これも典型的な没話
去っていった元風紀委員長に祝福が……
少年は守ると決めた少女と一定の距離感を保ち続けたお陰で、愛想を尽かされた。
しかしそれでよかったのだと少年は、少女を守れた事に満足した。
最早自分は不必要。
少年はこの日より少女の前から姿を消した。
その腕に付けた風紀の腕章と共に……。
そして少年の強き個性も、少女を守りきれたという満足感により、徐々にその性質を失っていくのだ。
その性質にと本人のまさに『死を常に覚悟し続けた鍛練』によって持つことになった、守るべきだった少女と不器用だったその父と同じ雷鳴の力――
赤き雷撃の力以外は……。
少年の行方は最早誰にも掴めない。
誰も彼も……そして少女達ですら、去っていった少年の消息はそれから掴めなかった。
まるで初めから存在していなかったかの様に――されど少年が確かに居たという思い出の記憶だけは後悔と共に強く残って……。
どれだけ探しても見つかりはしない。
何故なら少年はもうこの世には居ないのだから……。
「…………………。えーっと、アンタの話を信じると仮定するなら、朱乃ねーちゃんを守るって目標を達成し、生きる意味を見失った時点でスキルが消失し、ボーッとしながら踏み切りを渡ろうとしたら貨物列車にバラバラのぐちゃぐちゃにされて死んだ……と?」
「そうよ。
アナタもその直前くらいまでは覚えているんじゃないの?」
「………………………。言われてみれば、確かにボーッとしながらフラフラはしてた気はするぜ」
「本来ならば電車程度に轢かれて死ぬタマでもなかったし、その生き方は正直理解なんて出来ないけど、アナタの持つそのスキルというのはアナタ自身の意思の強さによって上下する代物らしいわね。
だから『姫島朱乃を守る』という目的を失った事で、その性質も消えてしまい、更に言えば心のどこかでそのまま死を望んでいた……」
「死……ねぇ?」
この世でもあの世でも無い場所。
生きる目的を完全に達成と同時に見失ってしまった少年は、本来ならばあり得ない理由によって肉体を砕かれ、死を迎えていた。
そして目覚めてみれば右も左も無い謎の空間で、目の前には全く見知らぬ女性。
「それで? アンタは女神とやらを自称――まぁ良いや、女神であるとして、俺をどうするんだ? 散々他人をぶっ殺してきたからって理由で、地獄にでも叩き落とすつもりか?」
女神を名乗るその女性は、目に輝きがまるで無く、覇気も無い深めの茶髪の少年に、少年が死んだ事、死んだ理由等を教える。
まさか自分がそんな理由で死ぬとは思わなかったので、当初は驚いたが、知らぬ他人が知る筈もない少年の持つ異常な異能を知り、そしてその性質が消えているということを看破し、更には守るべきだった少女の名前すらも言い当てた事から、目の前の女性が超常の存在である事をとりあえずは―――何度もそんな修羅場を過去に潜り抜けてきた経験もあってアッサリと信じている。
そして生前行った自分の行いを考えれば、その女神とやらは、自分に地獄行きの切符でも渡しに来たのだろう………そう思っていた。
「まあ、神も殺した事もあるし、アンタ等にとって俺って存在はとことん疎ましい存在には違いない。
良いんじゃねーの? 今更神を殺したところでなんにもならんし、地獄に落としたいってんなら大人しく堕ちてやるぜ? ……もう、生きててもつまんなかったしな」
全盛期であるなら似もなく断ると同時に戦闘体制に移行していた少年だが、生きる目標が無くなってしまい、生きてる意味もわからなくなってしまってるせいか、素直に堕ちる気でいる。
が、女神にしては口調とかが嫌に俗っぽい女性は、そんな少年に対して―――神の力を私利私欲に使っては人の生を弄んでいた神を滅ぼしてくれた少年に対して、贖罪と確かな感謝を込めて口を開く。
「私達女神はアナタを地獄に落とさないわ。
アナタは人でありながら我々が手出しできなかった転生の神を自称する邪神を滅ぼしてくれた。
知らないと思うけど、アナタの事は女神の間ではかなり有名なのよ? 軽いファンクラブも設立されたくらい」
「…………。信じられねぇくらい嬉しくないのは、神アレルギーだからか……」
「そうね、あの邪神が散々やらかしたのを止められなかったのは我々に責任があるし、人間であるアナタが人間である事を辞めなければならなくなってしまったのも私達の責任。
