色々なIF集   作:超人類DX

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ある意味で『精々頑張ってください』の意味を成した瞬間なのかもしれない……


精々頑張ってくれてラッキーな日

 酒を飲んで良かった事なんてひとつたりとも無い。

 

 気持ち悪くなるし、天地が逆転する感覚になるし、意識も朦朧とする。

 

 居酒屋なんかに行ってもノンアルコールのビールか、烏龍茶で誤魔化していたイッセー。

 

 恐らくは体質的に元々弱かったというのもあるのだろうし、この体質だけは何故か無神臓(インフィニットヒーロー)による進化が進んでも改善されなかった。

 

 だからイッセーは絶対に酒もタバコもギャンブルもやらないと決めてこの日までを生きてきた。

 

 飲んで吸って打ってもメリットになることなんてある訳が無いからと。

 そしてそのデメリットが今回発生してしまったのだから、イッセーは思うのだ……『絶対に二度と酒なんて飲まない』と……。

 

 

「………………………………………………………………………………」

 

「し、仕方ないですって……! お酒のせいで意識も朦朧となってたんですから!」

 

「……………………………………………………」

 

「私は全然気にしてませんよ? それに父も母も『アレは本当に仕方なかった』って言ってましたし……」

 

 

 刀奈の父にほんの一口薦められ、一口くらいなら耐えられる程度には鍛えられただろうと思って飲んだその瞬間以降の記憶が完全に消し飛び、気付けば部屋の布団で寝ていたイッセーは、刀奈の実家のお風呂を借りて身体はサッパリしたが、心は全くサッパリしていなかった。

 

 

「最低値を更新しちまった……」

 

「そ、そんな大袈裟な……」

 

 

 何せ起きたら目と鼻の先に刀奈が居て、思いきり自分から抱き着いて寝ていたのだから。

 あり得ぬ状況に声に出ない動揺でパニックに陥ったのは当然だし、自身に宿るドライグも刀奈も『抱き枕にはしていたが、それ以上の事は無かった』と言ってはいたものの、リアス以外の異性にこんな真似をしてしまった事自体がイッセーにとって問題であり、物凄く酒が弱いと知らずにとはいえ、勧めてしまって申し訳ないといった顔をした刀奈の父に貸して貰った服を着ているイッセーは、刀奈の自室の隅っこで、壁の方を向きながら体育座りして落ち込んでいた。

 

 

「今日は他に来る候補って人達と両親達が会うみたいで、終わるまでは自由にしていて良いって言ってました。

だからこんな隅っこで体育座りなんてしないで……」

 

「………。俺、寝ぼけてキミにやらかした時、リアスちゃんと間違えてなかったか?」

 

「え……」

 

 

 他の婚約者候補と本日両親が面接をする予定で、それが終わるまでは自由に過ごしていて良いと言われたので、刀奈は何とかしてイッセーに罪悪感を持たなくて良いと奮闘するも、そのイッセーからの質問に固まってしまった。

 

 

「………間違えたんだな?」

 

 

 その一瞬の沈黙でイッセーは直ぐに察したが、慌てて刀奈は違うと否定する。

 

 

「ま、間違えてなんてませんよ? 別に先生の名前なんて呼んでませんでしたし……」

 

「良いよ、キミの顔見りゃわかる。………醜態晒した挙げ句、キミにあんな真似までやらかして………すまねぇ」

 

「あ、謝らないでくださいよ! 私は……私は例え間違えられたとしても幸せだったのに……!」

 

 

 謝るイッセーに、刀奈は寂しいやら悲しいやらの気持ちになってしまい、つい声を荒げてしまう。

 

 

「確かにイッセーさんは終始私を先生と間違えてましたよ。

ずーっと先生の名前を呼びながら放してくれないし、おっぱいが萎んだとか散々言うし! 確かに間違えられ続けて泣きたくもなりましたよっ!」

 

「やっぱり……」

 

