色々なIF集   作:超人類DX

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ちょっとしたリブートみたいなネタです。

中身は――ご存じの方は多分わかる。




※冗談めいたリブート

 これは少女に過去でもあり、思い出とも云うべき話だ。

 血筋なのか、それとも少女自身の内面を示唆してるのか、彼女の目付きは幼少の頃から頗る悪く、それに加えてあらゆる事を知り尽くしたいという知識欲という建前の『病気』のせいで常時餓えていた。

 

 この病気のせいで、何にもしなくても恵まれた生活か

保証される家系に生まれた幸運があったのに、少女はそんな生活すらも、その知識欲という建前の病気のせいで幸福とは思えず、衝動に付き従うかの如く全てを、家族も兄妹も何もかも棄てて、本当の地獄を求めて外に飛び出した。

 

 当時まだ10歳にも満たない少女の考えとしてはまさしく異常。

 地獄を見ることでより理想的な答えを導き出せる――それが少女が見出だした一つ目の答えであり、その為には今の恵まれた環境が邪魔だったのだ。

 

 だから少女は着の身着のままで家から飛び出し、自らその身を地獄に突き落とした。

 屋根のある部屋で安眠は出来ず、その日の食べ物の確保すら難しいホームレスみたいな生活すら、素晴らしき答えの為の糧でしかないと自分に言い聞かせて……。

 

 だが、少女にとっては正解だと思い込んでるその選択が果たして本当に正解だったのか失敗だったのか……。

 薄汚れた生活をしてやると意気込んだその直ぐ後に少女は出会ってしまったのだ。

 

 

『ちくしょうめ、マジでお前は良いよな?

恵まれた環境に居ときながらクソ贅沢な選択が出来てよ。

名前があるだけまだマシなのに、なぁにが地獄だってんだ……甘えてんじゃねーよこのタコ』

 

 

 自分だけがと思っていた更なる地獄を既に経験し、それでも尚死ぬことすら許されなかったとある少年。

 年の頃は自分と変わらず、薄い茶髪で顔立ちまぁまぁ整ってるその少年もまた自分と同じで帰る家が無く、更には親も居ないらしい。

 そこら辺の虫や雑草で食いつないで生きていたらしく、偶然今日の根城を探してフラフラしてた少女が立ち寄り、これまた偶然彼が根城にしていた領域(テリトリー)で寝泊まりしていた所で出会ってしまったこの現実が……。

 

 

『名前と居場所と両親と――自分という個すら奪われてから出直したまえ。

今のキミはただ単に"地獄が見たい"なんて勝手に意気込んでるだけで、普通に空回ってるクソガキだよ』

 

 

 何処までも自分以上に異常で、何処までも暗くて、なのに真っ直ぐした目を持つ矛盾した少年に見下された言葉を吐かれた少女は……。

 

 

『そんな目で見たってこのパンはやらんぞ!

そもそも俺に近付いて良いのは、おっぱいの大きい女子高生以上の女の子だけであって、お前みたいな勝手に一人で世間を知り尽くしましたって思い込んだひねくれた目をしてる餓鬼じゃないの!』

 

『……』

 

『くっくっくっ、それにしても腹空かせてる奴の目の前で食うパンは美味すぎるなァ? そうは思わないかドライグ?』

 

『ガキかお前は――いや、ずっとガキだったなお前は……』

 

 

 どっかのアニメみたいな力を持ったちょっと意地悪な少年に興味を持った――――いや、持ってしまった。

 コイツの近くに居れば自分の求めるものが手に入る気がする……。

 そんな本能に従うかの如く、あからさまに嫌そうな顔をした――龍を宿す少年の背中を10年以上も追いかけ続けるのだった。

 

 

 その間、少年は当初こそ色々とひねくれちゃった少女を相手にしようとはしなかった。

 少年自身の過去が理由で、自身が信頼する者以外に対してはどこか壁を作る態度をするのと、なるべく自分に関わらせたくはなかったからだ。

 

 けれど少女はそんな少年の露骨に嫌そうな態度を無視してでも少年の後を追ってきた。

 それはまさに執念ともいうべき凄味であり、少しずつ少年もその執念に免じて、少女に対する助け船を出すようになった。

 

