色々なIF集   作:超人類DX

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続き

折角自分の男の城も手にして、貯蓄もあったのに、どんどん無くなってる。

その理由はお察し


幸せ探しな生活

 自分の幸せを探せ。

 

 なんて言われ、押されるがままにまるで異なる世界に来てしまった。

 

 スキルを失い、自分の目標も達成し、確かに思い残す事なんて無かった――という意味であるなら、それは幸福というものではないのだろうか?

 

 その満足感が俺自身の支柱であった無神臓を消失させ、ボーッとし過ぎて貨物列車に轢き殺されたとしても、俺は朱乃ねーちゃんが一人で前に進める様になったという確かなる安心があるし、別に不幸とは思わない。

 

 だから異世界とやらで生き直しをしたところで幸せとやらが見つかるとも思ってないし、第一自分の幸せ自体がそもそもよくわからない。

 

 力もガキの頃相応に戻り、スキルも失い、ただのそこら辺の若造一人が探した所で絶対に見つかるとは思わない。

 

 せこせこと地道に仕事をして金を稼ぎ、仕事帰りに独りで一杯ひっかけ、自分で買った家に帰って寝て、また起きて仕事をして……。

 

 なんて生活を繰り返しても特に何も思わないし、世界観の違う仕事内容にしても、当初は若干の新鮮感もあったけど、それだけの事だったし。

 

 

 ナンパしてみるってのもなぁ。

 

 後々になって気付いたけど、朱乃ねーちゃんやらグレモリー先輩やら貧乳眼鏡会長さんとか椿姫ちゃんとか――ああ、当然朱璃さんとかの近くに居すぎたせいか軽く目が肥えちゃったせいで、女性に対してのハードルがかなり上がってしまってそんな気も起きないし。

 

 ついでに、今のところ出会う女性よりもギャスパーの方がフツーに可愛いと思ってしまってる時点で俺はきっと末期かなんかなんだろうけどよ。

 

 

 そんなギャスパーも元気にやってるんだろうか。

 どう見ても骨格からして女にしか見えんアイツを次の風紀委員長に指名して、先代委員長の冥ちゃん先輩と、先々代の委員長だった恭ちゃん先輩から渡された腕章と改造長ランを譲ったけど……恐ろしく似合ってなかったっけ。

 

 まさかそのレプリカをアクアとかいう女神に渡されて別世界に飛ばされるとは俺もその当時は思わなかったけど。

 

 つーか、渡されたは良いが、この世界に来て暫くして金稼いでからはすぐにしまっちまったからあんま袖通してないし。

 

 自分の幸せねぇ……? やっぱ見つかる気がしねーわ。

 

 

 

 

 

 

 

 多分きっと素晴らしい世界なんだろう世界で小市民として暮らしてから約半年。

 若干退化してる文明にも慣れ、魔法に密接気味の生活にもまあまあ慣れつつある『兵藤』の苗字を既に捨て去っているただの一誠。

 

 低賃金だけど安全面は保証されてるギルドの仕事――いや、クエストをこなし、やがて小さめの家まで購入し、貯蓄もまあまあまで貯まり、ある意味理想的な独身貴族になれそうな環境を無意識に構築していった訳だが、その一誠を勢い混じりの説得でこの世界へと導いた口の悪い女神が、完全に力を無くした状態の姿で、曰く一誠と同じ転生者である青年と取っ組み合いの喧嘩をしてる現場で再会してからは、若干その生活内容も変わりつつあった。

 

 

「屋根の修理のクエスト。

報酬は安いがこれが一番手堅い。

後金持ちの家の庭の草むしりなんかもな」

 

「なあ、討伐系のクエストは……」

 

「デカいカエルにまた丸呑みにされたいってのなら止めはしない。

が、今度は助けられそうもないとだけ先にいっておくぜ」

 

 

 自立精神が元々無いアクアの浪費癖が凄まじく、更には貯蓄もして自宅まで持ってると言った一誠に思い切り寄生するという、神としては終わってるも同然な体たらくである彼女のせいで、若干その貯蓄がダメージを受けていた。

 その上、アクアのついでとばかりに転がり込んできてるカズマという青年も居るので、食費が単純に倍加してしまっている。

 

 

「報酬が高いからと、マンティコアだかなんだかの捕獲に行くとか言わないとこを切に願うね」

 

「お、おう……」

 

 

 縁もゆかりも無い赤の他人を何故養ってるのかは、一誠自身も未だにわからない。

 というのも、あまりにも勢いよくアクアに懇願されてしまい、そのまま流されてしまってるからだ。

 