「でもねっ! 例え間違えられても、胸が先生より小さいと揶揄されても、私はそれでも幸せだったんですっ!! だから謝らないで! 謝られるだけ私が惨めになるだけだすからっ!!」

 

「……………………おう」

 

 

 リアスと間違えられたよりも、イッセーが自分に抱き着いていた事に対して終始後悔のような態度をされてる方が刀奈にとっては傷つくので、ほぼ開き直りの様に詰め寄れば、イッセーもそれ以上謝る事はしなくなった。

 

 

「まったく、先生と間違えられた挙げ句、『リアスちゃん、胸萎んだ?』なんて言われた時はやるせなさで泣きたくなったというのに……」

 

「……」

 

「確かに事実ですよ? 先生と比べたらおっぱいだって確かにちっちゃいですし。

でもだからって私は昨日の夜の事を盾にイッセーさんに迫る事もしません。何が何でも絶対に諦めませんから!」

 

「……………………」

 

『だ、そうだぞ?』

 

 

 刀奈の宣言に、ドライグに煽られながらイッセーは何て返答して良いのかわからずに閉口してしまう。

 

 

「そういう訳なので、外に出る気が無いのならお部屋デートしてください!」

 

 

 結局の所、最初からイッセーがリアスしか見てない事なんて解っているし、解った上で好きになってしまったのが刀奈なのだ。

 ちょっとやそっとではその想いは決して折れやしない……それが更識刀奈なのだ。

 

 

「学園に戻ったら、先生とおっぱいで勝負してやるんだから……!」

 

「なんじゃそら……」

 

 

 先に進むリアスに負けず、そして追い付くその精神は強い。

 

 

 

 別に忘れてはいないけど、実家に戻った理由は私の婚約者の問題を片付ける為だ。

 

 その為にイッセーさんを実家に連れてきて両親を会わせたのだけど、両親の反応はまずまずだと思う。

 ………問題はその婚約者候補の件が片付いた後に、イッセーさんがリアス先生という女性が既に居る事を父と母に言った後の事だろう。

 

 確かにイッセーさんの言うとおり、確実に反対されるに決まっている。

 でも……それでもやっぱり私はこの人が本当に好き。

 

 最初からリアス先生の事だってわかってたけど……それでもイッセーさんが好きになってしまった。

 イッセーさんは迷惑に思うかもしれない……それは私だって百も承知。

 脈だって殆ど無いことだって、私の事を子供としか見てないことも全部理解している。

 

 でもやっぱりそれでも……私はこの人が好き。

 

 リアス先生や小さい頃からの知り合いだったらしい一夏くんや箒ちゃん以外には基本的に無口で無愛想な態度を見せるけど、本当に困った時は助けてくれる。

 

 私が妹の簪とこれから先どう接したら良いのかわからなくなった時も。

 

 その簪が姉の絶大な庇護下に置かれ、女子達の取り合いの中心に居る織斑春人に惚れて心配になってしまった時も。

 

 イッセーさんはリアス先生と一緒に全部聞いてくれた。

 今回だってそう。普通なら正に他人事である話に協力してくれて、両親に殴られるかもしれない事すらも承知で実家に来てくれた。

 

 実家に戻る途中、イッセーさんは――

 

 

『キミの両親に半殺しにされようが、抵抗なんてできやしないし、する気もない』

 

『大丈夫だ、一緒にこの先を生きる者は自分で決められる様に必ず頼み込んで了承させる。

だから心配するな』

 

 

 そう私に言ってくれた。

 普段は素っ気なくて、いけずで、リアス先生しか見ない人だけど、そうやって困った時は何時も手を差し伸べてくれる。

 

 不器用で然り気無く――そして時折ストレートに。

 だから私はイッセーさんに惹かれた……。

 悔しいけど、リアス先生の言ってる事は本当に正しいし、確かに先生と私は似ているかな? 山田先生もきっとそう……。

 

 

