色々なIF集   作:超人類DX

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前回の一応の続き……です。

※閲覧注意とだけ載せます。


コミュ力は普通にある……。だが人外だ

 友達――ねぇ?

 随分前までは死ぬ気で大切にしてた気がする何かだったなぁそれ。

 もう今は全然要らんけど。

 

 

「え、それは嫌だ」

 

「………………」

 

 

 要らねーったら要らねぇ。

 何処ぞの聖帝の『愛なぞ要らぬ』じゃないけど、奪われる苦しみを味わうくらいなら最初から一人で良いんだよ。

 あんな苦しみをもしまた味わう事があれば、俺は関係の無い人まで勝手に巻き込んで全部を壊してしまう。

 だからもう、要らない。

 

 

「おいおい、固まる程ショックでもねーだろ? 寧ろ俺相手にそんな自殺紛いな真似をしようとするなって話だぜ」

 

 

 白音、黒歌、なじみ、祐斗、元士郎、俺を家族同然に育ててくれたフェニックス家……………そしてレイヴェル。

 俺にとって命よりも大切にしたかった皆はもう居ない……守れなかったが故に皆居ない。 

 ごめんなさい……ごめんなさい……弱かったせいで、奴より弱かったから俺はお前達を――――

 

 

「…………。真顔で断られるとは思わなかったわ」

 

「っ!?」

 

 

 他の誰を洗脳してモノにしようがどうでもよかった。

 俺の大事な人達以外が奴を二つ返事で肯定して祭り上げようが関係なかった……笑って居られればそれで良かったのに……。

 俺は……俺は……。

 

 

「ちょっと兵藤くん? 急に顔色が……」

 

 

 もう、他人との繋がりは要らないんだよ。

 だからその……済まぬが雪ノ下とやらよ、手を差しのべてくれた所悪いが……無理なのさ。

 

 

「っ……と、最近寝不足でね。

昨日も夜更かして入手したエロ本ばっか読んでたからなぁ。

だからよ、フッ……その台詞は俺じゃない他の誰かにでも言ってやると良い。少なくとも……ええっと、雪ノ下みたいな子なら喜ぶさ。特に童貞男子がな」

 

 

 ……はぁ、おいおいおいおいおい、今更になってなぁにをまた思い出してるんだよ。

 何をどう足掻こうが、あのクソ野郎に負けた現実も、目の前で洗脳された現実も覆しようがねぇ現実なんだよ。

 まぁまさかまさかの、なじみとレイヴェルまでとは思わなかったが――あぁ、思い出したらぼくちゃんイライラして破壊テロとかしたくなってきたゾ☆

 あ、やべ、口調が気持ち悪くて吐きそう………おぇ。

 

 

「そんな不潔な輩なんてこっちから願い下げね」

 

「そうだろう? だったら俺に言うべきじゃあ無く、寧ろ今すぐ此所から叩き出すべきだと思いますぜ? こちとらエロ本大好き性欲マシーンですので」

 

 

 ……。まあ、実際にエロ本なんて読んでねーけどよ。

 そんなんしたら保護者の静ちゃんにめっちゃ怒られそうだし、そもそも全然知らねぇ女の裸見ても全く反応できないし、何よりつまんねーしね。

 でもこの場に限った嘘もこの雪ノ下さんとやらには効果絶大だらか使うよ。

 ほら、俺のデリカシー無しのセクハラ台詞にドン引き&蔑みの眼差しを――

 

 

「見くびらないで欲しいわ。

実に私にとって不本意極まりないけど、アナタという人間が下劣な口調とは裏腹に私――いえ何に対しても無関心なのが分かるわ。物凄い腹立たしいけれど」

 

 

 …………。あれ、バレた。

 何で? あ、そういや昔良くレイヴェルに『一誠様は嘘がド下手です』とか言われ―――っえぇい!! 思い出すなバカ!

