色々なIF集   作:超人類DX

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猿山くん回

ただそれだけ。

今回はナナたそー……なし!


学園祭とその裏

 金色の天使。

 

 彼の記憶に存在する最強の天使。

 

 その天使は、天使であるけど世界に逆らい、堕ちた天使である悪人顔の男をただ一心に愛した――そう、それはまるで兵藤イッセーがリアス・グレモリーを愛すると殆ど同じ。

 

 堕ちた天使の男が殺され、世界への反逆を決意したその女性は、まるでティアの様に温和そうな見た目なのに、誰よりも芯が強く、仲間達を纏めていく姿。

 

 兵藤イッセーも、リアス・グレモリーもそんな彼女を十全信頼していく程に強い天使の名はガブリエル。

 

 縦応無神(エンゼル)という異質に到達した、神の理をも超越する永遠に堕ちぬ最強の天使。

 

 

 あの兵藤イッセー、そして堕ちた堕天使の弟子だったらしい――本来なら宿敵であった白き龍を宿す龍皇すらも頭が上がらない天使の様になれたとしたら………なんて時折私は思うけど、リアス・グレモリーにも言える事だが、所詮私は私にしかなれないし、彼女達みたいにはなれやしない。

 

 私は私のやり方で結城リトを仕留める――金色の光でなく闇となるべきなのだから。

 

 

 

 

 

 

 文化祭シーズン到来。

 彩南高校も勿論このシーズンに学園祭をやる様だ。

 

 悲しいかな、全盛期時代は義務教育すらまともに受けられなかったが為に、イッセーとしての思い出なんてなにひとつ残ってないが、リトとしては中学時代に三回は少なくとも経験しているので、学園祭とは何なのかぐらいは取り合えず知ってはいる。

 

 やる気があるかとはまた別の問題にせよだが……。

 

 

 「さて、もうすぐ彩南高校の学園祭が始まるというわけで、実行委員となった猿山だっ!!」

 

 

 普段はおちゃらけて周りを楽しませ、リトの言葉数の少なさをフォローしたりと、本来のイッセーに割りと近い気質である猿山が、今日に至ってはかなり真剣な表情で声を張り、そして教壇の前に立ってクラスメイト全員に話をしている。

 

 今から彼等が始めようとしているのは、彼の言った通り、ここ彩南高校の学園祭が近付いているので、自分達のクラスが何をやるのか的な催し物の案をまとめ、それを決める事だった。

 

 前回のHRではクラスで一人ずつ案を出して、紙でまとめた。だから今回は、そのまとめた案をクラスで決める予定だと思われるのだが……。

 

 

「この前のHRでお前らに出してもらった出し物の案なんだが―――オバケ屋敷に演劇とかわたがし屋とか、どれも普通すぎてあまりにもつまらん!!」

 

 

 と、猿山はいきなりクラスメート達の案を一蹴。

 クラスの周りがざわつく中、彼は教壇に背を向けると、慣れない手つきで黒板に力強くチョークを滑らせ、最後に黒板に書かれたそれを力強く叩き、クラスの注目を更に集めた。

 

 

 「そこで考えた結果!

俺達のクラスは『アニマル喫茶』でいく事にした!!」

 

 

 猿山が一際強く声を張り上げたが、周りは彼の勢いについて行けず、数秒遅れで内容を理解しても、そこから返ってきた反応はほぼ批判の嵐だった。

 

 主に女子達からの。

 

 

「アニマル喫茶ってなぁに?|

 

「知らね」

 

 

 そんな中、全く以ての平常運転なリトはといえば、ララからの質問に一言で返しながら練り消しで遊んでいた。

 

 

「ミオがアルバイトしてる喫茶店みたいなものかな?」

 

「じゃねーの」

 

 

 正味何をしようがやはりどうでも良かったリトは早いとこ終わってくれないかという方に思考が完全に流れていたし、今日は朝から妙に機嫌が悪かった(・・・・・・・)

 まあ、どうやら原因がララにある訳ではないらしいので、返答程度は普通にしている様だ。

 

 

「絶っっ対に流行(はや)る! 間違いなくな!

