色々なIF集   作:超人類DX

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没データのひとつ。

魔王少女確定モード。

ベースは無論、執事シリーズ


※執事くんと魔王少女が確定するだけの話

 最初は生意気な男の子だと思ってた。

 

 自慢の衣装を吹き飛ばされ、裸にされてケタケタ笑われたり、基本扱いが雑だったり。

 

 でも、それでもその子の過去の事を考えたら、そうやって強がるしかないんだって許せた。

 

 やんちゃな弟みたいな感情だったのが変わったのは……。

 

 あの子が間違ってお酒を飲んでベロンベロンに酔っぱらっちゃった時だったかな。

 寡黙で、他人と喋る事すら緊張して具合が悪くなっちゃうあの子が信じられないくらいに乱れて、凄いキス魔になった時、最初にやられちゃったのは私。

 

 そして――まあその、初めてだったのと、凄い激しかったのと……色々あった結果、私はあの子を弟から男の子として意識しちゃうようになった。

 

 気難しいけど、あの子を好く子はたくさん居た。

 

 私の妹もそうだった。

 でもあの子は異性に対する関心が薄いから誰ともそんな事にはならなかった。

 

 だから余計になんだよね、あの子をもっと好きになっちゃったのは。

 

 然り気無い優しさも、不器用な優しさも知ってるから……もっとずっと、私はいーちゃんが大好き。

 

 もっともっと……ずっと永遠にいーちゃんと一緒に――ってね。

 

 

 

 

 

 

 とにかくサーゼクスに勝てない。

 何度挑んでも、どれだけ力を付けてもあの野郎はその上へと常に越えてくる。

 

 正真正銘の化け物野郎。

 

 奴に負け続けたお陰で、俺は奴の実家や奴の友人の実家の小間遣いなんぞやらされてしまっている。

 

 それがどれ程に屈辱だったか……。

 

 そこから抜けようと何度挑戦しても跳ね返され続けて来たか。

 思い出すだけでも悔しいだけだ。

 

 

 俺は既に――あの人外の女が言っていた『本来の俺自身の歩む道と人格と力』から外れすぎた。

 故に最早俺は兵藤一誠ではないが、そんな事はどうだって良い。

 その兵藤一誠とやらは別の奴がやってるからな――わざわざ俺から奪って。

 

 それについての恨みがソイツにあるかと言われてしまえば多少はある。

 だが、今更もうどうでも良い。ソイツが兵藤一誠になりたければ勝手にすれば良いし、最早俺は俺なのだ。

 

 そんな事よりサーゼクスに勝てないんだよ。

 

 勝つために小間遣いを甘んじて受け入れているのにまだ勝てやしない。

 

 他の魔王共ならぶちのめせるし、現にセラフォルーなんかは何度も――まあ良い。

 あの女も良い歳こいてまだコスプレやってる変な奴だし、なんかめっちゃ…………チッ、まあ良い。

 

 あの女もこちら側に入って来て妙にパワーアップしたから油断ならねぇ。

 

 

 ………最近変なテンションになる時があってやりにくいけど。

 

 

 

 

 

 基本的に日之影一誠は、コミュ障だ。

 他人と話そうとすると具合が悪くなるし、声も上擦るし、テンパる。

 

 けれど付き合いの長い者達に対してはぶっきらぼうながらも話ができる――つまりかなりの内弁慶なのだ。

 

 厄介なのが酒を飲んでしまった時の信じられない酒乱っぷりなのだが、それはおいておいて、シトリー家使用人長兼、グレモリー家副使用人長である一誠は今日もどちらの家を行き来しながら使用人業を続けるのだ。

 

 そして今日は眷属を持たぬセラフォルーの傍で魔王としての仕事の補佐をしていた。

 隙あらば適当に仕事をサボるので、一誠の存在は彼女の部下をしている悪魔達に限っていえば助かる存在であり、ヒーヒー言ってるセラフォルーに今日は多大なお仕事をさせられたということで一誠にとても感謝した。

 

 

「うー……いーちゃんとデートしたかったのにー!」

 

「サボり常習犯だったツケが回ってきただけの自業自得だ」

 

 

 一誠がまだグレモリー家に連れて来られたばかりの幼少期に衣装を吹っ飛ばされてから始まり、最近誤って酒を飲んで酒乱化してしまった状態で思いきり唇を奪われてしまったセラフォルーは、それまで彼を素直じゃない弟分的な目線で見ていたのだが、そこから完全に異性としての意識をしており、最近ではストレートに一誠への好意を示す様になっていた。

