色々なIF集   作:超人類DX

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やっと一つ目完成だ!


時間は飛んでるけどな。

前提として、クレイジーサイコ兎さんは出ず、ノーマルラビットさんから渡された紅椿を普通に受けとり拒否し、銀の福音戦には参加しないで一夏達は呑気に卓球やってた的な設定です。


精々頑張ってシリーズ『飛翔する少女』

 抗うのではなく、共に生き続ける事を選んだ。

 

 無論その選択に後悔などある訳がない。

 

 解釈によっては、それは逃げであると揶揄されるのかもしれない。

 

 けれど、それでも世界から弾かれた二人は幸せだった。

 

 生きる事は逃げない事……。

 もう二度と奪われない為に二人で一緒に、もっと先の先の道を歩み――――自分達と似た境遇の子供達を自分達なりに導きながら……。

 

 

 

 

 

 

 IS学園は夏休みに突入した。

 

 それはつまり、用務員としての仕事も、非常勤保険医としての仕事も多少は減る事を意味する―――と言われれば全寮制の学校なので微妙なラインだ。

 

 しかし確実に時間が余るのは確かで、夏休みに入る前にIS学園の1年生が行った臨海学校で何かが起こった様だが、単なる用務員と非常勤保険医であるイッセーとリアスにはそこそこ無関係であんまり関心もなかった。

 

 無論、二人から『生きる為の術』を直接教え込まれた織斑一夏と篠ノ之箒も、別に専用機なんて持っちゃいない一般生徒なので、暴走したISを相手に友人達と力戦奮闘したという訳もなく、普通に夏休みを満喫していた。

 

 

「覚悟はそれなりにしていたけど、本当に多いな夏休みの課題……」

 

「計画的に行わないと終わらない様に量を調整しているのだろう。

仕方ないさ」

 

 

 特に支障が無ければ、生徒は夏休みの間は限定的に実家へと帰省することを許されている。

 しかし一夏と箒は実家に戻る気は更々無く、夏休みを前に出された課題を他の者達と共に時には教え合いながら終わらせる日々を送っていた。

 

 

「五日くらいは家に戻るか? 掃除とかしたいし」

 

「そうね。

地元の小さな夏祭りにも行きたいわ」

 

 

 そう、何時もの用務員室で。

 

 

「そーいえば、リアス先生のお家ってどんなお家なの?」

 

 

 病弱らしい一夏の双子の弟である織斑春人と、彼の形成する厄介な人間関係に巻き込まれたくない――そんな面々が集まり、何時しか生徒には不思議にもあまり知られてない用務員室が主な集まり場所となり、その面子の中の一人で、リアスに懐いている女子生徒、布仏本音が一夏や箒やシャルロットと一緒に課題をやっている横で話し合っていたイッセーとリアスに気分転換のつもりで質問をする。

 

 

「特徴という特徴がある訳じゃない普通のアパートよ? 家賃が凄く安くて助かってるわ。ね、イッセー?」

 

「本当は一軒家でも買った方が良いと思ったんだけど、リアスちゃんはあの部屋で良いって言うからね」

 

「だってあの狭さが良いんですもの。

広くて部屋が何個もあったら、昔みたいに一緒に寝られなくなるでしょう?」

 

「まあね」

 

 

 白衣を羽織ったリアスの言葉に、作業着姿のイッセーが恥ずかしげもなく頷く。

 同じようにリアスを慕う本音の姉である布仏虚が、課題にちっとも集中しようとしない妹にため息を洩らしながらも、リアスとイッセーの住んでいる家には興味があるらしく、聞き耳を立てている。

 

 

「俺と箒はしょっちゅう遊びに行ってたから、二人の家がどんな所かわかるぞ」

 

「お世辞にも広いとは言えない――寧ろ寝る時は本当に密着でもしないと無理なくらい狭いな」

 

「そうなんだ、じゃあこの学園で働く前は毎晩そんな感じだったんだねー……いいなーイッセーさん……」

 

 

 自分もリアスに抱き着きながら寝てみたいなー……と、年上に甘える子供のような心境が駄々漏れた顔をする本音のイッセーを見る視線の意味を察したのか、リアスが苦笑いしながら訂正する。

 

 

「イッセーが私に――じゃなくて、私がイッセーに何時も頼んでるの。

私って、皆が思ってる程全然しっかりなんてしていないし、ずっとイッセーに頼りっぱなしのよ?」

 

 

 子供達にはイッセーがリアスにベタベタしている様に見えている気がしたので、ここで改めて訂正するリアス。

 

