色々なIF集   作:超人類DX

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あーあ、5までやっちゃったよ。




――THE・嘘予告集5――

 何時だって余裕そうな笑みを浮かべ。

 

 何時だって余裕な言葉を並べ。

 

 何時だって辛そうな顔はしなかった。

 

 

 しかし彼の本当は心は酷く寒くて、酷く寂しい。

 

 

 本当の胸の内は誰にも決して悟らせない。

 

 誰よりも大好きだった者との覚悟の別れがどれ程に彼の精神をすり減らしたのか。

 

 自分で決めた道とはいえ、愛する者達との永遠の別れはきっと本当なら私も辿る筈だった事を思えば、彼の言う『クソの役にも立たない台無しスキル』に救われた私はきっと運が良かったのだろう。

 

 だから……だからこそ私は彼がこれからどんな道を孤独に歩むのかが気になってしまった。

 常に周囲を――自分の心を誤魔化しながら笑わせている青年の先が知りたかった。

 

 人である事を辞め。

 人を超越し。

 

 きっと神をも捩じ伏せるまでに進化を重ね、今尚止まらない彼がどうなってしまうのか。

 孤独となる運命から引き上げてくれた、異界を生きた青年のその未来を。

 

 英雄(ヒーロー)である事を拒絶し、愛する者達だけに力を注ぎ続けた彼をずっと――

 

 

『ひ……ひひっ! ひはは……! また来ちまったぜ……! やっちまったぜ……!! この感覚! この頭の中が急激に冴えまくる清々しい気分!! ()を乗り越えた時の気持ちよさ……!! ハハハハハッ!! もう不必要だと思っていたのに、やっぱり忘れられねぇ! 最高に『ハイ』って気分になるこれをよォ! アッハハハハーー!!!』

 

 

 無限に成長し続ける異質さを持った彼を見ていたい。

 

 

 

 

 最速タイムで回収任務を完了してしまった六課は、申請していた任務期間の終日までを地球でのんびりと過ごす事になった。

 

 それはとどのつまり、遊びまくるという事であり、それを聞いた瞬間、すずかとアリサがヘリに引きこもろうとしたイッセーをなのはやフェイト等と連携して取っ捕まえて引きずり回したりするという事であり、ナンパに繰り出す暇なんて当然彼に与えられる訳もなかった。

 

 

「翠屋だァ!? ぜってー行かねー! 行かねーったら行かねー!!」

 

 

 その挙げ句、なのはの実家でお土産ケーキを買いに行くついでに挨拶しに行こうという話が出た瞬間、イッセーは海鳴市に行きたがらなかった以上に行かないと駄々をこねまくっていた。

 

 

「どうして嫌なの? 改めてイッセーくんを家族に紹介したいのに……」

 

「もう知ってるし、行ったら絶対妙な誤解された挙げ句、シスコンの兄貴に追いかけ回されるに決まってんだ! つーか10年くらい前だってそうだったしよ!」

 

 

 テコでも動かんとコテージの柱にしがみつくイッセーの必死過ぎる声に、なのはの実家の人達と一体何があったのだろうかとフォワード陣達は若干引く。

 

 

「誤解なんて誰もしていないから大丈夫だよ? 第一、誤解でもなんでもないし」

 

「それが誤解だっつーの! とにかく行かねーったら行かねー! アインスとここで留守番してるから皆で行ってこい! 頼むから!」

 

 

 と、ここでまたしても余計な事を言ってしまったせいで、結局イッセーは全員に引きずられる形で、10年程前の苦い思い出しかないなのはの実家に行くことになってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 高町なのはの実家である翠屋。

 つまり高町家がそこには居る訳だが、約10年振りに嫌々訪れる事になったイッセーを……意外な事に高町家の皆さんは歓迎した……というのは少しだけ語弊がある。

 

 

 厳密には高町美由希は年も近いイッセーとの久々の再会を普通に喜んだし、母の桃子も同じくだ。

 

 

「美由希ちゃまがこんな素敵な女性になるとは……!」

 

「相変わらず軽いわねー? どうせ他の女の人にも言ってるんでしょう?」

 

「否定はしないが、俺はそう思った相手にしか言わない主義だぜ」

 

「そういうところも変わってないみたいで安心。

……まあ、変わらなすぎてお兄ちゃんとお父さんがピリついちゃってる訳だけどね。

あ、それよりもこれ食べてよ? 私の成長の証よ」

 