 

 

「む……む、確かに実際は何も感じないな。

例の件にしたって偶々道に落ちてた小石を蹴ってたら砕けたからって理由で動いただけだし。

でもこれで恩を感じる必要は無いのはわかったろ?」

 

「……」

 

 

 あぁもう嫌になるね! 現実逃避すら儘ならない程の繋がりを持っていたってのは。

 忘れたくても忘れられねーんだから困ったもんだぜ。

 

 しかしこれでわかったろ雪ノ下って子よ?

 律儀に一々覚えて貰って大変光栄なんですが、俺はもう他人の為に本気で動きたくも無ければ、一緒に頑張る仲間も一人たりとも要らねーのよ。

 故にさっきキミから頂いた申し出も丁重にお断りします……はい、終わり。

 

 

「世の中を嘗めきった目に、安っぽいセクハラ言動で遠ざけようとする……アナタって人は随分と卑屈な様ね」

 

 

 俺の突っぱねる言動を受け、奉仕部とやらの部長である雪ノ下は幻滅……いや、何故か哀れむ様な表情で最近買って持ち込んでる携帯ゲーム機に勤しむ俺を見ているのが視線で感じた。ていうか若干見抜かれてる?

 

 

「そうだろうそうだろう? だったら俺と友達なんてならん方が良いって事さ。

見ろよこれ、俺って女の子の前でギャルゲーとかやっちゃうからね?

マイクに向かって『チョーシこいてんじゃねーよ雌豚が』と吹き込んで好感度マイナスカンストさせてバッドエンド狙うからね?」

 

「………………」

 

 

 ……。いや見抜いてるというか、助けて貰った相手に幻想抱いちゃってるって所かね?

 ははは、可愛い子供だねぇ……現実の勇者君はキミの目の前で足を机に投げ出しながらギャルゲーやってるけどね。

 ギャルゲーの面白しろさに関しては実の所微妙にわかんねーけど。

 

 

「それ、アナタに近付こうとする人間を遠ざける為の道具かしら? そうやって無理矢理こじつけて……」

 

「ちげーって、俺のマジ趣味なの。あの……ほら、何だっけ? 夜中にやってるアニメとか凄い見るよ。画面にかじりつくように見るよ」

 

 

 …………。休日の深夜に静ちゃんに無理矢理付き合わされて少年漫画原作のアニメのDVDをクソ見せられるから嘘じゃないよ。

 俺の元・世界でやってたアニメや漫画と微妙にネーム違くてびびったけどな。

 

 例えばドラゴソボールがドラゴンボールとか。

 ツーピースがワンピースだったとか。

 少年ホッピングが少年ジャンプだったとか……。

 

 め、めだ……めだかボックスって漫画になじみと姿と形と名前と人外度ソックリのキャラがい、いた……いたたた……いた……

 

 

『イッセーくんは私の事………好き?』

 

「うるせーぞ雌豚が!! 1度買い物に付き合ったくらいで女ヅラしてんじゃねーぞボケ! 繁華街のド変態に2円で売り飛ばすぞ貴様!!」

 

 

 あ、まずい……思い出したら駄目な奴思い出しちゃった。

 いかん……な、泣きそうになってきたら誤魔化しでボイスイベで誤魔化そう。

 そうすれば雪ノ下さんもドン引き、ゲームもバッドエンド直行――

 

 

『ぁ……ご、ごめんなさい。気安かったよね? ご、ごめんなさい……えへ、えへへへ……♪』

 

【好感度が8からMAX(300)になりました。ティロリン】

 

 

「ハァッ!? 何でだよ!? 毎度の事ながらなんで攻略本の逆を突き進んでるのに好感度上がってんだこのクソゲーが!!」

 

「………………。やっぱり無理してるとしか思えないわよ? 何というか……顔に出ているというか」

 

「んなこたぁ無いさ!! ならアレだ、キミにセクハラでもすれば良いのか!? そしたら嫌ってくれますか!? ねぇ!?」

 

「…………………」

 

 

