取り敢えずネタァ!!
※加筆と修正をちょいちょいと……
1度目に負けた時の少年は夢と現実の狭間を知り、再起を誓った。
2度目に負けた時は更なる再起を誓い、無限の進化に目覚めた。
奪われ、負け、それでも尚不死鳥の如く蘇り続ける……。
どんなに陥れられてもめげずに貫き通す。
何もかもを喪おうとも決して心は折らず、どんなに辛くても昇り続ける。
背負う過去を封じ込め、愛なんて知らずにただひたすらに……。
どう見ても私には張りぼてにしか見えない。
どんなに言い繕うとも、その心は微動だにしなかった……これが私の正直な感想であり気持ち。
だがどうやら、任務の為に組んだ相棒はソイツとの再会に大層喜びつつ、その周りを囲う大量の女達に危機感とやらを募らせてるみたいな訳で……。
「そういう訳でリアス・グレモリーよ、この度の聖剣奪還任務……貴女が管理するこの地で行う事を許可して頂きたい」
私には関係のない話だ。
強大な才能と強大な神器を持つその男に惹かれてる女が沢山居ようが、相棒も取り込まれていようとも私が『これから行う任務』には何の関係も無いのだ。
だから任務を行うこの地の管理を任されてる悪魔に頭も下げるし、表面上土俵の違う相手だろうと下手にだって出る。
神に遣える身だろうがケジメは付けなければならんからな。
「ふむ、それなりに礼儀を弁えてるみたいね。良いわよ、好きになさないな」
「…………。感謝する」
「ちょっとアンタ! イッセーくんに引っ付かないでよ!!」
とある堕天使に奪われた聖剣の回収のために派遣された私と相棒。
込み入った事情なんぞ知りたいとも思わなかったから聞かなかったが、どうやら今許可をくれたリアス・グレモリーがソファに座って他の女悪魔達にベタベタとされてる一人の男が相棒……紫藤イリナの幼馴染みらしい。
……。いやまぁ、らしいじゃなくて普通に知ってるのだが、それを声に出して言う必要もないので黙ってる。向こうは私を『知らない筈』なのだから。
「……。(ものの見事に女に囲まれてるな)」
見れば見るほど違和感だらけの光景と、さっきからイリナじゃなくて私を見ている兵藤イッセーという男に対して、実に冷めた気分になる。
ベタベタされて気分が良さそうにニヤついてる姿にイリナは激怒しながらリアス・グレモリーとその他女悪魔共に食って掛かかっている所悪いし趣味に口出すつもりも無いが、自分を巡って言い争ってる女を止めようとしないこんな男の何処が良いのかわかりゃしない。
「ぶ、部長もイリナも落ち着けよ……それに皆も離れてくれ……色々ともたない……」
なんてさも困ってますな顔して訴えてるくせに本気で引き剥がそうとはしてない辺りが実に胡散臭い。
「あら、イッセーは私の下僕よ? 何しようが貴女には関係のない話でしょう? ねぇイッセー?」
「あ、あははは……」
「ぐぎぎぎ……!」
「…………」
嫉妬心を露にしているイリナに不敵な笑みを身体を密着させつつ見せつけてるリアス・グレモリーと、さも困ったように笑ってる兵藤イッセーに私は落胆した気持ちにも似た気分だ。
いや、この『兵藤イッセー』が何をしてようが関係無いし興味も無いが、こうも『アイツ』と同じ顔をしてる奴が女に囲まれていい気分に浸ってるのを見てるとイラッとしてしまう。
(せめてアイツと同じ顔じゃなければ良かったのに……)
所詮『アイツ』から立ち位置を奪っただけの紛い物の成り代わりの分際で……とな。
「イリナ、私達は任務の為に此処に来たんだ。
懐かしき幼馴染みとやらとの小競り合いなら後にしろ」
「ぐっ……で、でも……!」
「でももヘチマも無い。私達に与えられた試練を忘れるな」
このまま見てても拉致があかないと判断した私は、今にも飛び掛かりそうな相棒を無理矢理連れて、悪魔の巣窟である学校からさっさと出て行こうとする。
「………。思っていた以上に楽しんでるみたいで何よりだ」
「なにがよ! あの悪魔共……! イッセーくんにあんなベタベタと……!!」
出ていく直前、聖剣に恨みのある『女』に喧嘩を吹っ掛けられもしたが、特に怪我も無しに悪魔の巣窟から脱出出来た。
……………。兵藤イッセーに醒めた気分になりながら、な。
「くぅ……! イッセーくんイッセーくんイッセーくんイッセーくんイッセーくん……!」
