いやね? 書いてた理由が、単に彼のファンだったからさ。
人間から進化する代償は、灰となって散っていく運命。
人が作り出した業とも言えるその者達の中でも一際異彩を放った少年が居た。
人類の進化系と呼ばれし怪物の中で上の上と呼びれた集団の更に上。
世界で一番強いと本気で思っていた少年。
進化した代償が短命であると告げられてもそれを信じず、王様になることを企み、そして本物の王によって壮絶な断末魔と共に餌として喰われてしまった灰色の龍の力を持った少年。
王の贄となった灰色の龍は確かに死んだ。
だが―――
「あ、アナタは……」
灰となって散ることは無く、運命の悪戯がそうさせたのか……。
少年は生きていた。
「ヤダなぁ~? せっかく助けてあげたのにどうして怖がるの?
まあ別に良いけどね、それより最近何か面白い事とかあった? あるなら教えて欲しいなぁ?」
自分が世界でイチバン強いという自負を頑固なまでに捨て去らないまま。
「へ~? 今僕が倒したのってオルフェノクじゃないんだ? ちょっと面白そうな事を聞いちゃったかな」
北崎と呼ばれた灰色の龍はまだ生きている。
どこかの世界で……。
この世界は、自分が死ぬ直前まで居た世界とは違う。
事故により両親を失い、その事故で生死をさ迷い――そして覚醒と共に全てを思い出した少年はかつてと変わらない孤独で気儘に生きながらぼんやりと思っていた。
「つまんないなぁ……」
よく晴れた天気の下、公園のベンチにねっころがりながら欠伸をする少年は小さく退屈だと呟いている。
片側の肩をだらしなく露出させたTシャツとダメージジーンズに身を包んだ中性的な容姿。
どこか浮世離れした雰囲気を感じさせるその姿は一見すれば無害な少年に見える。
「ふわぁ……」
確かに現段階ではこの少年は無害だろう。
現段階では……。
最近刺激が足りず、かといって
じゃあ適当にそこら辺の人を襲って同族を増やそう――という気分にはならないし、なによりどういう訳かかつての世界では普通の人間の心臓に力を注ぎ、低い確率ながら同族が増やせた使徒再生が出来なかった。
最初は疑問に思ったが、別に同族を増やす事に元から頓着がなかった少年はそれならそれでとさっさと割り切ってしまった。
別に仲間なんて居なくても、世界一強い自分が居ればそれで良い……。
王に補食された末路を辿っても尚、己が世界一強いという自負を捨てない少年にとっての価値の基準は、自分にとって『面白いと思えるもの』だけなのだ。
「あーあ、いっその事三本のベルトを使える人とかか襲って来ないかなぁ……」
と、あまりにも退屈過ぎてオルフェノクにしてみたら物騒窮まりない事をぼんやりと青空の中を流れる雲を眺めながら呟いていると……。
「やっぱり此処に居たわね」
呆れた表情を浮かべた少女が少年を覗き込むように現れる。
「んー? やあキミか……どうしたの?」
どうやら少年の知り合いの様で、橙色の髪を三つ編みに纏め、眼鏡を掛けた少女に対して軽く笑みを溢しながら挨拶をしながら気だるそうに身体を起こす。
「どう? 最近何か面白い事あった?」
そして少年にとって割りと重要である事を少女に問うが、少女はアホ臭いとばかりに呆れた顔を崩さない。
「今朝方別れたばっかりなのに、見つけられる訳が無いでしょうが」
「いやだなぁ~? なんでそんなに不機嫌なの? もっと笑ってよ?」
「先生に毎度毎度アンタの捜索を命令されればこうもなるっての」
「だって
多分きっと、かつての少年を知る者達……特にしょっちゅう虐められてた眼鏡の青年辺りが見たらギョッとでもしそうな台詞をズケズケ言う少女に対して、少年は特に怒る様子も無くヘラヘラと笑って流している。
「そもそもアンタがあの学校に
なのに途中で飽きてどうするのよ……」
「昔キミとキミのお父さんとお母さんを
でもさ、暫く見てても人間を襲う気配も無いし、あんまり強そうにも見えないから、期待できなくなっちゃった」
「……………」
常に微笑を浮かべる少年の言葉に、少女の顔が少し曇るのと同時に、灰色の記憶がフラッシュバックする。
普通で、普通の、どこにでも居るような家庭で、それが当たり前だと思っていたのに、化け物に全てを壊され………そして気紛れな
そしてその気紛れな
「僕が居ないと不安って顔してるけど、大丈夫だって。
キミは一度確かに死んだけど、今こうやって生きてるじゃない。
なんだっけ、オリジナル? ってオルフェノクとしてさ」