 

 そんなセラフォルーが、今日は一誠を独り占め出きるとウキウキしてただけに、お仕事の監視をされただけなのはかなり不満だった。

 

 

「せっかくいーちゃんを独り占めできたのに……」

 

「実に有意義な時間だっただろ?」

 

「うー……!」

 

 

 皮肉げに笑う一誠を、サーゼクスの嫁であり、子持ちのグレイフィアと同年代とは思えない程に可愛らしく頬を膨らませるセラフォルー

 その趣味やら、セラフォルー自身が元は他人に対する愛情をあまり抱かなかったせいで現在も独り身だったのだが、その反動なのだろう……一誠に対する愛情を完全に抱いてからの彼女はそれはそれは恋する魔王少女だった。

 

 一誠に『少女じゃねーだろが年的に』とドストレートに言われてしまったけど。

 

 

「まだ時間はあるし、いーちゃんと二人っきりだから我慢するよ……」

 

「俺はさっさと帰りたいんだがな……」

 

「そんな意地悪言わないでお願いだよいーちゃん! ソーたんとかリアスちゃんみたいに人間界でも何時も一緒にって訳じゃないから、本当に寂しいんだよ?」

 

「………」

 

 

 そんなセラフォルーに最近ストレートに好意を向けられる一誠はといえば、実の所割りと戸惑っていたりする。

 

 今まではその痛い格好をネタに馬鹿にしまくったりしたりして、そのリアクションを楽しんでいたのだが、最近馬鹿にすると、それまでムキになった顔をしていたセラフォルーが割りと傷ついた顔をしながら……

 

 

『変かな? この衣装はいーちゃんにだけ見せようって思ってたんだけど……』

 

 

 等と言うのだ。

 こうなると一誠も――他人では最早なくなってる相手であるセラフォルーに戸惑うし、更にいえば彼女は一誠やサーゼクスといった者の持つ領域に自力で到達できたというのもあるので割りと本心では彼女の事は認めてるのだ。

 

 

「………。なら話し相手くらいにならなってやるよ仕方ないから」

 

 

 どうしたんだコイツは? なんてセラフォルーのホントに寂しそうな顔を前に、切り捨てられなかった一誠は軽く目を逸らしてから言う。

 

 無理に帰っても後でうるさくなるだけだから仕方なく……と、誰に対してしてるのか不明な言い訳を心の中でしながら。

 

 

「ふふ、やっぱり聞いてくれた、嬉しいよいーちゃん☆」

 

 

 嬉しそうにはにかんだセラフォルーが一誠の手を引く。

 セラフォルーが管理する冥界都市の中心地の仕事場が今居る場所であり、案の定というかその場所もセラフォルーが使う部屋は殆どただの衣装の保管室みたいな所だったりする。

 

 その部屋に入れるのはセラフォルーの許可がなければ入ることが出来ず、実質フリーで入れるのは一誠のみとなる訳で、部屋まで連れて来られた一誠は、仮眠に使うベッドに座らされると……。

 

 

「お、おい……」

 

「ごめんいーちゃん、何も言わないで暫くこうさせて?」

 

 

 その隣に座ったセラフォルーに抱き締められた。

 びっくりしてしまう一誠だが、言った通り本当に寂しかったのか、セラフォルーはらしくもない弱々しい声だったので突き飛ばすことなんてできなかった。

 

 

「えっと、ヴェネラナのおば様やリアスちゃんに比べたら少し足りないけどごめんね?」

 

「意味がわからないんだが……」

 

「え、だっていーちゃんって割りとおっぱい大きい方が良いでしょ?」

 

「別にそんな好みなんて知らんのだが……」

 

 

 その際、抱き締めれてる体勢でセラフォルーの胸に思いきり顔で埋もれてる。

 ちょっと前なら嫌がってたのだが、最近少しセラフォルーの様子がおかしかったので、若干動揺が隠せないまま暫く彼女の胸に抱かれる。

 

 

「あんなに生意気で小さかったのに、大きくなったねいーちゃん。

ホントは生意気な弟分って思ってたのにさ……こんな本気で誰かを好きになったのって初めてなんだよ? 軽く見えるかもしれないけど……」

 

「お前……」

 

