色々なIF集   作:超人類DX

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たっちゃんも成長するけど、地味にやまやんだって頑張るさ!




頑張れやまやん!(覚悟篇)

 織斑春人としての人生は、少なくともIS学園に入学して暫くは順風満帆だった。

 

 兄である一夏を、都合の良すぎる展開という補正の加護から外し、すぐに激昂して手が出る箒を押し付ける。

 

 そして後は都合の良い展開だけを自分が貰う―――という大まかな流れは転生して直ぐに作り上げて来たつもりだっただけに、入学してからの『思い通りにならない』状況が生前の様で織斑春人にとってはとてもイラつかせるものであった。

 

 その最たるものが更識楯無――いや、刀奈であろう。

 

 妹の簪は上手いこと一夏にヘイトを向けさせる形で仲を深める事に成功し、後はその姉である彼女との拗れた仲を上手いこと取り持てば彼女とも仲を深められると思っていた。

 

 けれど刀奈はそんな自分に対して靡くどころか、事故で胸を触られた後から一切心を開く事は無かった。

 どれだけ下手に出ても、どれだけ『誠意』を示そうとしとも彼女は相手にもしてくれない。

 

 今まで相手に警戒される事はあったけれど、暫くすれば直ぐに心を許されてきた織斑春人にしてみれば、彼女は転生後初の難しい存在だろう。

 だが、箒と違って織斑春人は刀奈への接触を絶とうとはしなかった。

 

 それは織斑春人が単純に更識刀奈に対して『生前』から執着していたから――――というどす黒い理由は誰も知らない。

 

 故に織斑春人は既に彼女からうんざりされているにも拘わらず近付こうとする。

 夏休みという自由な時間が増えてしまってからは余計に。

 

 

 

 そして織斑春人も流石に『自分』という例があるせいか馬鹿ではなかった。

 ここまで刀奈が自分を拒否するのと、異質な程一夏と箒の中身が変化している理由を考えた結果、ひとつの結論に達したのだ。

 

 

(もしかして僕の様な人がこの学園のどこかに居るのかもしれない……。そう考えると色々と納得できる)

 

 

 自分の様な『知識』を持つ存在が、この学園の生徒か教師の中に居るのかもしれない。

 そして自分の知らぬ所で一夏や箒といった者に接触し、色々と吹き込んでいるのやもしれない。

 

 この考察がもし事実だとするなら、一体何処の誰であるかを知り、場合によっては排除をしなければならない。

 

 

 ―――等と考えた春人はこの日以降、千冬や自分と仲を深めた女子達の構いを上手く掻い潜りつつ一夏、箒、刀奈の行動を徹底的にマークする事となった。

 

 

「ギリギリ8月前に課題が終わったぜ! これで思う存分夏休みが満喫できる!」

 

「遊びすぎて予習を疎かにはしないようにな? でないと二学期の授業についていけなくなる」

 

「わーってるわーってる! そこは抜からないぜ」

 

「でもまずは終わっという解放感を楽しもうよしののん?」

 

「ずっと宿題三昧だったし、今日くらいは良いんじゃないかな?」

 

「まあ、確かにそれは私も同意見だが」

 

 

 夏休みの前半が終わりを迎える7月の末日の朝食。

 まだ殆どの生徒が学園に残っていて、賑わいを残す食堂の一画にグループとなって朝食を食べながら、楽しげに会話をしている一夏と箒は、自分の横から奪うように(春人目線)いつの間にか仲良くなっていた本音やシャルロット――

 

 

「じゃあ何時もの流れにする? 誰も反対なんてしないとわかってる上で提案させて貰うけど」

 

「お嬢様が羽目を外し過ぎなければ誰も反対はしません」

 

 

 本音の姉である虚――そして更識楯無こと刀奈。

 原作以上に何もせず、原作以上にお気楽で神経を逆撫でしてくる一夏によりにもよって奪い取られたと勝手に思っている春人の視線は自然とネガティブな意味の感情に支配されていく。