「なんだこのノート? 勉強ノート――じゃねーな。

何々……? 『用務員さんと生徒会長のいけない恋?』―――なにこれ?」

 

「ひゃあ!? な、何を見てるんですか!?」

 

「いや机に置いてあったから、どんな勉強してんだろと思ったんだけど……」

 

「か、返してくださいっ! こ、これは去年書いた私の……」

 

「えっと、ポエマーだったのかキミ?」

 

「違いますぅ! た、ただの自作の小説ですよっ! も、モデルは私とイッセーさんです!」

 

「あ、あぁそう……」

 

「あー! 今引きましたよね!? 絶対引いた!」

 

「い、いや別に引いてない……。ただ一言良いか?」

 

「な、なんですか……?」

 

「…………。俺はキミを体育倉庫に連れ込んでヤろうとか考えてねーからな?」

 

「しょ、小説の中ぐらい夢を持っても良いじゃないですか!!! た、確かに書いた後の虚しさは半端じゃありませんでしたけど!!!」

 

「………」

 

 

 そういう意味では簪と私は確かに姉妹だわ。

 最近よく思う事のひとつね……。

 

 

「失礼しますお嬢様――って、何をしているのですか……」

 

「う、虚ちゃん……。べ、別に何でもないわ……」

 

「枕に顔を埋めて悶えてるのに、何でもないって事はないと思うけどなー? イッセーさん、何があったの?」

 

「さぁ?」

 

 

 イッセーさんに趣味ノートを見られてしまって恥ずかしい私は、暫く布団の上で悶えていると、虚ちゃんと本音ちゃんがやって来た。

 二人は私を見て呆れた顔をしてるみたいだけど、顔が真っ赤になってるだろうから顔を見せられないで枕に顔を………あ、そういえば昨日このお布団で一緒に寝たせいか、イッセーさんの香りが……。

 

 

「仕方ないのでそのままで聞いてください。

只今先代と旦那様がお嬢様の婚約者候補の方と面会を行ったのですが……」

 

 

 そういえば本音ちゃんはよくリアス先生は『優しい匂いがするから好き』だって言ってたけど、私はイッセーさんに優しい匂いというかそんな感じがするわ。

 現にこうしてイッセーさんと使ったお布団に顔を埋めてると、ドキドキして……。

 

 

「? ですがって何だよ?」

 

「問題が発生しちゃったんだよねー……。

かんちゃんが帰って来ちゃってさー……」

 

「ああ、この子の妹の事か。

実家がここなんだから、帰って来るのは普通なんじゃないのか?」

 

 

 ……でも、これってちょっと変態チックな気がしてきた。

 私ってやっぱりムッツリなのかしら……? ノリで似非裸エプロンくらいにはなれるけど、似非でもイッセーさんに見せてみろって言われたらショートしちゃうだろうし……それに似非だからそれこそ鼻で笑って『邪道だな』とか言われちゃいそう……。

 こ、今度試そうかしら?

 

 

「簪お嬢様だけがお帰りになられたのなら何の問題もありませんでした」

 

「つまり……?」

 

「居るんだよね~……例の弟君が」

 

 

 自作した小説だと成功して獣になった彼に凄い事される………って描写までは恥ずかしくて書けなかったけど、そういう展開にしちゃった訳だけど、現実はそう甘くないわよね……。

 リアス先生だったら私の邪道バージョンだろうと、成功しちゃうんでしょうけど……。

 うー……そう考えると辛いわ。

 

 

「他の婚約者候補にいきなり喧嘩を売り始め、騒動にまでなりました」

 

「けどラッキーな事に、お陰で他の婚約者候補さん達が弟君によって脱落してくれたんだよね」

 

「………。どうやって?」

 

「『今日は身体の調子が良い』って宣ってその人達をまとめて気絶させたっぽい」

 

「今日はだァ? ………随分と都合の良い病弱人だな」

 

