色々なIF集   作:超人類DX

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続きです。

……たっちゃんがヒロイン度をどんどん上げていく。


イッセーくんの一次面接

 暗部一族の更識の家と聞いていたので、イッセーは勝手に『山奥の断崖絶壁付近にでもありそうな屋敷』を想像していたが、実際は郊外で屋敷ではあるが、別に山奥の断崖絶壁付近に建てられていた訳ではなかった。

 

 だが更識家の外観を見た時、イッセーはただ普通に思ってしまった。

 

 

「………。今の俺の年収でこの規模の屋敷を建てるには何年掛かるんだろ」

 

 

 一言で言うなら、和の色が多いお屋敷であり、自分とリアスが住んでる安い家賃のアパートの部屋と比べるまでもない立派な外観は某堂島の龍を中心に引き起こされる大騒動の度に毎回崩壊寸前に追い込まれる、某関東最大規模の極道組織の本部みたいだ。

 

 ここに来て漸く更識刀奈が良いとこのお嬢様でもあったのだと再認識するイッセーは、門を開けて中へと入る刀奈、虚、本音の後ろに続く様に、更識家の敷居を跨ぐ。

 

 

『おかえりなさいませ当主様』

 

 

 門を潜ると、出迎えたのは屋敷に勤めているのであろう虚や本音と同じ更識家の従者が直列に並んで当主である楯無の帰還を歓迎する。

 

 彼等の出迎えに対して虚と本音は会釈を、刀奈は軽く手を振りながら笑みを溢すと、一番手前側に居た初老の従者に話しかける。

 

 

「父と母は? 言われた通り彼を連れてきたわ」

 

 

 後ろに立っていたイッセーの手を取る刀奈の言葉に、その瞬間、従者達の視線が一気にイッセーへと注がれた。

 それは当然歓迎―――というよりは、現当主自らが『連れてきた』者は如何程なのであろうかといった探る様な視線がほぼ全てという意味で。

 

 

「………」

 

 

 そんな従者達の視線を前に、イッセーは真面目スタイル状態で軽く会釈をしてみる。

 ジロジロと探られる様な目で見られたといって不愉快に思う程流石にイッセーも短気ではないし、彼等の行動は当然の事だと納得もしているのだ。

 

 

「奥様と旦那様は中でお待ちです。

案内しましょう」

 

「ええ、お願い」

 

「…………」

 

 

 多分従者のリーダークラスなのだろう初老の従者に案内される形で中へと案内される。

 

 

(流石にリアスちゃんの実家の方がデケーな)

 

『所有している土地の規模がそもそも違うし、グレモリーの領地はお前が大分昔に更地にしてペンペン草すら生えない荒野となってしまっただろ』

 

 

 外観が和で、中は意外にも洋も取り入れられている屋敷の廊下を歩きながら、起きていたドライグと昔を思い返す。

 

 その昔、リアスを見捨てたグレモリーの連中とそれに与する者達全員への最後の報復の為に、破壊するだけ破壊してからさっさと逃げてやった過去を……。

 

 

(当時出せた全力を出して暴れまくったのって、あの時が最後だったっけか)

 

『リアスを数の暴力で捕らえようとして来た事でお前がプッツンしたからな……。

というか、あの時はリアスと一緒になって派手に暴れただろ』

 

(その後あの世界から逃げてもう10年以上かぁ。

似た様な奴が居るとはいえ、平和なもんだよホント)

 

『ある意味これからの状況によっては平和じゃなくなるがな……ふふ』

 

(……。それを言うなよドライグ)

 

 

 その後は。この世界へ全てから逃げ切り、細々とリアスと二人で生きてきた。

 必死に低賃金だろうがブラックな仕事だろうが、リアスと生きる為と働いてきた。

 

 そしてIS学園の学園長に拾われる事で生活を安定させる事ができた。

 後は貯めるだけ貯めて、田舎かどこかに居を構えてリアスと一緒に……なんて計画をしていた筈が、ドライグの言うとおり妙な状況に関わってしまった。

 