 その春人の周辺では、千冬を筆頭に簪だのセシリアだの鈴音だのラウラだのが牽制しあっていて、更にその近くでご飯を食べていた無関係の生徒達がとても居心地が悪そうにしているけど、今の春人にはその辺の事にも気づけない程、彼等の挙動を観察していたのであった。

 

 

 

 

 課題もちゃんと終わらせた一夏の夏休みの予定は決まってるも同然だし、箒や友人達もまた同じだった。

 

 

「…………。春人が何気に少し離れた場所からついてきて俺達を見てるんだが」

 

 

 今頃用務員室で仕事をしているだろう一誠と、その手伝いをしてるリアスのもとへと入り浸る。

 それが共通の夏休みの予定である一夏達にとって、二人の存在は絶対に春人には教えたくなかった。

 

 元々一誠が特に春人を嫌ってるというのもあるが、あのリアスにもし春人が以前刀奈にやらかした真似を仕出かしてしまったら、一誠の中のスイッチが一気に殺戮モードに切り替わるのは目に見えている。

 

 ある意味で男性操縦者としての厄介な面を色々と引き受けてくれている春人には感謝はしている一夏にしてみれば、これからも『精々頑張って』欲しいので、再起不能になって貰うのは困る。

 

 ……………まあ、個人的には千冬がリアスと春人を引き合わせたがらないのと同じ様な理由で、一夏達も二人の事は最後まで隠したいのだが。

 

 

「ひょっとして私のせいかしら……? この前妹のISの完成の手伝いをしろって言ってきたのを、暇じゃないから多少のデータ提供だけならしてあげるって言っちゃったもので……」

 

「そういえば言ってましたね。アイツはどうしても楯無先輩と更識の仲を取り持ちたいみたいですし」

 

「小さな親切大きなお世話だと思われてるのに気付かないのか春人は……」

 

「妙に楯無お嬢様を気にしてるんだよね、おりむーくんって」

 

 

 そんな春人がずっと遠くもなく近くもない距離間から自分達を監視するように見ている。

 当たり前だが一誠とリアスから直々に『生きる為の技術』を仕込まれ続けてきた一夏と箒はその単純な気配に直ぐ様気付いており、更識家とその従者家の者である本音、虚、刀奈にも察知されている。

 

 

「俺気付いたんだけど、春人ってまさか先輩の事が好きなんじゃね? みたいな―――」

 

「…………………」

 

「じょ、冗談ッス……」

 

「そんな本気で嫌そうな顔するとは思いませんでしたが……わからないでもありませんね」

 

 

 これでは用務員室に行けないではないか……と春人の視線を特に鬱陶しがる刀奈の機嫌が段々と悪くなっていき、冗談のつもりで言った一夏の一言によってその表情は、クラスメートの女子と仲が気持ち悪いくらい良いと聞いて露骨に顔に出しながら不機嫌になる完璧生徒会長さんみたいな嫌そうな顔だった。

 

 

「で、でもあんまり言いたくはないけど、彼ってその………ストーカー気質な所がある気がするんだよね」

 

「シャルは暫くその被害者だったもんなー……」

 

「う、うん。今は興味を持たれなくなったのか、何もされなくなったけどね」

 

「下手したらデュッチーのお風呂シーンに入り込んでたかもねー?」

 

「や、やめてよ! 彼や彼の周りの人達の反応を想像しただけでお腹がキリキリしてくるから……!」

 

「………。すっかり春人やその周囲の者達にアレルギー反応を示すようになってしまって…」

 

 

 本音の例え話にすら顔が真っ青になるシャルロットの言った通り、確かにストーカー気質が春人にはある。

 つまり今現在の春人の行動の理由は、不機嫌な顔になってる刀奈に対してなのかもしれないと、一夏達は考察しつつも、時間稼ぎの為に適当に学園の外にある緑林地帯で駄弁る。

 

 

「…………。スゲー見てくるんだけど、何でこんな時に限って千冬お姉さんが連れていかねーんだよ」

 

「そーいえば、朝からやまやんと一緒に学園長に呼び出されたらしいよ?」

 

「は? 何で……?」

 