「いーちゃんにとっては煩わしいのかもしれないけど、この気持ちは本気の本気なの。

はしたないって思うだろうけどさ、寂しくて一人でいーちゃんを想いながら慰めてるだけじゃもう駄目なの……」

 

「慰めるって……」

 

「好き……。

良い年した奴がって思われるかもしれないけど、いーちゃんが本当に大好き。

いーちゃんとずっと一緒に居たい……いーちゃんが欲しくて欲しくて……ずっと苦しいの」

 

 

 子供から大人へとなろうとする過程をずっと見てきた。

 ただの弟分から異性の男へと認識が変わってしまったからこそ、セラフォルーは苦しかった。

 

 

「一度だけで良い。すぐ忘れても良い。無かった事にもして良い。

……いーちゃんからキスして欲しいの」

 

「…………」

 

 

 顔を上げれば、頬が染まり、潤んだ瞳で弱々しく懇願するセラフォルーの顔が近くにある。

 一誠の性格を知った上でのその言葉は一誠を揺るがせた。

 

 ただの他人なら単なるふざけた戯言だと思えるが、セラフォルーはそうではない。

 確かにもしもセラフォルーは誰かに傷つけられたら、やった者を確実に殺してしまう程度にはセラフォルーをそう認識しているのは否定ができない。

 

 既に泥酔してしまった時にセラフォルーにやらかしていたというのもある……。

 だから一誠は……。

 

 

「言い触らすなよ……」

 

「ぁ……」

 

 

 小さくそう告げながら、そっとセラフォルーと唇を重ねた。

 

 

「………」

 

「な、なんか言えよ。

お前がどうしてもだなんて言うからこっちは仕方なしに――」

 

 

 泥酔してた時の激しさと苛烈さの籠ったものとは違う、不器用な優しさを感じるキスに暫く言葉を失っていたセラフォルーを見て、若干どうしたら良いのかわからなくなってきた一誠が憎まれ口を叩こうとする。

 

 だがその台詞は最後まで言えず、今度はセラフォルーの方から唇を塞がれた。

 

 

「本当に嬉しい。

やっぱりいーちゃんは……えへへ☆ 好き、大好き……リアスちゃんやソーたんには悪いけど、私もいーちゃんが大好き☆」

 

「ら、らしくもねー事言うなよ」

 

「私らしくいーちゃんが大好きだって伝えてるつもりだよ? もし、もしもいーちゃんがサーゼクスちゃんに勝って出ていく事になったら、私は今の地位も名前も全部棄てていーちゃんと一緒に居たい。

迷惑は絶対にかけないから………その時は連れていってくれる?」

 

「……。俺は……」

 

「ごめんね? また困らせちゃった……。

でも覚えておいて欲しいんだ? いーちゃんが例え力を無くしてしまっても、例えいーちゃんと判別できないなにかになっても、私はいーちゃんがそれでも大好きだからね?」

 

 

 そう言って一誠を優しく押し倒すセラフォルーが今度は一誠の胸元に顔を埋めながら甘える。

 

 

「いーちゃんにだったら、私は何をされても良い。

多分もう、私は魔王失格になってるけど――それでも良い」

 

「セラフォルー……」

 

「本当に辛いんだよ? いーちゃんが欲しい欲しいって思えば思うほどお腹の奥がきゅーって熱くなって……。自分でしても全然軽くなんてならない。

迷惑に思われるってわかってても、いーちゃんが欲しいんだもん……。

だからもう少しこうさせて?」

 

 

 強く抱き締めるセラフォルーに一誠は抵抗はしなかった。

 そこまで思われてるとは本当に思わなかっただけに、余計にセラフォルーに対しての意識が変わり始めていくのと同時に、無意識に彼女の背に手を回していた。

 

 

「確かに本当にバカだぜ。

服を吹っ飛ばしてケタケタ笑うガキにそんな事思うなんて……」

 

「それがバカなら永遠にバカで良い……」

 

「……やっぱバカだ」

 

 

 受け止めるかどうかはまだわからない。

 

 ただ、このままで済ませる訳にはいかない。

 

 セラフォルーを無意識に抱き締めながら、一誠は深く深く彼女の事を考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「あ、あのさいーちゃん、確かに魔王の地位とか全部棄ててもいーちゃんと一緒が良いとは思ってるけど、全くの別世界に行きたいなんて思ってなかったよ?」

 

「………。そんなもん、わかってる」

 

 

 そのまま寝オチしてしまい、起きたら全く知らん場所の草原で共に居ましたとなったとしてもだ。

 