 

 なのはの姉である高町美由希とヘラヘラした会話をするイッセーは、この時点では翠屋に来て割りと良かったかもと思っていた。

 美由希と仲良さげに会話してると思った、フェイトやアリサやすずか等がむくれた顔をしているが。

 

 

「相変わらず、あの美由希さんの料理を平然と食べてるね……」

 

「どんな味覚と胃をしてんのよアイツは……」

 

 

 実は料理の腕が壊滅的な美由希作成のお菓子を平然と食べては『普通に俺は食える』と言い切ってるイッセー。

 10年経とうが、その腕が壊滅的なのにも拘わらずだし、実際ムシャムシャ食べてるイッセーに倣ってヴィータが口に入れたら卒倒している。

 

 

「シャ、シャマルと同じくらいやべぇ……げほ!」

 

「水を用意せぇ!」

 

「まさかシャマルと同じ腕を持つ者だったとは……」

 

「私はそんなに酷くないですけど!?」

 

「イッセーくらいだろ、シャマルの料理を平然と美味いと言い切って食べ尽くせるのは……」

 

 

 明らかに固い物でもバリバリと租借しながら平気な顔して食べてるイッセーが異常なだけだと、筋トレマニア化したザフィーラは言う。

 それもその筈だ、イッセーはこのレベルの料理をその昔嫌という程食わされていた時期があったのだから。

 

 

「ソーナ――じゃなかった、ひんぬー会長に比べたら全然美味いね」

 

「ソーナ? なによ、元カノ?」

 

「違う違う。

……一応昔お世話になった先輩の一人で凄い貧乳な地味眼鏡っ娘」

 

「ふーん?」

 

 

 時折出てくる、会ったことは無い女性らしき名前を何気なく言ったイッセーの後ろで、なのは達がピクリと反応するのを美由希は見逃さずに苦笑いだ。

 とはいえ、自分の料理を美味いと言ってくれるのはイッセーだけなので、久々に気持ちの良い食べっぷりに彼女はとても満足だ。

 

 

「ごっそさん」

 

「お粗末様でした。

うーん、イッセーくんくらいだわ、私の料理を食べてくれる人は」

 

「マジで? んだよ、それならたまにとは言わずに毎日俺の為に――」

 

 

 

 美由希の言葉に対して、またしてもイッセーが余計な事を聞いたり言ったりしそうだ。

 それを察した瞬間、なのはの行動は早く、この時を待っていたとばかりに放ったなのはの一言で修羅場が確定してしまう。

 

 

「あのね、イッセーくんとは同じ職場で……えっと、結婚を前提にしたお付き合いをしてるの」

 

 

 本気で喜んでる姉を見て危機感を覚えたなのはが、イッセーと腕を組ながら、爆弾を投下する。

 

 その瞬間、母である桃子以外の空気が完全に停止したのは言うまでもないが……。

 

 

「貴様ァ! やはりあの時点でなのはを狙ってたのか!?」

 

「ちげーわシスコンめ! 俺だって今初めて聞かされて驚いてるし、そんな気だってねーわい!」

 

「なんだと!? なのはが成長した途端興味ゼロか! やはりロリコン――」

 

「俺はロリコンじゃねぇ! いい加減ぶっ飛ばすぞ小僧が!」

 

 

 不倶戴天の敵だと10年前の時点で認識していたなのはの兄である高町恭也がイッセーに食って掛かるが、イッセーも応戦し、取っ組み合いとなる。

 

 流石にマジになったら恭也が大変な事になるので、彼の力に合わせているものの、なのはの一言のお陰でとんだ修羅場となり、桃子が一言で全員を止めるまで騒ぎは続くのであったとか。

 

 

 

 

 

 フェイト・T・ハラウオンにとってしても、イッセーという存在は、歪な過去から立ち直る大きな切っ掛けでもあり、憧れでもあり、初めて母親以外で本気で求めた相手だ。

 

 何時でも笑ってくれて。

 何時でも味方でいてくれて。

 

 ピンチの時に颯爽と現れてお助けしてくれるヒーロー。

 それがフェイトにとってのイッセーなのだ。

 

 

「結局酷い目にあった……」

 

「ご、ごめんね? やっぱりまだお父さんとお兄ちゃんは心の準備ができてなかったみたいで……」

 