「おりむーくんの入学後から、個人的な感情ばっかりで彼ばっかり贔屓するって他の生徒達からの苦情が多く出たからだわ。山田先生は副担任だから普通に巻き込まれただけね」

 

「山田先生も大変な……」

 

「えー? 俺からしたら別に良いと思うけどな。

適当に雑用やらなにやら従ってたら、何も言われねーし」

 

「一夏君はそうかもしれませんが、周囲からしたら目に余るという事なのでしょう」

 

「でもさ、織斑先生が居ないと逆に困るって思うなんて珍しいよねある意味」

 

「全くだわ。だったら他の子達が彼を引っ張り回して欲しいのに……。

こんな時に簪は何をしてるのかしら……?」

 

「最近かんちゃんと全然しゃべらないからわかんないや。

……昨日も話し掛けたら凄い怖い顔されちゃったし」

 

 

 取り巻きが居ない春人の微妙な厄介さがいつの間にか全員共通の愚痴となって、皮肉にも微妙に会話が盛り上がってしまってるが、一夏達にしたらさっさと用務員室に行きたいので、頼むから誰か春人を強引に拉致してくれやしないかと願う。

 

 別に今から全員で全力疾走して撒いても良いが、逃げた後、見失った春人に学園を隈無く徘徊されて、用務員室の存在に気付かれても困る。

 

 IS学園の校舎の中でも滅多な理由でもないかぎりは普通の教師や生徒はまず通らない、空き教室か物置地帯の中にしれっとあるのが用務員室なのだから。

 

 

「いっそ誰か話し掛けてやったら? ………………例えば更識先輩とか」

 

「兄弟なんだから、そこは一夏くんが話し掛けてあげなさいよ? お兄さんでしょ?」

 

「いやー……俺春人に嫌われてるしなぁ。

箒は――」

 

「嫌だ。ハッキリ言わなくても私は春人も織斑先生も篠ノ之束も大嫌いだ」

 

「………バッサリっすね箒は。

そういう所はホントにイチ兄そっくりだぜ」

 

 

 適当に話し掛けて、適当に対応してみて、適当に満足して貰って帰って貰う作戦を考え付いてみるも、一夏は春人に嫌われてるし、刀奈は自分から話しかける理由が見当たらないし、箒に至ってはリアスに仇なす連中に対する一誠ばりにハッキリと嫌いと言い切り、他の面々も下手に話しかけた後の周辺面子からの無駄な敵意を考えたらデメリットでしかないと、結局誰一人として春人と関わりたくは無いらしい。

 

 ―――――と、思いきや。

 

 

「……………」

 

「っと……まさかの春人からこっちに近づいてきたんだけど」

 

「ちょっと一夏くん、300円あげるから上手いこと追い払ってちょうだい」

 

「労力考えたら300円は安いッスよ先輩。

それに俺の場合、言葉を選んだつもりでも拗れるから……シャルが行けよ?」

 

「ええっ!? む、無理ィ! お、お腹が……うぅ、キリキリするよぉ……!」

 

「軽くトラウマじゃんデュッチー……。じゃあ特に関わりの薄いお姉ちゃんがここは――」

 

「関わったら変な厄介事に巻き込まれると皆さんから聞いた上で引き受ける程、私は要領が良くないわよ本音?」

 

 

 取り巻きが居ないせいか、自由に動ける春人がこちらに近寄ってくるのを、全員が全員、互いに誰が対応するかの押し付け合いをしている内に春人がやって来てしまった。

 

 

「………」

 

「………。おう春人、どうしたんだ? 何時もの友達はよ?」

 

「………………………」

 

「え、ガン無視っすか……?」

 

 

 本当に仕方ないので、一夏が露骨過ぎて逆にバレバレにしか見えない無駄に爽やかな笑顔で出迎えてみるが、春人はそんな一夏を一瞥くれただけで何の声も発する事無く、最早露骨を通り越して『千円あげるし、頼むからこれ以上近寄らないで欲しい』みたいな顔してた刀奈に春人は話し掛けた。

 

 

「簪のISの件で相談したいことがあります」

 