 クソッ、嘘つくのがこんな難しいなんて。

 何なんだよ、というか雪ノ下とやらも結構変わってるだろ。

 この手は所属してるクラスメート達には効果絶大だったんだぞ? 何でそんな逆に哀れむ様な目なの? やめてくれよ、いっそ死ねって言ってよ。

 静ちゃんもそうだけど変だよ……。

 

 

「ま、マリオに変える。だから話し掛けないでね。クッパ倒すから」

 

「…………」

 

 

 長い黒髪、氷の様な瞳……な、様な気がした雪ノ下とやらに俺は何でも良いから関わるなと釘を刺して無理矢理誤魔化し、彼女に背を向けながら違うゲームをプレイする。

 

 

「…………。平塚先生が連れてきた理由がわかったわ」

 

「………」

 

 

 その際、表情が見えない雪ノ下とやらがそんな事を言ったが、俺は無視で通す。

 キミは知らんだろうけど、俺ってこう見えてアレだもん。結構なファンタジー世界から不本意ながら殺され掛けた挙げ句飛ばされてきたっていう凄い経験してんだぜ?

 ……………。死にかけてた俺を拾った際に、幻実逃否(リアリティーエスケープ)がちょっと暴走したせいで俺の記憶を知っちゃった静ちゃん以外知らないし、他の誰かに教えるつもり無いけどね――おっ、無限UPエリアだ。

 

 

「雪ノ下、入るぞ」

 

 

 それから両者による会話が消えたタイミングを図ったのか、部室の外で盗み聞きしていた静ちゃんが『今職員室から帰りましたよー?』みたいな顔をしながら入ってきた。

 

 

「ですから平塚先生、ノックをちゃんと――」

 

「すまんすまん、いっせ……じゃなくて兵藤の性質(キャラクター)に手こずってる様だな?」

 

 

 その際、雪ノ下……いや、呼び捨ては失礼だし雪ノ下さんが良いか? 雪ノ下同級生……ってのも昔を思い出すから却下だし、やっぱり雪ノ下さんだなうん。

 まあとにかくゲシュタルト崩壊気味ではあるが、入ってきた静ちゃんに対して雪ノ下さんが不満気な声でノックがどうとか言おうとするのを被せ気味に誤魔化し、何か俺のキャラがどうとか……お!? またまた無限1upルート発見!

 

 

「………。基本的に言葉に重みが全く感じられず、此方から歩み寄ろうにものらりくらりと逃げるんです……今だってピコピコやってるし……」

 

「む、何だ雪ノ下? 何故私に不満そうな目を……? まぁ良いかオイ兵藤よ、部活中にゲーム機で遊ぶな」

 

「あ!? 折角の隠しルートだったのに!」

 

 

 部長と顧問の問題なんだろって事でスルー決め込んでいただけなのに、静ちゃんは俺からゲームを取り上げ、雪ノ下さんとちゃんと会話しろアホ……的な視線を寄越して来やがった。

 ……んだよもう。

 

 

「どうしろってんだよ? 静ちゃんも盗み聞きしてたら知ってるだろうけど、結局何なん? 俺と雪ノ下さんをダチ公にさせるのが目的な訳?」

 

「………。な、何の事だか分からんし、初耳だぞ。

しかしこの際だから雪ノ下と友人になってみたらどうだ? ほれ、雪ノ下は美少女だぞ?」

 

「知らねーよ。美女なら静ちゃんで見飽きてらぁ」

 

 

 何だよその美少女だからとかって理由は? そんな理由でダチとか雪ノ下さんが嫌いなパターンじゃねーかよ。

 そうで無くても嫌だし、言い方が悪いのは自覚してるからそんな睨むなって雪ノ下さん……あれ、静ちゃんも睨んでるのか?