何故なら時代はアニマル!! 弱肉強食の時代だァ!!!」

 

 

 そんなリトの冷めきった態度とは逆に、猿山はクラスメート達の総スカンを物ともせずに熱く語り散らしていた。

 

 

「弱肉強食の時代ってのは同意できるな。

猿山は時折やっぱり良いことを言う。この状況に限っては言葉だけだけど」

 

 

 練り消しに飽きたのか、今度は最近行ったデパートの一角にあったガチャガチャで手に入れたハンドスピナーで遊び始めるリトは、弱肉強食という言葉だけは同意した。

 まあ、リトの場合はガチの意味で、猿山とは違う意味なのだが。

 

 

「お前達も見れば納得する筈だ。

モノは試しとして女子、今から俺が用意した衣装に着替えてきてくれ!!」

 

 

 教室の後ろで山になっているダンボールを指差し、クラスの女子達にそれを更衣室に運んで着替えてくれと、彼女達を促す猿山。

 

 

「だ、そうだ」

 

「うんわかった、行ってくる……!」

 

 

 どう考えても嫌な予感しかしてない顔だらけの女子達が嫌々渋々といった感じで席から立つので、リトも猿山が用意したらしいダンボールを顎で指しながらララに行かせる。

 

 その時点で猿山がニヤニヤしてたので、どうせ布面積の狭いコスプレなんだろうと………悲しいかな、やはりヤサグレても根は一誠の為、猿山の表情から察することができてしまう。

 

 そして案の定、戻ってきた女子は――かなり布面積の狭いコスプレだった。

 

 

『おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉおぉぉぉぉ!!!』

 

 

 最初に戻ってきて見せてきたのがララだったというのもあるのだろうが、それでも思春期高校生にはとても刺激が強い衣装であるが為に、男子達はそれはそれは雄叫びの様な歓喜の大声を張り上げた。

 

 

「スゲーぞ、良いじゃねーか猿山っ!!」

 

「そうだろう!? これこそ俺が求めてたパラダイスなのだ! ガーッハッハッハッ!」

 

 

 あまり乗り気ではなかった男子達がこぞって猿山を褒め称える。

 最近、ララの父並みの理不尽さを持っていたリトにちょっぴり心が折れ気味だったレンも、コスプレしてるララに心を奪われてる程度には。

 

 が、猿山の目的はそれだけではない。

 同じ何かを感じる親友……リトに、これまた同じ波動を感じる西連寺春菜をほんの少しでも意識させる作戦でもあるのだ。

 

 一見ぶっきらぼうに見えるリトはお世辞にも友達が多いタイプではないし、モテるかと言われたら全然モテない。

 だから猿山は高校に進学した後もゆっくり焦らずに春菜との仲をフォローしていくつもりだったのだが、ララに始まり、夏休み中にヤミなる金髪美少女やら、最近はどうにも沢田未央とも――いや、彼女の場合はちょっと違うにせよ、異性との関わりが多くなった。

 

 

 一見常に無表情でつまらなそうな男に思われがちだが、本質は実の所かなり自分に近い――と、頭ではなくて心で察知している猿山としても、このままでは春菜が埋もれてしまう可能性があると思ったからこそ、春菜自身はかなり恥ずかしがっていたが、今回の強行策に打って出たのだ。

 

 猿山ケンイチ。

 ヤミがそうであった様に、彼もまた結城リトに近しい性質を持っている可能性が大きい存在なのだ。

 

 そう、しかも――

 

 

(挑戦するからこそ成長できる。

挑戦するからこそ俺達は先に進める。

お前の歩き方を見て俺なりに出した答えはこれなんだぜリト?)

