 

 

 背中越しに話すイッセーに、私は私の今の気持ちを吐露する。

 別にやましいことをしたいとかではない。ただただ、その心の傷を抱えるイッセーの傍に……それだけの気持ち。

 

 

「お願い、私を見てイッセー? 私がただアナタを哀れんでいるだけなのかを、確かめて?」

 

「……」

 

 

 あの女達がイッセーを見捨てたというのなら、ある意味私は感謝してやりたい。

 お前達が見捨てたからこそ、今のイッセーとこうして向かい合えたのだから。

 

 

「なんなんだよ、ここの連中は。

簡単に心の隙間に入り込みやがって……」

 

「それはお互い様よ? アナタだって私に散々不躾にものを言ってきたじゃない?」

 

「ああ、そうだよ。

キミ等に死ぬほど嫌われたら、あんな面倒な事はしなくて済むと思ったからな」

 

「ならば、その考えは失敗だったわ」

 

「…………」

 

 

 帰りたい気持ちがあの女が理由ではないのはわかった。

 その上で私は思う……今、私の言葉に目を逸らしたイッセーを離してはならないと。

 

 ジンガやヴァーリは姉様や冥琳達に任せておいて、私はイッセーを絶対に離さないように生きていくんだって……。

 

 

「少し冷えるわ……。でもこうすれば寒くないわ」

 

「!? な、なにすんだ……!」

 

「寒いの。ふふ、でもイッセーは暖かいから我慢できるわ?」

 

「ち、違うっ……! 自分で何をしてるのか理解して――」

 

「理解してる。このまま一緒に眠りましょう? アナタが辛い夢に魘されたとしても、私がこうして傍に居て抱いてあげるわ……」

 

「そ、そんなサービス要らねぇ! キミはさっさと自分の部屋に――」

 

「真名で……!」

 

「!」

 

「キミとかじゃなく、後ろにちゃまなんて付けないで、私を真名で呼んで?」

 

 

 何に邪魔されようと、例えイッセーよりも強大な力を持った何かが現れたとしても、私はイッセーを決して裏切らない。

 

 裏切るくらいなら、死んだ方がマシだもの。

 

 

「れ、蓮華……」

 

「ふふ、イッセーにちゃんと真名で呼ばれると胸が高鳴るわ。

我ながらなんて単純なのかしら……でも、嬉しい」

 

「お、おっぱいが当たりまくってんだけど……!?」

 

「趣味じゃないって言ってたけど、その態度だと意識はしてくれるのね? やっぱり嬉しい……。

大丈夫よ、例えそうなったとしても私は受け入れるから……」

 

「ち、ちくしょう……! やっぱり狡い……」

 

 

 困惑するイッセーを抱きながら、共に意識を手放す。

 叶う事なら、過去とは関係ない夢を二人で見れたら……そんな事を願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌朝、部屋をこっそり出ようとした所を、祭に目撃され、あっという間に話が広まって大騒ぎになり、小蓮と思春達から何度も尋問されしまった。




補足

帰る帰る煩すぎて、皆ガチ化し始めるという本末転倒もの。

北郷くんには関心ありまくりだけど、曹操さん達には欠片もないので地味に塩対応だぜ。


その2
北郷くんとはこの世界に飛ばされた時系列がずれてる。

というか、ひとつ年を取ってるくらいは少なくとも呉の皆さんと居たからここまで囲まれてるというね。

こらしょうがない。


その3
デレ蓮華ちゃま、本気出しました。

おかげで、当初、生真面目堅物キャラ苦手と言ってたイッセーくんがどぎまぎさせられるという攻略される側に!


一年半以上、親身になって色々と教えてくれたともなれば仕方ないのだ。


続き? …………何時ものパターンがあれば考える

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。