「それは私達も思いました。

ただ今織斑春人は先代と旦那様と簪お嬢様とで面談中でございますが、刀奈お嬢様を出せの一点張りなのです」

 

「……かんちゃんが凄まじく怖い顔してるって気付いてないみたいでね」

 

「……チッ、手間を省いてくれたのは素直に使えたと思ったが、やはり面倒な……」

 

 

 下手な色仕掛けが通用する人じゃないし……あーでもイッセーさんの香りがするお布団のせいで上手く考えられないわぁ……。

 

 

「おい……おいってば」

 

 

 ? 何よ、今私はイッセーさんのお布団で幸せな気分に――

 

 

「キミの大ファンが家にまで押し掛けて今ご両親と面談やってるらしいんだけど、どうするよ?」

 

「…………ふぇ?」

 

 

 気付けば私は呆れた顔をする三人に見られていたみたいで、話も殆ど聞いてなかったせいでイッセーさんに軽く額を小突かれてしまった。

 

 

「聞いてなかったのか? 手間の掛かる子だな」

 

「ぅ……」

 

「ちゃんと聞けよな今度は?」

 

「は、はい……」

 

 

 その際、呆れた顔をされながら痛くない程度にこづかれた時、物凄くキュンってなったのは秘密にしといた方が良いかなと思った。

 

 

 

 

 

 布団で悶えていたとはいえ、イッセー、虚、本音から話を聞いた刀奈は、心底気味悪そうな表情をしたものの、この際だから全部終わらせてやるつもりで両親と面談とやらをしてるらしい簪と春人のもとへと赴く事にした。

 

 

「あ、イッセーさんはここに居てください。

顔が割れてしまったら、もし学園で鉢合わせした際が面倒ですから」

 

「大丈夫なのか……?」

 

「大丈夫です。そろそろ終わりにしたいと思っていましたから」

 

 

 一夏達からメールをされていた時点で、遅かれ早かれ顔が割れる予想をしていたので、そのまま同行しようとするイッセーだったが、刀奈はそんな申し出を断り、微笑みながら虚と本音と共に部屋を出る。

 

 

「失礼するわ」

 

 

 そして昨日イッセーと共に両親と面会をした部屋を訪ねてみれば、確かにそこにはこちらを憎悪の目で睨む妹の簪……。

 

 

「楯無先輩……!」

 

 

 そして出来る事なら会いたくは無かった織斑春人が自分の姿を見るなり椅子から立ち上がっていた。

 

 

「さっき簪が彼女――じゃなくて彼……か? 彼を連れて帰って来たのだが……」

 

「さっきまで居た他の婚約者候補の方達との『試験』に参加して一応彼だけが合格という形になったのだけど……」

 

「…………。私も今二人から聞いたけど、何をしに来たのかしら?」

 

 

 簪と共に帰って来たかと思えば、他の婚約者候補達を再起不能にしてしまった織斑春人について軽く困惑する様子の両親の話を聞きつつ、春人に冷たい眼差しを向ける。

 

 

「簪から、先輩が好きでもない相手と結婚させられるかもしれないと聞いて……」

 

 

 思いの外冷めた目を向けられてしまい、軽く圧されてしまうものの、春人はここに来た理由を説明する。

 その際、終始横に座る簪から殺意の眼差しを刀奈に向けており、刀奈はただただ深くため息を吐く。

 

 

「仮にそうだとしても、キミに何の関係があるのかしらね? そもそも私の事情に土足で入り込める程、仲が良いつもりなんてこれっぽっちも無いのだけど?」

 

「そ、そんな……。でも僕は先輩を―――」

 

「あー、やめてやめて、その先の言葉を聞いたら寒気が止まらなくなりそうだわ。

第一、アナタ、簪という者がありながらよく言えるわね? 図々しいというか、オツムが足りてないというか……」

 

 

 何時に無く、敵認定イッセーばりの辛辣な物言いに春人は一人勝手にショックを受けているが、刀奈に罪悪感は無い。

 寧ろここまで言わないと解らないとこれまでの事で理解したが故に、容赦をする気は全く無いのだ。

 