 

 

 天使と心を通わせた、悪人顔の最強の堕天使が到達した精神に奇しくも最も近い性質に。

 

 かつて人外が名付けた超戦者(ライズオブダークヒーロー)と同じ……。

 

 だが、まだその自覚を猿山はしていない。

 

 ただ一人で先に行こうとしてしまう親友の乗り越えるべき壁を追う挑戦心を宿すだけで、まだ――

 

 

「さてクール担当結城リト君の評価はどうだい?」

 

「あ?」

 

「いや『あ?』じゃなくて感想だよ感想」

 

 

  そんな猿山の静かなる覚醒が始まりつつあるのを知ってか知らずか、そして猿山の本当の目的は取り敢えずわかってないリトは、本人に促される形でララを含めたコスプレをしている女子達の総評を頼まれてしまう。

 

 その瞬間、悪くないと思って笑顔だったララが一瞬にして不安の入り交じる表情となり、春菜もまたこんな格好というのもあって緊張した面持ちになる訳だが、リトはといえば猿山に言われて渋々女子達を見て。

 

 

「…………………………」

 

「あ、あのさリト……ど、どうかな?」

 

「…………………………………………………」

 

 

 見て――

 

 

「な、なんなのよアイツ? 無遠慮に見すぎじゃない?」

 

「無表情過ぎて何考えてるのかも読めないし………」

 

 

 見て――

 

 

「………………………………………………………………………………………… 

 

(ゆ、結城君がじっと見てくる……。うー、変じゃないかな……?)

 

 

 わざわざ各々の女子達に近づいて散々見て。

 

 

「……………………………………………………………………………………………………………良いんじゃないの」

 

 

 席に戻って無難すぎる答えを出した。

 本音はもしリアスだったら100点満点中の5000点くらいだと言いそうなものだが、やはりリアス馬鹿であるのは変わらないせいか、どう考えても何にも思えないので、一応彼なりに気を使った無難な評価をしたのだ。

 

 勿論、散々じろじろと見といて、やっぱり無愛想な感想のリトに対して女子達の殆どはイラッとしたけど、本音をぶちまけたらその時点で炎上確定なので、ある意味平和だった。

 

 現にララと春菜はホッとしているし。

 

 

 その後、突然窓を開けたと思ったら、どこかに向かって消ゴムの欠片を投げつけた謎の行動もあったものの、リトのクラスは無事にアニマル喫茶に決まったのであった。

 

 

「……」

 

「ねぇリト? さっき窓の外に何投げたの?」

 

「ただの消ゴムの欠片。

覗かれる趣味はないからな」

 

「?」

 

 

 その投げた消ゴムの欠片が反対側の校舎の屋上から見ていた者が使ってた双眼鏡を破壊したの事をララは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵藤イッセー――いや、結城リトは無意味と心のどこかで思いながらも、やはり自身の力を更に先に進める鍛練を怠る事はできなかった。

 

 例え守るべき大切な人たちが居なくとも、最早本能に近い理由で彼は更なる領域へと進もうとするのだ。

 

 

「ドライグがデメリット無しで俺とキミの間にのみなら移動出来るみたいだね。

ドライグめ、入れ込み過ぎだぜ」

 

「いえ、あくまでドライグのマスターはアナタです。

私はあくまでもしもの時の保険ですから」

 

「……。まぁ良いさ。

今はキミの中にドライグは居るみたいだし、ちょうど疑似的に赤龍帝と戦うのは初めてだからな。

使い方は?」

 

「基本的には。

ですが、アナタみたいに禁手化とやらも、覇龍化も、神越龍帝形態はできません」

 

「また懐かしい造語だな。

今の俺もそこまでは出来ないよ。

この身体(ボディ)が砕けるのは間違いないしな。

まあ、基本で充分だ……始めるぞ」

 

「…………。ドライグさん」

 

『任せろ。俺の力を馴染ませればいい線に行く筈だからな』

 

「ったく、気に入りやがってドライグめ……」

 

『素質がある者は嫌いではないからな』

 

 

 擬似的な対赤龍帝。

 ヤミの左腕全体を覆うは、リトのよりも少し華奢な赤龍帝の籠手。

 あのガチギレ騒動が、リトとヤミが擬似的にリンクさせた事によりデメリット無しで両者の間を移動出来るようになった事で、ある意味次代の赤龍帝となったヤミに使い方の訓練を施しているのだ。