だから私は、代表としてアナタの死後の道案内をするのよ」
どうにも少年は神々の間ではちょっとした英雄らしい。
水色髪の女神に言われた少年は、ここにきてかなり苦い顔をしながら嬉しくないと返しつつ、地獄行きでは無いのなら何なのだと女神の言葉を待つ。
「全くの異世界。
そこでアナタには生きて貰うわ」
「………………」
そして放たれた言葉は、少年にとってあまり歓迎できないものであった。
「それはアレか、自称姉であるあの女みたいに知らん世界で誰かを陥れて生活しろってのか?」
理由はそう……兵藤凛と名乗っていた転生者のようになれと言われている気しかしなかった為だ。
今更あの女の末路含めてどうでも良いし、それによって縁を完全に切った実の両親とも結局復縁どころか一切会うこと無くなったとはいえ、自分がそんな立場になりたいとは全く思わないし、寧ろ嫌悪感しかない。
「そうじゃないわ。
兵藤凛のように、邪神が敢えてイレギュラー化させた様な事はしないわよ。
アナタが生きる世界は、他にも多くの転生者がそれなりに平和に生きてる世界だし」
「………」
それならまだ地獄に堕ちた方がマシである。
本気でそう思ってると顔を見て判断した女神は、とにかく違うと説明する。
「言ったでしょう? 我々が負うべき責任をアナタが果たしてくれたのに、アナタが嫌がる真似なんて絶対にしない。
それは我が女神の名に誓うわ」
「…………」
そうまで言う女神。
しかし少年にしてみれば、確かに例の邪神とやらを殺したのは自分だが、それは別に目の前の女神共の為ではないただの個人的な復讐心を満たす為だ。
それをこの女神だってわかっている筈………なのに何故そこまで自分にしようとするのかが解せない。
「…………。同情じゃなく腹が立つのよ。
自分の性質も人生もねじ曲がる覚悟で姫島朱璃と姫島朱乃を助け、死ぬ思いを何度もしながら強くなって守り通したのに、当の守られてる本人の姫島朱乃は『アナタが自分の愛情から逃げてる』と宣って、愛想まで尽かしたのが!」
「………なんじゃそら」
「だってそうでしょうが!? そりゃあ確かにアンタもかなりのらりくらりで避けてかもしれないけど、命の恩人に対してそんな小さな理由で愛想を尽かす!? 邪神を倒した英雄のアナタが姫島朱乃に盛大に振られた光景を見せられた時は、女神達の間でも大騒ぎよ! 中には姫島朱乃に文句を言ってやろうとか言い出す者まで居たくらい!」
「なんでアンタ等にそこまで言われなきゃいけねーんだよ、朱乃ねーちゃんが? それこそねーちゃんの勝手だろ」
「んなもんは百も承知だけど納得しろという感情とは別よ! それで日に日にしょぼくれていくアンタを見せられる辛さったら無いのよ!」
「知らんがな……」
熱狂的アイドルファンみたいな感想を聞かされ、果てしなく微妙な気持ちにしかならない少年だが、女神は一人勝手に怒り出してしまってるまま、興奮した面持ちで少年をビシッと指差す。
「だからアンタは幸せになる権利がある! だからこその異世界転移よ!」
「それこそ押し付けだろ……」
「かもね! けど、それでもなのっ! 良い? アンタは風紀委員長である一誠よ! そんな男がしょぼくれたまんまじゃカッコが付かないし、私達が見てられなくなるのよ! わかった!?」
「あ、あぁ……」
段々と口調が酷くなってないか? そんな事を思いつつ、つい勢いに圧されて頷いてしまう少年――一誠。
こうして圧されるがままに異世界でその人生を生き直す事になってしまうのであった。
「転移という事で納得して貰って早速だけど、一応他の連中みたいに異世界を生きる為の特典について説明するわ」
「特典……?」
「そ、例えば力だったり武器だったりね。
ただ、アンタの場合はこれは無しよ。
他人から与えられた力なんて必要ないだろうしね」
「まあ……」
「それと転移にあたって肉体を再構築するけど、全盛期のアンタそのものの肉体の再構築は不可能だということだけ言っておくわ。
なにせ全盛期のアンタの力は私の力を大きく越えすぎてた……精々アナタが小学生くらいだった時のレベルになるわ」
「別になんでも良いが……」
「それとアナタ自身のスキルについても私ではどうすることもできないわ。
アナタのスキルはアナタ自身の心の持ち様によって左右されてしまうから」