 

 どうやら簪の件を理由に近付いてきたらしく、明らかに面倒そうな顔をしていた刀奈に春人は一夏達周囲の何とも言えない顔を無視しながら話をする。

 

 

「これから簪と作業をするのですけど、やっぱり楯無先輩の力が必要なので、どうか協力してください。ずっと見てましたけど、今日は暇ですよね……?」

 

「…………。友達とお話しているのを暇と捉えるのはどうかと思うわよ?」

 

 

 一夏達全員が春人の後ろに回って両手を合わせているのを見て笑いそうになりながらも、刀奈は暇人呼ばわりしてきた春人に冷たく言う。

 

 

「それにこの前も言った筈だけど、協力する範囲はデータ提供だけよ。

その他についてはアナタが簪と力を合わせて完成させなさいよ? 私はそこら辺の事まで干渉したくなんてないし」

 

 

 また事故られても嫌なので、何気に春人から距離を取りつつ拒否をする刀奈。

 その時、春人が何かを言おうと口を開きかけたのだが……

 

 

「春人!! 何故こんな所に居るんだ!」

 

「!」

 

「いつの間にか居なくなってしまったと、皆さんで探しましたのよ!」

 

「ほら、早く部屋に帰るわよ!」

 

「そんな奴等と関わって身体を悪くしたらどうする!」

 

 

 タイムリミットだったらしく、ギョッとした春人の返答を待たずして千冬達が全力失踪と共に現れ、あれよあれよと春人を連れ行くのだった。

 

 

「おい織斑、春人に何か――」

 

「してませんよ……。

疑うのはやめて貰えますかね」

 

『………』

 

「おおぅ、揃いも揃ってそんな目されても普通に困るんですけど……」

 

 

 何故か一夏が変に疑われて。

 何はともあれ春人のストーカーから解放された一夏達は、勿論警戒はしながらも用務員室へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、所変わって此方は何時もの用務員室。

 何時も通り早起きをしてリアスや自身に宿るドライグとトレーニングをした後にきっちりと仕事をし、用務員室で精神(スキル)の研ぎ澄ましを互いに行いながら、何時も通り来るのであろう一夏達を待っていた。

 

 が、昼近くになっても一夏達は一向に現れず、リアスと二人でどうしたのだろう? と思っていたら、先にやって来たのは一夏のクラスの副担任の山田真耶であった。

 

 生徒と違って夏休みも教師の仕事はあるので、こんな早くからやって来るのは珍しく、リアスと一誠が不思議に思っていると、微妙に困った様な顔をしていた真耶は出されたお茶に口をつけながら打ち明けた。

 

 

「………。二学期から織斑先生と替わる形で私が一年一組の担任になるというお話を先程学園長から言われまして……」

 

 

 一学期時の千冬の行動――というか、織斑春人に対する行動があまりに露骨で、臨海学校の暴走ISの件で独断専行を行ってしまったことで減給と降格処分を命じられてしまったらしく、繰り上げ式で真耶が二学期から担任へとなる事になったらしい。

 

 最近の真耶は千冬のあまりな行動に対してだけはきちんと注意する事ができるようにはなれたが、流石に不安はあるらしい。

 

 だから――話を聞いて欲しかったという意味もあって用務員室へと来たと話す真耶に、黙って聞いていた一誠とリアスは口を開く。

 

 

「副担任であった時と同じようにすれば良いんですよ。

変に気を張ってても疲れるだけでしょうしね」

 

「ええ、先生なら大丈夫よ」

 

 

 副担任の時と同じようにすれば良い。

 一夏達の話を聞いてた限り、一学期の中盤からは殆ど千冬に代わってクラスを纏めていたのだから、名称がただ変わるだけだと、一誠とリアスは真耶に自信を付けさせる。

 

 

「ありがとうございます。

そうですよね、先生なのにここで弱音を吐いてちゃいけませんよね……!」

 

 

 その言葉が効いたのか、多少は表情を和らげた真耶だったが、二人の言葉によって覚悟を決めたのか、暫く前から秘めていた思いを二人に打ち明けた。

 