 

 

『呼吸をする様に、家の階段を当たり前の様に昇るかの如く自然に俺の力を取り込め』

 

「!」

 

 

 基本能力の『倍加』を極自然に取り込んで自身の力とする訓練。

 神器という概念すら知るよしも無かったヤミには意外な程に手こずった様だが、あらゆる技能を己の物へと可能にするリアスと同じ異常を覚醒させ、自己流ながら磨き続けてるお陰で、スポンジの様にそのノウハウを吸収していく。

 

 

「! 消滅の魔力を変身能力(トランス)とやらと組み合わせた上でドライグの力で更に上げてるのか」

 

「擬似的な攻防一体です。

………アナタには通用しませんが、並の相手なら画期的な方法ですよ」

 

 

 その状態で行われる組手は、ヤミの確かなパワーアップをリトに感じさせた。

 トランスさせる反応速度も、消滅の魔力の扱い方も自己流ながらも確かに成長している。

 

 

『Boost!』

 

 

 そしてもう一段階の倍加によって更に速度を上げたヤミは初めてリトの背後を取った。

 

 

「!」

 

 

 少し驚く背を向けたリトを前に、ヤミは自身の髪を鋭利な刃物へとトランスさせ、更に消滅の魔力まで込めると、全力でその背を貫く。

 

 この間、僅か0.5秒。

 並の相手なら一瞬で死ぬ程の速度であるが、相手はドライグの真の宿主でありドライグを抜きにしても人の理を常に越え続ける進化の権化。

 

 後ろを振り向いたままリトはヤミのトランスした部分を逆白羽取りで防いだのだ。

 

 

「っ!?」

 

「ドライグが優遇するだけは本当にあるね。

………ちょっとした嫉妬すら覚える程度には」

 

「わっ!?」

 

 

 逆白羽取りの体勢からあり得ない関節駆動で正面を向いたリトがトランスさせたヤミの髪を手前に引っ張る。

 そのまま引き寄せられる様にリトの方へと引き寄せられたヤミはそのまま――

 

 

「あうっ!?」

 

 

 拳を握ったリトの拳骨を頭に貰い、そのまま地面へと叩きつけられた。

 

 

「うぅ―――うっ!?」

 

 

 脳震盪を起こし、意識が朦朧となっても立とうとしたヤミに手刀の形にさせたリトの指先がヤミの首筋に触れる。

 本当ならこのまますぐにでも殺れる――という意味で。

 

 

「ま、参りました……」

 

 

 石像の様に冷たい表情のリトの行動に敗北を悟ったヤミはちょっと俯きながらも敗けを認めた。

 

 

『ま、今はこんなものだろう』

 

 

 そんなヤミを見て、ドライグが及第点だと評価する。

 

 

「くっ、また負けた……!」

 

「気質とドライグの力を覚えて少し程度の奴に負けたら引退するしかねーだろ」

 

 

 敗けて敗けて敗けまくるが、着実に成長しているヤミ。

 最初よりは素直に敗北を認めるのもまた成長なのだ。

 

 

「勝ったら、たい焼きを買って貰うつもりだったのに……」

 

「原動力がたい焼きなんて安い子だなオイ……」

 

『敗けはしたがひとつくらい買ってやったらどうだ? 実際この小娘の成長速度は馬鹿にできないぞ』

 

「ホント甘いなドライグは。

……まあ、一個くらいなら良いけど」

 

「! じゃあ早くお店が閉まる前に……!」

 

 

 原動力はたい焼きだけど。

 

 

 金色の闇(イヴ)

 

 生物兵器・第一世代(アップデート中)

 

 正心翔銘(オールコンプリート)(リアス・グレモリー)

 次代・赤龍帝候補

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあまあの反応だった。

 密かなる結託をしていた猿山と春菜は今後の傾向と対策を考える為に、変な噂をされない様に気を付けながらふたりで下校している。

 

 

「ある意味ララちゃんと関わる様になってから、リトも多少軟化し始めてるぜ」

 

