色々なIF集   作:超人類DX

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ごめんなさい、前回の続きの前に、大分前に放置してたお話です。

………タイトルで察してしまうかもだけど。


大分前のボツ『クレイジーサイコラビットちゃまとのその後』

 嫉妬が嫌悪となり、嫌悪が殺意へと変わり、殺意がやがて支配欲へとなった時、彼女は永遠に立ち入る事が出来なかった壁を強引に乗り越えた。

 

 化け物と呼ばれた男と同じ世界に。

 

 そして化け物と呼ばれた男の一部をその身に植え付けて……。

 

 

 死の間際に受け継いだ男の力の全てを継承し、そんな死に方は――勝ち逃げは許さないと、強引に死に逝く男を復活させた彼女の力は継承させられた力を更に昇華させた。

 それもひとえに、自分を最期まで子供扱いした男を認めさせる為。

 認めさせ、屈服させ、永遠に支配したい。

 

 それが厄約者という個性に到達した篠ノ之束の無限に尽きない想いだった。

 

 

「行ったり来たりだなまるで……」

 

「何処かの誰かによってそうさせられているのか、それは解らないし、どうでも良いよ。

アナタは絶対にちーちゃんといっくんに『教えて』はいけない――それだけは守ってよ?」

 

「ああ、わかってるさ束ちゃま」

 

 

 力を失った青年と共に……。

 世界を何度も越えようと、束は青年を放す気は微塵も無い。

 

 

「アンタがちーちゃんやいっくんに中途半端な愛情を与えさえしなければ、箒ちゃん達との仲が壊れる事も無いしね。

ああ、勿論例の暗部の子達にも教えたり接触は禁止――――いや、異性と接触もダメだね」

 

「………………。俺の人生真っ黒じゃねーか」

 

「は? 真っ黒ってなに? ヤりたくなったら嫌々だけどヤらせてあげてるでしょ? それなのに何の不満があるっての? 本当に嫌なのにヤらせてあげてる束さんの犠牲を無意味な事にしたい訳?」

 

「…………」

 

「何その目?」

 

「言ったら怒るから言わない」

 

「じゃあ怒らないから言ってみなよ?」

 

「……………。嫌だとか何だって毎度俺をなじりながら、自分の事を自分で縛ってチラチラとこっち見てくるのは矛盾してんじゃねーのって思うんだけど」

 

「そういうプレイをアナタが好きだからしょーがなく付き合ってやってるだけじゃん?」

 

「……………。もう良いや」

 

 

 復活させるまでの永遠にも近い永い時間が、束の支配欲をより強大で強烈なものへと変質させてしまい、最早彼女の歪んだ想いを普通に受け止められるのは、この青年しかいない。

 世界が変わっても、時間を逆行しても――篠ノ之束によって今を生きる事が出来るようになった青年に選択肢は無いのだ。

 

 

 これは選択肢を間違えた事で人と人との繋がりを拗らせてしまった事を後悔する青年と、その青年を支配したい天才のお話。

 

 

「今日はちーちゃん達にこの束さんの知り合い――――いや、奴隷を紹介してあげよう!」

 

「ど、奴隷?」

 

「どれいってなんだ?」

 

「さぁ?」

 

 

 束によって甦った青年は力を失い、それでも捨てようとしない彼女のパシりとして、かつての世界では家族同然だった姉弟や、最期まで恨まれた束の妹に紹介され……。

 

 

「おっと! あんまり近づかない方が良いぜちーちゃん? コイツは女を見ると見境なく発情しちゃうからね」

 

「…………………」

 

「あ、あぁ……。(凄い抗議したい目で束を見てる……)」

 

 

 とにかく色々とネガティブな印象ばっかり植え付けようとする束ちゃまだったり。

 

 

「なあ、束よ……私は一応お前の人となりを知ってるつもりだからありえんと当初は思っていたが、お前もしかして兵藤の事が……」

 

「は? 違うけど? ほっといたら性犯罪に走るだろう危険生物をこの天才の束さんが管理する事で、世の中の女達を守ってやってるだけだけど?」

 

「だが言うほど彼は――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むっ! あそこの女性……中々の果実をお持ちじゃないか!」