 まあもっとも、常人から見れば少年も少女もまさに異質だったが為に、気楽なやり取りが出来る相手が少年にとってもこの少女しか居なかったからだというのもある。

 

 だからこそ少年は地獄を知りたがる少女に対して、自分なりの生き方をそこそこ示しながら、なんやかんやで共に生きた。

 

 その結果どうなったか―――

 

 これはそんな話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレには親友が居る。

 その親友とは中学生の頃からの仲であり、普通の気質に隠れた異常に対する異常な執着心が気に入ってツルむ様になった。

 私を改造(メチャメチャ)にして! だったか……? ある時オレの前に現れて真面目な顔でそう言った親友に思わず吹き出しそうになったが、それ以上にオレとしても欲を満たす実験体(モルモット)が欲しかったし、言われた通り滅茶苦茶にその身体を弄くり回してやったよ。

 

 その結果、その親友は所謂改造人間になった。

 オレが常に間近で見ていた"アイツ"の異常を通り越した身体能力を参考にして作り上げたオレの大好きなその実験体(しんゆう)は、今じゃすっかり此方側だ。

 

 

「そら、調整が終わったぜ古賀ちゃん」

 

「ん~ ありがと名瀬ちゃん!」

 

 

 オレには"アイツ"みたいな身体能力は無い。

 地獄を知るために全てを捨てたつもりだったのに、結局はアイツにおんぶに抱っこだった。

 だからなのか、オレには不可能だった事をこの親友に自己投影として託したのかもしれない。

 まあ、この親友こと古賀いたみに施した改造でも"アイツ"の億分の1未満なんだが……。

 

 

「よーっし! 今日こそ私と名瀬ちゃんの親友パワーで彼を倒しちゃうもんね!」

 

「…………」

 

 

 名瀬妖歌。それが今オレが名乗っている名前。

 栄養ドリンクを飲みながら意気込む古賀ちゃんを無言で見つめながらオレは名瀬妖歌として今はアイツを引き続き追い掛けている。

 

 オレ以上に異常で、オレ以上に最低で、オレ――いや誰よりも人間としての枠を外れた生粋の異常野郎。

 オレが見ようとしていた地獄を鼻で笑って小馬鹿にし、オレがその為に全てを捨てたという話も鼻で笑って見下しやがった女好きの変態野郎。

 顔とスタイルの良い女の前では只のバカになる分かりやすい性格してやがるくせに、その真の内面だけは余程信頼した相手では無ければ悟らせようともしない臆病野郎。

 

 

「襲撃・ライダーきーっく!!」

 

「んぁ? うるしゃい――――ぶっべらぁ!?」

 

「………………」

 

 

 霧島一誠……。

 戸籍が存在しない異常者野郎。

 それが腹立たしい程高い壁として立ちはだかってくれる――オレにとっては最初で最後の『同類』であり……。

 

 

「な、何事っ……いっででででで!?」

 

「ライダー腕十字固め!!」

 

「よぉ一誠くん。

今日もお前の大好き巨乳女の子が二人も遊びに来たぜ?」

 

 

 汚かろうが生き続ける貪欲さをオレに叩き込んだ親友以上のナニかであり、只今(ヤサ)に襲撃かまして古賀ちゃんに腕の関節キメられて悶絶してる男のこそ、オレが今最も解体してやりたい奴だ。

 

 

「よーし古賀ちゃん、そのままキメてろ、その内にオレがコイツの筋繊維を解剖して調べて――」

 

「図に乗ってんじゃねーぞ……この小娘共がぁぁぁっ!!!」

 

「うっ!? か、肩の関節を――ぎゃん!?」

 

「っ……古賀ちゃ――ぐぅ!?」

 

 

 そして今日の襲撃も、滞りなく大失敗したぜ。

 

 

 

 

「カエレ」

 

「「……」」

 

 

 ある程度成長したお陰で社会的信用をある程度得られる年齢までになったアイツこと一誠が、今生活してるマンションの部屋にオレと古賀ちゃんは暇さえあれば襲撃してるんだが、ほぼ100%の確率でその襲撃は失敗する。