「で、でも猿山君。

あの金髪の女の子の事は……」

 

「勘だが、もしかしたらララちゃんより余程強いライバルになるかもしれない……と俺は思う」

 

「やっぱり……。

うぅ、あんなお人形さんみたいに可愛い子に勝てる気がしない」

 

 

 どちらもリトに別の意味で惹かれている者同士故か、性格こそ違えどかなり馬が合う………というのは既に中学時代でわかっているのだけど、高校に上がっても両者はあくまでも中学次代の同級生だった程度の関係性であると周囲に言葉で言うでなく態度で示している。

 

 何分そちらの方がリトへ攻め込める可能性が大きいのだから。

 

 が、そんな仮面を外せば二人は割りと馬の合うお友だち同士である。

 確かに基本的にドスケベなケンイチだけど、友人となった者に対してはとても誠実で献身的である。

 

 それはリトやドライグですら認めるケンイチの良いところであるし、春菜もまたそんなケンイチに何度もフォローして貰って大きな恩もある。

 

 

「いや、大丈夫だ。

可愛い度で言えば西連寺も負けちゃいねぇ。

というかリトは人の見た目で判断するタイプではない。

でなければ、とっくにコロッと落ちてる筈だ」

 

「そ、そうだよね……! 頑張らないと……! 

 

「そうだ、その意気だぜ西連寺! 何事も挑戦が大事だぜ」

 

 

 ある意味主人公気質を持つケンイチに励まされ、落ち込むをやめる春菜。

 その春菜もまたリトに感じた気質にシンパシーを感じる者である訳だが……。

 

 

「そういえばね猿山君、最近私その……こんな感じの事ができる様になったの」

 

「ん? 石なんか拾って何をしようとするんだ?」

 

「えーっと、ほら、向こうに捨てられた空き缶があるのが見える?」

 

「んー? あぁ、たしかに見えるけど……」

 

「それで私の拾った石とこんな風に――」

 

「!!? 一瞬で落ちてた空き缶が!?」

 

「最初はよくわからなかったけど、臨海学校の肝試しがの時に大体理解したの。

……多分私の見える範囲内の物と物を入れ替える事ができるんだって」

 

「……………まるで超能力者みたいだな」

 

「きっと結城君も、それに猿山君だって似た感じの事が出来ると思う」

 

 

 春菜もまたその気質のコントロールを徐々にものにしていっていた。

 しかも奇しくもリアスの兄であるサーゼクス・グレモリーと同質のものへと。

 しかしそれはケンイチも春菜も知らない。

 

 

「きっとだけど、あの女の子も私や猿山君や結城君と同じものを抱えるんだと思う」

 

「それは大いに有り得そうだぜ。

うむむむ、まさに強敵現るだが、ワクワクしてきたぜ!」

 

 

 これはリトを孤独にさせない為のもの。

 そう思っているからこそ二人もまた成長していくのだ。

 

 

「っとと、またリトの事で盛り上がってる間に西連寺の家の近くだな」

 

「なんかごめんね? 何時もこんな事ばかりさせちゃって……」

 

「気にすんなって! リト同盟の同志だからな!」

 

 

 そんなこんなで実はケンイチがケンイチらしからぬ紳士さで春菜を家の近くまで送り、その近くまで来た事でこのまま別れるというのが実は中学時代から続いていたりする。

 

 基本的に本当にドスケベなのだけど、春菜に対しては友人に対する誠実さの方が強くて、信じられないくらいの紳士さを発揮する。

 それを知っているからこそ春菜もケンイチをほぼ親友に近い感情を持っているし……。

 

 

「あ、ねぇねぇ、せっかくだから家においでよ? お茶とかお菓子くらいはご馳走したいし」

 

「え、えーっとさ、それって……」

 

「あ、うん。お姉ちゃんはまだお仕事から帰ってないから居ないよ?」

 

「ゴチになりますっ!!」

 

 

 普通に家に招待するくらいは信頼しているのだ。

 ケンイチ本人はあまり行きたがらない理由がちょっぴりだけあるようで、その理由が不在とわかった途端行くと言ってるのだが。

 