 

「一夏君や箒さんがお二人に密かに鍛えて頂いて居る様に、私の事を鍛えて欲しいのですが……」

 

「え……」

 

「先生には必要の無いものだと思いますけど……」

 

 

 ISではなく、生身の己を鍛えたいと吐露する真耶に少し面を喰らってしまう一誠とリアスは、必要のないものだからと一度は断ろうとした。

 しかし真耶はそれでもと食い下がる。

 

 

「何かあっても生徒を守れるようになりたいのも勿論あります。

その為にはISの技術だけでは足りませんし、何より私はもっと知りたいのです、お二人の事を」

 

「「………」」

 

 

 真っ直ぐに二人を――比率的に一誠の方を強い見つめてる真耶。

 そう、一誠とリアスと出会い、そして既にリアスという女性が傍らに居ると分かっていたけど、それでも一誠に恋をしてしまった。

 

 恋をしてしまったからこそ、二人には目に見えない強い繋がりがある事。

 その繋がりが自分より前から既に二人の知り合いだった一夏と箒にもある事。

 そして最近は同じように解っていても一誠に恋をしてしまった刀奈にもその繋がりのようなものを持つ兆候が表れ始めている事。

 

 恥ずかしがり屋な面もあり、上手く刀奈の様に一誠に踏み込めずに見ている事しか出来なかったからこそ気付けた。

 だからその繋がりを持ちたい……真耶は無理なのかもしれないと覚悟してでもこの気持ちを打ち明けたのだ。

 

 

「刀奈も、アナタも本当に昔の私に似てるわ。

顔とか性格とかじゃなく、一誠に抱いた気持ちが本当に……」

 

「え……」

 

「最初は私も持ってなかった。

ただ一誠に守られるだけでは駄目だから――そしてそれ以上もっと一誠を知りたかったから、当時の私もアナタと同じ様な事を一誠にお願いしたのよ」

 

「そ、そうだったんですか……?

私はてっきり最初からお二人はそうなのかと……」

 

「厳密に言うなら『コレ』は感情のある生物ならば誰もが持っているものよ。

だけど殆どの者はその事を自覚しないままその生涯を終わらせてしまう。

私たちは自分を知って『受け入れた』事で持つ事ができたの。

……もっとも、自覚しただけで『受け入れなければ』持つ事は不可能なのだけどね」

 

 

 自分の肉体どころか心まで虚構で偽り続ける者には永遠に理解できないものである。

 一誠との繋がりを持ちたいから受け入れたリアスからの教えを熱心に聞く真耶は、ちょっと温くなったお茶を飲み干した一誠をチラチラと伺う。

 

 

「…………………」

 

「あぅ………」

 

 

 その視線に気付いたのか、湯飲みをテーブルに置いた一誠がジーッと、今までには無かった程真っ直ぐに真耶を見つめ始めるものだから、真耶は恥ずかしくなってもじもじと顔を赤らめながら下を向いてしまう。

 

 

『どうだ一誠? この小娘の適正はどっちだ?』

 

(ISっつーので動いてる姿しか見たことがないからなんとも言えないが……どうだろな)

 

 

 そんな事などお構いなしにじーっと見ていた一誠は、己の相棒と会話しながら真耶の適正がどちら側であるかを確認する。

 

 

「…………。生身での戦闘の経験は?」

 

「ええっ!? え、えっと、学生時代に授業で柔道みたいな事はしたり――あ、一応ISの訓練の一貫で一通りの格闘術は……」

 

「ほぼ無い、と……」

 

「う……うぅー……ご、ごめんなさい」

 

 

 失望させたかと勘違いしたのか、落ち込む真耶の経歴を淡々と確認する一誠。

 刀奈の場合は幼少期から暗部としての経験を積まされてきたのである程度どちら側であるかはわかったが、ISの操縦技術の為に多少行っていた訓練しか経験が無い真耶に関しては不明瞭が多すぎる。

 

 

「……………………………………………うーん」

 

「うぇ!?」

 

 