 コンクリ程度の強度なら余裕でぶち壊せる腕力を持つ古賀ちゃんの関節技を意図も簡単に外した処か、即座に反撃して沈められ、今日も仲良く頭に一発貰って床に正座をさせられてしまうのも最早御約束って奴だ。

 

 

「ま、また負けちゃったよぉ名瀬ちゃん……」

 

「仕方ねーよ古賀ちゃん。

一切顔色を変えずに、腕と肩の関節外して古賀ちゃんの技から抜け出す様な奴だ……今度は腕を引きちぎる勢いでやらねーとな」

 

「う、うん……! 次は頑張るよ!」

 

「………。反省の色がまるで見えず、それどころか腕を引きちぎるとかふざけんなしバカ野郎」

 

 

 ヒクヒクと口の端っこを痙攣させて怒りを抑えながら、襲撃失敗の反省会を古賀ちゃんとしてるオレを見る一誠。

 当然の事ながら、既に正座なんてしてないというか、反省の色なんて見せた事なんてオレも古賀ちゃんも無いのはコイツもよーく知ってる話だ。

 

 

「ハァ……。

折角おっぱいハーレムの夢を見ていい気分だったのに、全部お前等のせいで台無しだぜ」

 

「……」

 

「相変わらずそればっかだね……」

 

 

 どうやらコイツにとっては天国みたいな夢を見て、それを邪魔された事に不満があるらしいので……。

 

 

「ザマァ見ろばーか」

 

 

 取り敢えず普段からオレと古賀ちゃんはコイツにおちょくられてるので、その恨みをちょっとくらいは晴らそうと、包帯で隠した顔のまま口元を歪ませて煽ってやる事にした。

 すると一誠はオレの煽りを耳にするや否や……。

 

 

「そんな見え透いた煽りには乗らねーぜ、この似非シャイガールめが」

 

 

 逆にオレの考えを見通してますと言わんばかりの半笑いな笑みを見せてきやがった。

 ヤバイ……凄いムカつく。

 

 

「おしとやかで巨乳なおんにゃのことは未だに仲良くなれず、知り合いと言えば電波で精神マゾな包帯女と見た目以外はマウンテンゴリラな女…………マジで人生って儘ならねぇよな」

 

 

 ハァ……とわざとらしく落胆したため息を吐きながら口調とは裏腹に小綺麗に掃除の行き届いてるリビングで勝手に寛ぐオレ達を罵る一誠だが、そう言ってる割りにはオレと古賀ちゃんに茶を出す辺り、昔から律儀な面は変わってない。

 

 

「オメーがさっさと箱庭学園理事長の申し出を受けて十三組に入れば、家までわざわざ押し掛ける真似なんざしねーよ」

 

「そーそー! 理事長に言われて唯一交遊関係が深い私と名瀬ちゃんがこうして直接フラスコ計画にスカウトしに来てるのに、イッセーくんはいっつものらりくらりなんだもん」

 

 

 じゃ無くても襲撃なら毎日するがな……。

 そう内心呟きつつ、一誠からぶっきらぼうな態度で出された茶を古賀ちゃんと飲みながら話すと、その一誠はあからさまに嫌そうな顔になっていた。

 

 

「まーたその話か。

嫌だね、お前等含めて『変人集団でございます』なグループに入ったらモテる気が益々無くなるぜ」

 

 

 だからパス。

 あの理事長に言っとけ、普通の巨乳美少女10人のグループ作ってくれんなら考えても良いが…………ぐぅぇへへへ! とドスケベな顔して言い切る一誠にオレも古賀ちゃん呆れてしまう。

 

 オレ達が通う箱庭学園は一見すれば単なる人数が多いマンモス校に見えるが、その裏ではオレや古賀ちゃん――そしてこの一誠が見せる人としては異常なナニかを解析し、ゆくゆくは天才を量産させるという理事長のエゴ丸出しな計画と研究を日や続けている秘密結社みたいな高校だったりする。

 

 んで、その計画に参加する条件として分かりやすく一組から十三組の中の十三組所属の生徒のみが可能であり、オレと古賀ちゃんは十三組に一応所属しているのだが……。

 