「……」
要するに小さい時の身体能力相当になるらしいが、一誠は割りとどうでもよかった。
今更進化する理由も無いのだから。
「でもアナタが風紀委員長であった時の腕章と長ランは用意するわ」
「何で……?」
「そんなの私が見たい―――じゃなくて、アナタのアイデンティティの一つだからよ」
先代と先々代から受け継いだ腕章と改造長ランだけは用意するという、よくわからない真似をする女神。
こうして一誠はあの世では無く別のこの世へと渡る事になる。
「……………………………ここが異なる世界、か」
その背と左腕に書かれた風紀の二文字を背負いながら。
「ぜぇ、ぜぇ……! た、確かに体力も落ちてる……な……!」
スキルも、力も……それまで培ってきた全てを零へと戻し。
いや―――
「雷の力は残ってるのか……」
堕天使の父と、その娘を見て手にした赤き雷の力以外は……。
「幸せに、ねぇ?」
そして始まる幸せを探す旅だが、探した所で朱乃と別れた時点で見つかる気がしない一誠は、元の世界と比べて魔法が発達気味で科学文明があまりないこの世界で、ダラダラととりあえず生きてみても何も見つからない。
「金をてっとり早く稼ぐにはこのギルドっつーのに加入すれば良いわけか……」
取り敢えず金が欲しいのでやってみたギルド。
「ふむふむ、身体能力が多少高く、魔力もそこそこ……しかし運がかなり低いですね」
「あ、やっぱり……」
所謂ステータス鑑定において運の無さを言われて微妙に納得しつつ加入完了。
そのまま退化した身体能力に四苦八苦しながら、何も知らず、誰とも組まないまんまソロプレイでその日暮らしの生活を開始して半年が経過。
時にはデカい蛙に丸呑みにされかけたり、時には巨大なワニに食われそうになったりと、衰えた身体能力を雷の力でなんとかカバーしながら貯蓄を続けた結果、やっと男の城であるマイホームを手に入れられる事に成功した。
この半年の間にこの世界についての知識をそれなりに手に入れたものの、だからといって行動する気はまったく本人には無く、ただただ初心者の街と呼ばれる場所に籠ってその日暮らしをし続ける。
「ナンパする気がどうにも起こらない。
なんだろ、全然おんにゃのこを見てもワクワクしないな……」
そのせいで余計に堕落していき、信じられない事にあの一誠が枯れた事を言い出す。
そんなある日の事……。
「あっ!? アンタはイッセー!?」
一誠をこの世界に導いた筈の女神が何故かこの世界に、見知らぬ青年と共に居た。
聞けば、この青年をこの世界に導く際に小競り合いがあったらしく、巻き込まれる形で転移してしまったらしい。
…………悲しいことに、女神としての力をほぼ無くした状態で。
しかも無一文で。
「お、お金! お金を貸して! このバカのせいで無一文なのよ!」
「……………別に良いけど」
半泣きなりながら、女神の威厳もへったくれもない態度で金を貸して欲しいと懇願してくる女神に、一誠は取り敢えず貸そうと財布を取り出す。
「!? あ、アンタそんなに持ってるの!?」
「人の財布を覗くなよ……。
半年普通に仕事して貯めたってだけだ」
「じゃ、じゃあ宿なんかも余裕で……?」
「毎日宿通いじゃ金が掛かるから、少し前に家も買った」
「!?!? い、イッセー……いやイッセー様! できればお金を貸すだけではなくそのお家にこの私を置いてください! 土下座もします! 靴も舐めますから!」
「………えぇ?」
財布に入ってた20万程の金と、マイホーム持ちであると教えた途端、女神の癖にプライドも糞もない態度になるので、思わずドン引きする。
放置してると永遠にイッセーの足にしがみついて離れないので、仕方なく一緒に居た青年も一緒に自宅へと招いてあげる。
「う、馬小屋からやっと解放されたわ!」
「馬小屋て……どうやったらそこまで落ちぶれられるんだよ?」
「このっ! この大バカ野郎のせいよ! コイツが余計な事さえしなかったら私は女神のままだったのに!」
「散々俺をバカにしたからだろうが! そもそも文無しなのもオメーが無駄遣いばっかするからだろ!?」
「アンタのせいでこんな情けない事になったのだから、少しくらい良いでしょうが! 甲斐性もないくせに!」
「…………………喧嘩するなら叩き出すぞ」
ギャーギャーとうるさい二人を軌道が乗るまで暫く滞在させる破目になった一誠。