 確かに今まさに対面する者との話し合い次第では平和とはいかなくなる。

 

 

(……。ま、仕方ない。

どうでも良い他人だったらはね除けてやったが、この子はそうじゃねーからな)

 

『だが仮にあの小娘について小娘の両親が認めてしまったらどうする気だ? 今までの様にのらりくらりで誤魔化す訳にはいかなくなるぞ?』

 

(それは有り得ないぜ。

良くて半殺しにされてから二度と近づくなって言われるだろうし)

 

『そうなってもこの小娘なら構わずお前に付いていこうとすると思うが……』

 

(………)

 

 

 ドライグの言う通り、確かにそれはありえる。

 ありえるが……そこまで考えていたら完全に逃げ道が無くなる気がしてきたので、イッセーは何も答える事はせず、ドライグとの会話を打ち切る。

 

 

「此方です」

 

 

 動けば動く程逃げ道が封鎖されている気が今更ながらにしてきたイッセーは、案内をしていた従者の声によって現実へと戻る。

 どうやら刀奈の両親が待つ部屋に到着したらしい。

 

 案内をしていた従者が先に扉をノックして中に入り、三十秒程の間を置いてから中から扉が開かれる。

 

 

「お待たせ致しました。

ではご当主と兵藤様のみお入りください」

 

「……私と本音はここまでです」

 

「頑張ってね二人とも」

 

 

 従者の本音と虚は中へと入ることは出来ず、二人の激励を受けた刀奈と一誠は無言で頷き、中へと入った。

 

 

「先代、ご当主と兵藤様をお連れしました」

 

 

 中は外観通りに広く、よく分からない壺やら何やらが飾られてる大きな棚に目が引かれる洋風の部屋であった。

 そんな大広間にも思える部屋には、刀奈のと同じ空色の髪を伸ばした黒目の女性と、黒髪の赤い眼の男性がソファに座っていた。

 

 従者が一礼をしながら、二人を連れてきたと報告すると、間違いなく刀奈の両親であろう夫婦は頷きながら娘である刀奈に穏やかな笑みを溢す。

 

 

「おかえり。

今年から簪もIS学園に入っちゃったものだから、お父さんは寂しかったよ」

 

「元気そうで何よりだわ。

さ、そんな所で立ってないで、そちらの男性もお座りなさいな?」

 

「………………」

 

『……。いきなり殺しに来ると思ってたが、流石にそれは無かったみたいだぞ』

 

 

 ドライグの言う通り、意外な程普通に出迎えられてしまい、ちょっと拍子抜けをしてしまったイッセーは、言われた通り夫婦の座る椅子の反対側に刀奈と一緒に座る。

 流石のイッセーも思ってたものと違う出迎え方をされたせいか、軽く緊張してしまった。

 

 

「えっと、只今戻りました……」

 

「ああ、畏まらなくて良いよ刀奈。

今日は更識としての事では無く、お前個人の話なのだからね」

 

「は、はぁ……そう言うのであるのなら」

 

「…………」

 

 

 暗部家の跡継ぎとしてと、普通の親子としての線引きはあるものの、穏和そうな笑みを溢す刀奈の両親を見る限りでは、赤の他人に入れ込み、肉親を道具扱いしたリアスの両親とはこの時点では違うと少しだけホッとするイッセー。

 

 

「予定よりも早く戻って貰った理由は――解っていると思うから省くけど、アナタの婚約者についてよ」

 

「はい」

 

「婚約者候補について伝えた時、お前は既に自分が想いを寄せている相手が居ると返事をしたね?」

 

「うん、言ったわ……」

 

 

 これでリアスの両親の様なタイプだったら、開き直って暴れてしまっていたが、少なくともこの二人は違うし、やはり面接スタイルなのかと……無意識にズレた伊達眼鏡を直していると、刀奈の両親の視線がイッセーに向けられる。