 

 いや、どっちでも良いけど、つくづくお節介な保護者だぜ……まったく。

 

 

「だからゲーム機返して?」

 

「放課後になったらな」

 

「チッ……けちんぼ」

 

 

 

 

 今更また思い知った事が一つ。

 拒絶される事がこんなに辛いことだったなんて……。

 

 

「その静ちゃんと呼ぶのは止めろ、此処では私は教師だぞ」

 

「じゃあ静てんてーと……」

 

「ふざけるな、当然却下だ」

 

 いえ、醜い嫉妬やら何やらを受けた経験もあるし、今更だとは思ってたけど……アナタも私が拒絶してしまった時はこんな気持ちだったの?

 チクチクと針で心を突つかれるような……こんな。

 

 

「勿論強制するつもりは無いが、それでも部員となったのならそれ相応の態度をしろ。

…………。かつてのお前はそうでは無かっただろう?」

 

「……。チッ、忘れちまったよそんなくだらねー事は」

 

 

 …………。それにしても、やっぱり平塚先生と兵藤君って距離が近いのではないかしら?

 今だって私を放置してひそひそと何か話をしているし、幻聴じゃなくやっぱりハッキリと静ちゃんと呼んでたし、平塚先生も一瞬だけ兵藤君を下の名前で呼ぼうとした疑惑があるし。

 

 

「こほん……良いかしら?」

 

「「む?」」

 

 

 何か腹が立つわ。

 原因は解らないけど、おいてけぼりを食らってる今の状況含めて実に腹立たしわ。

 

 

「こうまで否定されると悔しいわ。

だから、何がなんでもアナタと友達に――寧ろアナタの方から膝付いて懇願させてあげる事にしたわ」

 

 

 腹立たしいから、もう遠慮もしないし啖呵も切るわ。

 

 

「……。と、雪ノ下はそう言っているが?」

 

「悪いけど、申し訳程度にすら揺らがねーや」

 

「…………くっ」

 

 

 その嘘っぽいヘラヘラ顔も剥がしてみせる……絶対に。

 

 

 

 そんな訳で何故か雪ノ下雪乃から『友達にさせてやる』と宣言された兵藤一誠はほぼ自動的に奉仕部へと加入させられてしまってから明くる日。

 

 基本的に平塚静の言うことならある程度借りがある理由で聞き入れてるので、学校も無遅刻無欠勤の成績上位という地味なる優等生で通しているのだが……。

 

 

「…………」

 

 

 ヤサグレてしまった今の一誠に、かつて生徒会長としの一誠は完全に消し飛んでおり、自分の所属するクラスでは基本独りであった。

 

 

「それでさー」

 

「っべーじゃん」

 

「へぇ、あーしも真似しちゃおうかな?」

 

 

 休み時間だろうがお昼休みだろうが何だろうが……かつての一誠とは思えない腑抜けっぷりで絶賛孤独街道を爆進しており、そんな一誠を気に止めるものは『ある意味で』存在しなかった。

 ……。いや、正確に言えば『関わろうとはしない』といった方が正しいか。

 

 かつての様にお昼休みを美少女達や友と一緒に食べることも無い。

 生徒会長として学園内を見回ることも無い。

 笑い合う人も居ない。

 

 何もかも今の一誠少年には無く、あるのは師から教えられた生きる為の技術と、無限に成長し続ける異常性・世界の真理すらも否定して書き換える過負荷と呼ばれる二つの異能。

 

 そして、最後の最期で悪足掻きとばかりに奪い返した本来持つべきだった力の一部が、腑抜けとなってしまっても尚意思とは無関係に一誠を永遠なる高みへと人知れず引き上げていく。

 

 故に一誠は孤独だ。

 元々、この世界にレイヴェルの様な悪魔もコカビエル様な堕天使も、白音・黒歌姉妹の様な猫妖怪も、ミカエル様な天使も居ない。

 そういう輩は皆創作物での存在であり、現実には存在しない。

 

 だからこそ、そんな世界で一誠の様な人外じみた力を持つもの居ないし、居ても無用の長物……もしくは『恐怖の対象』だ。

 この中の誰も口に出すことは無いが、お昼休みとなり、各々クラスメート達が友人同士で食を囲んでいるにも拘わらず、雲行きの怪しい空を見ながら自前のお弁当を孤独に食べている一誠に近付く者は居ない。