「……………」
元々任務の為に来たつもりが、相棒の精神を不安定にさせるだけだった。
ホテルに来てからもずっと女悪魔共に囲まれてた兵藤イッセーの名前をブツブツ連呼している姿に『コイツはもう駄目だな』と、どうでも良い気持ちで眺めつつ私は疲れて寝るのを待つ。
「………」
(寝たか……よし)
余程ショックだったのか、ひたすらに兵藤イッセーとしか言わなかったイリナが漸く眠りに付いたのを確認した私は、椅子に掛けていたフードを身に纏って部屋を出る。
「ハァ……悪魔祓いも楽じゃないな」
堕天使に奪われた聖剣を奪還する任務として派遣された悪魔祓い……それが私の此処での今の役割なのだが、その役割の七面倒さにちょっと辟易しつつ夜となった街をとある場所を目指して歩く。
「この角を曲がって……」
奪われた聖剣の奪還が私の専属任務……それは確かに合ってはいるが本来は違う。
悪魔祓いとして教会に育てられ、身も心も主に捧げる存在としてずっと生きてきたが、これも本当は違う。
教会? 任務? 主に対する信仰心? そんなものは『押し並べて平等にどうでも良い有象無象』だ。
私にとって必要なのは今日のこの
そうとは知らずに兵藤イッセーと喧しく呟き疲れて眠ったイリナを放置し、ホテルを出て歩く私の胸の中は『アイツ』と初めて出会った時と同じようにドキドキしている。
「こ、ここか……」
アイツが住んでる家に近付いていく度に顔は熱くなり、どんな挨拶をすべきだろうか頭の中はいっぱいだ。
愛だ恋なぞ馬鹿馬鹿しいとそれまで思っていた私の考えを破壊し、居場所と肉親と存在を奪われても尚強くありながら生き続けるアイツ……。
「すぅ……はぁ……ひ、久しぶりだな……?
私にとって聖剣の任務なんてどうでも良い。
『神が死んだ』現実を知ってる以上、張りぼてに祈りを捧げるつもりなんて毛頭無い。
私が求めるものはただ一人の少年……。
女悪魔共に囲まれていい気分に浸ってるのを張りぼて男じゃない。
負けても踏まれても尚無限に立ち上がり続ける少年こそ――
「え、ゼノヴィア? どうしたんだよこんな所に……?」
ボロボロな借家の扉を開け、狭い部屋のど真ん中で腕立て伏せをしている兵藤イッセーとそっくりな顔をした少年……一誠こそが私が来た理由なのだ。
勝ち負けなんてくだらない。
格差に罵りも感じない。
力を持っても感慨すら沸かない。
世の中というのは得てして不平等である。
稀少動物を保護するために金が動く傍らで、その日の飯にすらありつけない程の貧困に苦しむ人がいて。
犯罪者のプライバシーは被害者より丁重に扱われてる。
更には高価な兵器が人道的に人を殺す。
人間誰もが皆こう言うものだ。
『他人には優しくしよう』
『しかし競争相手は叩きのめせ』
『お前は特別だ、信じていれば夢は叶う』
そうやって尤もらしい事を言ってぬるま湯に浸かって適当に自分達を甘やかし合う。
成功する人間が一握だって現実をうまく隠しながらな。
だからこそ俺は人間が一番好きであり、人間である自分が誇らしく思うのだ――
「ごめん、こんな早く来るとは思わなくて粗茶しか無いや」
「か、構わんよ……うん……」
この矛盾した思想がな。
「それにしてもゼノヴィアとはびっくりだな……。
お前確か悪魔祓いって奴じゃなかったっけ?」
「そ、その悪魔祓いとして教会からこの地に派遣されたのだ」
「へー?」
そしてその矛盾した思想を理解してる者こそが、この世にひっそりと蔓延る
このゼノヴィアを含めてね。
「堕天使が教会に安置していた聖剣を奪ったみたいでな。
そ、その為に私ともう一人がこうして来たわけだ」
「もう一人?」
「……。紫藤イリナだ……覚えてるか?」
「………あー」
名を奪われた、居場所を奪われた……それでも尚生き続ける事は出来る。
一誠として個としての証を死んでも捨てずに今日まで生きてきた俺は、その生きる術を叩き込んでくれた師匠の分身であり、同年代ゆえか変に仲が良い――と勝手に思ってる相手をボロアパートに招き入れてお茶を出し、此処に来た理由を聞いてみることした。
んで、妙にカチカチに緊張してるゼノヴィアの話を聞いてく内にあまり思い出したくは無い名前が出て来てちょっと顔に出してしまう。
「紫藤イリナ……あー……紫藤イリナさんね。