 初めて出会い、助けられ、あの洞穴で一緒に暮らす様になった時から、イッセーと一緒でなければ生きていけなくなってしまった。

 甘えるのも自分、無理を言ってしまうのも自分……しかしそれでも、イッセーはそんな自分を受け止めてくれる。ただ一人の悪魔として大切にしてくれる。

 

 だからここまで立ち直れた。

 共に歩いていける様になった。

 

 

「逆もまた然りだけどな。

リアスちゃんが居なかったら、とっくの昔に無駄死にしてたろうし」

 

 

 そしてイッセーもまたリアスが居たからこそ今も生きることが出来た。

 互いに足りない部分を補い合いながら先へと進む――そういう意味では運命的なレベルで二人の繋がりはとても深いのだ。

 

 

『…………』

 

 

 そんな話を二人から聞いた10代の若者達は、二人の関係に一種の憧れを抱き、課題の手が思わず止まってしまうのだった。

 が、そんな二人の関係を羨むも、悔しがる者が居た。

 

 

 そう――

 

 

「むー……」

 

 

 課題なんてやりもせず、夏休みになってからは余計に用務員室に入り浸る様になった生徒会長こと更識楯無こと刀奈――――皆大好きたっちゃんだ。

 

 妹である簪を大切に思うあまり、暗部としての面を持つ実家のしきたりを己が全て引き受けたが、妹の簪にはその行動自体が『見下されている』と解釈され、その後拗れたまま織斑春人への思情がトリガーとなり、簪への接し方に線引きを完成させる事になった。

 

 その結果に至るまでの道のりには、去年偶々発見し、関わり合う内に色々な苦悩を打ち明けるようになった男性――一誠が居た。

 

 

「……。何その顔? ヒマワリの種でも溜め込んでるハムスターかキミは?」

 

「ちがいますよーだ」

 

 

 思いの外外見が若く――いや、最早リアスにもいえるが、自分達とほぼ変わらない若い外見の青年は淡々黙々と他の生徒や教師に見られる事なく学園中の備品から設備の整備をする用務員で、基本的に喋る事は無い―――というのが刀奈の印象であったが、それは間違いで、本来はかなりのお喋りで、こっちの一方的な吐露に対しても割りと普通に返してくれる。

 

 相手が年上だからなのか、ついつい喋ってしまう内に用も無いのに訪ねに行き、非常勤保険医のリアス・グレモリーと信じられないくらい深い仲なのを知った当初は、自分でも戸惑う程に深くショックを受け……。

 

 

「てか課題はどうしたんだよ? キミ一人だけ二年なんだから、ちゃんとやらないと……」

 

「夏休みに入って三日で全部終わらせましたけど? イッセーさんともっと居たいから最速でしたけど?」

 

「………あ、そ。

キミってそういう面は無駄に凄いよな」

 

「でしょでしょ? だからご褒美にグレモリー先生にするみたいに頬を優しく撫でてくださいな?」

 

「えー……? それは嫌だな」

 

「むー! なんでですかっ!」

 

 

 そのショックの意味が恋である事を自覚して……。

 相手は一回りは年上の、しかも事実婚ともいえる相手が居る男性が好きになってしまった刀奈は、その日からリアスにライバル宣言し、飛翔する翼を手に入れた。

 

 自分の他に、ちょっとドジな――されど刀奈と比べたら年齢的にも問題ない女性教師が一人好敵手として居るが、それでも刀奈は自分の気持ちにとても正直になった。

 

 

「あー……リアスちゃんが言うには、キミが何でか知らないけど俺にそんな心境を持ってるみたいだけど、少しだけ冷静に考えてみろよ? 良いか? 俺だぞ? ありえないだろ? 俺だぞ?」

 

「何で俺だぞを二回繰り返すんですか……。

言っておきますけど、私も散々考えましたよ? ただの気の迷いなのかもとか、単にイッセーさんのツンデレに引っ掛かってるだけなのかとか。

でもイッセーさんの事をそうやって考えれば考える程、本気と書いてマジだって気づきましたんで」

 

「…………………」

 

「イッセー、この子の気持ちに嘘はないわよ」

 

 

 ふふんと、イッセーの言葉に対してドヤ顔で返す刀奈は他の者達へ見せる姿とは違い、妙に子供っぽくて本当に頑固だった。

 

 

「ぜーったいにグレモリー先生に負けませんからっ! ほら、その証拠におっぱいも育ってますし!」

 

「…………………」

 

 