 気づけば本腰を入れて見抜こうと席を立った一誠は無意識の内に真耶に近づき、無遠慮に鼻先が触れ合う程に顔を接近させて観察をしており、こんなに近くまで接近したためしなんて無かった真耶は、意外と一誠の睫毛とかが長い――なんて関係ない事を思いつつ心臓が破裂しそうな程鼓動し、全身が熱く火照ってしまう。

 

 

「あわわわ……! い、いっせーしゃん……!」

 

「…………………」

 

「一誠? 先生がオーバーヒートしちゃうから一旦離れた方が良いんじゃない?」

 

「ん? ………あぁ、どうもわかりにくいもんでよ」

 

「それなら直接試した方が良いわ。

その方が確実でしょうし」

 

 

 顔は真っ赤だし、目はギャグ漫画みたいにグルグルと回ってしまってる真耶をフォローしてあげるように、観察に没頭してしまってる一誠に離れる事と観察ではない方法を提案するリアス。

 

 お陰でなんとか真耶は気絶せずに済んだものの……。

 

 

「…………。見てましたよ。山田先生と一誠さんがめちゃくちゃ近い距離で何かしてたの。

酷いわ酷いわ! 確かに山田先生やグレモリー先生みたいなおっぱいじゃまだ無いけど、だからってこんなの見せられたら泣いちゃうわ!」

 

 

 変なタイミングで春人を撒いた一夏達がやって来て、しかも刀奈が特に真耶を観察していた場面から実は扉の外から覗いて見てたせいで、変な騒ぎが起こってしまうのであった。

 

 

「ちょうど良いわ。

この際だから刀奈の事も見てあげたら?」

 

「…………。この子の場合、何言っても踏み込んでくる気みたいだからな。知っておいた方が良いか……」

 

「へ? な、何を知りたいのですか? えっと、更識楯無――本名は刀奈で、去年から一誠さんを見てるとドキドキして――」

 

「お嬢様、そういう意味ではありませんからね?」

 

「………ホント一誠さんの事になるとポンコツになるよね楯無お嬢様って」

 

「ホントに好きなんだなぁ」

 

「そうじゃなくて、どっち側に適正があるかでしょ?」

 

「私と一夏が最初に二人に見て貰った奴だな」

 

 

 まあ、一誠を前にすると精神年齢が下がってポンコツ化するので、実に平和的ではあったが。

 

 

 

 

 

 

 IS学園には、建てたは良いが遠すぎるのと、他にあるからという理由で試合にも訓練にも使われない、比較的コンパクトな訓練場が存在する。

 そんな場所に、一誠とリアスに連れていかれる形で真耶や刀奈達は連れてこられる。

 

 

「学園長から『月に五百円くらい払ってくれたら自由に使って良い。どうせ殆ど使われないし』なんて言われてからは、もっぱら俺とリアスちゃんのトレーニングの場所に使わせて貰っててね」

 

「広さとしては十二分でしょう?」

 

「し、知りませんでした。

そういえば近々補強工事が入るとは聞いてましたが……」

 

「カモフラージュですねそれは。

余計な奴等の邪魔にならないようにって、あの学園長が気を使ってくれてんでしょう」

 

「何時も思うんですけど、何で一誠さんはそんなに学園長と親しいんですか? 普通そこまでしてくれないと思うんですが……」

 

「あー、ここで働く前にマジで偶々居酒屋で飲んでくっちゃべってたら意気投合したから……か?」

 

「車まで一誠にプレゼントしてくれたし、あの人には感謝しかないわよね」

 

 

 妙な理由で妙に学園長(真)と親しいらしい一誠とリアスから聞いた理由に、お子様達は単純に感心してしまう。

 

 

「とにかくここなら、誰も入って来れない」

 

 

 妙なコネを持っている一誠がそう言って話を締めると、本題へと移行するとまず隣に居たリアスから数歩横へと離れる。

 

 一体なんだ? と一夏と箒以外が首を傾げる中、まずは一誠が声を放つ。

 

 

「箒」

 

「はい」

 

 