覚えてるけどアレだろ? 例によって彼に惚れちゃってるんだろ?」
「うむ……リアス・グレモリー、姫島朱乃、塔城小猫、アーシア・アルジェント、『木場優菜』、元はぐれ悪魔の黒歌にええっと……」
「あー……もういいや。
とにかく例に漏れなかったんだねハイハイわろすわろす」
懐かしくも聞きたくはなかった現実をまた突きつけられ、ちょっとだけナーバスになる。
彼……つーか兵藤イッセーくんはまーーーーーーーーーーっ!!! モテモテなんだよね、俺と違って。
毎度毎度気付けば新しい女を引っ掛けてるし、今ゼノヴィアが言った面子以外にもまだまだ居るんだよ……確か生徒会の連中とか。
「い、言っておくが私は違うからな! 寧ろお前と同じ顔であんな状況になってて気分が悪いくらいだ!」
「あ、うん」
ありゃ一体何のマジックなんだろうね。
そう思いつつ何故か切羽詰まる様に自分は違うと言うゼノヴィアにコクコクと首を振る。
まあ、悪平等なら彼の正体を知ってるしね……引っ掛かる訳も無いわな。
「そ、それに私はお前自身が……」
「え?」
「い、いや……な、何でもないぞ!」
寧ろ引っ掛かったら悪平等じゃねーしね、うんうんと考えてたせいで何かを言ってたゼノヴィアの言葉が聞こえずに聞き返すと、妙に顔を真っ赤にしながら何でもないと何度も首を横に振るゼノヴィアに俺は首を傾げるが、答えてくれる事は無く、わざとらしく咳払いしていた。
「と、とにかくだ一誠。
今回のこの任務を利用して悪魔祓いを辞めようと思う。そしてお前の傍にだな……」
「おーう……なじみから聞いてるぜそれ。
OKOK、『童貞一誠に美少女をプレゼントしてやるからヤるなりなんなりしたまえ』と言ってた意味が分かったわ……確かに美少女で間違いねーや」
「び!? ……そ、そんなに誉められると……顔が熱くなる……うぅ」
数日前の夢に出て来た師匠こと安心院なじみに言われた事を思い出しつつ、ゼノヴィアを傍らに置くことに了承する。
師匠故にバレバレなのは仕方無いが、童貞なのはほっといて欲しいものだがな。
「その間に兵藤イッセーくんに惚れましたーなんて嫌すぎるオチにだけはなんないでね?」
「な、なるか! 絶対にならん!!」
女の子とまるで関わる機会が無かった訳じゃないんだけど、浮いた話が無いのは事実であり、あの兵藤イッセーくんは実にやり手だと俺はある意味尊敬してる。
なりたいかと言われたら困るけど、どんだけ女慣れしてんだしみたいな? ゼノヴィアのこの反応からして嫌いらしいけど。
「
「ふん、頼まれたってならんぞ私は」
うん、ならんで良いよ……そんな事になったら泣くからな。主に俺が。
愛だ恋だのを馬鹿にしてきた私の考えを壊したのは紛れもなくこの一誠だ。
「聖剣……か。
そういやゼノヴィアは天然のデュランダル使いなんだっけ?」
「う、うむ……まぁな」
顔が同じだけど兵藤イッセーとは絶対違う。
こうして向かい合うだけで分かるし、だからこそ私は奴に何の魅力も感じなかった。
当たり前だ……私が求めているのはこの一誠なのであってあんな紛い物じゃないのだ。
「そっか、大変そうだなその任務」
「聖剣に関しては壊しても良いみたいだし、最悪殺された事にすれば後はこの地を治めてる悪魔共が片付けるだろう……あの主人公の兵藤イッセー達がな」
「確かにそっちのが楽もねー」
悪平等としてではない私個人の気持ち……。
「そろそろ戻らないと……」
「あー……紫藤さんと一緒だもんな?」
「うむ、残念だが今日は此処までだ」
楽しくて心地の良い時間と言うのは何時だって体感的に早く、イリナが寝ている隙に会いに来たこの時間もそろそろ終わりにしなければならないと、残念で仕方無い。
「どうせだし泊まってるホテルまで送るよ。
まだゼノヴィアと話したいし」
「ほ、ほんとか!?」
だが一誠が私をホテルまで送ると言ってくれたお陰で幸福の時間は延長され、勿論その申し出を喜んで受けた私は、学園に行った時が嘘みたいに雲ひとつ無い星空を並んで……デ、デ、でーとするカップルみたいに歩いていく。
「夕方雨だったのに晴れたなぁ……」
「そ、そうだな……」
「はは、お前なに緊張してんだよ?」
「な、し、してないぞ……至って私はれいしぇ――ひぎっ!?」