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

「…………………。ね、あながち間違いじゃないでしょう? つーか……あのバカ、良い度胸してるよねホント」

 

 

 青年に対する束の接し方でちょっと察してしまう友人の千冬さんだったり。

 

 

「ち、違うっての! 偶々目に入って、ちょっとだけ良いじゃんって思っただけで別に声を掛けようとか思ってねーから!」

 

「…………。あっそ、じゃあ今回は不問にしてあげるよ」

 

「お、おう……」

 

 

 

 

 

「あの人って何時も束さんに怒られてるよな」

 

「あんな姉さん初めて見たかも……」

 

 

 見ていた子供二人からは、怒られてペコペコ謝る情けない近所のお兄さん扱いされ……。

 やがて行方不明となる束に着いていくかの様に行方不明となった青年は、最期まで束との約束通り、かつて教えた千冬や一夏に力の使い方は教えなかった。

 

 それにより、本来の時間軸のような二人へとなっていき、妹の箒も束が敢えて何もしなかったせいで本来の箒に近い少女へとなっていった。

 

 その内一夏はIS学園へと入学し、女子だらけの学校でモテモテ生活へと突入するだろうし、箒はそれに目くじらを立てるだろう。

 

 

 だがこのお話は、個性と力を引き継ぐ篠ノ之束と、引退者の話だ。

 つまり、篠ノ之束を追ってくる世界中の連中との鬼ごっこなのだ。

 

 

「この鬼ごっこって、前の時もあったの……?」

 

「一応ね。

といっても、当時から束さんは天才だし? こんな程度の連中が千人追ってこようが関係なかったよ」

 

「じゃあもう無理だろ、今の束ちゃまを捕まえるなんて……」

 

 

 束を狙う者達から、既に引退はしているが束とのやり取りで少しながら勘を取り戻している青年が束の盾となる。

 お陰で世界中から束のボディガード的な認識をされてしまって色々と大変だったけど、青年は意外と楽しかった。

 

 

「お、普通に育ったいっくんが箒ちゃんに追っかけ回されてるね……」

 

「良いなぁ、アッチは如何にもな青春してて……」

 

「アンタ程青春なんて言葉が似合わない男は居ないね」

 

「言うなよ……自覚はしてんだから」

 

 

 自分達を追ってきたどこぞの組織のIS武装集団を二人で叩きのめし、呻き声が聞こえる研究所でモニターを眺める青年と束。

 

 

「今を生きていられるのもキミのお陰だ。

だから俺はキミに飽きられるまではキミの言うことに従うさ」

 

「なんだろ、悪くはないけど気に入らない言い方だよ。

それじゃあまるでアンタは私に対して恩だけの感情しか持ってないって聞こえるんだけど?」

 

「…………………。それ以上思ってても、思う資格なんて俺にはないからな」

 

 

 その関係は未だ複雑。

 力も、かつての繋がりも、再び全て失ってしまったのは他ならぬ自分の我儘であると、束自身も自覚はしているが、それを言葉には表せない。

 

 素直にはなれない……それが束だ。

 

 

「資格があるとかなんてどうでも良いし、くだらない潔癖症だよそれは。

何時までも私を子供扱いするからアンタが嫌いだって言ってるのに、アンタはそれでも私を何時も子供扱いする。

………私はもう子供じゃない、アンタと同じなのに」

 

「………」

 

 

 無茶で、普通なら愛想だってとっくに尽きてもおかしないことばかり言っているのに、青年はそれでも束の傍に居てくれる。

 

 

「何時も私からアンタとするのに、強引なのに、力を殆ど失ってるアンタが抗えないって知ってるのに無理矢理こじつけでヤるのに、アンタはそれでも私を突き放さないし、怒りもしない……」

 

 

 子供をあやすように撫でてくるのが嫌いだ。

 無茶な事を言っても、苦笑いしながらも応じてくれてしまうのが嫌いだ。

 

 

「本当は嫌なんでしょ? アンタを復活させた恩があるだけで、私なんてめんどくさいと思ってるんでしょ? 良いよ、怒らないし何もしないから本当の事を言って」

 

 