「10年前から不審者だと思ってた奴を横にあんな事を言えば誰でもああなるぜ」

 

 

 そんなイッセーを慕う者は少ないかもしれないけど、フェイトにとっては少なくない。

 親友のなのはもそうだし、すずかやアリサだって……それに一番の脅威はやはりアインスか。

 

 考えれば考える程、もしイッセーが他の女性と深い関係にでもなったと考えるだけで、震えが止まらない。

 

 だが、立ち止まる訳にはいかない。

 

 立ち止まって失うくらいなら前に進む。

 

 それはイッセーから教えられた信念であり、現在のフェイトの精神の根となる言葉なのだ。

 

 

『悪いが、俺はこの子と別に友達だとか、この子の為だとか、横槍にしかならない正義感を振りかざすだとか、そんなつもりで此処に立ってる訳じゃない。

元々俺は完璧な外様だし、これから何が起ころうが知ったことじゃないし、アンタが何をしでかそうがどうだって良い』

 

 

 まだ小さな子供だった。

 母の言葉を絶対と信じていた。

 

 母の望みの物を何も知らされずとも用意する事が子供の務めと信じきっていたあの頃。

 

 今とまるで変わっちゃいない不思議なお兄さん。

 魔法も何も知らない、ただの青年だと思っていたけど、ちょっと優しいお兄さんが母に放った言葉。

 

 

『自分の命を投げ出しても子供を守ろうとした母親を俺は知っている。

自分がどれだけ嫌悪されようとも嫁さんと娘を守ろうとした不器用な親父を俺は知っている。

昨日まで確かに存在すらしてなかった――どこから沸いて出てきたのかもわかりゃしねぇ女を娘だと抜かす両親も、それを不気味に感じて姉と自称する女を拒絶したらあっさり捨てられた餓鬼の事も、捨てられた餓鬼が餓死寸前まで追い込まれた時、薄汚いその餓鬼を拾って守ってくれた家族も俺は知っている』

 

 

 まるで自分のこれまでの人生を回想するかの様に語りながら、自分の左胸に親指を突き立てる。

 

 

『言っておくが、義憤だとか、この子の為だとか、くだらねぇ正義感だからとかじゃない。

ただ単に――気に食わねぇから全力で今からアンタの邪魔をしてやる。

魔法とやらが使えないから雑魚だって誰が決めた? 誰がその限界を決めた? 誰が魔導師でなければ戦えないと決めた? 悪いがな―――俺はこう見えてそこそこ修羅場を潜ってきたつもりなんだよ。

だから―――見せてやる』

 

 

 母の放つ魔法によって全身を傷だらけにした戦えないと思っていた青年から、感じたことも無かった強大な『ナニか』が迸る。

 

 

『奇しくも俺も似たものが使えるんでね。

もっとも魔導師なんかじゃねぇ……俺なんか最早必要ない姉貴分とその親父から死ぬ思いしながら模倣した力』

 

 

 

 そして、全身から赤い雷鳴が放たれ、左腕に身に付けている『風紀』と書かれた腕章に触れつつ、彼はその力を――

 

 

『封印解除だ。

くくく、もう後戻りできないが、知ったこっちゃねぇや!!』

 

 

 解放する。

 無尽蔵に尽きぬ圧倒的な力を。

 されど、どこか優しい力を……。

 

 

『おい、そろそろ本気だせよ? こちとら勢いでテメーのスキルを無理矢理封じ込めてたのを解除しちゃったんだぜ? もっと見せろよ? 俺にもっと『新しさ』を教えろ……!』

 

 

 完成しない力。

 永久に到達できぬ力。

 自身を人で無くしてしまう力。

 

 

『さぁ、始めようかァ……!!』

 

 

 遥かなる頂から平等に踏み潰す――彼の本気の背中を

フェイトはあの時から知ったのだ。

 

 そしてあの時から、フェイトにとって彼は大きな存在へと変わっていった。

 

 

『俺に恩があるから……って理由ならやめてくれ。

俺はキミの母親も姉さんも助けられなかったし、ヒーローなんて柄じゃないし、これまでも、これからもそんなものにはなりえない。

俺は昔っから全部が中途半端なのさ』

 

 

 イッセーはそう自分の事を卑下していた。

 けれどフェイトにとってはそうではないし確かに救われた。

 母や、それまで存在すら知らなかった姉は確かに居なくなってしまった。

 