 

「さっきまで色々と勝手にやったみたいだけど……なーんて言うのかしらねぇ? まさに『ありがた迷惑』って奴だわ」

 

「な、何でそんな事を……僕は――」

 

「はいはい、どうせ『私の為に』とか尤もらしい事でも言うつもりでしょう? あのね、私はアナタに一切そんな事を頼んでなんていない。

何が理由で世界で最初のIS起動者のアナタが私に拘ってるのかなんて知りたいとも思わないけど―――――本当にやめてくれないかしら? アナタは簪や他の女の子や姉の織斑千冬に可愛がられ慣れすぎてて、それが『当たり前』だなんて思ってる様だけど……………虫酸が走るわ」

 

「……………」

 

 

 両親が互いに顔を見合せながら『あちゃー……これは本気で拒絶しちゃってるな』みたいな顔をしてるのを他所に、今までにないくらいにハッキリ言い続ける刀奈。

 

 言われた春人は何をどう解釈したからなのか、そこまで嫌われてるとは思ってなかったらしく、ショックで固まってしまっていて、簪はといえば……何故か今日に限って黙って刀奈に嫌悪の眼差しを送っていた。

 

 

「簪をほったらかしにし続けるつもりなら、アナタを殺すわよ私は……」

 

「そ、そんな事……!」

 

「してる様に見えるのよ。

簪だけじゃあなくね」

 

 

 どうしてここまでしたのに、嫌うんだといった表情の春人。

 自分の関係ないところでなら何をしてようが知った事ではない。けれど土足で勝手に入り込もうとする考えが刀奈は好きになれないのだ。

 

 

「その様子じゃ、学園に無許可で外出したのでしょう? さっさと戻った方が罪もそれなりに軽くなるんじゃないかしら?」

 

「…………誰なんですか」

 

「は?」

 

「……………。先輩が好きだって言ってた人は誰なんですか……!」

 

「アナタの知らない人」

 

「会わせてください……今ここに居るんでしょう!?」

 

「嫌よ。余計な真似されたら堪ったものじゃないもの」

 

「しません! ただ、誰なのか……知りたいだけだ!」

 

「知ってどうするの? 言っておくけど、何かするつもりなら無駄よ。

ISに覚えのある程度のアナタじゃ通用しないし…………もし何かする気なら、その前に私が――――殺す」

 

 

 寒気のする程の殺意を放つ刀奈。

 今まではのらりくらりで避けてきたが、そんな甘い対応では何時になってもしつこい。

 

 

「っ!?」

 

「…………?」

 

 

 だからこそ本気で拒絶する事にした刀奈に、春人は何故か視線が刀奈では無くその後ろの扉に向けられていた。

 不思議に思って刀奈も後ろを向くと……。

 

 

「……………………」

 

 

 そこには父から借りた服を着たイッセーが無表情で立っているではないか。

 

 

「……! い――いえ、な、何で?」

 

 

 思わす名前を呼びそうになった刀奈は咄嗟に飲み込みながら、無言のイッセーに近づくと、イッセーは周囲を見渡してから春人を一瞥しつつ口を開く。

 

 

「待ってたけど、中々戻って来ないから、ちょっとだけ心配になってね。

……もっとも、単なる取り越し苦労だった様だけど」

 

「そ、そうですよ! 顔が割れたら面倒事に巻き込んじゃうと思ったから部屋に居て貰ってたのに……!」

 

「別にそこの奴に顔が割れたからって、何になる訳でもないだろう? それに俺だけコソコソするってのもな」

 

「へ、変な所で生真面目なんだから……もう!」

 

 

 茶髪の……恐らく10代かと思われる青年を初めて見る簪と春人は、刀奈の声色の違いを聞いて驚くと同時にまさかと察した。

 

 

「そ、その人がまさか……」

 

 

