色々なIF集   作:超人類DX

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マザコンでロリコンになってしまうのか? 赤い彗星化するのか? いや、まだ最終砦が残ってる!


執事の中に強く残る者

 デビルーク星だったかの王は、確かにこの世界の宇宙全土を統一させたというだけあって強かった。

 

 俺が最初に見た時は、何かの理由で力を落としていて子供の姿だったが、それでも手こずる程度のパワーを持っており、時間制限付きであったとはいえ、奴曰くの完全体となった時のパワーは本気を出さなければ俺がやられていた程だった。

 

 ………。だがサーゼクス程ではない。

 

 あの人外共に比べたら俺も奴もまだガキの児戯にしかならない。

 

 わざわざサーゼクスの事を奴に教える気なんて毛頭無いが、奴に手こずるのなら俺はまだサーゼクスには勝てない。

 

 

 だからもっと……もっと強い進化を。

 

 更に先の領域(レベル)へ進まなければならない。

 

 

 そうする事で俺は、日之影一誠(オレ)である事が出来るのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 ある日の朝、学校も休日である一誠は――

 

 

 

「……………………………………」

 

 

 何故か寂れた公園のブランコに腰掛けながらボーッとしていた。

 基本的に学校が無い時は大体燕尾服姿であるので、当然休日であるこの日は朝から燕尾服に袖を通しているのだけど、そんな格好にはあまり似つかわしくない場所で、かれこれ三時間はぼーっとしていた。

 

 

「………………………………………」

 

 

 変な格好した不審者にも見られそうだが、生憎この公園は近々取り壊しになりそうな程に誰も寄り付かない公園であり、通報されるという不運は今のところ無い。

 

 何時もならば、ヴェネラナか涼子の身の回りの世話をしている筈の一誠が一体全体何で執事仕事を放棄して公園に居座っているのか……。

 

 

「イッセーさん……?」

 

 

 まるでリストラされたサラリーマンが、家族に言えずに公園でしょぼくれてる様な……そんな、なんとも言えないオーラを出しながら公園のブランコに居座る事数時間。

 

 これまた偶然にもこの小さな公園の前を通り掛かった一人の少女が、軽く驚いた様な表情でしょぼくれたオーラを醸し出していた一誠を発見し、何事かと駆け寄ってきた。

 

 

「………………………あ、キミか」

 

 

 この一誠に話し掛けられる者はかなり限られている。

 何せ格好もそうだが、何より無意識に『近寄るな』オーラを発信させているのだから。

 そんなオーラを無視出来るのはヴェネラナ・グレモリーか御門涼子―――そして、結城リトの妹である結城美柑ぐらいであり、その美柑がブランコに座ってボーッとしていた一誠に話しかけてきたのである。

 

 

「どうしたの……? こんな誰も来ないような公園で……」

 

「ちょっと……な」

 

 

 ララの持つ開発力を利用するために、当初結城リトにコミュ障なりに相当手こずりながら近づき、その過程で軽い知り合いになった関係性。

 

 無論お互いに当初は『結城リトの妹』と『兄の年上の同級生』というだけの認識しかなかった。

 が、思いの外リトと関わる内に、一誠がチンピラじみた大人に囲まれてしまっていた美柑を『通り掛かってわざとチンピラにぶつかって喧嘩を売り、そのまま返り討ちにしてやった』というありがちな話から軽く話をする様になり、その内に幼少期から無理矢理ヴェネラナとグレイフィア等の大人の悪魔女達に叩き込まれた執事・家事スキルの一部を教える様になっていき………今現在、割りと普通に話せる間柄へと昇華していた。

 

 なので、話しかけられた一誠は、少し曖昧な返答をすると、美柑は『察した様な顔』をする。

 

 

「ひょっとして、御門さんって人とヴェネラナさんと喧嘩でもしました?」

 

「………………」

 

 

 一誠本人は断固否定しているが、美柑から――いや、一誠を知る者達からしたら、一誠はかなり――いや、相当重度のマザコンだ。

 少し年上のお姉さんとしか思えぬ程に若々しく、そしてため息が漏れる程の美貌であるヴェネラナに対し、当時出会ったばかりのリトが『やらかした』時の一誠の鬼のような形相は、美柑も見ていたのでよーく覚えているし、その時点でマザコンなのだと理解した。

 

 後で聞けば、一誠とヴェネラナに血の繋がりは無く、所謂義理の親子だったと聞いた時は、微妙に納得もしたし、だから余計にマザコンなのだとも思った。

 

 まあ、ヴェネラナをババァ呼ばわりしてる辺り、本人は否定したいようだが。

 

 

「別に……」

 

「嘘。目を逸らしてる時点で嘘でしょう?