 

「お前等の言う普通(ノーマル)クラスの女の子の方が絶対可愛いからな。

つーか、テメー等の事を異常(アブノーマル)とほざいちゃう時点で無いわ……」

 

 

 この一誠は本来なら文句なしの十三組で異常者(アブノーマル)でドスケベな癖に、『普通の女の子とお近づきになりたい』という、ある意味健全でありつつもふざけた理由で理事長やオレ達の勧誘を毎回蹴っ飛ばしやがるんだ。

 今だってオレと古賀ちゃんという十三組を見ながら『姿もアブノーマルだしよ』と軽く小馬鹿にしてきやがるし。

 

 

「テメーに比べたらオレと古賀ちゃん――いや十三組の十三人(サーティンパーティ)のメンツすら霞むと思うがな。理事長も『今までの中で最も異常な生徒だ』と年甲斐もなくはしゃいでたし」

 

「そうそう! 加えて王土センパイが対抗意識燃やしちゃって大変なんだからね?」

 

「王土? あぁ……あのサイヤ人みたいな髪型したセンパイさんね。

そんなのに対抗意識燃やされても……嫌すぎるわ」

 

 

 俺様王様な十三組の先輩の話を古賀ちゃんが出した途端、さっき以上に嫌そうな顔になる一誠の異常性はまさしく異常でも取り分けぶっ飛んでいる。

 さっきの王土って人……つまり都城先輩の人身支配の異常性を真正面から受けてもヘラヘラ笑いながら『スーパーサイヤ人でもめざしてんすか? かっけーっす(笑)』と煽るわ、高千穂先輩の異常な反射神経からくるオートパイロットも真正面から『ウィィィィィ!!』なんつーどっかのレスラーみたいな奇声を発しながらラリアットで迎撃するわ……。

 いっそオレがその場で解体して調べ尽くしてやりてーほどにコイツの異常は異常だったりしやがる。

 

 

「奇人変人より普通の女の子だわ。だいたい、この前見た平戸ロイヤルっつーのは何なん? 意味不明過ぎんだろ……目を覆ってる布ひっぺがしたら意外とアリな顔してたけど」

 

「うわ、イッセーくんってばサイテー」

 

「女子の衣服ひっぺがすとかレイパーだサイテー」

 

「服じゃねーよ! 目元を隠してた手拭いみたいな布だっつーの!」

 

 

 だがそれ以上に、コイツの中には嘘みたいな存在まで居やがる。

 オレも当初はまさに『嘘だろ……』と茫然自失となった程の存在は多分今のところはオレだけが知っていて古賀ちゃんもまだ知らない。

 今でこそ思うが、だからこそオレはコイツを追っかけて来たんだと思う。

 

 仮想検体名『死徒不明(デス・アンノウン)』。

 それが一誠の異常性を唯一言葉にするものだ。

 

 そして赤龍帝という本当の正体も。

 

 まあ、それだけではなくて、学園側や古賀ちゃんにすら内緒にしてる話で、昔コイツが死にかけていたオレを『死にかける現実を否定して超健康な幻想に逃げる』とか呟いた途端、本当に何事もなく復活させたという、ゾッとしないエピソードもあるんだが……。

 

 

「十三組に入れば登校義務も無いし、フラスコ計画に協力したらお金がガッポガッポなんだよ?」

 

「おあいにく様、餓鬼の頃と違って金に困ってる事は無いし、学校に通うのが楽しみな俺に登校義務無しの条件出されても意味ねーぜ」

 

「なら、これからも襲撃はやめられねーな。理事長に言われてる以上こっちもオメーを勧誘し続けねーとならねーし」

 

 

 傷や病気を一瞬で他人のだろうが消すという、説明がまったく付けられない異常性と、もうひとつ……古賀ちゃん曰く『戦う度に『慣れた』と言われ、更に強くなって結局は叩き潰される』という異常性。

 どちらかが一誠が持つ異常性を応用したのもなのかは知らないが……コイツを知ることでオレの欲が満たされていくのは間違いないのでこれからも付きまとわせて貰うし、正体を知るのはオレだけで良い……。

 

 

「あーぁ、試験パスで入れてくれるって話にホイホイ乗るんじゃなかったぜ……。

まあ、普通科の女の子は皆可愛いから悪くねーけど」

 

「む……それしか言わないけど、私と名瀬ちゃんは可愛いと思わないの?」

 

「はぁ? ……ふへ!一人は小学校の高学年前に素顔を隠し始めた似非シャイガールで? 一人は中学の頃にいきなり『私を滅茶滅茶にして!』とか教室のど真ん中で呑気に読書してたコイツに言った痴女スタイルの女だ?

