色々なIF集   作:超人類DX

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感想の多さにびびった。

てな訳で続き。


クビになるフラグ

 この世には、稀に人智を越えた規格外と呼ばれる人間が居る。

 

 数十年――いや、数百年以上に一度現れるか現れないかの低い確率に出現する規格外。

 

 初代楯無が規格外と呼ばれたと聞いた事があったが、代を重ねていく内にその素養は随分と薄れてきた。

 

 私は勿論、天賦の才を持つ刀奈もその規格外の領域には届いていない。

 

 今の時代で規格外と呼ばれた存在は、あの篠ノ之束と、造られた『織斑』の者。

 

 その予想通り、織斑千冬と今回『異質な力』を見せた織斑春人はあの『計画』の成功例と言えるのかもしれない。

 もっとも、私も噂程度でしか聞かなかったものだけど。

 つまり、私は当初明らかに簪を出汁に使って刀奈に執着する織斑春人には彼は勝てないと思っていた。

 彼が一般人よりは『経験』を持っている事は立ち振舞いで察する事はできたが、造られた規格外には流石に届かない……そう思っていた。

 

 けれど私が見た光景は、規格外を越えた『超越者』という領域であった。

 

 恐らくは大国の軍事力をもってしても止められないであろう、圧倒的な力。

 規格外を一撃で沈める未知の領域。

 

 

「ぼ、僕は負けていない! 万象一切灰燼と為せ! 流刃――」

 

「無駄だ。それはもう()()()し、そのよくわからん曲芸じみた刀はもう二度と直らない」

 

「若……火……?」

 

 

 彼がどんな道を歩んだからそこまでの領域へと進んだのかは解らない。

 だけど納得はした。

 天賦の才を持つに留まっていた筈の刀奈が、更に上の領域へと進もうとする程の成長をしていた理由を。

 

 

「だ、誰なんだお前は……! お前みたいな奴は存在しない筈なのに……!!」

 

 

 きっと彼が導いたのでしょう。

 多分付いてくることを拒んだけど、刀奈が強引に付いていったというべきでしょうけど。

 

 惹かれているのも本当……。

 でも彼はきっと刀奈にそういう感情は無い。

 

 

「俺はこの子の婚約者となる資格は最初からありません。

何故なら俺にはもう――――」

 

 

 何故ならパートナーが居る。

 騒ぐ織斑春人をまたしても気絶させ、簪共々従者達に退出させた後、打ち明けられた話に私はやはり納得した。

 

 

「今ここで殺されても俺に文句なんて言える立場はありません。

ですがどうか……この子のパートナーはこの子自身に決めさせてあげてください」

 

 

 その気になれば私や夫を力付くで黙らせる事だって出来る筈なのに、彼は私達に土下座をしてまで刀奈自身の自由を懇願した。

 自分が殺されても構わないとまで言い切って。

 

 そんな彼を刀奈は寂しそうに見ている。

 多分刀奈も知っていたのでしょうね、彼のパートナーがどんな者であるのかを。

 

 それでも刀奈は彼に惹かれている。

 

 

「事情はわかった。

刀奈の将来の相手は刀奈自身に決めさせるという事については約束しよう。

だが、私達は別にキミに何もしないよ」

 

「寧ろ問題は貴方の今後の方ですよ? 恐らくはそろそろ無断で学園から出た織斑春人を学園側が回収する手筈となっている筈です。

その時彼は間違いなく貴方の事を言及するでしょう……」

 

「……良くてクビでしょうね。

ですが後悔はしてません。そもそも彼がこの子に異常にしつこかったのは聞いていましたから」

 

「クビって……。

だってアレは両者合意の決闘なのに……」

 

「奴もそうだが、奴の取り巻き共がそれで納得すると思うか? 特に織斑千冬は奴を死ぬほど可愛がっているだろう? …………一夏には見向きもしないでな。

そんな連中が騒がない筈も無い――まあ、こうなる事は半ば予想していたし、これでも貯金はしてたからな。また就職探しだな」

 

 

 いざとなれば自分の立場も手放し、その者の為に奮闘する。

 例え全てから悪と揶揄されようとも構わず己の決めた道を突き進む。

 なるほど……刀奈が惹かれた理由がよーくわかったわ。

 

 今時居ないもの、こういう男性は。

 

 

「……。そうこうしている内にお迎えが来たようだ」

 

「外が騒がしい様だけど、誰が来たのかしらねぇ?」

 

 

 うーん、気になるわ。

 そんな彼が愛する女性が誰なのかが。

 

