色々なIF集   作:超人類DX

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そう、前回の軽い続き。

時系列は二年進級辺りです。

そう、憑依シリーズでは影も形もなかったあの真面目さんが………


ちょっとした続き

 全く異なる世界に渡る為の理論がまだ確立されていない。

 

 アホそうに見えて相当頭の良いデビルーク星の姫に言われた時の絶望感は果てしなかった。

 

 そもそも俺とババァがこの世界に来てしまったのも、偶発的な事故みたいなものであるので、同じ手段を講じようにもパーツが足りなさすぎるのだ。

 

 まず必要不可欠なパーツが俺とサーゼクス。

 

 そして転生を司るとかほざいていたクソったれな神。

 

 

 奴を完全に殺す為に俺とサーゼクスで散々ぶちのめしまくり、トドメを刺す直前でその神の悪あがきによって俺とババァが飛ばされてしまった訳で。

 

 帰れる手立てがほぼ無いに等しいという現実は、正直へこたれてしまう訳で……。

 せめて、せめてババァだけでもと思うけど……今のところ目処はまるで立たないし、既にこの世界に飛ばされて二年弱、現実を教えられてから一年は経過してしまっている。

 

 なんとか……なんとかしないと。

 

 

 

 

 

 

 元の世界へと戻れる手立てが無いまま時は流れ、異世界で誕生日を迎えてしまった一誠は19となった。

 もっとも、その気質からもたらされる永久進化によって既に老化の速度が純悪魔と変わらなくなってしまったので、本人に年齢の自覚はあまりなくなりつつあり、更に言えばこの世界の協力者である御門涼子の提案によって、学生をやり直させられているというのも、本人に歳を重ねた自覚を薄れさせているのだが。

 

 

「現状無理だと言われた今、学校を頗る俺は辞めたい」

 

 

 そんな執事は、この世界で進級する事になった訳だが、戸籍すら存在しない一誠を学校にねじ込む際に、涼子が『鑑別所上がりの不良で二回留年している』だなんて事情をでっち上げてくれたせいで、19にして高校二年にさせられていた。

 

 元々嫌々通う様になった理由も、ララというデビルーク星のお姫様の開発力を狙ってのことであり、現在そのララから異世界に転移は無理だと言われてしまっているので、これ以上通う理由が見当たらないのだ。

 

 

「そもそもだ、何故俺がデビルーク星の姫の婚約者条件のひとつに組み込まれてるのかが理解できねぇ。

俺には何の関係もない筈だ」

 

「アナタがこの前やって来たデビルーク王と決闘してしまったからでしょうね。

多分、彼がアナタを軽く気に入ったんだと思う」

 

「息子のサーゼクスよりは多少劣るけど、それでもアナタとほぼ互角だったわね彼は」

 

「銀河を統一した王と互角だった事に私は驚きですよ。

確かに腕っぷしの強さはあると思ってはいましたが……」

 

「まあ、一誠は常時進化をし続ける性質を持っていますからね」

 

「ますます一誠の生体が気になるわ」

 

「俺の話じゃないだろ。

だから、俺はこれ以上学校に通う理由がないってんだよ。

ただでさえ、アンタの捏造が効き過ぎて敬遠されてるんだし、居ない方が一般人にとっても良いだろが」

 

 

 デビルーク王であるギドとタイマンでマジの殴り合いを、ちょっとしたイザコザから行われ、結果サーゼクスよりは多少劣る彼と引き分けた一誠は、どうにも一気にその名前が宇宙に広ろまってしまったらしい。

 まあ、だからどうなんだとしか本人は思わないし、とにかく学校には行きたくない訳で。

 

 

「だからもう行かねーぞ。

行かねーったら行かねー」

 

 

 グレイフィアによって叩き込まれた料理スキルを駆使して作成した朝食を、ヴェネラナと涼子が食べているのを軽くメンチを切るような目付きで見ながら、一誠は登校拒否を宣言する。

 

 

 

 が……。

 

 

「……………………………」

 

「あ、イッセーも同じクラスだ!」

 

「ホントだ! 今年もよろしくお願いします!」

 

「……………ッス」

 

 

 彩南高校の昇降口に張り出された新学年のクラス別けの張り紙を前に、一誠は死んだ目をしながら突っ立っていた。

 