 箒の名を呼び、手招きをする。

 箒も解っていたとばかりに返事をすると、一誠のもとへと行き、彼の前に立つ。

 すると今度はリアスが一夏を見て名を呼んで手招きをする。

 

 

「一夏」

 

「おう」

 

 

 これまた一夏も解っていたようにリアスの前に立つ。

 一体なんなんだ? とますます疑問が深まる刀奈、虚、本音、シャルロット、真耶が見る中、リアスがじーっと……。

 

 

「刀奈、一夏の後ろに……」

 

「へ?」

 

 

 刀奈を見ながら手招きをしたのだ。

 意味がわからないが、言われた通り一夏の後ろに立つと、今度は一誠が……。

 

 

「……シャルロットだな。キミは箒の後ろに」

 

「え? う、うん……」

 

 

 シャルロットを手招き。

 

 

「本音と虚の二人は刀奈の後ろね」

 

「だな」

 

 

 そして虚と本音の姉妹は一誠とリアスの一言二言の会話でリアス側に。

 ここまでくると何かのグループ分けというのはわかるが、どんな理由の分け方まではまだわからない。

 

 一誠側に箒とシャルロット

 リアス側に一夏と刀奈と虚と本音。

 

 比率的にはリアス側の方が多いのだが、最後まで残された真耶は一体どちら側なのだろうか……? そんな事を全員が考えていると……。

 

 

「山田先生に関しては見てるだけじゃ分からないから、今から判定します」

 

「はあ……」

 

 

 なんの? ただただ疑問しかない真耶の格好は今黄色のレディーススーツだった。

 そんな格好の真耶に対して、工場勤務が着てそうな紺色の作業着の上下を着ていた一誠は軽く跳躍しながらウォームをすると……。

 

 

「自分の思う通りで構わないんで、俺にかかってきてください」

 

「……………ええっ!?」

 

 

 かかって来いと、真耶に軽い戦闘を指令したのだ。

 いきなりの事でただただ驚いてしまうに加えて、戦えと言われてもどうしたら良いのかさっぱりな真耶は狼狽えてしまうのだが……。

 

 

「別に俺と殴り合えとは言いませんし、俺からは何もしませんよ。

ただ、先生の気質を知るにはこういう方法が早いってだけなんで」

 

「で、でももし間違って当たり所が悪くて怪我をされたら……」

 

「それこそ間違っても無いんで心配無用です」

 

 

 バッサリとハッキリと言う一誠にちょっと凹んだ真耶としても、あまり気は進まないが、こういう事の積み重ねがリアスのようになれるのだと考えると、それまで弱気であった目に力が宿る。

 

 

「で、では……!」

 

 

 その場に立って構えもしない一誠に向かって、自分なりに構えてみる真耶。

 ISの訓練や試合といった事を抜かせば、本当に喧嘩なんてしたことないド素人そのものの構えだし、へっぴり腰気味だけど、誰もそんな真耶を笑う者はおらず、真剣に見守っている。

 

 

「や、やー!!!」

 

 

 そんな状況の中、真耶は走りだし、腰の入ってない拳を自分なりに本気で一誠に向かって打ち込んだ。

 走った際、下手したらリアス以上に育ってるメロンが悩ましい揺れ方をしていたが、リアスのメロンにしか感心が無くなってる一誠に動揺のどの字も無く、へっぴり腰気味の真耶の拳を軽く叩くように捌いた。

 

 

「え、えいっ!」

 

「………」

 

「わわっ! と、とりゃー!」

 

「……………」

 

「え、えっと……! たー!」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

「…………。あれ、なんだろ、何でか知らないけど、今の山田先生と一誠さんのやり取りが、単にイチャついてるようにしか見えなくてモヤモヤしてくるんだけど……」

 

「言われてみると確かにそんな感じがしないでもない気はするわね。

まあでも、ふざけている訳じゃないから……ね?」

 

「わかってますよ……。

ちぇ、ホント先生は大人ですよねー……」

 

 

 真耶本人は必死のつもりだけど、相手になってる一誠はまるで子供を相手にしてる父親みたいな調子で真耶のへっぴりパンチやキックを捌き続ける。

 