 そんな事を思いながら、私は乱暴に開けられた扉から怒りの形相と共に飛び込んできたブリュンヒルデにため息を漏らすのであった。

 

 

 

 

 

 織斑千冬がそれを知った時は、形振り構わず飛び出した。

 更識家に簪と共に行った理由もそうだが、一番の理由はその際春人が大ケガをしたという状況であった。

 

 

「IS学園で教師をしている織斑千冬です。

本日此方へ窺ったのは、無断で学園を出た生徒を連れ戻しに来ました」

 

 

 どこの誰が病弱な春人を傷つけたのか、殺気立ちながらこの家の主が居た部屋へと挨拶と共に入った千冬の目には、のほほんとした表情の夫婦と簪の姉である楯無。

 ――そして。

 

 

「………。学園の用務員がなぜここに?」

 

 

 会話等は一度もしたことは無いが、去年から何度か見たことなる作業着男が、小綺麗なスーツを着用して更識家の夫婦と楯無とでテーブルを囲っている事に気付いて眉を寄せる。

 

 

「彼は私達のお客様でしてね。

あぁ、織斑春人君でしたら、今次女の部屋に居ますわ」

 

「更識の部屋……だと?」

 

 

 あっけらかんとした態度で春人の所在を話す女性に千冬はつい目付きを鋭くさせてしまうが、問題はそこではない。

 

 

「お話を窺ったところ、うちの春人が大ケガをしたと聞きましたが?」

 

「ええまあ……」

 

「では誰が春人に怪我を?」

 

 

 吐き出されそうな激情を押さえ込みながら、千冬は努めて冷静に問う。

 すると無言で手を挙げたのは――あの用務員だった。

 

 

「誰がとなれば俺になりますね」

 

「貴様が……だと?」

 

「ええ……」

 

 

 何の反省もしてなさそうな無表情であっさり白状された瞬間、千冬は思わず手を出しそうになる。

 だが一応は大人なので今にも殴ってしまいたくなる衝動を抑え込みながら、その理由を問う。

 

 

「理由は……? あの子は誰かに暴力を振るわれる様な子ではないと思っている。

何か理由があるのなら聞かせて頂きたい」

 

「この子の婚約者候補としてご両親にご挨拶をしていたら、突然おたくの弟さんが乗り込んで来ましてね。

どうやら彼は相当この子に入れ込んでいたらしく、俺がその婚約者の候補だと知った瞬間、決闘をしろと言いました」

 

「………………決闘? そんなバカな、春人がそんな事を言うわけ――」

 

『僕と勝負しろ……!』

 

 あり得ないと口に出そうとした瞬間、部屋内に春人の怒りに満ちた声が響く。

 

 

「ご納得して貰えないと困りますので、一応先程のやり取りを録画しておきましたの」

 

 

 その声の正体は、刀奈の母が持っていたスマートフォンであり、どうやらイッセーに対して食って掛かり始める少し前から密かに録音をしていたらしい。

 

 

「口で説明するより、直接見て頂いた方が良いのではありませんか織斑先生? その方が先生もご納得されるでしょうし?」

 

「…………」

 

 

 刀奈を思わせる人を喰った様な笑みと共にスマートフォンをモニターに接続し、映像を出力する母親に、内心イッセーと刀奈は『用意良いなこの人……』と思う。

 そして映像を観た千冬は――

 

 

「な、なんだ……これは……?」

 

 

 イッセーに春人から勝負を挑む場面。

 一般人のイッセーに春人がISを使用する場面と、病弱な筈だった弟の信じられない行動に驚愕して固まってしまった。

 

 

「娘の婚約者候補は他にも居ましたけど、噂で聞いていた病弱さが嘘の様なアグレッシブさで全員怪我をさせてしまいましてね……。

多分後日その婚約者候補達の実家から相当な抗議が届くと思いますけど、まあそんな事より何故彼が怪我をしたかについては見ての通りですよ先生? いやー、驚きましたわ。まさか本当にISを使って彼と戦おうとしたり、明らかにISとは思えない武器を使って……ほら、これは確実に殺そうとしてますねぇ?」

 

 

 

 後半からニヤニヤと、囁くように話す母親に軽く引く刀奈。

 

 

『やるな』

 

(ああ)

 

 

 正反対に、その用意の良さにちょっとした尊敬の念を覚えてるイッセー。

 

 

「ば、バカな……こ、こんな事……! そもそもあの能力は白式とは違う。束か……? 束が私に内緒で春人に別の機体を渡したのか……?」

 