 それに対して怒るのも、追い出す気力もあまり無い一誠は仕方なくのまんま今日まで養い続けていたのだが、最近そんな状況も更に悪化し始めていた。

 

 

「挙げ句の果てにパーティメンバーを増やしてくれたみたいで、その者等が一芸特化過ぎて逆にポンコツなせいで益々の赤字続きにしてくれたみたいだね。

いやホント……感謝の気持ちで思わず笑いたくなるぜ?」

 

「す、すいませんでした!」

 

 

 アクアとカズマが報酬の高さに目を眩んで、討伐系統のクエストを受注してみようと、戦力増強を勝手に企てた結果、力を消失した身で言えた義理ではないとは一誠も自覚しているものの、その増強メンバーがあまりにもポンコツ過ぎて、出資だけが無駄に増えるだけという結果だった。

 

 片や、一撃必殺の魔法一発でガス欠を起こし、片や防御系統にスキルポイントというものを割きまくってオフェンス能力が終わってて、性癖はマゾというどうしようもない者で……。

 

 

「イッセー君! ほ、ほら見てよ! お、お金! 今ソロでクエストしてお金稼いで来たよ!」

 

「…………………」

 

 

 そして最後は、初対面なりいきなり――

 

 

『ま、前からファンです! 握手してください! サインください!!』

 

 

 と、この世界じゃただの小市民である筈のイッセーに対して意味不明な程のミーハーさで寄ってくる盗賊少女だったり。

 

 

『ずっと見てました! この街に来て最初に食べた食べ物から昨日何を食べたのも全部知ってます!』

 

『…………』

 

 

 ミーハー通り越して危ない言動を興奮混じりで言うものだから、イッセーは現時点でこのパーティから抜けたくなっていた。

 

 

「まずは2万エリス払うよ」

 

「いや要らな――」

 

「そうはいかないよ! 皆の食費から寝泊まりする為に家を改築したのだって全部イッセー君がコツコツ貯めた貯金から出ていったんだもの!」

 

「…………」

 

「だからこれはせめてものお返しだから気にしちゃ駄目。

え、えーっとそれで2万エリス払ったらアタシとお話しながらご飯食べたりしてくれる?」

 

「…………………………。カズマ君、俺この子が怖い……」

 

「なんつーか、ホストにド嵌まりしてしまった女の人みたいだよな……」

 

 

 赤字にしてくるだけの者。

 浪費癖半端無い。

 ぽんこつ。

 要らないと言ってるにも拘わらず、金を貢ごうとするストーカー予備軍。

 基本的にゲスい唯一の同性。

 

 

 

「わかったから寄らないでくれ……」

 

 

 もし今全盛期の力があったら、世界の果てかどこかに文字通り飛んで逃亡したくなる程度には癖者だらけの者達に一誠の目は最近死にっぱなしであった。

 

 

 

 

 盗賊少女・クリス。

 

 というのは仮の姿であり、アタシ――いや、私の本当の名はエリス。

 

 下界であるこの世界を見守る女神の一人なのですが、下界にクリスとして降りている理由は持ち主を失った、この世界すべてに散らばる神器の回収です。

 

 そんな私は――ミーハーだと思われるかもしれないし、女神として失格と呼ばれるのかもしれないが、素晴らしいと思う人間が居る。

 

 

『悪? 良いぜ、そう勝手に思いたければ思え。

俺を化け物と蔑んでみろ。

その悪の化け物野郎にテメーは今からぶち殺されるんだからなァ……!!』

 

 

 地の邪神によりその人生をねじ曲げられた少年。

 しかしそのねじ曲げられた事により、本来よりも早くまだバラバラになる前の家族と出会う事で立ち直った少年。

 

 急進派の堕天使によってその引き裂かれそうになった家族を、神の領域をねじ曲げるスキルと神の理を越え続けるスキルによって守り続けようと走り続け、遂には元凶たる地の邪神を葬った、人でありながら人を超えた少年。

 

 我等女神や表の邪神達ですら手出しが出来なかった邪神をたった一人の――それも人である少年が滅ぼした。

 その衝撃は我々に興味を持たせるに十分であった。

 

 しかし、その後……立派な青年へとなりつつある彼の人生は、私の勝手な目線でしかありませんが、決して良いとは思えなかった。

 

 

『一誠君……。

どうして私から逃げるの? どうして受け止めてくれないの?』

 

『そんな事は……』

 

『嘘よ! 一誠くんは何時も『受け止めてるフリ』だけ! 肝心な時はいつだって逃げる! 私もう……耐えられない! 待っていられないのよ!』

 