イッセーさんって嘘がちょっと下手だもん」

 

「…………」

 

 

 そんな一誠に、今現在共に住んでるヴェネラナと彩南学校の保険医である涼子と何かあったのかと訊ねてみれば、図星ど真ん中だったらしく、目を逸らしていた。

 嘘を付く時の一誠は基本軽く相手から目を逸らす傾向があると、わかっていた美柑が空かさず指摘すると、観念したかの様に軽く項垂れた。

 

 

「そーだよ、確かにババァと保険医女と小競り合いがあったよ」

 

「………どんな?」

 

「他所様からしてみたら他愛の無い事さ。

まあでも退く気にはなれなかったから、思わず家を飛び出したんだが、財布を忘れちまってな……」

 

「普通に帰れば良いじゃん」

 

「それだと俺が敗けを認めたみたいになるだろ!? それだけは嫌だ!」

 

「……変な所で子供だよねイッセーさんって」

 

 

 喧嘩して家を飛び出したは良いが、財布を忘れて無一文状態で、行く宛も無いから公園でただボーッとしていた。

 

 要約すればこんな感じで、本人も家に一旦帰るのは敗けを認めた事になると思って帰るつもりが無い。

 

 

「まあそういう訳だから、俺の事は見なかった事にしといてくれ。

……キミもこれから何か用事があるんだろ?」

 

「コンビニでアイスを買うだけで特には無いよ。

………暫く帰る気が無いんだったら、ウチに来る?」

 

 

 そんな一誠の変な意地っ張りさに軽く呆れつつ美柑が自分の家に来るかと誘う。

 だが一誠はそんな誘いに対しても首を横に振る。

 

 

「いや、良い。これ以上の施しは受けられない」

 

「施しって……。

別にそんなつもりで言った訳じゃ……」

 

「キミがそんなつもりでないのは何となくわかるけど、俺のプライド的な問題が……」

 

「やっぱり変な所で子供っぽいね……」

 

 

 リトより年上で、基本的にそんな雰囲気を醸し出してる癖に、一旦切り替わるととことん子供っぽい意地を張り続けようとする一誠に、美柑は他の他人には絶対に見せないだろう一面を見れた気がした。

 こうなったら何を言っても動かないだろう。

 そう思った美柑はやはり年齢の割りには大人だったので、攻め口を変えてみる。

 

 

「じゃあこうしようよ? 実は家の庭の雑草が伸び放題で、これから家に帰ったら草むしりをするつもりなの。

今家にはリトも居て、当然手伝わせるつもりだけど、私とリトだけじゃ多分終わらない。

だから手伝って欲しいかな? もし手伝ってくれたらご飯をご馳走するんだけど……」

 

「…………………………」

 

 

 ここで子供扱いしたら確実に一誠は余計に意地を張る。

 なのであくまでも手助けが欲しいという体で誘ってみる。

 

 それはそれで見てみたいが、その気持ちは押さえて美柑はお願いしてみる。

 これでダメなら……軽く泣き落としに入るか諦めよう――そんな事を思いながら。

 

 すると……。

 

 

「……………。草むしりだな? 仕方ない……。

キミがそう言うのなら仕方なく手伝ってやるよ、うん」

 

「…………………」

 

 

 やれやれと首を振る一誠。さも折れてやりましたといった風だが、さっきから一誠の腹の虫が飯の催促をするかの如く鳴っていた。

 

 

(なんだろ、普通ならイラッとなる筈なんだろうけど、この人相手だと全然イラッとならないや……。

寧ろ……胸の中がくすぐったくなる)

 

 

 無駄にキリッとした顔で髪型を直し、白い手袋を嵌め直した所でまるで説得力を感じなかったけど、美柑はそんな一誠に不思議な気持ちを感じるのであった。

 

 

 

 こうしてヴェネラナと涼子と喧嘩して家出した青年は、小学生の娘さんに誘われて結構来たことがある結城家へとお邪魔する事になり、着くなり早速とばかりに庭の草むしりを―――…大体五分で終わらせてしまった。

 

 

「終わったぞ」

 

「早っ!?」

 

「いつの間にか飼ってる巨大植物は言われた通りそのまんまにしてたが、ありゃ何だ?」

 