 

 

「それが彼だと……」

 

「連れてきたという事は彼がアナタが想いを寄せている相手なのね?」

 

「…………兵藤一誠です」

 

 

 ちょっと緊張してしまい、声が少し低くなりながらも両親に挨拶をするイッセー。

 考えてみれば、リアスとはほぼ駆け落ち同然で一緒になったに近いので、こういう両親に挨拶といった一般人が大体は経験しそうな事はしたことがない。挨拶という名の襲撃ならあるが……。

 

 なので微妙に対応という引き出しが足りないのだが、ここで退いてしまったら、彼女に約束した自由が果たせなくなる。

 

「IS学園で用務員をしています。

お嬢さんとは一年生の頃に知り合いました」

 

「うむ、娘から聞いている。

まさか女性しか居ないと思っていたあの学園に年若いキミの様な男性が働いているとは思わなかったよ」

 

「……給料が良かったもので」

 

 

 生活が安定するからとつい本音を言ってしまうイッセーに、刀奈の母親が口を開く。

 

 

「大体は調べてありますわ。

本物の学園長にスカウトされて働く様になった事も」

 

「……」

 

「歳は28。

現在はIS学園の用務員室で寝泊まりしながら学園の整備をしている。

娘がしょっちゅうアナタのお仕事場に転がりこんで居て、生徒会長の業務をサボってしまうことも」

 

「…………………」

 

「や、そ、それはー……あははは……」

 

 

 ある程度身元が割れているのは、調べたのだろう。

 奔放にやってる刀奈に何か言いたげな笑顔を向けている母親の変な圧力を笑って誤魔化そうとする刀奈。

 

 

「この子が少し変わったのはアナタとの時間が理由なのは察しが付きました。

そしてこの子がアナタを好いている事も……」

 

「だから私達は親としてキミがどんな人間なのか知りたいのだよ。

私達が―――というよりは、向こうが売り込んできた婚約者候補よりもキミが相応しいのかどうかをね」

 

「はい」

 

 

 売り込んできたという言葉にちょっと引っ掛かりながらも、ここから本格的に『面接』になるのだと気を引き締める。

 

 

「まず刀奈に聞くけど、彼のどこに惹かれたのかしら?」

 

「単純な優しさじゃなく、然り気無い所よ。

本当に悩んでいた時も彼はずっと黙って、私みたいな小娘の話を聞いてくれたから……」

 

「では兵藤君、キミは娘のどんな所に惹かれたのかな?」

 

「この子の抱える事情はある程度聞いてます。

家の事も――彼女の妹さんとの事も」

「……ほう?」

 

「この子は、普段はこの家の当主らしく振る舞おうと努めてますが、その実は年相応に傷つきやすくて繊細な面もあります。

けれど、それでもそれを抱える覚悟を持ち、例え妹さんに誤解されて嫌われようとも、彼女の為に覚悟を決めて『楯無』の名を継いだ――そんな芯が強い所ですかね」

 

 

 実の所、異性としてでは無いものの、刀奈の持った『覚悟』に対しては素直に好いていたりするイッセー。

 

 この先永遠に妹と袂を別つ事になろうとも、妹が暗部の時には血生臭い事に拘わらずに普通に生きられる様に、自分がその業の全てを引き受けたその覚悟。

 

 

「俺がこの子に出来る事なんてたかが知れてるでしょう。

でもこの子よりは少しは長く生きているので…………まあ、止まり木くらいにはなれたら良いなと……」

 

「イッセーさん……」

 

 

 だからせめて刀奈が自由に『今後自分ではない誰かを好きになった相手を見つけられるまで』、一夏と箒に教えた様な『力を抜く方法』をリアスと教えるつもりだ。

 

 

「背負う覚悟を持ったのならば、誰かに決められたレールではなく、せめてこの子自身が自分の意思で道を決められる様に少しでも力を貸してやりたい。

……それが俺の理由です」

 