 

「何でお姉ちゃんの事苦手なの?」

 

「あー……なんとなく。

いやほら、美人さんなのは本当にわかるんだけど……なんかなぁ?」

 

 

 春菜の家に招待され、中に入ればマロンという西連寺家の愛犬がケンイチにめっちゃ吠えまくる。

 この愛犬からは結構嫌われてるのだけど、春菜のお叱りに渋々吠えるのを止める辺りは、忠誠度は高いといえよう。

 

 どうにも懐れないなぁと内心思いながら、リビングに通され、ソファに座って春菜の用意するお茶を待ってるケンイチだったが。

 

 

「ただいまー」

 

「っ!?」

 

「あ、お、お姉ちゃんが帰って来ちゃった……」

 

 

 苦手と思ってる相手がまさかの帰宅によって一気に身体が硬直してしまった。

 

 

「ねぇ春菜ー? 男物のスニーカーがあるんだけど、誰か来て………」

 

「………お邪魔してます」

 

「送って貰ったから、お礼と思って上がって貰ったの……」

 

 

 そしてリビングに入ってくるなり、固まってるケンイチとバッチリ目が合ってしまったのは、春菜が成長すればこうなりそうなロングヘアの美女……西連寺秋穂だ。

 

 この春菜の姉である秋穂が、どうにも中学時代の初邂逅から苦手に思ってしまっていた。

 理由は自分でも曖昧なのだけど、とにかく何か苦手なのだ。

 そもそもどう考えてもモテそうなのに興味を持たれてるし、顔を合わせる度に結構絡んでくる。

 

 お陰で前に彼女の男友達のお兄さん達に目を付けられて酷い目に遭わされたし、ケンイチとしては美人だけどあまりお近づきにはなりたくないタイプ―――それが西連寺秋穂なのだ。

 

 

「あら、ケンくんじゃないの? 暫く見なかったけど、確実に私を避けてたわよね?」

 

 

 そして秋穂は明らかに『ゲゲッ!?』って顔をしてるのがケンイチと認識するや否や、ニコニコと大人のお姉さん風吹かせた表情をしながらケンイチの座ってる前―――――

 

 

「あ、あの……前の方が広いっす」

 

 

 さも普通にケンイチの隣に座ってきた。

 いや美人なんだけど! とケンイチは思うが、苦手意識の方があまりにも強すぎて困った顔になってしまう。

 

 

「あらダメ? ケンくんが来なくてお姉さん寂しかったのにな~?」

 

「お、お姉ちゃん! 猿山くんが困ってるから……!」

 

 

 そんな困り顔に気付いているのかいないのか……いや多分絶対気付いてる上で楽しんでる感のある秋穂は、今度はつんつんとケンイチの頬を指で突っつき始める。

 

 流石に春菜もケンイチの戸惑いを察して助け船を出して止める事で、何とか前のソファに移動して貰ったのだけど、お茶のんで直ぐに帰れる気配は完全に無くなった。

 

 

「夏休みの間は一回も会えなかったし、何をしてたのかしら?」

 

「………………。プールサイドの女の子眺めるツアーしてました」

 

「へー? 楽しかった?」

 

「それなりに……」

 

「そっかー……? 楽しいんだ? へー?」

 

「…………す、すんません」

 

「んー? 何でケンくんが謝るのか、お姉さんよくわからないかな?」

 

「………………」

 

 

 ニコニコと大人の余裕かましてまるオーラを出すが、どうもそうでもない気しかしないケンイチは意味は自分でもわからないけど、取り敢えず謝った。

 

 そしてそれを横で見ていた春菜は姉の秋穂をジト目で見ている。

 

 

(お姉ちゃん……。だから猿山くんから苦手に思われるのに……)

 

 

 そう、春菜は知ってる。

 あのモテモテの姉が多くの男性に告白されては素っ気なく簡単に振る百戦錬磨な姉が……。

 

 

「はいケータイ。

またアドレス変えたのに教えなかったでしょ?」

 