「リトの誕生日にララさんが送ったもので、セリーヌって呼んでる」

 

「ふーん……?」

 

 

 嘘みたいな速度だが、確かな仕事で本当に終わらせた一誠は、びっくりリアクションをしているリトを横に、美柑から麦茶の入ったコップを受け取り、それを飲み干す。

 あまりの冷徹な雑草刈りのせいか、結城家にいつの間にか植えられてて、ありえん程に巨大化している、ちょっとした意思を持つ宇宙植物が一誠にビビってしまった様だが、一誠はまったく気にした素振りが無い。

 

 

「美柑から聞いたんすけど、家に帰らないんですって?」

 

「まぁね。

理由はできれば聞かないでくれ。草むしりの報酬である飯を食ったらさっさと出ていくから」

 

「いや、普通に泊まってくださいよ。

最近家が女子だらけで軽く肩身が狭いし……」

 

 

 そう切実な顔して言うリトの気持ちは何となく一誠も理解できた。

 というかそもそも家を飛び出した原因が、リトの言う肩身の狭い思いをさせられたからというものだったりするのだ。

 

 

「アレか、部屋でテレビ見てたら目の前を全裸で横切られて気分をぶち壊されるとかか? わかるぞそれ。

良い歳したババァや女に一々目の前を全裸で横切られるとイラッとするもんな?」

 

「い、いやイラッとはしませんけど……。え、ひょっとしてイッセーさんってそれが理由で……?」

 

「…………。敢えては言わん」

 

「………………。イッセーさんも大変っすね」

 

「多分キミだけだよ、俺のこのなんとも言えん気分をわかってくれるのは」

 

 

 だからなのだろう、絶賛その被害者であるリトとこの日は特に馬が合い、固い握手まで交わしていた。

 好き好んで美女や美少女の全裸を見たい訳ではないのに、見せられ、挙げ句そのまんまスキンシップまでしてこようとするというのは、初心なリトにとっては精神的に辛く、逆に女性の全裸を見た程度では眉ひとつ動かさなくとも、激しさ満載のスキンシップに辟易している一誠にとっては、うんざりするものでしかないのだ。

 

 

「風呂で一人まったりしてる所に入って来やがった時は流石にキレたね」

 

「わかります。

風呂くらいはのんびり一人で入らせて欲しいッスよ……ララとかはそこら辺が全然わかってくれなくて……」

 

「キミはお人好しだからな。

俺がキミの立場なら、そのまま外に投げ捨ててやるもの」

 

「いや、ララは普通に力も強いから……」

 

「少しは鍛えたらどうだ? ………と、言いたいけど、鍛えた所でああいう時の女は妙に強くなるから厄介なんだよな……」

 

「マジでなんなんすかね?」

 

「まさにミステリーだぜ」

 

 

 気付けば、互いに愚痴り合っているリトとイッセー

 理屈が通じなくなる時の女の強さは半端じゃない――

 人を辞めてる怪物であろうと、平凡な地球人であろうとも平等に感じるものらしい。

 

 ………世の男が聞いたら思いきり石でも投げ付けられそうな話だとしても、本人達からすれば勘弁して欲しいものなのだ。

 

 

「それに比べてキミの妹さんはホントしっかり者だと思うよ。

なんつーか、お互い辟易してる女にならない事を祈りたいぜ」

 

「そっすよね……。

今のところ大丈夫だと思いたいですが……」

 

 

 そんな女子達の中でも、美柑に対する評価は兄目線の贔屓が入ってるリトは勿論ながら、滅多な事では他人を誉めたりはしないタイプまでにヤサグレてしまっていたイッセーですらも普通に評価が高いらしい。

 

 

「あんまり褒められた気がしないんだけど……」

 

 

 キッチンから二人の会話を聞いていた美柑は、微妙な顔をしながら、自身で作った軽食をイッセーとリトに出す。

 

 

「いや、キミは今時のそこら辺の小娘や小僧に比べるまでも無くしっかりしてると思うぞ。

俺がキミと同じ歳の頃は、しょっちゅうある野郎に喧嘩売っては負けまくってイライラしてたからな……」

 

「そうやって聞くだけだと本当に不良っぽいっすね……」

 

「否定はできないな。

自分が不良だなんて思った事はねーけど」

 

 

 片手間に返り討ちにされては、悔しすぎて常にイライラしていた時期は確かにそこら辺のチンピラとなんら変わらないと言われてしまえば否定はできないイッセーは、目玉焼きを切り取って口に運ぶ。