 

 理由は一つ。

 一誠がデフォルトで発している、常人には決して無い異常じみたナニかを本能的に察し、それに恐怖しているからだ。

 故に誰もが一誠を『居ないもの扱い』することがクラスでの不文律となっていた。

 まあ、その一誠の目の前の席に座る一人の男子生徒もまた誰とも関わろうとしていない人間だったりする訳だが……それはまた後の話になるだろう。

 

 

「……。あ、ねぇキミ。そこに落ちてる消ゴムってキミのじゃないのか?」

 

「(ビクッ!?)っ……ぉ……あ……! う、うっす……ども……!」

 

「ん」

 

 

 一誠とその男子生徒は互いに『お隣さんの席の人』程度の認識なのだから。

 

 

「……。(あ、帰りに食材買わないと静ちゃんに作る飯が作れない)」

 

 

 そんな訳でクラスで絶賛敬遠されまくり学校生活をそれなりに送っている自称・クソ負け犬イッセーくんこと兵藤一誠は、自分をただただ損得勘定なしで保護してくれた教師・平塚静に作る晩御飯についてぼんやり考えながら、昨晩の残りで作成した自作弁当をチビチビ食べていた時だった。

 

 誰も一誠を見ない。

 次いでに言うと雨が降り始めた外を窓から忌々しげに睨みながらチビチビお弁当を食べてる死んだ目をした男子生徒も関心が向けられない。

 

 通称・教室のお墓……等とクラスの誰かが名付けたツートップボッチの席での昼食は今日も滞りなく終わり、前席の男子生徒はこのまま顔を伏せて睡眠、後ろの一誠は堂々と音量最大での平然真顔ギャルゲープレイをして平和に時が流れる予定だったのだが……。

 

 

「お、おい……アレって国際教養科の雪ノ下さんじゃね?」

 

 

 平和に凄いしてい2年F組の教室内に居た誰かが教室の入り口に向かってそんな声を出す。

 その声にボッチツートップ以外の視線が自然と入口へと向けられ……そして誰かが言った事が本当だったと知り、更に驚く。

 普通科よりも偏差値が若干高い国際教養科で最も優れた成績、男子達の目を釘付けにする美貌を持つ雪ノ下雪乃が、氷の様な無表情でそこに居たのだ。

 

 驚くし、そもそも何で来たのか分からないクラスの生徒達はヒソヒソと話始め、クラスでの地位が最上位に位置する所謂リア充軍団もまた頭に?を浮かべ、そのリア充軍団の中でも中心的人物であるとある男子生徒はギョッとした顔だった。

 

 

(なんだようるせーな。

後ろの席に居る兵藤は大音響でギャルゲーやってるし、外が晴れてないせいでこんな所に居なきゃなんねーってのに、それもこれも天気が悪いせいだ)

 

「………。(よし、次こそここの選択は3の『豚が服を着ても豚だよ、このブサイクが』で間違いないな……くくく)」

 

 

 しかしそれでもボッチツートップである二人の男子生徒は、片方が内心毒づきながら顔を伏せたまま、片方はちょっと静まり返ってる教室内でも平然と大音響のまま、バーチャルヒロインのボイスを垂れ流しながら色々とアウトな選択をしようと独りニヤついていた。

 

 それがまた雪ノ下雪乃という存在と相まって変な緊張感を演出しており、3番の選択をしたというのに画面のヒロインが顔を赤らめて好感度がカンストするSEが鳴ってしまい、思わずゲーム機ごと握りつぶしてしまいそうになっていた一誠はツカツカと近付いてきた彼女に気付いても無視をしていた。

 

 

『ちょ、おい……あの化物に近づいてね?』

 

『何の為にだよ? 接点とか絶対無いだろ?』

 