その内、二人に――というか主に女神に熱心に勧誘される形でパーティを組んでお仕事をする様になる。
「きゃー! た、助けてイッセー! た、食べられちゃうぅ~!!」
「だ、駄女神ィィ!!」
「チッ!」
けれど二人は思ってる以上にぽんこつに加え、スキルを失い、更に鍛練もきっぱり辞めていた一誠もまた、衰えた身体能力ではギリギリのカバーしかできない。
「ぜぇ、ぜぇ……! く、クソ……つ、疲れた……!」
「うぇぇん……! 生臭いよぉ……!」
「な、なんとか助かったか。
けどイッセー、お前この駄女神から転生特典みたいたのは貰わなかったのか?」
「キミと同じで何も無いままここに来たよ。
き、期待させて申し訳ないけど……」
「ま、マジでか。
あ、いや、家に住まわせてくれてる時点で文句なんてありえないけど……」
デカいカエル数匹にすら手こずるまでに弱体化してしまってる一誠が転生特典を持ってない事を知るカズマなる青年は一瞬真面目に『残念』に思ったが、住まいから飯の面倒まで見て貰ってたのでそれ以上は何も言えなかった。
「あ、ありがと……おんぶして貰って。
でもアナタの服が……」
「言ってる場合じゃねーだろ」
「う、うん……」
(この駄女神、イッセーの言うことには逆らわないなそういや……。
信じられないくらい大人しくなるし……)
ヌメヌメベトベトの女神――名をアクアをおんぶしてあげる一誠と、あの一誠におんぶされてると認識していくにつれて、信じられないくらい大人しくなるアクアを見て、軽く疑問を感じるカズマ。
「そういやカズマ君よ、街には淫魔の店ってのがあるんだけど興味ある?」
「なぬ!? な、なんだその素敵そうな響きは!?」
「…………。行ったの?」
「行った。
けど……なんだろ、昔だったらテンション上がったんだけど、まったく上がらないどころか、ナンパとかもする気がしなくなった」
「………」
半年の間に余計枯れてしまったせいで、散々やってきたセクハラ行動をもやめてしまった。
それはやはり消失が理由なのか……聞いたアクアは茶化す事はせず、もう暫く近くで英雄であった一誠を見る。
「ドMなクルセイダーに中二病ウィザード……癖ありすぎだな」
「た、確かに。
何でこんなんばっかなんだ……」
「てか、そろそろキミ達も軌道に乗ってきたんだろうし、ここらで俺が抜けても問題は――」
「駄目! それは駄目よ! アンタに抜けられたら色々と困るわ!」
「何でだよ? 弱い俺が居続けてもお荷物だろに……」
「そ、それでもよ! 絶対に抜けさせないわ! 逃げたら追いかけて取っ捕まえるからね!」
「……………なんなんだ?」
更に月日が流れ、そろそろ軌道に乗ったから抜けようとする一誠をかなり必死で引き留めようとするアクアだったり。
「い、イッセーさん……! さ、サインしてください!!」
「く、クリスさん……?」
「あ、握手もしてください! ファンなんです! ずっと見てました!」
「み、見てましたって……」
後日更に加入した少女が、イッセーを見るなりいきなりキャラが激変し、ミーハーみたいになったり。
「…………」
「イッセー! 腕を怪我したのね!? 待ってなさい、今回復させるわ!」
「こ、こっちの方が重症なんだぞ駄女神!」
「うっさいわね! アンタ等は後回しよ!」
「いや、彼等を先に治療しろよ……」
その内、ちょっとした掠り傷をイッセーが負うと、過保護な保護者みたいになっていくアクアだったり。
「ぐすっ、ワニに食べられる所だった……」
「毎度アンタを背負ってるだけの役目かよ俺は……」
「ご、ごめん……」
「いや別に良いけど……」
「アクアってイッセーさんにはかなり甘くないですか?」
「というか過保護というべきだな。
ちょっとした擦り傷程度で役割を放り捨てて駆け寄るし」
「日に日にエスカレートしてるんだよなぁ…………ってどうしたクリス?」
「ブツブツ……。
なんで先輩ばっかり……! 無駄に密着し過ぎですよ……! ブツブツ――」
「お、おーい、クリスさんやーい……?」
どこかの一誠ファンクラブ会員……らしいクリスが、一々距離が近いアクアに恨み言を小さく呟きまくってカズマを恐怖させたり……。
「そこのキミ! 女神様に失礼だろう!?」
「……………」
アクアを妙に崇拝してる青年にその距離感故に絡まれたり……。