「「……」」

 

 

 言い終えたイッセーは短く深呼吸をした。

 本人を目の前にこんな事を言うのは初めてだったし、若干恥ずかしくもなってきた。

 

 

「その言い方だと、娘と添い遂げられなくても構わないように聞こえるが?」

 

「この子が俺の様な学も何も無い男より、もっと良い男を知って惹かれたのであるなら、俺は喜んでその背中を押す気ですよ」

 

「ではアナタは刀奈は好きではないと?」

 

「………………………………。好きですよ。

好きでなければ、わざわざアナタ方に挨拶をしに来ませんよ」

 

「あぅ……」

 

 

 シレッと『好き』と宣うイッセーに、刀奈当然『そういう意味では無い』と解ってはいたし、リアスと比べたら劣るのも承知はしていたが、それでもイッセーの口からそんな言葉を聞けただけでも嬉しく、つい俯いてもじもじしてしまった。

 

 しかし流石は親であり、イッセーやリアスよりも更に年上だ。

 

 刀奈の両親はイッセーの言い方に含まれる言葉の意味を端的にながら察した。

 

 

(なるほど、どうやら刀奈が彼に惹かれていて、彼自身は刀奈を子供と見ているようだ」

 

(ふふ、まるで昔のアナタのようだわ)

 

(…………。キミに押されて気付けば婿入りだったからね。しかし、だからこそ刀奈は惹かれたのだろうね、彼に)

 

 

 好いている意味が刀奈とイッセーでは意味が違うと察した両親だがある意味、()()()()()イッセーと刀奈がそういう未来に至れば、裏切る事無く支えてくれるのだろうと感じた。

 

 

「よくわかった。

ふむ、しかし支えるにしてもキミが本当に頼りになるかとは別の問題だ」

 

「ええ……」

 

 

 その気概は認めても良い。

 だがその気概を持つだけの説得力が無ければ意味の無い事である。

 刀奈の父の言葉に頷くイッセーに、母がにこやかに言う。

 

 

「一応話だけ聞くだけ聞く事にしてある他の婚約者候補の事もありますし、アナタに刀奈を受け止められる程の器があるかどうか試させて貰っても――――宜しいですか?」

 

「っ!?」

 

 

 そして言い終えるか終わらないかの刹那、穏和に微笑む刀奈の母親が目にも止まらぬ動作でナイフが投げられた。

 先代の楯無である母親の行動に一瞬ギョッとする刀奈だが、投げられたナイフの切っ先はイッセーの額を貫く事はせず、人指しによって真上に弾かれ、天井スレスレの所で落下し、そのままキャッチされる。

 

 

「えっと、お返しします」

 

「あらまあ……!」

 

「へぇ……?」

 

「ちょ、ちょっとお母さん!? いきなりイッセーさんに何してるのよ!?」

 

 

 割りと本気で額を貫くつもりで投げたナイフを事もなく弾き飛ばし、そのままキャッチしたナイフを差し出すイッセーに、当主を譲ったとはいえまだ現役までは引退していない先代楯無はちょっとわくわくした表情で受け取り、婿さんだったらしい父親も歓心した様子だ。

 

 とはいえ、イッセーが貫かれるとは思ってはないにせよ、母の行動には流石の刀奈も怒りの表情で席を立とうとする。

 

 

「大丈夫だから座りな」

 

「で、でも……!」

 

「さっき俺が言った台詞通りに出来るか、キミのご両親は試したかったのだろう。

俺が口だけのボンクラなのかどうかな」

 

 

 そんな刀奈を落ち着かせるイッセー。

 敢えて刺さっても良かったが、今の状況ならただのボンクラではないと証明しておいた方が正解と判断した様で、イッセーに言われて刀奈も渋々と座り直した。

 

 

「ふふ、本音ちゃんと虚ちゃんの言っていた通りね」

 