『やべーよ……パネェよ、何か知らねーけどクソパネェよ』

 

「………」

 

 

 その際、一誠のクラスメートからの一誠に対する態度を生で聞いた雪乃は、先日聞いていたのとまんま同じクラス位置な事に若干眉間にシワを寄せながら、気付いてるのに無関心顔でゲームをしている一誠の席の目の前まで来ると……。

 

 

「昨日の続きの事……その様子だと聞いてたフリをしてた様ね? 私、部室でずっと待っていたのだけど?」

 

 

 ゾッとするような、少なくとも教室内の体感温度が5℃は下がっただろう冷たい殺気を孕ませた能面顔でピコピコとやってる一誠に対し、何やら誤解をされかねない一言を発した。

 

 そしてやはりその言葉にクラスメートがざわめき、然り気無く寝たフリをしていた前席の男子生徒も顔を伏せたまま驚いた。

 

 

「約束と障子は破るためにある……なんてお惚け噛ますつもりは無いけど、少なくとも俺はそんな約束をした覚えは無いな」

 

 

 そしてもっと驚いたのは、視線こそ携帯ゲーム機に向けられたままだが、化物こと兵藤一誠が平塚静以外に対して会話を完全に成立させた事だった。

 しかし雪乃はそんな有象無象連中の反応なぞ知らぬとばかりに、ピコピコピコピコやってる一誠を視線だけで殺せそうな凍てつきまくりな目で睨むや否や、そのまま一誠が手に持っていた携帯ゲーム機をひったくるかの様に取り上げた。

 

 

『あぁん、もう私はイッセー様の罵倒でしか生きられません! ど、どうか……どうかこのいやらしい雌をイッセー様の専属雌奴隷に―――ブチッ』

 

『……………』

 

 

 なんつーものをやってるんだコイツは……とゲーム機から聞こえる女性ボイスにドン引きしまくりなクラスメート+前席の男子生徒を余所に、無慈悲にゲーム機の電源を切り、オマケにバッテリーまで引っこ抜いた雪乃は、あーぁと言いながらも全然残念そうに見えない一誠をこれでもかと睨み、口を開いた。

 

 

「予鈴まであと35分42秒はあるわ。

約束……守って貰うわよ?」

 

「へぇ、昨日あれだけ言って上げたというのに、キミも中々強情だねー?」

 

 

 え、昨日? 昨日に何が? と、クラスメートはますますただ事には思えない両者の空気に当てられながら声を発せず固唾を飲むのを背に、雪乃は妙に勝ち誇った顔で手入れの行き届いている長い黒髪をかき上げながら言った。

 

 

「私をそこら辺の人と一緒にして貰うのは心外だわ。

言ったでしょう? アナタの方から私に向かって土下座して『あの言葉』を言わせるって」

 

「それなら昨日御丁重にお断りしましたが?」

 

「記憶力が無いのかしら? 私はその後意地でも膝付かせると言った筈よ。

そうで無くても、アナタは奉仕部の平部員で私は部長。

故に上司の命令は絶対なの……お分かりかしら? この嘘つき兵藤くん?」

 

「エラい横暴だねー……。静ちゃんとタメ張れるんじゃねってくらいには強引というか……何でわざわざ俺なんだよっつーか、非常に迷惑というか」

 

「教室内でこんな如何わしいピコピコを大音響でやっているアナタには言われたくないわ、このアブノー藤くん?」

 

 

 

 

 

 

『……………』

 

 

 え、何この状況? take2

 学年最優者と、得体が知れない化物が良く解らないけど会話をしている。

 最早誰もが一誠と雪乃のやり取りを見ているだけしか出来ず、一誠の前の席で寝たフリしている男子生徒は流れで集まってる他人の視線に胃が溶けそうなストレスに襲われていたりと……イレギュラー極まりない状況は尚も続く。

 

 