 リサーチ済みのイッセーの性癖を刺激するように胸を張って大きさを主張する刀奈。

 妹との蟠りに対する覚悟を決め、悪魔の女性を守る為に生きる龍の称号を持つ青年に惹かれし少女は、ある意味で真っ直ぐなのだ。

 

 

「更識先輩もぶれないよなぁ……」

 

「イッセー兄さんの戸惑いもわかるぞ。

ああまで言われたら変に突き放せんし……」

 

「『俺別に優しくねーよ』みたいな態度を出してるけど、基本的にそうじゃないもんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな刀奈の何時も通りさから数日後の朝。

 

 何時も通り起きて、何時も通りにリアスに負けない為に隠れて鍛え、何時も通りご飯を食べ、何時も通り念入りにおめかしをして用務員室に突撃をしようと寮の廊下を歩いていた刀奈は、あの宣言以降、あまり顔を合わせる事も無かった織斑春人と鉢合わせしてしまった。

 

 

「更識先輩……」

 

「………」

 

 

 珍しく女子や一夏の一応は姉である織斑千冬に囲われてはおらず、刀奈の妹である簪と二人だけという状況で。

 

 

「あらおはよう、ご飯かしら? 織斑先生と一緒じゃないのは珍しいわね~?」

 

 

 朝っぱらから面倒ね……。と思いながらも、一応生徒会長なので人でも食った様な飄々とした笑みを溢して挨拶をしておく。

 春人の隣に引っ付くように居る簪から、これでもかと殺意の籠った目で睨まれてるが、その視線には気付かないフリだ。

 

「まあ、何でも良いし、元気ならそれで結構よ。

それじゃあ――」

 

 

 簪の人生に干渉はもうしない。

 それが彼女の為になるから……その結論に到達した今、簪がよりにもよって多くの女子に基本的に囲まれてる春人に惹かれているのはちょっと心配だけど、あの気の強さを感じさせる眼を見れば、色々と修羅場を経験して気を強くしたのだと刀奈は思い、余計な事は言わない。

 

 そもそも、そういう意味では自分と簪はやはり姉妹なんだし―――と、ある意味で刀奈の方が棘の道である事を自覚して、軽く苦笑いを心の中で浮かべながらさっさと退散しようとするのだが……。

 

 

「待ってください……!」

 

 

 刀奈にしてみたら、春人から聞きたくない台詞トップ5に堂々ランクインする言葉で止められてしまう。

 

 

「…………。えーっと、何か?」

 

 

 無視しても良かったが、また変な絡まれ方を後々される方が鬱陶しいと考え、内心は本気で嫌だったが、それを感じさせない外面の良い笑みを浮かべながら振り向く刀奈。

 

 相変わらず周囲から――特に千冬から花よ蝶よと大切にされていて、臨海学校での暴走IS騒動の時も、一度目の出撃に失敗して怪我をしたと聞いた途端、千冬が無理矢理出撃してその暴走ISを破壊してしまった……みたいな情報を聞いた時は流石に呆れたし、春人には本当に事故なのか軽く疑いたくなる理由で胸に触れられたし、簪から要らない恨みを買いたくもないので、関わりたくは無いのだ。

 

 

「力を貸してください」

 

 

 が、そんな刀奈の心境を逆撫でするように、春人は頭を下げてきた。

 

 

「力? どういう事かしら?」

 

 

 勘弁してくれないかしら……? 悪意がある無いに拘わらず、その行動のせいで周囲の反応が面倒な事になるって自覚が無いのかしら? と、やはり顔には一切出さずに内心は敵と認識した相手へのイッセーばりの毒を吐きまくる刀奈は、取り敢えず聞いてみる体を装う。

 

 

「簪のISについてです」

 

「………………………」

 

 

 心底嫌だって顔の簪に気付いているのかいないのか、春人曰く、簪の作成するISこと打鉄弐式の作成の手伝いをして、完成まで後一歩まで迫っている。

 

 だけど完全な完成にはデータが足りず、春人の白式のデータだけでは足りない。

 故に国家代表では一応ある刀奈の協力が欲しい――――という事だった。

 

 

「僕は―――僕のせいで簪と更識先輩の仲が悪くなったと思っています。

だからその罪滅ぼしに……」

 

「………………。春人がどうしてもって言うから我慢する。

もし終わったら、アナタが前に春人にしたことは許してあげてもいい」

 

「……………………」

 

 

 どうやら春人が散々簪を丸め込んだ様で、顔にこそ嫌悪で溢れているものの、もし春人の言うことを聞けば以前彼にやった事は水に流してくれるらしい。

 

 ………あくまで上から目線だけど。

 