 もう自分より弱くなってしまったのに、未だ自分の事を守ろうとするのも大嫌い。

 

 束が望むのは、肩を並べて前に進む事。

 導かれるのではなく、共に暗闇の荒野に進むべき道を切り開きたい。

 

 

「……………。キミがどうにもならない脳の病気を患った俺を連れ出して、一人で挫折しながらも俺を治そうとしてくれたあの時から、俺はキミが好きだよ。

けど……俺はキミの人生を狂わせたんだぞ。

俺が、俺さえ居なかったらキミは天才のままでいられたんだ。

 最後の最期まで俺は俺のエゴまで押し付けてキミを今のキミにしてしまったんだ。

だから……俺はキミを想う資格はないんだよ……!」

 

 

 互いが互いに抱える罪悪感が未だに前へと進ませない。

 何年も、何十年も、何百年も………。

 

 

「…………。やっぱりくだらない」

 

 

 青年のずっと抱いていたであろう罪悪感を聞いた束は、不機嫌な表情で床に転がる襲撃者の一人を蹴っ飛ばす。

 まるでサッカーボールの様に襲撃者の身体が吹き飛び、青年の真横を掠めて壁際に激突し、そのまま動かなくなったが、束全く気にせず青年の目を見つめるとゆっくり近づく。

 

 

「そんなくだらない罪悪感って奴でずっと私を子供扱いしてきたんだとしたら、アンタはやっぱり馬鹿だよ」

 

「………」

 

 

 自分より背の高い青年を見上げる様に見据える束。

 

 

「じゃあこれまで私がアンタにやって来た事はなに? 死んだアンタの同意無しに生き返らせ、力を失った事を良いことに好き勝手アンタにしてきた私はなんなの? アンタが私に抱いてるそれ以上に、私はアンタに酷いことをしてきた。

………いくら私でも、アンタにしてきた事に罪悪感が無いわけじゃないのに、それでもアンタは私を許してくれた……」

 

 

 やっと初めて自分の気持ちを吐露する束。

 千冬や一夏を奪った青年が憎かった。

 

 それを察して、自分や妹にこれでもかと気を使う姿が嫌いだった。

 どれだけ天才と呼ばれた自分が頑張っても、本当の龍の帝王であった青年には届かず、悔しかった。

 

 憎くて、嫌いで、悔しくて。

 何時までも子供扱いしてくるのが嫌で、子供ではないと解らせる為に頑張って……。

 

 やがてその優しさを他の者に向けるのが嫌になって。

 そこら辺の女に下手くそなナンパをしては断られていく情けない姿が見たくなくて……。

 

 自分だけを、自分なりに追い付こうとした努力を認めて欲しくて………そして振り向いて欲しくて。

 

 素直に示せない自分のやり方すらも笑って受け止めてくれる青年が欲しくて……。

 

 

「アナタ以上に、私はアナタにこれ以上は言えないよ……」

 

「束ちゃま……」

 

「その呼び方も最初は本当にムカついたけどさ、今は寧ろ悪い気はしなくなっちゃったかな……?」

 

 

 かつて移植した青年の一部の存在する腕に触れながら、束は初めて素直になった。

 

 

「でも今だけで良いから、ちゃんと名前で私を呼んで?」

 

 

 少しだけ背伸びし、青年の身体を抱き締める。

 そう、憎いだけならとっくに殺していた。

 

 でもそれはしなかった……出来なかった。

 束自身が青年の愛情を求めていたから……。

 

 ただシンプルにそれだけを……。

 

 

「束……」

 

 

 青年もまた力を失って役にも立たなくなった自分を落胆することも無く傍に置いてくれた束の気持ちを聞けたのが嬉しかった。

 

 自分で良いのか。その資格があるのか……。永い年月ずっとその葛藤を戦い続けた青年――一誠は今やっと少女だった彼女の想いを本当の意味で受け止められた気がした様に、彼女の身体を抱き締め返す。

 

 

「ちぇ、ここまで言ってやっとかよ。

……随分と遠回りだったもんだね」

 

「そうだな……いやホントに」

 

「ま、心の広い束さんだから許してあげるよ……ふふん♪」

 

「ありがとう……」

 