「事の真相はわかりませんが、どちらにせよこの映像の通り、織斑春人君は自ら彼と決闘をした結果敗北しましたわ。

彼の言っていた通り、余程長女に入れ込んでいた様ですし、ここまで来たのもウチの次女に頼んだ様ですので……」

 

「………」

 

 

 とてもいい性格をしていたらしい母の言葉を受け、千冬は反射的にイッセーの横に居た刀奈を睨む。

 

 

「急に睨まれても困るのですけど。

ご心配なさらずとも、先生の弟さんに思うことなんてありませんから」

 

「…………」

 

 

 ハッキリと言う刀奈に少し苦い表情になる千冬は、それならばと今度はその隣のイッセーを睨む。

 

 

「用務員が生徒に暴行を加えた事は事実だ。

学園長に報告はさせて貰う……」

 

「どうぞ。ああ、一言余計かもしれませんが、言わせて貰いますよ? 俺はおたくの弟さんにした事は全く後悔はしてません。

そもそも彼は本気で俺を殺すつもりだった様ですし、黙って殺される気は俺にはありませんから」

 

「…………」

 

 

 淡々とした表情と、抑揚の無い声で言い切るイッセーに千冬は歯を食い縛る様に殺気を向ける。

 

 

「子供相手に大人気無いと思わないのか貴様は……」

 

 

 それでも表情をひとつも変えないイッセーに、千冬はあり得る筈も無いのに、あのリアス・グレモリーの影を感じ苦し紛れに責める。

 するとそれまで無表情であったイッセーが、まるで心底見下す様な雰囲気を放つ。

 

 

「便所のネズミのクソにも匹敵する程どうでもいい、気に食わない事があれば癇癪起こして喚くクソガキ相手に優しくしてやれる程、俺は大人じゃねぇ」

 

「……っ!?」

 

(あ、スイッチが切り替わった……)

 

(あらまぁ……)

 

(やっと素が見れたね……)

 

 

 自分が大事に思うもの以外は押し並べて平等にどうでも良いといった態度が全面に出た顔と言い方に、今度こそ千冬は激情の赴くままにイッセーの目の前に立ち、平手――では無く拳を頬に向けて本気で放った。

 

 

「ぐっ!?」

 

「聞こえなかったのか? 俺はどうでも良い他人に優しく出来るほど、大人じゃねぇんだよ……」

 

 

 だがその拳は届かず、手首を掴まれてしまった千冬は苦悶の表情を浮かべる。

 

 

「テメーの大事な弟なら、温室かどっかに隔離して可愛がれよ? 俺()の関係ない所で好きなだけなァ……?」

 

「ぐ……が……!?」

 

 

 そしてイッセーの表情がやがて、かつてリアスを傷つけた者達への報復を行った時の様な形相へと変わっていくと、捕まれた千冬の手首から骨の軋む音が鳴り、あの世界最強と呼ばれた織斑千冬は屈服するように膝を付く。

 

 

「兵藤君、そこまでにしなさい」

 

「………」

 

 

 そんなイッセーを見て、このままではマズイと察した刀奈の両親が其々宥めると、イッセーはアッサリと手を放す。

 

 

「く、はぁ……はぁ……お前は一体……?」

 

 

 信じられない力で腕を折られかけた千冬は、解放された方の、まだ鈍い痛みが残る手首を押さえながら、滝の様な汗を流して冷たく見下ろすイッセーを見上げる。

 そして理解した――コイツはただの用務員ではないと。

 

 

「理事会にでも学園長にでもチクリたければ好きなだけチクれば良いさ。

それでクビになろうが俺は構わない。

だがな、テメーの弟をこの先も甘やかし続けるってんなら言っとけ。

ストーカーなんぞしてる暇があんなら、テメーで持て余してる小娘共をなんとかしろ。

それと……これ以上この子に茶々を入れる気なら、今度は二度と近づけねぇ様に徹底的にぶっ壊してやるってな」

 

「ぅ……」

 

 

 強大な殺意と共に放たれた言葉は、これまで感じなかった『絶望的なまでの力の差と恐怖』を千冬に植え付けるに十二分だった。

 

 この世界に……しかもISと縁も無い男の放つ絶対的な圧力はさながら全てを捩じ伏せる王。

 

 

「わ、わかっ……た……」

 

 

 戦う前の緊張や恐怖は何度も感じた。

 しかし千冬はそれでも、 生まれて初めて心の底から震え上がった。

 真の恐怖と決定的な挫折を……。

 それこそ、恐ろしさと絶望に涙すら流す程に。

 