 登校拒否をし、それをヴェネラナは許可したのだが、代わりに死ぬほど構い倒すと言われたのだ。

 構い倒す…それはつまり下手をしたら『にゅるにゅる』にされるので、それだけはマジで嫌だった一誠は、逃げるように登校してしまったのだ。

 

 自分の名前が二学年の欄に入ってるのを確認すれば、一年の間にまぁまぁ喋れる様になった極少数の者達に見つかり、同じクラスだと喜ばれる。

 

 それはララであったり、結城リトであったり……。

 

 

「うちのババァから二人と美柑さんにだってさ」

 

「わ、お菓子? ありがとー!」

 

「ありがとうございます、美柑にまで……」

 

「俺もババァも世話になったからな。

…………………キミがババァにやらかした時は、それを忘れて思わず殺そうと思ったけど」

 

「うっ……! あ、あはは……す、すんません」

 

 

 ヴェネラナに持たされた手土産を二人と、この場には居ないリトの妹である結城美柑に渡しす一誠からの軽く低めの声にリトはただただ平謝りだった。

 

 それは、去年リトがヴェネラナと初めて会った時にちょっとしたトラブルが発生したというもので、内容もつまりそんな系統のものだった。

 

 そしてそれを見た一誠が、それまで能面みたいな表情だったのを、ガチギレした某地上最強の生物ばりの鬼の形相と共にリトをうっかり八つ裂きにしそうになった――という話だ。

 

 

『殺す……! 自分でも意味がわからねぇ程に腹が立つ。

だから確実に殺してやるっ……! 一瞬とは言わず、考えうる全てを尽くして生きてる事を後悔させながらブッ殺してやる!!』

 

 

 うっかりリトがヴェネラナの胸にダイブをかましてしまった時の一誠が見せた憤怒は、元の世界でも見ることが無かった程だった。

 その怒りから放たれる圧力は周辺の物を破壊し、放たれる言葉は純度100%混じりっけなしの殺意の塊そのもの。

 この時ばかりはリトは心底一誠の殺意に死を覚悟させられたし、ララの父よりも前に一誠が地球を粉々にするのではと恐怖した。

 

 

『うぷっ!?』

 

『我を忘れる程怒るなんて珍しいわね。

何をそんなに怒ってるの?』

 

『な、なにしやがるババァ! 離せコラ!』

 

『離しません。離したら彼を殺す気でしょう? まったく、いきなりお友達を殺そうとするなんて一体全体――あ、わかった、ひょっとしてこの子と私が接触した事に妬いてるのかしら?』

 

『ち、ちげーし! アンタが余所の野郎になんかされたとあっちゃあ、ジオティクスのおっさんに合わす顔がねぇってだけだ! 勘違いしてんじゃねぇぞこのババァ――ぐももっ!?』

 

『ふふっ♪ あーもう、本当にアナタって子はっ! うふふふふ♪』

 

 

 その時はヴェネラナが一誠を自身の胸に顔を埋めさせて封殺することで未遂に終わったが、リトはそれ以降絶対にヴェネラナにやらかさないようにと心に誓ったと同時に、子持ちとは思えぬ美貌と若々しさを持つヴェネラナに対して一誠は、意外とマザコン入ってるんだなと思ったのだとか。

 

 

「それでその、美柑がまた料理を教えて欲しいって言ってました」

 

「え? ああ、わかった」

 

 

 そんな一度スイッチが切り替わると、ララの親父すらともまともに殴り合う程テンションがハイになる一誠に、美柑は割りと懐いているのだとか。

 

 一誠本人は全く察しても無ければ、そういう話を寧ろ自ら避けようとする傾向があるんだと、リトは見ていて理解していたけど、子供には意外な程優しい所もわかっていたので、結構リトは一誠を信用していたのだ。

 

 ヴェネラナの事になると一気にスイッチが切り替わるとしても、それはそれだけヴェネラナを大切にしているんだなと納得もできる。

 本人はそこら辺の話になると徹底的に否定するけど、誰が見てもわかる程度にはヴェネラナを大事に想っている……と、リトは感じるのだ。

 

 だから多分、リトの妹である美柑は、普段は無口で無表情で無愛想ながら、どこか子供じみた面を持つ一誠を信頼し、懐いたのだと美柑の兄であるリトは思う。

 

 

「お、いっちーも同じクラスなんだ? 今年もよろしくねー?」

 