『………。ごめん、朱乃ねーちゃん』

 

 

 自ら選んだ道とはいえ、肉親に見捨てられた過去がどうしても彼に『愛情』を疑わせていた。

 守り続けたハーフ堕天使で転生悪魔である姫島朱乃を確かに大切に想っていたけど、向けられているその愛情を彼は『自分が強いから、自分が昔彼女に誓った言葉が彼女をそう思わせて縛っている』と思ってしまっているから、姫島朱乃の愛を受けられなかった。

 

 それは大なり小なり彼を好く他の者達にも同じであり、遂には姫島朱乃に振られてしまった。

 

 

『…………俺が居なくてもねーちゃんはもう大丈夫だからな。

これで良いんだ……これで……』

 

 

 そして彼は彼女達の前から消えた。

 彼の支柱を蘇らせる切っ掛けとなった人外にも行方を完全に悟らせず……孤独に。

 

 そして彼は死んだ。

 

 『姫島朱乃とその家族を守り通す』

 

 それが切っ掛けで覚醒した『無限に進化を続ける能力』がある日を境に消失し、日に日に退化していった結果、見ていることしか出来なかった私達が見ていられない程精神的に衰弱した結果、本来ならば死ぬはずが無い事で彼はその邪神を殴ってみせた程に強靭だったその肉体もろともあの世界から消えてしまった。

 

 その瞬間、我々は即座に彼の魂を我々の元へと導く事を満場一致で可決させ、後にも先にも全力であったジャンケンの結果、あのだらしないアクア先輩にその役目を取られてしまい、他の神々の誰もが彼と対話したかったという嫉妬を抱きながら、アクア先輩に彼を別の世界で、誰かのではなく、自分自身の幸せを見つけて貰う導き手を託した。

 

 結果はアクア先輩のガサツさが逆に上手く作用して、彼は………嬉しいことに私が管理する世界へと転生した。

 

 

 この時ばかりはアクア先輩を真面目に先輩として一瞬だけ尊敬し、その後彼がどんな生活をするのか、私は見た。

 

 見て……観て……観て観て観て観て観て観て観て観て観て観て――――段々満足できなくなったので、神器回収の名目で下界に降りて、直接物陰から見た。

 

 生の彼……。

 

 しかし覇気と自信を失っている彼に無闇に接触しても悪印象しかないと思って慎重に私は接触の機会を伺った。

 

 独りで食事をしている所も毎日。

 肉体レベルが人並みに落ちて、獣にすら苦戦している所も……。

 

 

『雷の力は残ってるのか……』

 

 

 堕天使バラキエルとその娘である姫島朱乃に対する敬意によって自力で人の枠から強引に抜けて習得した雷の力が使えると理解して、複雑な顔をしている所も……。

 

 

 とにかく彼のこの世界での行動はできるだけ近くで半年程見続けた。

 ……まさか佐藤カズマによって女神の力を失った状態でこの世界に転生してしまった先輩に全部横からかっさらわれるとは思わなかったけど。

 

 一瞬でも先輩として尊敬したのはアホだったし、あの人は一々彼に近い。

 おんぶはして貰うわ、彼がコツコツ働いて買った家に佐藤カズマもろとも図々しく転がり込むわ、彼の貯金を食い潰すわ……。

 

 それを今のところ彼は許しているけど、このままでは二人に骨の髄まで吸い付くされると思った私は、クリスとしてかなり緊張しながら遂に彼に接触した。

 

 

 ついでに佐藤カズマにスキルポイントについてのレクチャーをしたら、パンツを盗られて最悪だったけど、私はついに他の神々達ですら羨ましがるだろう、あの一誠さんと対面し、更にはダクネスやめぐみんというアクの強い者達のゴリ押しによって上手いこと彼が巻き込まれた形で加入している同パーティに加入できた。

 

 くふふ、私は他の者とは違う。

 ちゃんと自分でお金を稼いで、彼が出してしまった分をちゃんと援助する。

 つまり私は単なる役立たずではない。

 

 

「ね、ねぇねぇ? もう三千エリスを出したら『あーん♪』って奴をしてくれる?」

 

「恋人にでも頼めばタダでやってくれんだろ、そんな事は……」

 

「いやいやいや! そんなの居ないし、だったらイッセーくんが――」

 

「ねーねーイッセー、手が届かないからそれ取って私に食べさせて~ あーん」

 

「伸ばせば取れるだろうが! ………はぁ、ほらこっちちゃんと向け」

 

「もぐもぐ……。んふふ~♪」

 