 けれど、確かに母は最後の最後に笑っていた。

 その意味はわからないけど、確かにフェイトに向かって微笑んだのだ。

 

 それだけでもフェイトにとっては――十分だった。

 

 そしてその母の側面を引き出してくれたイッセーにも……。

 

 

「そうそう、この公園でまだちんまかったなのはちゃんとフェイトちゃんがバトルやっててな? 俺はそのど真ん中で二人の魔法にぶち当たって黒こげよ」

 

「や、やめてよイッセーくん! この子達にあの時の事を教えるのは!」

 

「というか、隊長二人の全力魔法でよく黒こげ程度に済みましたね……」

 

「生命力だけは無駄にあるからな」

 

 

 翠屋から脱出したイッセーは、皆と懐かしき場所を巡りながら、小さかった頃のなのはとフェイトについてをスバルやティアナ達に教えている。

 

 

「そういえばP.T事件って呼ばれるあの事件は、当時まだ民間人であった教官も関わってると記録にありましたけど……」

 

「あー、最初は高値で売れそうな石だと思って拾ったら、それを集めてたフェイトちゃんに寄越せ言われたのが始まりだったな。

まあ、欲しいならと上げて他の探したら今度はなのはちゃんと出会して……」

 

「当時のイッセーくんって、ジュエルシードを質屋に持っていって売ろうとか考えてて、ジュエルシードが何なのかさえわかってなかったんだよね」

 

「よく覚えてる。

売ってお金にしたら一人焼き肉してやるって、涎なんか垂らしながらニヤニヤしてたもん」

 

「……。金も宿も無かったからな当時は」

 

「へー?」

 

「当時は所謂プータローって奴だったんですね教官は?」

 

「うっ……そ、そんな無垢な顔して言われると凹むぜ」

 

 

 予定よりも大幅な短縮でロストロギアを回収できて割りと暇という事で、聖地巡礼みたいな事をしているイッセー達。

 微妙にスバルやティアナといった、ある程度精神的に成熟し始めてる娘さん達にグサリと刺さる事を言われて軽く凹んでいる。

 

 

「という事は当時から隊長達に怪しい事をしていたと……」

 

「ね、ちょっと待とうか? キミ達が俺を相当疑ってんのはわかるけど、真面目に俺はあのシスコンが言ってた様な事はしちゃいないし、そもそも思ってすらないかんな? やめて、キミ達に蔑まれた目をされると微妙にダメージが大きいんだってば」

 

「ですが教官は、普段から軽すぎるといいますか……」

 

「そ、そんなに軽く見えるの?」

 

「見えます、物凄く」

 

「ふと見たら大体違う女の人と一緒に居ますし」

 

 

 スバルとティアナの一言にイッセーはがっくりと肩を落とすが、これに関してはフェイトも同意できたし、なのはやアインスなんかも頷いていた。

 

 そう、本当にイッセーは軽いのだ。

 言い方をポジティブにすれば人懐っこいと言えるのだが、妙齢の女性にしょっちゅう当たっては簡単に砕けてるのを幼少期から見ているフェイト達も、二人の言葉が一切否定はできないくらいには。

 

 

「だったら三十前になってみな! 十代後半とか二十代前半はまだ余裕こいてられるけど、この歳になってくると本気で焦るんだってば! ただでさえ局内じゃ軽い奴認識されてるし、六課配属前の部署に居た時なんて女の子すら寄り付かなかったんだぞ!? わかるか! 割りとマジで一人だと寂しいの! 俺だって休日に射止めた女性とキャッキャウフフな事がしたいの!」

 

 

 軽く半泣きな顔して三十路前の独り身の寂しさをぶちまける形で言い訳をするが、スバルやティアナにしてみれば、免罪符にはまるで聞こえない。

 だってすぐ女性にナンパする癖に、なのはやフェイトといった者達からはこそこそ逃げようとしているのだ。

 

 しかも、地球に降りる前のヘリの中ではアインスに対してその軽い調子をふんだんに見せていたし。

 

 現に、必死な叫びとは裏腹に、なのは、フェイト、すずか、アリサが段々とジト目になっているのだ。

 

 

「そう言ってる割りには、迫られたら逃げる癖に」

 

「昔っからそうよね。上手いこと言ってのらりくらりと……」

 

「そ……! そんな事ねーもん……」

 