 やがて真耶の体力が尽きたのか、息を切らし、汗を流しながらその場にヘタリ込んでしまい、やり取りは終了した。

 

 

「はぁ、はぁ……! お、おかしいな? こんなに身体が鈍ってたとは思わなくて……」

 

 

 頬を伝う汗がそのまま真耶の胸の谷間に落ちていくのもそうだし、疲労で紅潮した顔やちょっと潤んでる瞳のせいで軽く官能的でさえもあった。

 

 

「……………。山田先生は俺たち側ですね」

 

 

 そんな真耶を暫く見ていた一誠が口を開く。

 どうやら一誠の側らしい。

 

 

「意外だったな。

山田先生が寧ろ私達に似たタイプだったとは……」

 

「全然わからないんだけど、要するにこの分け方って一誠さんかグレモリー先生になにかが近いからって理由なの?」

 

「ああ、そういう事だ。

だから余計に驚いたのさ、山田先生が兄さんに近い気質持ちだって事が」

 

 

 そう、完全に攻撃は最大の防御のごり押し気質。

 それが一誠側の意味であり、反対にリアス側は大まかに言えばカウンタータイプ。

 

 つまり箒やシャルロット……そして真耶はパワータイプの気質であるという事だったのだ。

 

 

「も、もうすこし待ってください、た、立てなくて……」

 

「手くらいは貸しますよ、ほら」

 

「あ、ありがとうございま――わっ!?」

 

 

 一誠の手を借りてなんとか立とうとし、バランスを崩してしまったあの真耶が。

 

 

「あーっ!?!?」

 

「あらまぁ……」

 

 

 そのままもたれるように一誠を巻き込んでひっくり返ってしまったあの真耶が。

 

 

「あわわっ! ご、ごめんなさい!」

 

「別に良いんで早く離れてくださいよ……なんか煩い子もいるし」

 

「そ、そんな無表情で言わなくても……も、もしかして臭いますか今の私…?」

 

「え? ………いや別に? 普通に山田先生の匂いですけど」

 

「……………………………」

 

「え、なに?」

 

「な、なんでも無いです。い、今の不意打ちのせいで、何故か知りませんけど、お、お腹の奥が熱くなって、わ、私何か変です……」

 

「そんなん言われても……」

 

 

 押し倒された形となる一誠が、思った事をそのままに言ったせいで、お腹がきゅんとなってしまったあの山田真耶の気質が一誠や箒に近いだなんて。

 

 

「ち、違う意味で立てませんよぉ……うぅ、一誠さんが変な事を言うから……!」

 

「…………。意外と顔に似合わずドスケベ――」

 

「わ、悪いですかっ!? い、一回くらいはありますよっ! 罪悪感が後で凄まじいですけど、一誠さんにそうされてる事を想像した事くらいありましたよ確かに! そ、その後お風呂に入り直さなくちゃならなくなったって、べ、別に良いじゃないですかー!!」

 

「……………………。何で俺なんだよ」

 

 

 世の中は色々と意外なものなのだ。

 

 

「や、山田先生っ! 早く離れてくださいよ! 私だってまだそんな事したことないのにー!」

 

「お嬢様、どうどう……」

 

「私だってあんな事したいもん! グレモリー先生だって悔しくないんですかっ!?」

 

「いやー……寝るとき大体あんな感じの体勢で寝てるから別に特には……」

 

「ぐぬぬぬー!」

 

 

 

 

 

「よくまあギスギスしないもんだよな?」

 

「最初から一誠兄さんが二人にそんなつもりになることが無いと言ってるからだろうな」

 

 

終わり




補足

やまやんの気質は大まかに分けると実は一誠や箒に近かったという意外性。

つまり、シャルさん共々ドラゴン波ぶっぱ気質……怖いね。


その2
たっちゃんは寧ろリアスさん気質。

つまり、相手の力を学習してしまえるタイプだったという訳で……。


その3
やまやん、これまで三回は夜自室でそんな事してお風呂に入り直したらしい。

言われた本人はただ普通に困るけど(笑)






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