 

「魔王が居るんだってこの世界は。

そしてその魔王を倒す為に人間達が組織を作ってるとか……」

 

「………畑違いながらその魔王が横に居るんだがな」

 

「い、今はただのセラフォルーだから私も……」

 

 

 魔王を倒す為の世界で正体がバレたらセラフォルーが危ない世界。

 

 

「アナタ達はどこから? 転生者ではないようですが、特にそこの女性は悪魔の気配がしますし、返答によっては消さなければなりません……」

 

「それがよくわからなくて。

気付いたら彼とここに居たとしか……」

 

「なるほど、しかし丸々信じることはできめせんね、貴女は私にとって天敵のようなものですから」

 

 

 とある女神にバレて敵認定されてしまったり。

 

 

「監視はさせて頂きますが構いませんね? 本当なら問答無用で貴女を消したいのですが―――べぶっ!?」

 

「………………」

 

「い、いーちゃん! 流石にそれ以上はまずいって! 元の世界に帰れる手懸かりになれるかもしれないんだから!」

 

 

 だけど消すと言い出した途端、コミュ障執事が顔には出さないがガチギレしてとある女神をセラフォルーが止めるレベルでフルボッコにしてしまったり。

 

 

「め、女神の顔を躊躇なく殴る人間とはなんて野蛮な――わ、わかりました! セラフォルー・レヴィアタンには何もしませんし、元の世界に戻る方法を考えますからこれ以上はやめてください!」

 

「……………」

 

 

 唐突に始まる異世界生活。

 魔王でもなく、執事でもなく、ただの一般人として細々と二人で暮らしていく内に、元の時代へ戻れるかわからないという焦りを共有しているせいか、二人は互いに慰め合い――

 

 

「お邪魔します、今日は折り入って話が―――」

 

「はぁ……はぁ……あは、あははは♪ いーちゃんの赤ちゃんの種が私のお腹の中に……えへへ☆」

 

「………………」

 

「お、お邪魔しました!!」

 

 

 そうなってたり。

 

 

「いやあの……否定はしないですけど、彼女は悪魔なんですよ? アナタは人間ですし……あまり良いとは思えないといいますか……」

 

「覗いておきながら随分言うね女神さん? ま、わかんないかな? 大好きな人に包まれる幸せなんて女神さんだから余計にわからないよね?」

 

「っ……行き遅れみたいに言わないで頂けますか? アナタのような悪魔がこの方を騙して誘惑したとも取れるんですから」

 

「残念ながらそんな事でいーちゃんは揺らがなかったよ。だからこそあの時間はとても幸せだったんだから」

 

 

 ああなったり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………。半年程ほどセラフォルーと行方不明になり、戻って来た訳だけどさ。

えーっとなに? セラフォルーが妊娠してるのってつまりそういう事なの?」

 

「…………………は、半年くらい前に確かに一回そんな事があったけど、悪魔の出生率は低いんじゃないのかよ?」

 

「その一回で確定したんだろ? いや、セラフォルーのご両親は泣いて喜んでるから良いんだけどさ――――他の子達についてはどうするの? ショック受けてヤバイんだけど」

 

「そ、それこそ俺が知るか! セラフォルーについては腹を括るつもりだが!」

 

 

 そうなってしまったり。

 

 

「ほーら、パパですよー? あ、今お腹蹴ったよいーちゃん? 絶対に元気な子だね?☆」

 

「ああ……。俺が父親になるのか」

 

「不安? 大丈夫だよ、この子が生まれてもいーちゃんはいーちゃんらしくして欲しいし。

ふふ……もっといーちゃんとの赤ちゃんも欲しいよ☆」

 

「……………」

 

 

 

 魔王少女大勝利ルート……始まらない。




補足

てか、本編でもかなりありえなくもなかったりね。
だから没にしてたんだけど。


その2
多分なんやかんやでかなりの愛妻家になりそうなのが執事くん。

それと一気にセラフォルーさんに甘えだす頻度も多くなりそうだ……。


その3
異世界は適当な異世界です。
速攻帰るのであんま関係ないけど、ある意味スーパーアシストしたとも言えなくもない。


その4
これ、実は没データ内にまだあるんすよ。

『執事くんと魔王少女がひたすらイチャイチャするだけの話』みたいなシリーズが。

…………見たくないと誰しもが思うから封印しっぱなしにするけど。


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