 これも千冬にとっては初めてのことだった。

 

 

「わかったのなら、さっさと『大事な弟』を連れて失せろ」

 

「…………」

 

 

 最早千冬に春人を傷つけたと食って掛かる気持ちは無かった。

 あるのはただ、二度とこの男を怒らせてはならないという恐怖から逃げる事だけだった。

 

 

(無理だ……。あ、あの男には何をしても勝てない。私が全盛期であろうが……む、無理だ)

 

 

 こうして千冬は初めて戦う事を放棄して逃げた。

 顔の半分が腫れ上がった弟と、どこか『戸惑った』様子の簪を連れて……。

 

 

 そして時間を置いてイッセーと刀奈達も学園へと帰還する。

 

 

「多分婚約者話は何とかなったよ。

……半殺しは覚悟してたけど、そんな事も無かったしね」

 

「そうなの……? こっちはこっちで織斑先生を筆頭に大騒ぎだったわ。

一夏も言いがかりで責められてたし」

 

「もっとも、私が我慢できずについ黙らせてしまったので大事には至らなかったよ」

 

「あの山田先生も箒と一緒になって言い返してたくらいだもんね」

 

「俺は平気だったんだけど、先に箒が怒っちゃってさー……」

 

 

 刀奈の実家であった事と、その間に学園で起こった事を情報交換しながら用務員室に集合するイッセー達。

 どうやら学園でも春人が無断で外出した事に対して、只の八つ当たり同然に春人信者達から一夏が責められたらしいのだが、聞いている限りではイッセーに物凄く内面が似てしまった箒が、プッツンしたり真耶が援護したりとなったお陰で割りとあっさりと沈静化させられたらしい。

 

 

「ま、俺はほぼクビだろうな」

 

「そ、そんな! 確かに暴力行為だったのかもしれませんけど、弟さんだって同じことをしようとしたのでしょう? 抵抗せずただ黙って傷つけなんて……」

 

「世間的には、成人過ぎの男が未成年の小僧をぶっ飛ばしたに過ぎませんからね。

良いですよ別に。俺は全く後悔も反省もしてませんので」

 

 

 この先の予想を立てるイッセーに真耶は庇う気でいるらしいが、イッセーはやんわりと断る。

 

 

「仕事は他にもいくらでもありますしね。

なぁリアスちゃん、いっそ二人でやめてすっげー山奥の田舎にでも引っ越して暮らすか?」

 

 

 貯金したから自給自足で300年は余裕っしょ? とサラッとリアスと自分がほぼ不老長寿であることをカミングアウトしながらヘラヘラと笑うイッセー。

 一日リアスが居なかったせいか、割り増しに白衣で中にハイネックの薄いセーターと黒いスカート姿のリアスにベタベタしており、現在進行形で膝枕をされている。

 

 

「私はどんな状況になってもイッセーに付いていく気でいるけど、この子達はそうはいかないでしょう? 特に山田先生や刀奈は……」

 

 

 何時もはリアスの方がイッセーに甘えるのだが、今日に限っては逆となっている状況を当たり前の様に受け止めてるのだが、今となっては簡単に投げ出して逃げるには難しいとリアスは先程から羨ましそうにリアスを見てる刀奈と真耶に視線を向けながら言う。

 

 

「一時の気の迷いだったってすぐ気付く―――は、山田先生?」

 

 

 確実に刀奈の両親から明日には駄目と連絡されるに決まってると思っているらしいイッセーはリアスに膝枕をされた体勢で刀奈を見つつ、真耶の名前まで出てきてる事に気付いて止まった。

 

 

「山田先生……? 今なんで先生の名前が出たんだ?」

 

「う……」

 

『………………』

 

「え……なんだよ皆してその目は?」

 

 

 あからさまだった筈だし、周りすらすぐに気づいたというのに、本人はまったく知らなかった顔だし、本当に気付いてすら居なかったというオチに、真耶は悲しそうに笑い、一夏達の目は流石に白いものになる。

 

 

「私、リアス先生と同じくらい山田先生もライバルだなぁって思ってたのに、それは無いと思います」

 

「イッセー……昔はそこまで鈍くなかったじゃないの。

年々ひどくなってない?」

 

「いやさ、リアス姉しか見てないのはわかってるけど……」

 

「流石にちょっとだけ酷いと思うぞ……」

 

「やまやんに本気で同情しちゃったよ今……」

 