 

 言われて勢いが萎んでいくイッセー。

 そう、すずかとアリサが言ってる通り、口では調子の良い事ばかりだが、実際その直前まで進むとのらりくらりと逃げようとするのだ。

 

 それはフェイトもよーくわかるイッセーの特徴というべきものであり、不満に思う事のひとつ。

 

 

「…………」

 

 

 イッセーに懐いている者にとっては共通の不満。

 しかしふとアインスを見てみると、同じ心境を大なり小なり持ってる筈のアインスに不満そうな顔はない。

 

 

「ねぇアインス?」

 

「? 何?」

 

「アインスってさ、イッセーのああいう所に不満とかないの? いつも平気な顔してるけど」

 

 

 すずかとアリサとなのはに言われてタジタジとなってるイッセーをどこか物悲しそうに眺めていたアインスにこっそり訊ねてみるフェイト。

 

 

「私は別に……。

なんとなく理由もわかるから」

 

「それって、子供の我儘だとイッセーが思ってるって意味?」

 

「違う、そうじゃない。もっと別の意味があるけど、イッセーに許可無く話すことはできない」

 

 

 悔しいが、最初から成熟していた姿のままであるせいか、イッセーとの距離感が絶妙だ。

 そして、自分達が知らないイッセーの何かを知っている気がするし、というかこの前なんて不意打ち気味のキスまで目の前でされた。

 

 

「やっぱり何か知ってるんだ……。

ふーん、抜け駆けしてイッセーとキスまでした挙げ句に秘密なんてズルいよ。

ね、ねぇ、どんな感じだったの?」

 

「…………。さ、さぁ、知らない」

 

「ちょっと照れてる時点で知らない訳ないじゃん! うー……! 何でアインスだけあんな簡単に……!」

 

 

 それまでしれっとした顔だったアインスがふいっと目を逸らす時点で知らないとシラを切るには無理があり、フェイトは小さく唸りながら無意識に自身の唇に触れる。

 

 

「そういえばアインスから聞いたで? 夜の六課の食堂でアインスとちゅーしたんやろイッセーくん?」

 

「「はぁ!?」」

 

「なっ! アインスが喋ったのか? あ、アレは完全に不意打ち――」

 

「どういう事よ!?」

 

「やっぱりアインスさんとはそうなんだ? へー?」

 

「ち、ちげーよ! つーか全員目がこえーよ!? なんでこのタイミングではやてちゃんも喋るんだし!」

 

「教えた方がフェアやん?」

 

「ニタニタしながら言っても説得力の欠片もねーぞ!」

 

 

 ぎゃあぎゃあ騒ぐ子供みたいなイッセーとキス。

 どんな感じがするのだろう……。

 

 アインスがしていたのを見てしまってから何気に悶々としていたフェイトは何気に多感な子なのだ。

 

 だが、フェイト自身にも誰にも――それこそイッセーに打ち明けるべきか迷っている秘密がある。

 

 

『ふむふむ、キミはとても僕と声が似ている。

ふふ、この僕からすらも逃げたあの馬鹿野郎にその感情を持つ事は、とても険しい棘の道だ。

フェイトちゃん、キミにはその覚悟があるかい?』

 

 

 イッセーに対する感情が本物だと確信した時から時折見る夢に出てくる、同性であるフェイトにすら魅力的で可愛すぎると思える学生服の女性。

 声がとてもそっくりで、さりとてその語り口調はどこか柔らかくとも年を重ねた経験者のように威厳めいていて……。

 

 そして夢に出るその女性はイッセーをよく知っていて……。

 

 

『アイツは他人からの愛情を根っこで疑ってる。

人を愛する事はできても、愛されることを心の奥底では小さく疑っているんだ。

キミも見た通り、彼は魔法とは違う方法で堕天使と呼ばれるとある男の魔力を死ぬほどの鍛練の結果再現できる。

それは、キミの生きる世界とはまるで異なる世界の力であり、アイツが人外になるべくしてなった人外と呼ばれる所以のひとつ』

 

 

 とても強い理由も、そしてのらりくらりと逃げる理由も教えてくれて……。

 

 

『だから朱乃ちゃん達ともあんな別れ方をしちゃったんだけど……あぁ、朱乃ちゃんってのは、イッセーが人を辞める理由となった女の子。

キミやお友達の気持ちが報われる事は無い最大の――キミ達にとっての大きな壁さ。

とはいえ、イッセーの根っこで疑う事に愛想を尽かしちゃって別れる事になったから今なら大チャンスだぜ?』

 