 

「私、これでも結構忙しいのよね」

 

「「………」」

 

 

 だからではないが、刀奈は普通に断った。

 春人の差し金だとしたら余計断るし、そもそも刀奈はもう簪のやり方を否定もしなければ肯定もしないと決めているのだ。

 

 

「実家の家業もあるし、一応国家代表としてのお仕事もあるし、アナタ達にデータ提供くらいはハードに纏めてあげられはするけど、アナタ達に付いてあれこれするって事は無理ねー」

 

 

 これは嘘ではなく本当だが、一誠関連で元から良かった要領が更に上がってしまっていて、その気になれば時間なんて作れるのだが、簪に干渉しないという決意もあるし、なにより空いた時間は自分磨きやら一誠の傍に居る事に費やしたい――というのが本音だった。

 

 故に刀奈はあっさりと断った。

 

 

「僕が嫌いなんですか……?」

 

「……………」

 

 

 あっさり引き下がる――なんて事はなく、春人は涙目になって刀奈に聞く。

 こうすればそのこじんまりした体型もあって、女子の大半は落とせるだろうが、生憎相手は刀奈だった。

 

 この手の態度には慣れていた。

 

 

「嫌いだからとか、好きだからとかじゃなくて時間がないのよ。

そもそも、自惚れて貰っちゃ困るわね。私はアナタの事が好きでも無ければ嫌いでもない―――興味が無いのよ」

 

「うっ……!」

 

「………………………」

 

 

 人の良さそうな笑みから一転し、底冷えするような『無』の表情と声となり言い切る刀奈に春人も、それまで嫌悪の表情をしていた簪もその無の迫力に圧される。

 

 

「確かにあの時はアナタの横っ面に一発入れちゃったけど、どうでも良いような相手に触れられた挙げ句、肉親に罵倒までされたら頭に来るでしょう? 私は聖人君子でもなんでもないし」

 

 

 イッセーが戦いに本腰を入れた時の瞳や、リアスの髪と同じ……この世に生を受けた時から赤いその瞳が圧された二人を射抜く。

 

 

「協力はするわ。

けど、あくまで情報を提供するだけでそれ以上は何もしない。

簪だって私に余計な干渉はして欲しくないでしょうしね」

 

「っ……」

 

「そ、そんな……。

それじゃあ簪と仲直りなんて――」

 

「私とこの子は姉妹なのかもしれない。でもこれから先向かう道はまるで別物よ」

 

 

 春人の言葉を叩きのめす様に言い切った刀奈は再び背を向ける。

 

 

「冷たいとか。酷いだとか。無責任だって多くの者達は私に言うでしょうね。

けどそれでも良い……漠然とただ普通に生きて欲しかったからという私のエゴで簪を遠ざけた事を後悔なんてしない。

これまでも、そしてこれからも、私は更識楯無として生きる。

最初で最後――本気で好きになった人とその隣を歩くライバルに追い付く為に」

 

「好きな人……って……」

 

「…………」

 

「そういう意味では簪、私とアナタはやっぱり姉妹だわ……ふふ♪」

 

 

 そして飄々としたものではなく、彼女の本心からの笑顔を浮かべながら、唖然とする二人に背中越しに手を振りながら去っていくのだった。

 

 

「じゃあ、また今度とか。お相手は更識楯無でしたー♪」

 

 

 誰にも見られずに、未だ進化しようと鍛える用務員の青年に会いに行く為に。

 

 

「もっと先の先へ……。ちょっとだけだけど、四人の見えているものが理解(ワカ)った気がするわ……!」

 

 

 その精神を確立させながら。

 

 

 更識刀奈

 

 備考

 個を確立させし、覚醒手前の恋した少女。

 

 

 ???

 目覚めかける彼女の個性

 

 

終わり 




補足

そーいや、イッセーとリアスの世界に戻った体のお話もあったね……。

アレはクレイジーサイコ兎さんまでも仲間化して世界征服可能面子のハートフルな話だけど。


その2
たっちゃんは強い子になりました。

ほとんど事実婚してるペアの男性に恋してしまった困ったちゃんでもある。

……そして今その芽が覚醒しつつある子でもある。


さぁてと……どんな個性にしようかね。
ネームも含めてだけど。

その3
オリ弟、福音戦では第一波の時点で脱落し、切れたねーちゃんによって起きた頃には終わってしまって碌になんもしてなかった。

そして相変わらずたっちゃんにしつこい。

…………もう自分だけの精神を確立させてるので無理だけど。




続きはー……感想しだいかな!

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