「あ、あれれー? おかしいぞー? やっぱり携帯の使い方を知らないせいからかなー?」

 

「今回はそういう事にしてあげる。

ふふん、お姉さんは寛大だからねっ♪」

 

「…………………」

 

 

 今めっちゃ顔がひきつってるケンイチを結構気に入ってるということを。

 

 

「そ、それじゃあ! さ、西連寺! また明日学校でな!」

 

「えっと、ホントにごめんね?」

 

「大丈夫さ! わははは!」

 

 

 アドレスを再び登録させられてしまったケンイチは逃げように西連寺宅から去っていった。

 

 それこそまさに脱兎のごとしであり、恩人に気苦労をかけてしまったとため息を吐きながら家に戻ってリビングに入ると、そこには秋穂が居た。

 

 

「帰っちゃったよ猿山くん……」

 

「……知ってる」

 

 

 先程とは打ってかわっての凄まじく落ち込んだ姿で、ソファにうつ伏せに倒れながら。

 

 

「えーっとねお姉ちゃん。

猿山くんはああいう感じは結構苦手なの。

いくら美人でもダメなんだって何回も言ったよね?」

 

「…………………」

 

「完全に顔がひきつってたし、ますますお姉ちゃんの事……」

 

「い、言わなくていいからそれ以上は! 言われるとますます凹むわ……」

 

 

 嘘だろ? と秋穂を知る者が見れば誰もがそう思うだろう今の秋穂の態度に春菜は大きくため息を吐きながら愛犬を抱える。

 そう……秋穂はなまじモテモテで、顔の整った男性に死ぬほど告白され慣れすぎてた。

 

 故に、だからこそ……たしかにスケベではあるけど、友達に対する無類の誠実さと献身さを持つケンイチはある意味初めて見るタイプだった。

 

 しかも惚れられるではなく、苦手意識を持たれるのも初めてだった。

 

 だからまだケンイチが中学生の時に秋穂がナンパされ、その男がしつこくて困ってた時に喧嘩も弱い癖に、秋穂の知り合いを咄嗟に装い、ボコボコに殴られながらも助けてくれたケンイチの事はかなり気に入っていた。

 

 そしてケンイチと話すときはついつい大人ぶってしまい、余計苦手意識を持たれてしまった。

 

 

「猿山くんは滅多に人を嫌わないから、そこは大丈夫だよ?」

 

「ほ、ほんとに? ケンくんずっと顔がひきつってたのに?」

 

「猿山くんって元気なタイプが好みだから……」

 

「で、でも今更変えられない……」

 

「だったらあまりからかう様な言動はやめるべきだよお姉ちゃん」

 

「う、うん。でも本人を前にするとつい……」

 

 

 皮肉というのなら、まさにこれが皮肉というしかないだろう。

 顔だけで中身がつまらないからと素っ気なく振ってきた者が、顔は三枚目で中身がドストライクの妹の同級生に―――なのだから。

 

 というより、間違いなくそういう意味では春菜と秋穂は姉妹だった。

 

 

「! け、ケンくんからメールだわ! 『変な空気にさせてごめんなさい』って……。

うぅ、ごめんなさい! 悪いのは私なのに……!」

 

 

 そしてきっと、ケンイチは本来の一誠にやっぱりとても似ていた。

 

 

「春菜、ど、どう返事したか良いかな?」

 

「この手の事はお姉ちゃんが慣れてるじゃない……」

 

「で、でも普通にしたらケンくんにまた引かれる……」

 

「無難に、気にしてないし、また遊びにいらっしゃいって返せばいいんじゃない?」

 

 

 西連寺秋穂――遅れてのマジ恋?

 

 

終わり




補足

ヤミたそー

………着実にパワーアップしとるけどヤミたそー


その2
猿山くんはドライグが認める程、昔の本来の一誠に近い。

しかも友人に対する誠実さもあるので、それに気づいた者にはかなり信頼されるし……。



まさかのお姉ちゃんと旗立ってたというね。

本人はかなり苦手らしいけど。
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