「……………………い、いっちー?」

 

「ほら日之影一誠だからいっちー……みたいな?」

 

「は、はぁ……」

 

「多分未央しかそう呼ぶ勇気のある奴なんて居ないし、多目に見て欲しいわ」

 

「…………………」

 

 

 それに、二回留年した理由が例え暗い理由だとしても、一年間学校ではほぼ問題を起こさなかったのを知ってる極一部からは割りと慕われてはいる。

 

 二回も留年した理由もひょっとしたらヴェネラナに関する理由だったのかもしれない―――と、一年の時も同じクラスで今年も同じクラスになった、リトが密かに想いを寄せるとある女子の友人達に軽くイジられて戸惑ってる一誠を見ながら、リトは思うのであった。

 

 

 

 さて、にゅるにゅるが嫌だから始業式に来ただなんて、情けない理由で登校してしまった一誠は無事に始業式もクラス別も終わった。

 

 一年の時は別クラスだったらしい黒髪の気の強そうな真面目系女子が、一年の間に色々と騒ぎを起こしていたララやリトにツンケンしていて、ついでとばかりに元は鑑別所上がりの二回留年者―――という涼子のせいで植え付けられた背景を持つ一誠にも軽く絡んできたが、言い返す訳もなくスルーした――

 

 

「日之影一誠。

本来ならば三年生の年齢らしいけど、留年している以上は特別扱いはしないわ。

ましてや不良だったなんて……!」

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

「去年は特に問題を起こしてはなかった様だけど、だからといってアナタが問題児ではないとは思わないわ。

私が同じクラスになった以上は去年以上にまともになって貰うわ!」

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。」

 

 

 そう、スルーしたかったけど、去年クラス委員長で風紀委員でもあるらしい黒髪少女は、元不良のレッテルが貼られてしまってるまんまの執事にこれでもかと絡んできた。

 本人は至って真面目に警戒と忠告をしているつもりなのだが、一誠にしてみればどうでも良すぎる他人に話し掛けられるだけでもストレスであり、既に吐き気すら我慢していた。

 

 リトや一年同じクラスでまあまあ一誠と関わった事のある者達は、くどくどお説教みたいに顔色が真っ青である一誠に忠告している少女……古手川唯にハラハラとした気持ちを抱く訳だが、事情も本当の背景も知るわけが無く、鑑別所上がりの不良としか認識してない唯は、自身の兄が兄なせいか、まったく一誠を恐れる事無く真面目な事ばっかり言い続けたのだ。

 

 

 そのお陰で一誠は……。

 

 

「………」

 

「新学期早々、厄介な子に目をつけられちゃったのね」

 

「……アンタの流したデマがここにきて最悪な事になりやがったんだぞ」

 

「うーん、一年間模範的に生活してたから、そんな噂も風化すると思っていたけど、やっぱり留年していて実は年上って分かりやすい事実のせいかしら? ま、なんにしても気分が悪いなら暫く休んでいても構わないわ」

 

 

 いきなり保健室でダウンしていた。

 くどくどとお説教してきた少女の前で吐血し、別の意味でトラウマを植え付けなかっただけ、この世界に流れてから大分対人恐怖症めいたコミュ障も緩和されてる様な気がしないでもないが、やはり他人に話し掛けられるのは苦手なのは変わらない。

 

 

「常人なら死ぬレベルの吐血をしておいて、ただ気分が悪い程度で済ませられる辺り、純粋な地球人から大分剥離してるわね」

 

「じゃなければ俺に存在価値なんてない」

 

「……。アナタの事情はヴェネラナさんに聞いたわ。

でも彼女や彼女達はそんな事関係なくアナタを――」

 

「アンタに言われなくてもそんなもん、ババァを見てりゃわかる……………とは言えんな。

ただのちっぽけなガキのままだったら、俺はとっくに見捨てられてた」

 

「…………。寂しい人ね」

 

 

 ベッドで片腕で目元を隠しながら横になる一誠の、力を信仰し、力がなければ自分に価値がないと判断している態度に、涼子は寂しい人間だと感じる。

 力を見せる事しか、自分を表現できない――不器用な人なのだと。

 

 

「アンタには感謝はしてる。

協力してくれなかったら今以上に帰る為の情報を探すのに手間取っていた」

 

「……結局は無理だってわかっただけじゃない」

 