「………」
「キミのお父さんとお母さんはオルフェノクにはなれなかったけど、キミはなれた。
だからキミはもう誰にも殺されないよ」
「なんだろ、全然励まされてる気がしないわ」
「イヤだなぁ? これでも僕はキミの事を仲間だと思ってるんだよ? だってキミ、僕が昔会った他のオルフェノクと違って、触っても灰にならないし」
「アンタにカツアゲした何も知らないチンピラが触れただけで灰になった時は、私も人間辞めちゃったんだって軽く諦めがついたわ……」
人にも、他にも受け入れられぬ宿命の
「とにかく一回学校に戻りなさい」
「えー?」
「えーじゃない。
言うこと聞かないと――」
「わかったよ……。
キミは強引だなぁ……」
「アンタと付き合うには強引くらいがちょうど良いのよ。
ほら、行くわよ零……」
「……」
「? なに?」
「僕と握手したり、手を繋げるのはやっぱりキミ――藍華さんだけだよ。
琢磨君はしてくれなかったけど」
「触れたら灰になるのを知ってて言ってたのが目に浮かぶわ。
その琢磨って人も可哀想に……」
「イヤだなぁ~? 僕より琢磨君に肩入れするなんて酷いじゃないか」
「してないわよ……。
ほら、ちゃんと歩いて」
灰色の怪物は生きている。
北崎 零
ドラゴンオルフェノク
(魔人態)
(龍人態)
(激情魔人態)
(激情龍人態)
琢磨君に復讐された直後に目覚める直前のオルフェノクの王にパクパクされてしまったが、別世界に魂が転生。
両親の居る家庭でごく普通に育ったが、大きな事故に巻き込まれて両親と共に死ぬ筈だったが、その瞬間オルフェノクとしての力とかつての記憶を蘇らせて生還。
その後はかつての同じくフラフラとしながら、かつての世界には存在しなかった人ならざる者達と戦い、その界隈では軽い都市伝説扱いされている。
当初はオルフェノクとしての力が相手に通じにくくて苦戦し、イライラしていた時期があったが、それでも自分は世界一強いという激情に近い感情を折らなかった為に進化していき………?
使徒再生による種の増殖が何故か出来ないが、本人は別に良いと思ってる。
そして偶々人間の家族が人ならざる生物によって殺された現場に遭遇。
その時はその人ならざる生物を狩る方に意識が向いてて殺された家族についてはどうでも良かったが、その中の一人がオルフェノクとして蘇生。
久々に同族と出会えたのが割りと嬉しく、それ以降はその少女と、オルフェノクとしての力の使い方を教えながらその日暮らしを続けるのだが……最近主導権をその少女に取られがちらしい。
しかし、この出会いが彼の運命は変わっていく……。
終わり。
灰色の龍は同族となった少女と気儘に生きる。
「へー? キミ達って確か堕天使だよね?
教えてよ、そんな事をやって何が面白いの?」
その過程で色々とあっても……。
「ほら、僕の思った通りだよ藍華さん。ここに居たら悪魔の人達も来たでしょ?」
「それはそうだけど……」
「お、お前ら、同じクラスの桐生と北崎!?」
「ん? キミ誰? なんで僕の事知ってるの?」
「同じクラスの兵藤よ。
……どうやら悪魔になったみたい」
「ふーん? まあ、それはどうでも良いよ。
だってほら……全員集合だもん」
灰色の龍は――
「デルタのベルトはないけど、何となく言おうかな――――
――――――――――変身」
生きていく。
「zzz……」
「アナタ達は一体……」
「しっ……。
今は静かにしてください。彼は寝てる所を無理矢理起こされるとかなり機嫌が悪くなるので」
「わ、わかったわ……」
「zzz……ふふっ……」
「あ、あれだけエゲツない事を堕天使にした癖に、こんな暢気に寝てるって……。
てかさ、桐生と北崎ってそんな関係なのか……?」
続かない
補足
初代電車斬りを境にどんどん落ちぶれて、虐めてた琢磨君には復讐され、王さまにはパクパクされてと割りと散々な最期だったけど、村上社長と同じくらいファンだったのさ。
ちなみに、零という名前は中の人の演者名……そして銀牙騎士の名前からです。
ドラゴンオルフェノクの龍人態のあの刺々した感じ好き。
先代社長さんにスピード負けしてたけど、アクセルフォームを手玉に取っただけでしびれたよ。
……あと当時14歳とは思えぬあの演者さんの演技力よ。
デルタの変身時の低い声とかゾワッとするね。
続きは……要らんっしょ? だって北崎さんの場合、絶対全部敵になるフラグやし……。つーかキャラ再現ムズい