「……舌噛んでるじゃん」
一誠とは安心院さん経由で昔からの知り合いだったが、直接会う事は殆んど無く、そのせいで会話をしようとするとかなり緊張してしまう。
だけど一誠はそんな私に合わせて話し掛けてくれる。
お世辞にも愛想が良いとは思えない私に笑ってくれる。
今だって盛大に舌を噛んだ私に呆れつつも心配してくれている。
「い、いひゃい……」
「あーぁ、かなり強くやったな? ほら、手貸しなよ」
「ふぇ……?」
緊張の余り噛んでしまい、ズキズキと傷む舌に軽く涙目となる私に苦笑いをした一誠がそっと私の手を握る。
「い、いっへぇい……!? ひゃ……ひゃひ!?」
これはまさしく手を繋ぐ行為であり、私よりも大きな手の感触が伝わり、舌の痛みで上手く喋れないまま更にテンパる私だったが――
「それ、ゼノヴィアが舌を噛んだ現実を否定する……っと」
そっと優しく手を握り、穏やかに微笑むその顔を間近で見た私は早鐘していた心臓が更に早く強く鼓動し、顔処が全身が熱くて堪らなくなる。
だが、私が舌を噛んだという現実を一誠が否定してくれたお陰で痛みは消え、残ったのは私の手を握ったままの一誠の手の温もりと熱くてかなわない身体だけだ。
「あ、ありがと……ぅ……」
「おう……あ、ごめん気安く手なんて握って……」
「い、いや……全然構わないというか……」
「あ、あ、そう……それはなにより……」
「「……………」」
気まずい。
元は私が盛大に舌を噛み、一誠がその現実を否定してくれただけなのに、互いに言葉が出せない。
せっかく送ってくれてるのにロクに話せもしないなんて私はアホなのかと自分を罵倒しても言葉が発せず、気付けばホテルの前に到着してしまった。
「えっと……ほら、困ったことがあれば何時でも呼び出しなよ。俺って年中暇だしよ」
「あぁ……必ず」
結局微妙な空気のまま、ホテルの前まで送ってくれた一誠とのその道中もずっと私の胸の中は心地良さ半分と残念さが付き纏う。
だが私には残念に思う前に、一誠の傍らに居続けるその前にすべきが事が私にはある。
教会所属の張りぼてを捨て、
「ん、じゃあねゼノヴィア」
「あぁ……」
軽く手を振りながら背を向けて歩き出すその背中を見つめる。
この任務を終わらせたら漸く訪れる幸せの為に頑張る……頑張らなければならない。
イリナの事も兵藤イッセー達も関係無い……私だけの道を歩む。
だから私は勇気を出した。
「一誠!」
「え?」
背を向けて歩く一誠を呼び止め、振り向いた所を走る。
そして目を丸くする一誠に飛び付き――
「んっ……」
「っ!?」
決心をより強いものにする為、誰ともしたことが無い口付けを一誠と交わした。
「ゼ、ゼノヴィア……?」
「き、気付いて無いかもしれないから言っておくが……私はお前に惚れていた」
どれくらいの時間重ねていたかなんて覚えてない。
熱くなる身体を感じながら驚く一誠をそのまま胸元に抱き寄せた私は耳元で想いを伝える。
「だから……その傍らにずっと居続けてやるから待ってろよ?」
「お……おぅ……(む、胸が……)」
一誠が好きな女のタイプになるために大きくなった胸だってくれてやる――いや、全部を捧げる為に。
私は必ず一誠のモノになって見せる。
「あ、あはは……す、すまん……つい勢いで……」
「お、おう……つーかファーストキッスなんだけど俺……」
「ふふ……それを言うなら私もだよ一誠」
不死鳥の悪魔だろうが、小娘堕天使だろうが、魔王の妻やってる女悪魔じゃない――私が一誠の傍らに……。
「逃げるなよ? いや、逃げても追い掛けるつもりだけどな……」
「あ、はい……」
終わり
補足
悪平等ゼノヴィアさん……って無かったからさぁ……やってみよーかなって!
そして、ヒロイン指数はシリーズ最高かもしれない……。
補足2
ハードモードその1・悪平等以外の女性は殆んど初見で成り代わりにメロメロになる。
ハードモードその2
過去に生きていたと発覚した一誠を2度に渡って殺した実績持ち……つーかチートパワー持ち。
それぞれ、
そして生き残ってることも知っており、何らかの力を持ってることも若干バレてます。
ハードモードその3
成り代わり君の意向か趣味か……一部男性キャラがTS化してます、そしてそのキャラも例に漏れワロスワロス……。