「知れただけでも大きい。

それに、今が無理ならば無理矢理可能にするまでだ……。

……まあ、頭悪いからわかんねーけど」

 

 

 しかし、その不器用さが何と無く良い。

 最初はヴェネラナに言われてもよくわからなかった涼子だけど、最近なんとなく理解できてきた。

 

 その医師としての腕の良さのせいで、宇宙中から狙われていた涼子だが、最近はそんな者もめっきり居なくなった。

 それは、今コミュ障の限界でダウンしている彼が、そんな追っ手達をまとめてぶちのめして返り討ちにしたからだ。

 

 

「………………気分も回復したから戻る」

 

「まだ顔色が悪いじゃないの。

わざわざ無理しなくても――」

 

「去年、あんまりにも保健室に行きすぎて一時期アンタと妙な噂を立てられただろ。

これ以上変なレッテルを貼られるのはごめんだぜ」

 

 

 しかもララの父であるギドと真正面からまともにやりあえた。

 それでも尚力を更に求め、毎日毎日妥協なき自己鍛練を続けてる一誠を涼子は知っている。

 だからなんとなく、無理をしがちな一誠に対して過保護になるヴェネラナの気持ちが理解できてきた。

 そして、自分自身も……。

 

 

「別に私は構わないわ。噂なんてどこにでも立つものなのだし」

 

「俺が嫌なんだよ。とにかく世話になったな」

 

 

 そんな一誠は涼子に対して一定の感謝と信頼はしているが、それ以上踏み込んでは来ない。

 最近になって涼子はそんな一誠にちょっとした不満めいたものを持っている訳で、今も去年一時一誠との関係性について噂になった事を気にして、無愛想に出ていこうとする態度にちょっとだけムッとなり、つい言ってしまう。

 

 

「へー? 結城君の妹さんにはどこか甘い癖に?」

 

 

 そう、子供に対してはどこかガードが緩くなるせいで特に結城リトの妹の美柑に対して、これまたどこか優しい事に関してを。

 

 

「何でそこであの子が出てくる?」

 

 

 出ていこうとした一誠の足が止まり、心底不思議そうに振り向く。

 そう、本人はまったく態度を変えてる自覚がないのだ。

 

 例え彼女の夕飯の買い物に付き合って荷物を持って上げても、チンピラとぶつかって絡まれてしまった所を助けてあげても、料理の手解きをしてあげてても、一誠は美柑に対する対応の甘さについての自覚が一切ないのだ。

 

 それが余計に涼子的にはムッとなるのだ……何故か最近は。

 

 

「ん、確かに関係なかったわね。

悪かったわ、余計な事を言ってしまって」

 

「…………? 何か俺に言いたいことでもあるのか? それか頼みたい事でも?」

 

 

 そのせいで前にロリコンなのか的な噂を立てられたというのに、結局一誠は彼女と距離を置こうとはしていない。

 彼女自身が相当しっかりした性格だからなんだろうけど、偶々この前同学年らしき男子に告白され、それを普通に断ったちょうどすぐ後に、燕尾服を着た一誠が通り掛かるのを見て、普段の彼女らしからぬ嬉しそうな顔でちょこちょこと、付いていくのを別の場所から見てしまった涼子にしてみれば若干疑いたくもなる。

 

 まあ、その後の観察結果からして少なくとも一誠にそんな気は一切ないみたいで、一定の信頼をした者に対しては基本対応が緩やかになるだけの事なのだ。

 

 今だって、初期の頃なら声すら出せなかった一誠が、涼子の様子の違いを察してわざわざ尋ねてくるくらいだし。

 

 ヴェネラナが言っていた通り、理解をしてしまうと中々に女泣かせな男なのだと涼子は思いつつも、ちょっとした優越感を感じる。

 

 

「大丈夫よ。

引き留めて悪かったわね」

 

「大丈夫には見えないが。

変な厄介事を抱えてるんならさっさと言え。後で言われるよりマシだからな」

 

「……………」

 

 

 ほら、言葉こそいかにも仕方無しに聞いてやるみたいな体だが、これは本気でそれなりに自分を案じてる……というのがわかってしまう。

 わかってしまうからこそ、涼子は思うのだ……。

 

 

(ヴェネラナさん、確かに彼は狡いですね。

分かってない癖に的確に突いて来るもの……)

 

 