「チッ、何で俺がこんな保父さんみたいな真似を――――で、何の話だっけ?」

 

「………。アクアにはタダなんだね」

 

「無視すると駄々こねはじめて五月蝿いんだよ。俺だってこんなんやりたくはないぜ」

 

「ふーん……」

 

 

 それに、お金を渡せば一緒に食事もしてくれるし、お話とかもできる。

 

 人並みに力が落ちたから何だというのだ。

 

 私は彼の不器用で少し臆病な生き方が好きなのだから。

 

 

「今度は私がやってあげるわ! ほら、あーん?」

 

「要らん、自分で食え――や、やめろバカ! んぐぐっ!?」

 

「どう? おいしい?」

 

「ゲホァ!? あ、危うく窒息しかけたわ! 俺を殺す気か!? 」

 

「ええっ!? ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃ……」

 

「げほけぼ……もう良いよ……。

クソ、ホントやりにくい奴め……」

 

 

「……………」

 

 

 でも最近、アクア先輩の事嫌いになりそう。

 というか、あんな強引過ぎるせいで微妙に彼から一番色々とされてるのがまた腹立つ。

 

 私だって下界の恋人同士がやる『あーん♪』をしたかったのに……。

 

 

「クリスさんがアクアを怖い目して睨んでます……」

 

「触れない方が良い。

思えばクリスはこのパーティに加入する前から妙にイッセーを気にしてたからな」

 

「何故なんですかねー?」

 

「アクアも妙にイッセーの言うことは素直に従うんだよなぁ……」

 

 

 

「イッセーくんイッセーくん、一万エリス払うから、この後二人だけでお散歩に行かない?」

 

「その金払うからってフレーズやめてくれない? 俺がカツアゲでもしてるみたいで嫌なんだが……」

 

「そうよ。

普通に頼めば良いじゃない?」

 

「……………。センパイミタイニムシンケイジャナインデスヨワタシハ」

 

「え?」

 

「なんでもない……」

 

 

 何で先輩だけこんな近いんだろ距離感が……。

 

 

「…………」

 

「あれ、もしかして眠いのイッセー?」

 

「いや眠くは……クソ、体力が落ちてるせいで……ぐっ、氷水くれ」

 

「無理して起きてなくても良いわよ。

イッセーくらいなら私でもなんとか運べるし、はい、貸してあげるわ」

 

「あっ!?」

 

「やめろよ……周りに変なで見ら……れ……」

 

「今日はずっと走り回ってたし、きっと疲れてたのね……。

大丈夫よ、変な目で見て変な事を言う輩は私がぶっ飛ばしてあげるから、少し寝てなさい。良いわね?」

 

「……………………」

 

 

 しかも何アレ? イッセーさんが眠いとわかった途端、あの先輩はなにをしてくれてるんですか? 何で先輩の膝にイッセーさんが頭乗せて寝てるんですか? それって所謂――というか私が以前から構想していたシチュエーションですよね? 何でやってるんですか? 意味がわかりませんけど? ねぇ?

 

 

「………すー」

 

「しょぼくれてても寝顔は変わらないわね。ふふ……ま、今のアンタの方が親しみやすいから良いんだけど」

 

「ねぇねぇカズマ? あの二人ってそんな関係なんですか?」

 

「見たことないくらいアクアが慈愛にみちた顔なんだが……」

 

「俺にもさっぱりわかんねー……というかクリスの顔がひきつったまんま動いてないのが怖ェ……」

 

 

終わり

 

 

 

 

 無限に成長し、あらゆる環境と状況に対しても瞬く間に適応――つまり自力で耐性を生成できる。

 

 それが無神臓。

 

 

「積……!」

 

「どうやら貴様は人間ではあるが、我等と同類だったようだな……! はははっ! 良いぞ、血を流すことも出来ない屍であるこの身が血沸き、肉踊る……!!」

 

 

 その力はポンコツまで落ちていた一誠を再び化け物へとしていくのであろうか?

 

 

「その力認めてやろう! 今まで戦って来た者の中で貴様の右に出る者は一人としておらんと……!