 震えた声の春人の質問に、ため息混じりで刀奈は観念したように口を開いた。

 

 

「そうよ……私の好きな人で昨日二人に会わせたのよ。

これでわかった? 方便でもなんでもなく、私に好きな人が居るって」

 

「……………」

 

「……………」

 

 

 『教えたくなかったのに……』とプンスカ怒る刀奈の態度が明らかに柔らかいものになっているので、嘘ではない事は間違いないと簪も理解したし、春人も理解してしまった。

 だが春人は内心、刀奈に軽くポカポカと叩かれてる男が全くわからなかった。

 

 

(だ、誰なんだあの男は……? あんな奴居なかった筈なのに……)

 

 

 いくら掘り起こしても知識にも記憶にもない男。

 それもその筈、イッセー……そしてリアスは別世界の奪われた主人公とヒロインなのだから。

 そこまでの考えには流石に至らなかったらしく、更には刀奈の好意をこの男が奪ったのだという認識が、春人に憎悪を与えるだけだ。

 

 

「貸した服はサイズもピッタリみたいだね?」

 

「ええ、すいませんわざわざ……」

 

「ふふ、簪のボーイフレンド君がこの子の婚約者候補達を脱落させてしまったので、自動的にアナタがお婿さんになるし、気にしないでちょうだい?」

 

「え゛? あ、ああ……そ、そっすか。

あの、後でお二人にお話しなければならないことが……」

 

「「?」」

 

 

 しかも自分の行動がこの男のを有利に働かせたらしく、ますます憎悪が膨らむ。

 

 

「春人……よくわからないけど、あの姉の婚約者はあの人みたいだよ? わかったし、もう帰ろうよ?」

 

「………………」

 

 

 逆に簪はホッとした。

 嫌いな姉にはあのパッとしなさそうな男が居る。

 

 それがわかれば春人も諦めるだろうと思っているから。

 だからそれまで黙っていたのを、タイミングを見計らって話しかけるのだが、春人の視線はパッとしなさそうな男に向けられたままだ。

 

 

(消す……! あんな原作に居ない奴なんて消そうが問題なんて無い筈だ。

消してやる……!)

 

 

 許せない。

 刀奈を奪ったあの男だけは確実に消す。

 そう決意した春人は流石に今この場でとは言わないが、この世から消すと決意した。

 

 

『しょうもない殺意を向けてるぞ、あのガキが』

 

(どうやら俺を知らないらしい。

まあ、奴にとってはイレギュラーだからな、俺もリアスちゃんも。

知らねぇってんなら却って好都合だぜ)

 

『しかし、徹底的にリスクを回避してきたお前にしては大胆な行動に出たもんだ……どういう心境の変化だ?』

 

(相手が相手だし、流石にこの子達だけでは手に余るだろうと思ってな。

ここまで干渉しといて、一人だけ逃げる訳にはもういかないだろ? それによドライグ……久々に全力を出せるかもしれねぇんだぜ?)

 

『フッ、つまり事と次第によっては俺達のサンドバッグって奴になって貰う腹積もりか? お前も悪い奴だなぁ?』

 

 

 そう言うものの、久々に本気を出せるかもしれないと、ドライグの声はとても弾んでいた。

 

 

終わり




補足
一人勝手に暴走してくれたおかげで、他の婚約者候補さん達が脱落してくれた。


 もっとも、その本人が一番鬱陶しいのですが。


その2
流石に兵藤一誠という発想が出てくる訳もなく、ただのモブかなんかだと勘違いしてる模様。

………知った所で無理ゲーなんだけど。


その3
趣味の恋愛小説を見られて悶えてしまうたっちゃん。

内容が最早夢小説で恥ずかしかったたっちゃん。

初だから『そういう描写』まではギリギリ書けなかったたっちゃん。

隠れてレディコミを真っ赤になりながら読んだ結果『体育倉庫』のたっちゃん。

………頑張れたっちゃん!
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