「この目で見るまで信じられなかったが、キミが刀奈を鍛えてあげている時がある……そう聞いていたからね」

 

「そこまで知っていながら試したのですか。

……結構人が悪いですね」

 

「あらごめんなさいね? でもますます信用できちゃったわ……♪」

 

 

 返したナイフを受け取り、扇子を広げてウィンクする刀奈の母親に、イッセーは『ああ、親子だわ』と母親に不満顔な刀奈を見て思ったとか。

 

 こうして一次面接はなんとか終わったものの、やはり日帰りで終われる訳も無く、明日やって来るらしい他の婚約者候補達との二次試験の為に今日は泊まる事になったイッセー。

 

 だが、刀奈と両親達と食事の際、事件が発生する。

 

 

「酒は飲めるかい?」

 

「え…………」

 

 

 普通に食べていたイッセーに刀奈の父が実にキツそうな日本酒の入った徳利を向けて来たのだ。

 

 

「え、ええっと……」

 

 

 この瞬間、イッセーは多分本日一番に焦った。

 何故ならイッセーは成人はしているとはいえ、酒の味が分からない意外な程の子供舌だったのだから。

 

 

「い、一杯だけなら……」

 

「おおっ、そうか! よしよし……!」

 

「ちょ、ちょっとお父さん……」

 

 

 しかし受けてしまった。

 よくわからないが、こういう所で微妙なポイント稼ぎをしといた方がいい気がしたので、妙に嬉しそうに渡してきたお猪口に注がれるお酒を、横で若干不安そうにな顔で『そういえばイッセーさんがお酒飲む姿って見たこと無いかも』と呟くのを耳にしながら一口飲み――

 

 

「うぁ……!」

 

 

 ひっくり返って意識が消し飛んだ。

 

 

「ええっ!? い、イッセーさん!?」

 

「な……お、おかしいな、そんなに強い酒じゃないのに……」

 

「体質的に弱いのでしょう。

きっとアナタに気を使って無理をしたのでしょうね……」

 

 

 信じられないくらい真っ赤な顔で目まで回してぶっ倒れるイッセーを、即座に介抱する刀奈を眺めながら呟く母の言葉に、父は申し訳なくなって小さくなってしまった。

 

 

「お父さんにはお母さんがちゃんと注意するから、刀奈は彼を寝室まで連れていきなさい」

 

「す、すまんことをしたと後で言っておいてくれ……」

 

「う、うん……」

 

 

 肩を支え、意識が完全に朦朧となってるイッセーを寝室まで連れていく刀奈。

 まさかイッセーが酒に弱いとは思わなかった……そんな事を思いながら寝室――――まではちょっと遠かったので、自分の部屋に取り敢えず連れていって一休みしようとフラフラなイッセーを支えながら入る。

 

 

「えっと、取り敢えず横にして……あ、お水も用意しないと……」

 

「うー………」

 

 

 久々に入る自分の部屋の机には、『趣味のノート』が置いてあったが、それに気付く暇も無くイッセーを布団に寝かせてあくせくお世話しようとする刀奈は、意外な弱点を知れてちょっと嬉しい気持ちも抱いていた。

 

 

「前々から子供舌だなって思ってたけど、お酒も弱いなんて……ふふ、ちょっと可愛いですよ?」

 

「あうー……」

 

「お水飲みます? 飲んだ方が気分も楽になると思います」

 

 

 考えてみたら、たまーにこっそり用務員室で真耶やリアスと酒盛りしてる現場に遭遇したことはあったが、イッセーが酒に口を付けた所は見たことがなかったので、この弱さにも納得が行く。

 

 良いものが見れた気がしてちょっと笑ってしまいながらも、苦しそうに唸ってるイッセーに水を用意しようと立とうとした刀奈だったが……ここで大事件が発生する。

 

 

「へ……?」

 

 