 

 イッセーが愛した女性の事も。

 

 

『僕はアイツの師匠的なポジションで、将来的には僕の後継者にでもしてやろうとか思ってたんだけど、結局アイツは僕からも逃げちまったからな。

だからフェイトちゃん、僕に声がとてもそっくりに免じて僕が手伝ってあげよう。

『力が無い虫けらだったら誰も自分を見やしない』、だなんてアホな疑いをずっと持ってるアイツを捕まえる手伝いをね。

ふふ、こんな真似をわざわざ僕がしてる理由は、アイツを振った朱乃ちゃんを少しだけ後悔させてやりたいからさ』

 

 

 そして――

 

 

『僕は安心院なじみ。フェイトちゃん、キミには最初のサービスとして、アイツが何を見ているのかが分かる()を貸してあげる。

まずはイッセーが本当に見ている景色を学んでみなさい』

 

 

 師を名乗る人外の少女は、声が同じフェイトに実は肩入れしていた。

 

 

 だから――

 

 

 

(なのはの事も、すずかの事も、アリサの事も――そして私の事も、イッセーが見る目は子供の時から変わってない……)

 

 

 フェイトの目は時折『変わる』のだ。

 

 

 実は人外にバックアップされてる魔法少女

 

 フェイト・T・ハラウオン

 

 備考・欲視力(パラサイトシーイング)(レンタル)

 

 

(むむ、やっぱりアインスは子供扱いじゃない目だ。

むぅ……ズルい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

また少し未来のお話。

 

 

 

 ヴィヴィオにとってイッセーとは、本当の父ではないけど父である事に変わりはない、自分にとっての全てなのかもしれない。

 

 だから普通ならば存在する母はヴィヴィオにとっては必要も感じなかったし、母は居ないのかと聞いた時のイッセーの沈んだ表情を見て、イッセーにはそういった相手は居ないんだと子供心に安心した。

 

 

「テーマソング、ヴィヴィオver!!」

 

 

 そんなヴィヴィオは、血の繋がりなんて無意味と化す程の繋がりをイッセーに求め、少しでもイッセーに似ようと、イッセーの訓練風景をこっそり覗いてはその技術(スタイル)を真似っこしていた。

 

 例えば、音速で動き回ったるする真似っこだったり。

 

 

「えい! やー!」

 

 

 型を真似っこしたり。

 

 

「その力、もう()()()もん!」

 

 

 その精神性すらをも真似っこしようとしたり。

 

 

「いっつ、りありてぃーえすけーぷ!」

 

 

 まあ、真似っこだけで実際本当に模倣できている訳ではないが、それでもイッセーに近づけてる気がしてヴィヴィオは楽しかった。

 

 そんなヴィヴィオが今現在ライバル視している者は多い。

 

 例えば……。

 

 

「ね、ねぇねぇヴィヴィオ? イッセーくんと一緒に寝てる時ってどんな感じかな?」

 

「お、お風呂なんかも一緒だったり……?」

 

 

 まずはこの二人。

 曰くヴィヴィオがイッセーを知るよりもずっと昔からイッセーを知るなのはとフェイト。

 

 イッセーを父と思い始めてから、この二人は隙あらば自分が母になるとイッセーや自分に露骨にアピールしてくるけど、ヴィヴィオにしてみればこの二人は自分からイッセーを取ろうとするライバルみたいなものなので、間違えても二人を母とは思わない。

 

 

「イッセーパパは眠るまでずっと手を握ってお話してくれたり、頭を撫でてくれる。

ぎゅってしてくれた時はお腹がぽかぽかする」

 

「ま、まんま昔の私達と同じだ……」

 

「気持ちが凄くわかるだけに悔しい……!」

 

 

 どうやら二人もその昔、イッセーに似た事をして貰ったらしい。

 だからこそヴィヴィオはこの二人は要注意人物達だと子供ながらに警戒する。

 

 だがヴィヴィオをモヤモヤさせる者は他にも居る。

 

 なのはとフェイトだけではなく、アインスという――勘ながら、イッセーの……ヴィヴィオでも知らないなにかを知っているかもしれない人物。

 

 この人物は基本的にイッセーはなのはとフェイトとは違って、対等な感じで接してる。

 