「それで? こんなこっ恥ずかしい真似をさせてくれただけで終わりとは言わないよね?」

 

「え、良いの……?」

 

「また束さんからさせる気? そろそろアナタから求めて欲しいなぁ? …………きゃっ♪」

 

 

 邪魔な物を外に投げ捨て、互いに拗れためんどくさいペアは本当の意味での繋がりを得る。

 そしてこの日より、力を殆ど失っていた一誠の精神は――

 

 

「キミ以上に、俺はキミをこれから絶対に離さない。

キミが嫌だと言おうが、逃げようが、俺はもうキミしか見ない」

 

 

 無尽蔵なる進化となる個性も甦らせる。

 

 

「ぁ……。そ、そう? せ、精々頑張れば?」

 

 

 身を寄せ合いながら、久しく見なかったその強い意思を感じさせる眼を見た束は何時も通りツンケンしようとしたけど、初めて独占欲のような感情を向けられ、口元がこれでもかと緩んでしまっていた。

 

 

 そして――その年の夏。

 

 

 

 

 

 

「はろはろ~! この私が天才の篠ノ之束さんだよー!」

 

 

 一夏、箒、千冬の居る臨海学校の現場に突撃し――

 

 

「今日わざわざ来たのは、ちーちゃんといっくんと箒ちゃんに報告があってさー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――いやー、この束さんに子供が出来ちゃった♪」

 

『はぁぁぁっ!?!?』

 

 

 爆弾を投下し……。

 

 

「あ、相手は誰だ!?」

 

「ちーちゃん達ならお察しでしょ? というか今向こうで海面割ってる男が相手だよ?」

 

「や、やはりそうか! じゃあ向こうに居るのは兵藤だな!?」

 

「正解~」

 

「束さんに何時も怒られてた人だよな!?」

 

「う、噂で姉さんと一緒に逃亡している者が居るとは聞いてましたが、あの時の人だったとは……」

 

 

 爆弾の威力が強すぎて、百メートル程向こうの砂浜からパンチを放つ度に海面を割ってる一誠に対する突っ込みが無かったとか。

 

 

『束が寝てる間に聞いてみたいのだが、以前平行世界のお前とリアス・グレモリーの眷属になっていた時期があっただろう? ……なんというか、その時の二人の関係にお前等が似てる気がするぞ』

 

「そう、か? あんまそういう意識とかしてないけど」

 

『お前が完全に受け入れてから、束が少し素直になってるぞ? ……もっとも、束の場合はお前の駄目さ含めて受け入れてるせいで、お前を少し甘やかしてしまってるが……』

 

「確かに俺の事を、本当に駄目な奴なんだから! と言いつつめっちゃ優しく抱き締めてくれはしたけど……」

 

『つまりお前らは典型的なダメ男とダメ女のペアだった訳だ。

元からそういう意味での相性は抜群って訳だな』

 

「…………」

 

 

 そして束の中に宿る――ある意味二人を見守るパパンなドライグからダメ男とダメ女ペアだと烙印を押され、幸せそうに自分の腕にひっつきながら眠る束の頬を反対の手で撫でながら、一誠はそれでも良いやと想うのだった。

 

 

 

クレイジーサイコラビットのルート……終了




補足

無神臓の基礎精神

『力を求め、リスクを無視してでも壁を乗り越えようとする』

『どんな犠牲を払ってでも昇華しようとする身勝手さ』

『世界の全てから拒否されても、好きになった者を守るために強さを求める』


 みたいな考えが突き抜けた時、覚醒する。


今回の場合、一度束ちゃまに託して無くしましたが、人格は変わってないので、束ちゃまとの互いの拗れた想いを受け入れ合う事で、リアスさんに対する一誠くんのような想いがミックスされ、復活しました。


その2
デレ度は増したけど、やっぱり素直にはなれないらしく、アプローチはまだ誘い受け気味な束ちゃま。

……それでもこの束ちゃまは先代を越えた史上最強の赤龍帝なんだよなぁ。


その3
やり取りが基本誘い受け気味で、ダメな一誠を見てダメだダメだ言いながら甘やかしてしまってるという、ドライグのお墨付きの典型的ダメカップルなのだ。

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