「失礼なのはおどれじゃあぁぁっ!!」
「なっ!? 女神――ざばっ!?」
「この木っ端小僧めがっ!! 何も知らないくせにイッセーに! イッセーにっ!!」
その瞬間、スイッチが切り替わったアクアがマウント取ってその青年をボコボコに殴りまくったり……。
「ぺっ! 二度とそのツラ見せんじゃないわよ! ……………大丈夫イッセー? あんな奴の言うことなんて気にしちゃ駄目よ?」
「いや元から気にしてないんだけど……」
「そう? なら良いけど……」
流石に引いてたイッセーにはニコニコしてるせいで余計ドン引きされるアクアだったり……。
「上等よ……! 例え殺されてもイッセーに手出しはさせないわ……! それが私の責任よ……!」
「…………」
自分の力及ばず、力を失わせてしまったイッセーを、贖罪と責任を込めた覚悟を覚醒させていったり……。
「神は嫌いだ。呪った事はあるが祈った事なんて一度もありはしねぇ。
けどだ、コイツは最初出会った時からよくわからねぇし神らしさもねぇ。
だから……俺以上に今を失ってるコイツにこれ以上守られるのは俺のプライドが許さない」
そしてその覚悟が伝わった時。
「い、イッセー……アナタ……」
「生きてみないとわからない経験ってのはまさに今の瞬間の事を云うんだろうな。
フッ、下がってろよアクア……そして見せてやるよ――――――
――――――
失ったその性質は再び輝きを放つ。
赤き雷鳴を放ち、永遠なる進化を続ける者へ。
「……! 私の力が……」
「俺を戻させたんだ。
きっちり責任は取って貰うぜアクア?」
「せ、責任!? そ、それはつまり――わ、わかったわ! 仕方ないから取ってやるわよ! ……………す、末永くお願いします……!」
「末永く……? まあ良いや、復活と同時に急におんにゃのことイチャイチャしたくなってきたから、早速ナンパでもしに行こ――」
「早速浮気!? 流石にふざけるんじゃないわよー!」
「いでっ!? な、なんだよ!? いでででで!?」
そして、朱乃が理由でその性質を覚醒した様に、アクアが理由で性質を復活させた一誠は引き上げていく。
言い方のせいで変な誤解をされながら。
「
でも先輩が理由というのが納得できません……」
「キミ、やっぱり中身は女神だったのか」
「ええ、アナタの生き様から全てを見てました。
……先輩が私を含めた他の女神を出し抜きまくってるせいで腹が立って仕方ありませんけど」
「……。あのさ、俺は別にアンタ等の為にやった訳じゃねぇし、その英雄扱いはやめてくんない?」
「や、やめたらアナタの仰るい、いちゃこらというのをしていただけるのですか?」
「………………。いや、それはちょっと……」
「!!? い、今私の胸を見てため息混じりに言いましたよね!? せ、先輩の方があるからですか!? やっぱり好みはそっち寄りなんですか!? 姫島朱乃がそうだったから!?」
「そういう訳では…――…―――ナイヨ?」
ミーハー女神に追っ掛けられながら、青年は自分への祝福を探し続ける。
「……なぁイッセー?」
「なに?」
「お前が、神の転生特典なんか元から不必要な程の修羅場を潜ってきたのはわかったけどよ……。
その、駄女神を甘やかすせいで余計駄女神になっちまつまてて困るんだが……」
「……? 甘やかしてないけど?」
「あ、お前も駄目な奴だったんだな? だったら自覚して貰うけど――」
「イッセ~、おんぶして~?」
「っと、聞くと同時にしがみつくなよ……よいしょっと…………で、なに?」
「………………。ごめん、もう良いや」
始まらない、続かない。
補足
いつぞややった『魔法少女世界』ではなく、ゆるーい世界だったらみたいなもん。
基本設定は振られました的な感じで共通するけど、弱体化がヤバすぎて例のカエルにすら苦戦しまくる設定。
なので、駄女神さんが徐々に変な過保護さを覚醒させ、その過保護さによって『朱乃さんを守った』という心の達成感で失ったスキルを復活させていく的なお話。
故に当初はめっさ枯れてます。
その2
例の転生神を滅ぼしたという理由で、他の神々からは軽く英雄扱いされていて、一部ではミーハーなファンまで知らずに獲得してた模様。
なので、ねーちゃんにこっぴどく振られた時は軽く大騒ぎにもなったとか。
その3
始まらない、続けない、かっ○えびせん