 

「最近、なのはちゃんとフェイトちゃんがいきなり風呂場に侵入して来るんだが」

 

「……。そろそろ形振り構わなくなってきたんだと思う。

イッセーが何時までも子供扱いするから……」

 

「事実俺にとっては子供だしな……」

 

「じゃあ私は?」

 

「アインスは子供とは思えないな流石に。

昔からアインスはその姿だし」

 

「ふふ、ちょっと嬉しいかな?」

 

「そうか? 考えようによっては絶望だぜ? 俺もそうだが……」

 

「かもしれない。けれど、イッセーの歩むこの先の道を私も歩けるから……」

 

「フラフラしてるだけでつまんねーぞ?」

 

 

 ヴィヴィオにとってはライバルというよりは敵にも近いのがアインス。

 下手をしたら一気に父を取られかねない、油断ならぬ相手。

 

 他にも地球にはなのはとフェイトの友人が二人ほどイッセーにたいしてソレらしいが……まあ、頻繁に会える訳ではないので問題はない。

 

 それよりも最近ヴィヴィオ――いや、ヴィヴィオのみならず、なのは、フェイト、アインスにとっても衝撃的だったのが……。

 

 

「寮母のアイナさんに土下座してお母さんになってくださいと言ったら、サラッと笑顔で断られた件」

 

「普段の行いが完全に裏目になっとるだけやな」

 

「だよなぁ? やべーよ、このままじゃヴィヴィオにお母さんが居る当たり前の幸せを教えてやれねぇ……」

 

 

 八神はやて。

 この前食堂で引っ付きあってた、ヴィヴィオ――いや、ヴィヴィオ達にとって『お話』案件の存在。

 

 

「この前の作戦も大失敗したしよ。

アレは何がいけなかったんだ?」

 

「全部やアホ。

お陰でなのはちゃん達からど偉いめに遭わされて大損こいただけやんけ」

 

 

 一階級差で、彼女もまた昔馴染み。

 互いにヘラヘラしたやり取りしかしてなかったし、互いにそんな感情も無さげだったので全くのノーマークだったが、あの一件以降、ヴィヴィオははやてをこれでもかと警戒していた。

 

 

「はやてちゃんとイッセーくんが楽しそうにお話してるの……」

 

「そんな感じは欠片も無かった筈なのに、どうして……」

 

「うー……パパぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「めっちゃ入り口からガン見されとるんやが……」

 

「やっぱり安易な考えが過ぎたか……。

いやほら、極自然に振る舞える相手ってのが俺にとってかなり限られてくるからさぁ……」

 

「私だと振る舞えると?」

 

「アインスもまあまあだけど、はやてちゃんって気ィ使う事が無いし」

 

「なんやそら? 私は都合の良い女って訳かい」

 

「そうじゃなくて、気楽に構えられるっての? 素でもドン引きしないじゃん?」

 

「そらまあ、アホやな~ とは思うけど、引いたりはせんわな」

 

「だろ? だからある意味安心するっつーの?」

 

「………………。やっぱ女たらしやなイッセー君は」

 

「へ?」

 

 

 

 別にはやては悪い人物ではないのだが、ヴィヴィオにとっては脅威以外の何物でもない。

 だからはやては要注意人物と認識する。

 

 

「パパは誰にも渡さない。

ずっとヴィヴィオのパパなんだから……!」

 

 

 優しく撫でてくれるあの手も。

 おんぶしてくれる大きな背中も。

 

 優しくて安心できるお日様のような匂いも……。

 

 

 ヴィヴィオは誰にも渡したくないのだ。

 




補足

ソーたんの料理に慣れすぎて、メシマズ女性の料理なんて平気過ぎるという。

彼にとってソーたんは何時までも『ひんぬー会長』らしいけど(笑)


その2
フェイトちゃんと安心院さんの声がそっくり! …………まあ、中の人がね。

しかし、声が似てるお陰で実は安心院さんバックアップを得ていたのだ!

欲視力も借りてるんだぜ実は!

……これでいきなり一人称を僕とか言い出したら、イッセーもさすがにギョッとするぜ! 似てると思っても言いはしなかったからな!


その3
ヴィヴィオちゃまのお母さんの座はとても難しいのだ。

というか、ヴィヴィオちゃまが要らん言い出してるせいで難易度が……
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