 こう、胸の奥が擽られる感覚。

 擬音で表現するならば『きゅん』とさせる真似を自覚無しでしてくる。

 多くの者達はその態度でそれに気付かないが、気付いてしまうと確かにこれは嵌まる。

 

 ヴェネラナがついつい嫌がる彼を抱き寄せてしまうのも解るし――

 

 

「じゃあわかった、言うわ。

本当に簡単な事だから頼むのもどうかなと思って……」

 

「アンタを狙う別の小うるさい宇宙人共でも壊滅させるのか?」

 

「いいえ、ちょっと私の目の前に来てくれない?」

 

「は? …………おう」

 

「そうそう。

それで少し屈んで貰える?」

 

「?? なにをするんだよ? 眼の検査か?」

 

 

 素直な時は素直過ぎて余計に擽られる。

 言われた通り少し屈んだ一誠に、ちょっと笑ってしまった涼子は、そのままヴェネラナが常にする事と同じく、パッと一誠の後頭部に腕を回してから抱き寄せた。

 

 

「なっ!? な、なにすん――むがっ!?」

 

「だから簡単な事だって言ったでしょ? ふふ、ヴェネラナさんの言う通り、これは癖になりそうね……♪」

 

「ば、バカかアンタは!?

ババァの真似なんか俺にするくらいなら余所の誰かにしろ!」

 

「余所の誰かにしてあげる気なんてないわよ。

アナタだからなんとなくしてみたかったの。ホラ、結構アナタの事好きみたいだし、私」

 

「……………………はぁっ!?」

 

「あら、意外なリアクションね」

 

「当たり前だろが! 何を血迷った事を言って――」

 

「血迷ってる……か。

これが血迷った結果だとするなら、それもアリなのかもと思うわね」

 

 

 逃げる犬みたいに涼子から飛び退く一誠。

 決して突き飛ばさなかった辺り、傷つけまいという考えがあったらしいが、それ以上にシレっと言われたせいか、かなりテンパってた。

 

 

「し、知るか! やめろ! 俺は何も聞いてないからな! 今のも全部無し! ノーカンっ! ノーカン!!」

 

「あ、逃げた。ふふ……ホント一々ツボを突いてくるんだから」

 

 

 そして逃げた。

 そのテンパった態度もまた涼子的にはツボだったのと同時に、ヴェネラナにちょっと相談してみようと決意するのだった。

 

 

 

 

その後……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、アナタの様子を見に行こうとしたけど、御門先生と保健室で今何をしてたの?」

 

「げっ!? ど、どっから見てた……?」

 

「御門先生に……だ、抱き着かれていた所から……」

 

「あ、ありゃちげぇぞ! 良いか、なんもねーし、別にあの保険医とも何でもねぇ!!」

 

「全然喋らないアナタがそこまで否定する辺りが逆に怪しいわ……」

 

「絶対に違うってんだろうが! 良いか、名前がなんだったかも忘れたが、テメーが見た事を誰かに言い触らしたら、確実に明日の朝日を拝めなく――ゲハァ!?」

 

「きゃあ!? な、なにを――ひ、日之影君!? あ、アナタ血を……」

 

「ごほっ! げほっ……! そういや回復がまだ不完全だったのに、叫んだから胃が破れやがった……」

 

「きゅ、救急車を……!」

 

「呼ぶな!! …………五分黙ってれば回復する」

 

「それこそ嘘でしょう!? 病院に行ってちゃんと――」

 

「良いから!!!!」

 

「うっ!?」

 

「…………………。さっきと今の俺についてを誰にも喋るな。

キミが言ってた、真面目な学校生活を俺に送らせたければな……!」

 

「ぅ……ぁ……。(ま、まるで飢えた獣みたいな目だわ……)」

 

 

 煩そうなクラスメートに見られて、口封じに忙しくなったり。

 

 

「あ、あの日之影君? ちょっと話が……」

 

「…………」

 

「およ? 古手川さんにお呼ばれされるなんて、いっちーなんかしちゃったの?」

 

 

 その後、口封じには成功したものの、古手川唯なるクラスメートから――

 

 

『鑑別所送りにされるほどの不良になったのは、吐血するほどの重い病気のせいで自棄になってしまったから』

 

 

 ――と、更に変な誤解をされ。

 

 

「これ、お腹に優しい食べ物だから」

 

「………」

 