「先生という方が居るので、正しいといえば正しいのかもしれませんが、もう少し……」

 

「い、良いんですよ! わ、私みたいな地味なタイプがイッセーさんと釣り合えるとは思ってませんから……」

 

(いや、童顔でリアス先生に匹敵する胸の大きさで地味は無いと思うんだけど……)

 

 

 自分を卑下する真耶に、刀奈は胸で負けてる事もあって寧ろ悔しく思っていると、イッセーは微妙になんとも言えない気まずそうな顔で身体を起こす。

 

 

「いやその……わかってると思いますけど、俺ですよ? 義務教育すらまともに受けなかったただのチンピラですよ? 更識さんもそうだけど、本当に俺にそんな事を抱くのは誤解してるとしか思えないんですけど……」

 

「ただのチンピラが、仕事をクビになるのも躊躇わずにあそこまでしてくれるとは思いません」

 

「こ、これが気の迷いだとしたら、ずっと迷っていたいなぁ……なんて……」

 

「だってよイッセー? ふふ、これは強力なライバルね」

 

「り、リアスちゃんまでそんな……」

 

 

 ケロッとした顔の刀奈と、もじもじしながらも言い切ってしまう真耶。

 

 

「…………。じゃあ俺は一夏の弟と同じじゃねーか」

 

「いや、アイツとは違うだろ」

 

「元からリアス姉さんしか見てないと言っていたし、何度もハッキリと断ってたしな。

それでも諦めないのがこのお二人であるし、春人と違って対処出来ずに放置したり逃げたりはしないじゃないか」

 

「……それこそ物は言い様じゃねーか」

 

 

 織斑春人と同類と考えるだけで顔が苦いものになってるイッセー。

 しかし、そんな気分とは裏腹に、真耶は今回の事で軽く吹っ切れたのか、言ってしまった。

 

 

「きょ、去年から! 抱えてた教材を床に落としてしまい、それを拾ってた時に黙って何も言わず一緒に拾ってくれた時から好きです!!」

 

「ほぼ初対面の時じゃねーか……。あの山田先生……? いくら男に免疫が薄くても、高々落としたものを拾うのを手伝っただけのチンピラにそう思うのは――将来詐欺に遇わないか心配になるといいますか……」

 

「ご、ご心配せずとも、イッセーさん以外の男性は全部普通としか思わなくなりましたから!」

 

「…………」

 

 

 すさまじくシュールな顔になるしかなかったイッセー。

 確かに真耶が困った事に遭遇したら手助けしようとは自然に考える程度には親しい気はするが、好意を向けられるとなると刀奈と同様に困るのだ。

 

 しかもどうやら刀奈と同等に何を言っても好意を向けるのを止めてくれない。

 

 

「この前なんて、酔っ払った山田先生が延々とカラオケで『う◯星や◯ら』や『め◯ん一刻』主題歌を熱唱してたわねぇ……?」

 

「あ、もしかして『ラ◯のラブソング』とか『陽だ◯り』ですか?」

 

「じ、自分でもよくわからないくらい歌いたくてつい……」

 

「………。俺を見ながら言われても困るんすけど」

 

 

 いっそ暴力的な面でも見せまくって嫌われてやろうか。

 

 ……と、割りと無意味な事を考えながら、学園長の呼び出しを待つイッセーなのだった。

 

 

「えと、この前実家から『結婚』について言われまして……」

 

「………………………………。俺にどーしろと」

 

 

 終わり




補足

勝手に乗り込んで勝手に他の婚約者候補に喧嘩ふっかけて潰した時点で記録する事を決めた先代楯無さんは、きちんと証拠を揃えていました。

そして追い込み方が割りとエグい。


その2

超サイヤ人に覚醒したばかりの悟空に『いい加減にしろ、このクズヤロー』と、手首を粉砕されかけてビビるフリーザ様ばりにビビり、結果超サイヤ人になった気でいた王子が軽々とその自信をフリーザ様に砕かれてしまった王子と化した千冬。

 チクりはしたけど、報復されるのではと怯える様になってしまったとか。


その3
やまやんにまでハッキリ言われてしまい、織斑春人と同じだと頭を抱えるイッセー。

結構本人はハッキリと言ってるつもりなのに、何故かこうなる。

そして、そんなイッセーとは裏腹に、やまやんはリーアたんとカラオケに行って、主に神だったアニメの主題化ばっか熱唱してた模様。

特に、ラムちゃんのラブソングをかなり熱唱しまくってたとか……。

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