このベルディアが、お前を『最強』と呼んでやる!!」

 

 

 全身から無尽蔵ともいえる赤き雷鳴を迸らせ、クラウチングスタートの体勢となった、生涯最強の人間に賛辞を送りながら大剣を構える魔王の軍の幹部。

 

 そして迸らせた赤き雷鳴が一誠の身自身へと凝縮し――

 

 

「流!!」

 

 

 雷の巫女から、堕天使の光を受け入れた雷鳴の巫女となった朱乃と同じ雷鳴が一誠を閃光へと変え、地を破壊しながら突撃する。

 

 

「速い……! なっ! 空間がねじ曲がっただと――ハッ!?」

 

「くたばりやがれェェェっ!!!」

 

 

 その速度は空間をねじ曲げ、音を置き去りにし……光その物へとなり――

 

 

「ガファ!?!?」

 

 

 ベルディアの身を粉砕した。

 バラキエルと朱乃と同じ雷の力を極限まで高め、自分自身の力へと変換する一撃は周囲の物を破壊する程の力である。

 

 だがしかし、それは全盛期の一誠であるから出来た力であり、取り戻した直後の一誠が使えばそれは未完成でしかないし、多大なる代償も支払わなければならない。

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 

 ベルディアへの一撃は自身の拳と腕の骨を粉々にし……そしてその身は焼き爛れ――

 

 

「く、くはははは……! 本当の意味で死ぬ所だったぞ、こやつめ……!」

 

 

 身体の半分が消し飛び、頭部が無事だった首が元々無かったベルディアはそれでも生存していた。

 

 

「風前の灯火といったところか……。

貴様の強さに免じて、大人しく引きあげよう。

俺も……この様では戦えんからな……」

 

「…………」

 

 

 そう言って部下に抱えられて去ったベルディア。

 

 そして全身が焼き爛れて倒れていた一誠は―――

 

 

「なんで……! どうして無茶したのよ!?」

 

 

 まさに死ぬ寸前だった所を追いかけてきたアクア達に発見され、その凄惨な姿にショックを受けながらも形振り構わない治療により、片腕の完治は無理だったもののなんとか生存する事ができた。

 

 もっとも、意識が戻るなり半泣きになってたアクアに思い切りビンタされたが。

 

 

「誰がアンタ一人に無茶しろなんて言った!? 力を取り戻したからって誰もアンタ一人にやらせる気なんて無いのよ!」

 

「………。遊ぶ金が欲しかったんだよ。

結局仕留めきれずに逃げられちまったけど―――いて!?」

 

「だったら私にそう言いなさい! なにがなんでもかき集めてきてあげるから! だから私が言った事を忘れないで! 自分の幸せをちゃんと見つけてちょうだい!」

 

「わ、わかったからそんな怒るなよ……」

 

「怒りたくもなるわよ! あ、アンタに死なれたら私……私……うぇぇん!」

 

「えぇ……? なんで泣くんだよ……?」

 

 

 それまで憤怒していたアクアが今度はめそめそ泣き出して困惑する一誠は、生暖かい目で見ていたカズマ達に助けを求めるが、フォローは一切なかった。

 

 

「お前がいきなり消えた時からコイツ、普段が嘘みたいに必死で探し回ってたからな……」

 

「ちゃんと謝った方が良いですよ? クリスにも」

 

「そうだ。アレほどの重症を負ったのが自身の力で自壊したから――という所はさぞ気持ちよかった――ではなく、良くないし、私達に内緒にしていたのもよくないぞ」

 

「……わかったよ」

 

 

 言われて謝る事にした一誠。

 

 そして……。

 

 

「腕、見せてください。

本来は贔屓となるので女神としての力を行使することは厳禁とされていますが、他の神々からの許可も下りましたので数日かけて完治するようにします」

 

「どうも……」

 

「まったく、いくらスキルを復活させたとはいえ、まだ完全とは言えないのですよ? それなのにこんなに傷付いて……。

ほら! 服も脱いでください! 他の箇所もちゃんと治療しますから!」

 

「……………」

 

「きゃん!? そ、そんな急に脱がれたらそれはそれで……。

と、ところでこれは個人的な相談なのですが、幾らお支払したらハグ的な事をして貰えるのでしょうか?」

 

「…………帰る」

 

「あー嘘です嘘です! 今の話は無しにしますからっ! も、もう……アクア先輩の時は何も言わないくせに……」

 

「勝手に向こうがやってくるからだよ……」

 

 

 ミーハー女神にも怒られ、全盛期に戻る理由も無い一誠の進化はかつての頃よりもとても緩やか……なのかもしれない。

 

 

 嘘&続きません

 




補足

幸せ探しをしてるけど、今のところ見つかる気配がまるでないらしい。

半分燃え尽きてるしね。


その2

エリス様、すごくミーハー。

そしてミーハー過ぎてホストに貢ぐ駄目女もとい、駄女神化が……。


その3
が、そんな垣根を図々しく越えては一々距離感の近いアクア様に軽くイラッとする後輩様。

そしてアクア様は割りと……なんか……うん。

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