「鑑別所に送られる真似をしたのは許されないけど、アナタが自棄になってしまったからというのは理解するわ。

だからこれ以上病気に負けては駄目よ、素人でしかないけど私もなにか手伝うから」

 

「いや……」

 

 

 『病気じゃなくて単なるストレスで、もう普通に回復したんだけど』と言っても全然信じて貰えず、何か変な同情までされてしまった一誠は、この日から別の意味ながらも余計古手川さんからの監視がキツくなってしまったり。

 

 

「なるほど、日之影君の主治医が御門先生だったのですね?」

 

「ええっと……まあ、そういう事よ」

 

「……………………」

 

「そしてアナタが日之影君のお母様……」

 

「息子の一誠がお世話になりまして。

最近よくアナタの事をよく話すんですよ?」

 

「え、私の事を……?」

 

「…………………」

 

 

 誤解のせいで古手川さんが思いの外食い込んで来て軽く困ったり。

 

 

「あのー、イッセーさん? その人は?」

 

「…………俺が聞きたい」

 

「む、アナタは結城君の妹さんね? 私は結城君とこの日之影君のクラスメートの古手川唯よ」

 

「は、はあ……。その古手川さんがイッセーさんに一体?」

 

「それは――えっと、そう! 元不良の日之影君が悪さしないように見張る為よ!(流石に病気の事は言ってないみたいだし、ここは別の理由にしておきましょう)」

 

「…………。へー? イッセーさんって、結構モテますね?」

 

「………。本気でそう思うのか? 勘弁してくれ、その手の話はキミの兄ちゃんで腹一杯だしそもそもこの子は――」

 

「わ、私は別に日之影君に何を思ってるとかじゃないわ! 何時も無口だし、ムスッとした顔だけど、困った時は何も言わずにこっそり助けてくれるだけで別に何とも思ってないわ! ホントよ!」

 

「………。イッセーさんのばか」

 

「な、なんで……? 今思いきりこの子にディスられたのに、キミにまでディスられた……」

 

 

 リト神が更にハーレム王やってる裏で、その妹に軽く膨れっ面されながらジト目で見られて困惑したり……。

 

 

「おーっほっほっほ! 日之影一誠さん! 天条院沙姫が貴方と――」

 

「………」

 

「――って、何故皆さんの背に隠れるのですか?」

 

「あのね天条院さん、ハッキリ言って申し訳ないけど、イッセーは割りと苦手なのよ、アナタのようなタイプが」

 

「日之影君に何をするつもりかはわかりませんが、どうか放っておいてあげてください」

 

「それでもしつこいなら、私はアナタを許しません」

 

 

 金髪ロールお嬢様キャラには苦すぎる思いさかないので基本マジで嫌いで女子達の背中に隠れてしまう情けない執事だったり。

 

 

「さて久しぶりだな日之影イッセー

くく、あの時とは違って最初から完全体だ。

この前のようには行かない事を覚悟しな……!」

 

「…………………」

 

 

 最初から全開状態の王さまと再タイマンを何故かすることになったり……。

 

 

「日之影君は病気なのです! だからやめてください!」

 

「病気だぁ? あらゆる病原体すらはね除ける細胞持ちが病気なわけねーだろ。

どきな地球人、巻き込まれたくなければな」

 

「そ、そんな事――ひ、日之影くん?」

 

「下がってろ。

だから言ったろ、俺は普通じゃねぇって。あの時血を吐いたのは単なるストレスで、とっくに治ってるってな。

まあ、キミは一切信じてくれなかったけど」

 

「だ、だって……!」

 

「まあでも感謝はするさ。

キミが変人でもなければ、こんな面倒な奴にあれこれできないしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気休めにしかならないけど皆で言うわ。

イッセー――」

 

 

「「「「頑張って!」」」」

 

 

 

 

 

「………承知!」

 

 

 そして執事は、更なる進化の壁を乗り越え続けていく。

 

 

 

 

 

 

 

嘘・終わり




補足

ヴェネラナのママンに全然似てないけど、なんかこう、アレな理由で御門てんてーには微妙に弱い執事。

美柑たそー……の場合は更に弱い。


そして皆大好き古手川さんは――誤解が絡まりすぎて困惑しかない。

そしてやっぱオカン的な属性を覚醒させていくとかなんとか。







続かない。
多分誰も見たがらないから
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