 

 

「うんうん……料理も俺が一々口出ししなくても最初から美味いし。

当時の俺は大体味付けを失敗してたからね」

 

 

 元の世界の者達が聞いたら驚くと同時に、美柑に嫉妬でもしそうな程に手放しで褒めている。

 それこそ、近い年齢のミリキャス辺りが聞いたらヤバイ事になりそうな程に。

 

 

「今まで見てたけど、イッセーさんが誰かを褒めるってかなり珍しいんだぞ? そもそも学校の時なんか殆ど喋らないしな……」

 

「それは聞いてるから知ってるけど……」

 

「だから美柑、お前ってホント凄いぞ?」

 

「うーん……」

 

「うん、うん……美味い」

 

 

 もっとも、居ないので余り関係の無い話ではあるが。

 

 

 

 

 普段の一誠からは信じられないくらい今日はよく喋り、美柑の家事の手伝いまでしている内に夕方になり、いつの間にか戻ってきていたララがリビングに来るなり、テレビを付け始めた。

 

 

「間に合ってよかった~! ちょうど始まったよ~!」

 

「?」

 

 

 何やら見たい番組があったらしく、文字通りTVにかじりつくララを後ろのソファに座ってた一誠が首を傾げている内に、ララが見たがってるらしい番組は始まった。

 

 

「マジカル……キョーコ?」

 

 

 どうやら特撮めいた実写系アニメらしく、ブレザータイプの制服とありがちな魔女帽子を被った女子高生が手から炎を出して悪の組織的なものと戦う――――みたいな内容のものだった。

 

 この世界のテレビを全く観ない一誠は勿論初見だった訳だが、前で聞いていたララが、マジカルキョーコを知らないといった態度に対して信じられないといった顔をした。

 

 

「知らないのマジカル・キョーコ?」

 

「テレビはほぼ観ないし……」

 

「えー!? 絶対に損してるよ! ほら、折角だからイッセーも見よーよ!」

 

「いや俺は……」

 

 

 ララに勧められ、結局リトや美柑も巻き込まれる形でそのマジカルキョーコなる番組を見る破目になった一誠だが、正味番組内容を知れば知るほど観たいという気持ちが消えていく気分である。

 

 

「魔法少女……ね」

 

「そうなの! キョーコは強くてかっこいいんだよー!」

 

「ララさん、毎週凄く楽しみにしてるから……」

 

 

 魔法少女と聞くと、どうしても一誠は良い歳してリアルに魔法少女コスプレしてはしゃいでた『魔王少女』を思い出してしまう。

 

 断りも無く、一誠の事を『いーちゃん』と呼び、その昔何度も衣装を吹っ飛ばして全裸にひんむき、涙目になった姿を見てケタケタと笑いまくってやった……セラフォルーという名の悪魔の事を。

 

 

「……………………。そのポーズだと足の向きが半端だろ、それと腕の振りが甘い」

 

「へ?」

 

「イッセーさん……?」

 

 

 思い出すからあまりその系統のものは観たくはない。

 が、悲しいかなついついマジカルキョーコ役の……聞けばアイドルらしい女の子の演技というか、決めポーズ的な画を見てると、良い歳しても辞めてなかったとはいえ、一切の妥協無く魔王少女をやっていたセラフォルーと比較し、無意識に口に出してしまう。

 

 それはもう、散々彼女の自室に連れ込まれ、散々目の前で振りだのポーズだのを見せられてきたせいで。

 

 

「腕の角度が2㎝程低いな。

それと変身ポーズはもっとこう―――」

 

「ちょ、ちょっとイッセーさん?」

 

「あ、なに?」

 

「……………マジカルキョーコに嵌まったの?」

 

「誰が?」

 

「だってさっきから妙に変な指摘みたいな事を言うから……」

 

「全くこれには興味ないね。

ただ、セラフォルーと比べると……」

 

「セラフォルー……?」

 

「……………………………………ハッ!?」

 

 

 美柑、ララ、リトの不思議そうな表情に気付いて漸くハッとなる一誠。

 そうだ、セラフォルーの事なんてこの三人が知るわけも無いし、端から見たら今の自分は完全に痛い奴でしかない。

 

 

「あ、い、いや……良いんじゃないの? このマジカルなんとかって番組は。うん」

 

『…………』

 

 