「あーぁ……チッ、厄介で面倒な奴に目ェ付けられちゃって俺も可哀想に……へーへーわかりやしたよ雪ノ下部長。

無駄で・無意味で・無利益過ぎる事に努力振ってるキミの現状を真正面から否定する為に付き合ってやらぁ。

取り敢えず後29分25秒と本日の放課後にな」

 

 

 そして根負けでしたのか、ダラダラと席から立ち上がった一誠は、自分より頭一つ分程小さい雪乃に皮肉めいた笑みを浮かべながら言い、雪乃は勝ったと小さく呟きながら『良い笑顔で』満足気に頷き、何故か手を差し出す。

 

 

「よろしい。

ふふふ……強情なアナタを小さくとも屈服させるのは実に清々しいわね」

 

「あっそ……で、その手は?」

 

「昨日の続き――では無く、部室までお詫びとしてエスコートなさいって意味よ。それくらいアナタでも可能でしょう?」

 

「……………。エシルねーさん――いや、昔居た知り合いみたいな強引さだな。

……。過負荷(マイナス)には過保護とは誰が言ったものか……天然でやってんだろうがこの子は」

 

 

 何の意味があってなのか、エスコートする意味すら解らないけど一誠は、雪乃のこの強引さに過去の記憶がほじくり返される気分になり、思わず目を逸らしつつ毒づいた。

 しかるに一誠の独り言がイマイチ小さくて聞こえなかった雪乃は首を傾げつつズイッと綺麗な手を差し出すままだ。

 

 

「何を言ってるのかしら? 早くしなさい。時間は有限なのよ?」

 

「チッ、この小娘……。

いっそ『俺の名前を聞いただけで吐くくらいのトラウマ』でも植え付けちまうか? いや、静ちゃんに怒られるか……あぁ、怠い」

 

「ちょっと兵藤くん? 手を――」

 

「ガキじゃねーんだからテメーで歩いて貰えますかね雪ノ下ぶちょー? 俺、友達か好きな奴以外の手を無意味に触りたくないんで」

 

「あ、ちょっと……!? くっ……こうやって強引に押し掛ければゴリ押し出来るって平塚先生の言ってた事は本当だったけど、まだまだ道のりは遠いわ。待ちなさい、私を置いていかないで」

 

 

 雪ノ下雪乃……という平塚静に勝る扱い辛い人間の登場に一誠は面倒そうに頭を掻き、結局差し出された手を取らずズカズカとクラスメートの視線を無視して教室を出て行くと、雪乃も不満そうにしながらそれに続いて出て行った。

 

 そして残ったクラスメートの誰かが一言……。

 

 

「意味わかんねーけど……パネェ」

 

 

 接点も想像もつかない意味不明な組み合わせのやり取りをそう評し、言葉に出さなかったものの他のクラスメート達もまた内心同意したそうな。

 

 

(………。えぇ……? 兵藤ってボッチじゃなかったのかよ? 小町……お兄ちゃんの心の師匠は半リア充だったよ……)

 

 

 無論、ツートップボッチの片割れ少年も寝たフリをしたまま。

 

 

 

 

「さぁ、まず一つ目。何故アナタは平塚先生を静ちゃんと呼ぶのか……実に興味深くて私はその理由が知りたいわ」

 

「え? それは――」

 

「二つ目、アナタって女子を下の名前で呼ぶことに抵抗が無さそうだけど、その心は?」

 

「え、あぁ……まあ、それなりに関わりが多くなる人なら別に――」

 

「三つ目。部長と部員という関係は果たして関わりが薄いのか? 私は違うと断言するわ。

よって今この瞬間を以て雪ノ下部長なんて長ったらしい呼び方では無く、平塚先生みたいにちゃん付けでもなく、普通に名前を呼び捨てで――」

 

「……………。早くお弁当食べたら? ていうか、答える前に食い気味に別の質問しなくて良いと思うというか……」

 

「呼び捨てで名前を呼んだら食べるわ。

呼ばない限りは食べないし、食べなかったら私は午後の授業に突然倒れるわ。

そうなったら私は先生に『普通科クラスの兵藤くんにお弁当を食べさせて貰えませんでしたと』訴えるわよ」

 