 立とうとした刀奈の手をイッセーが掴んだ。

 今まで無かった事だったので、ちょっとだけ思考が停止してしまった刀奈は、やがてドキドキしてきた。

 

 

「い、イッセーさん……?」

 

 

 ど、どうしよう? 意外と初な刀奈はどぎまぎしながらも離さないその手に抵抗せず座り直して声を掛けるも、イッセーは寝苦しそうな声しか返さず、その瞬間、刀奈は思いきりイッセーに引っ張られてしまった。

 

 

「え……?」

 

 

 決して強い訳ではないが、物理の法則に従って引っ張られてしまった刀奈は当初自分の身に何が起こっているのかわからなかった。

 

 だってあのイッセーに引きずり込まれた挙げ句、あのイッセーに思いきり抱き着かれているのだから……。

 

 

「い、い、いっ……イッセーさん!? にゃ、にゃにを……!?」

 

 

 なんかもう優しく抱かれながら思いきり胸に顔まで突っ込んで、今度はスヤスヤ寝始めたイッセーに、当たり前だが思いきりてんぱってしまう刀奈の心臓は凄まじく鼓動する。

 

 

「う、嘘でしょ……? ま、まさかこのまま大人にされちゃうの私? 大人の階段登って一気にシンデレラ!? さ、最初は痛いって聞いてるけど、で、でもイッセーさんなら優しくしてくれそうだし……」

 

 

 まさか酔っぱらってるとはいえ、イッセーからこんな事をされるとは思っても無かったせいか、変な方向にテンパってしまいっぱなしな刀奈は、一人覚悟をしたかのように目を閉じてみるが……。

 

 

「………リアスちゃん~」

 

「……………」

 

 

 凄く腑抜けたイッセーの声のせいで一気に現実に引き戻されてしまった。

 

 

「リアスちゃん……へへ……」

 

「な、泣いて良いのかしら……」

 

 

 よりにもよってリアスに間違えられてる時点でイッセーをひっぱたいても悪くないというのに、どこまでも健気な面のある刀奈はちょっと泣きそうだ。

 でもイッセーに思いきり抱きつかれるなんて殆ど無い体験なので、それを手放すのはそれはそれで惜しい……と、刀奈の心はとても複雑だ。

 

 

「リアスちゃん………胸しぼんだ?」

 

「…………ぐすん」

 

 

 挙げ句の果てにリアスのメロンの差を『萎んだ』と言われてしまい、ホロリと涙を流す。

 

 

「リアス先生じゃないのに……イッセーさんのばか……」

 

 

 しかしそれでも刀奈は寝ぼけて酷い寝言だらけのイッセーを抱き締めた。

 

 

「絶対に先生に負けない女になるんだから……! でもねイッセーさん、私を先生と間違えたのはイッセーさんなんだからね? だから先生と間違えてても良いから、今日はこのまま一緒に寝てください……」

 

 

 それでも嫌いになれない。それでも好き。

 例えリアス間違えられても良い……何時かきっと刀奈としての自分を貰ってくれる様な女になってみせるから。

 

 だから今は……。

 

 

「ホント……こんなに好きになるなんて思わなかったなぁ。

だから絶対に諦めたりなんてしませんからね……?」

 

 

 心地良さそうに眠るイッセーの額にキスをし、抱き締めながら共に眠るのであった。

 

 

「おやすみなさい……イッセーさん♪」

 

 

 妙にやわっこい感触に目が覚めたら刀奈と密着して寝ていたと気付き、大騒ぎになるその時まで……。




補足

これ、勝手に設定しました。

家が某東城会本部ばりの屋敷だったり先代が母で父が婿さんだったりは。


その2
酒はどの世界線でも大体弱い。

本当に唯一の弱点です。


その3
そして遂にやらかした。

しかもリアスさんと勘違いするという失礼っぷりまでやらかす。

が、たっちゃんは健気にもそんなイッセーを優しく受け止めたのであった。

…………頑張れたっちゃん!

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