 慌てて取り繕うが、三人の……特に美柑からの視線がチクチクと痛い。

 そのマジカルキョーコがテレビ画面の向こう側でたった今炎の魔法で敵を必殺技っぽいもので焦げ焦げにしているシーンが虚しくリビング内に響き渡る。

 

 

「…………………………」

 

 

 結局その後一切喋らなくなった事で変な空気は徐々に緩和していき、マジカルキョーコも次回予告のシーンへと移行したのだが……。

 

 

「イッセーさん、セラフォルーって誰?」

 

「あ、私も気になる。

もしかしてイッセーとイッセーのママの居た世界の知り合い?」

 

 

 美柑は既にセラフォルーなる者が誰なのか気になってしまっており、ララも同じく興味津々な顔で訊ねてくる。

 

 

「……………………。さっきの番組の主人公のような格好が趣味の昔馴染みの女。

餓鬼の頃から散々目の前でコスプレだの、ポーズだのを見せられてきたから……なんか自然と口に出しちまったんだよ」

 

 

 この三人は自分とヴェネラナが他所の星ではなく他所の世界から流れてきたということ知っているので、隠し通すのも無理があると、観念したかの様に話す。

 

 するとそれを聞いた美柑がやけにツンケンした様子で口を開く。

 

 

「もしかして、前にヴェネラナさんが見せてくれた集合写真の中に居た、黒髪でツインテールの――後ろから思いきりイッセーさんに飛び付いてる様子が写ってた女の人?」

 

「…………………。正解」

 

 

 何故かツンケンしてる美柑に内心首を傾げながらも肯定すると、同じく聞いていたリトとララがなるほどと頷いている。

 

 

「その人もマジカルキョーコみたいになれるの?」

 

「ある意味では……うん」

 

 

 アレでも冥界内では、転生悪魔でもないのにグレモリーとシトリーの両家に遣えていた自分が死ぬほど毛嫌いされる程度には人気者ではあったと思い返しながら頷く一誠。

 

 何度テレビ出演をさせられそうになって、その度に逃げまくったか……。

 それと、葡萄ジュースと間違って赤ワインを飲んで完全に泥酔した際、セラフォルーと無理矢理キスしてしまったと知られた時は冥界全土の悪魔達から何度石を投げ付けられたか……。

 思えばあの泥酔の一件以降、妙にセラフォルーからのスキンシップが多くなった気がする……と、今更思い返すと同時に、今頃どうしてるのか気になっていると、それを少し察したのか、美柑がやけに不機嫌そうな顔だった。

 

 

「そっか。

ふーん……イッセーさんって意外とそういう趣味があるんだ?」

 

「いやそういう訳じゃ………てかどうしたの?」

 

「別にー?」

 

「???」

 

 

 ツンツンした様子の美柑に少し戸惑う。

 リトも、そしてララでさえも何となく察したのか、なにも言わず、なんとも言えない目線を一誠に送り、微妙に居たたまれない時間を暫く過ごすことになるのであった。

 

 

『ね、いーちゃん。

こんな事を言うのは最低だけど、いーちゃんが奪われちゃったから出会えた……って私は思ってる。

だから、今のいーちゃんとの繋がりは誰にも奪わせないから安心して? だって酔っぱらったいーちゃんに初めてキスされちゃったんだもん☆

えへへ、その瞬間までは生意気な男の子としか思ってなかったのに、大好きの意味が完全に変わっちゃった☆

だから私は誰であろうとこの気持ちをねじ曲げさせやしない……ずっとずっと、いーちゃんの味方だから!』

 

 

(………………。なんて言ってたな、セラフォルーの奴。

リアスもソーナもそうだけど、アイツが一番アホだぜ……ふふ)

 

 

 この世界に来る少し前、彼女に告げられた言葉を思い出しながら……。

 

 

(絶対オメーの目の前じゃ言わないが……ちょっとだけお前の面が見たいぜ、セラフォルー――いや、セラ……)

 

 

終わり




補足

ヴェネラナのママンと涼子さんのタッグに耐えかねて家出した執事。

今のところ意地でも戻らんつもりらしいけど……?


その2
美柑たそー


割りと手放しで褒めるもんだから、元の世界の者達が知ったらそれこそ嫉妬の魔王少女よ。


その3
……魔王少女が割りと強かった。

思えば本編でも泥酔状態とはいえ初kissが魔王少女だったし、衣装を吹っ飛ばして何度も全裸見てるし、素で接してても魔王少女は普通に受け入れてるし……。

アレ……これ強くね?

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