「……。別に怒られる事に怖がってるつもり無いから構わねーよ。つーか、何を必死なのかが不明なんだけど」

 

「必死? 私は必死になんてなってないわ。

新入部員が教室で友達も出来ず、一人でピコピコとやってる姿を見て哀れ哀れで仕方無いと思いつつも、如何わしい内容のピコピコをやってニヤニヤするような異常性欲者の毒牙に他の女子が掛からない為、この私が自らが生け贄となってアナタの友達になろうとしてあげるのよ。どう? 優しいでしょう? 嬉しいでしょう?」

 

「…………………………。俺、こんな理不尽なこじつけをドヤ顔で語る人初めて見たわ……マジ一遍潰してしまうか? そしたら二度と関わろうとも思わなくなるし……うーん」

 

 

終わり




補足

過去を思い出すとガチで凹んでしまう。
そして色んな意味で強引な所を見せる雪ノ下さんを見てると地味に思い出してしまう悪循環。

その2
殆ど意地で一誠に拘るその理由は……他の人間が一誠の気質を本能的に恐怖したとは逆に、彼女は二人目となる『一誠の持つ本来の気質を本能的に感じ取り、そして惹かれた』てな感じです。

 まあ、一誠本人に鬱陶がられてますけど。


データー。

 二度に渡り完全敗北した人外。

兵藤一誠。
年齢・17歳(成人を迎えた瞬間、老化が止まって完全な不死生物と化す)
所属・総武高校奉仕部員。

 全てを奪われても尚死なず、まるで違う世界へと流れ着いた人外。
 その人外さは、その気になりさえすれば2日も掛からず世界を征服することが可能であり、そして尚も成長中……いや、永遠に成長中。

 転生者との最後の戦いに負け、世界を追い出され、死にかけて倒れた所を平塚静という只の人間に拾われてから彼の奇妙な運命は動き出す。

 特に、性格も性別もやり方も違うけど、生徒会長だった自分のような信念を心の底に持つ氷の様な少女との邂逅は、生きてる屍と化した彼に何をもたらすのか……それはまだ解らない。

※現在、その彼女からめちゃくちゃマークされてる。


 一誠を人外たらしめる理由。

 その1・無神臓(インフィニットヒーロー)

 名の通り、一誠が獲た経験・技術・身体能力からなにから全てを永久に進化させ続ける切り札の一つ。
 これがある限り、一誠にはRPGゲームで言うところのレベルMAXの概念が存在せず、無限に成長し続ける。

 裏技として『お互いに信じ合える人を獲た場合、その信じた人すらも進化させ続ける』という……簡単に言えば『一人真・フラスコ計画』が可能。


その2・幻実逃否(リアリティーエスケープ)
 ご存知……現実を否定し、自分が浮かべた幻想に書き換えてしまう過負荷(マイナス)

これもまた、世界を壊しかねない危険なスキルだが、一誠は基本的にこれをマイナスなのにマイナスじゃない使い方しかしない。

例えば、ちょっと昔拉致られた雪ノ下さんを気紛れで助けた際に負った傷を否定して消したり。
 実はその時ちょっと怪我をしていた雪ノ下さんをこっそり治したりとか。

 基本的にその気になれば自他共に『死という現実を否定し、死ななかった事にする』事も可能。

ただし、自分の場合は自動的に発動してしまうので、自殺しようにも出来ないという今の一誠にとっては最悪のデメリットが存在する。


最後の最期で転生者から奪い返した力の一部。

赤龍帝の籠手(ブースデッドギア)(脱け殻)

 ご存知、兵藤一誠を兵藤一誠たらしめる神器なのだが、倍加の力しか使えずドライグも宿ってない。

 ぶっちゃねけると単なる張りぼて。





最期
すいません、感想は貰うと嬉しいのですが、話に関係あるような感想というか……はい。




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