ふっはっはっはっ、いくら作りが良くても無いわ……いや、ありえねーわ」

 

 

 オレの人生観をねじ曲げてくれた仕返しは絶対にしてる……。それが今の生きる理由だ。

 

 

 

 霧島一誠

 血液型:rh-AB型

 所属:箱庭学園二年二組

 

 備考:十三組面子からも更に異常者扱いされてるかつての赤龍帝・兵藤一誠。

 

 

 これは、全てを失いその世界から相棒のドラゴンと共に身を消したつもりが、何故かそのまま別世界で生きる嵌めになった少年と、その少年にシンパシーを感じて付いてくる、自ら全てを捨てたつもりの包帯ガールと親友の改造人間少女との日常……。

 

 

 

「そんな話はどうでも良いとして、つー訳で今日も襲撃を失敗したオレ達の脳天に一撃寄越せや一誠」

 

「え゛? わ、私は嫌だよ名瀬ちゃん……」

 

「ん……ならオレだけで良い。失敗した報いは古賀ちゃんの分までオレが……」

 

「いや待てよくじら――じゃなくて妖歌さんよ。

毎度俺にお前を殴らせる意味はなんなん?」

 

「深い意味はねーしこちとら戒めのつもりだけだから早くしろ、出来ればキツくてズキズキと脳細胞をぶち壊すというか頭蓋骨が陥没するほどの一発いや二発くれや 早く……速くしやがれ!」

 

「………。いやごめん、そんな脳天こっちに向けてスタンバられても嫌なんですけど」

 

「な、名瀬ちゃん……」

 

 

終わり

 

 

オマケ・サイコロテスト

 

 

 理事長曰く、異常な人間は日常の何気無い所にもその性質が出てしまうとの事らしく、それを簡単に見分ける方法として『複数のサイコロを同時に振る』というモノがある。

 

 

「サイコロォ? また理事長の遊びかよ」

 

「常に異常性が変質してる一誠は1度や2度調べても意味が無いからな。十三組に入る気が無いんならせめてこれくらい協力しろや……可愛い幼馴染みの願いだオラ」

 

「腐れ縁じゃアホ……ったく、仕方ないのォ……」

 

 

 十三組に入らずとも、コイツをある程度調べる方法はある。

 恐らく理事長も唯一一誠と繋がりがあるオレと古賀ちゃんを毎日仕向ける理由もこれであり、何だかんだオレと古賀ちゃんの頼みなら律儀に付き合う。

 

 

「そーらよ……。

まったく、サイコロなんて同時に振って良いことなんてないのに……」

 

 

 ブツクサ良いながらも渡した6つのサイコロを物をどかしたテーブルの上に軽く振り、それぞれ音を立てながらサイコロが散らばるのを全神経を張り巡らせて観察するオレと古賀ちゃんは、確かに"6つのサイコロ"がテーブルに散らばるのを見たつもりだった――

 

 

「げ……今日は1個消えるのかよ」

 

「……!」

 

「え、うそ……!?」

 

 

 確かに6つあった筈のサイコロが、5つだけになってテーブルに……しかもその残りの5つ全てが積み重なってるのを見てしまえば、上には上の異常(ヘンタイ)が居るのも納得しちまうと思い知らされてしまう。

 

 

「え、1個どこ!?」

 

「縦にサイコロが積み重なるのもそうだが、一つ消えたってのがまたありえねーな……マジで変態だぜお前」

 

「るせっ! オメーの格好よりマシじゃ!」

 

 

 これまでオレも含めて理事長の遊びに付き合ってる奴を何度も見たが、振ったサイコロが消失するなんて結果はコイツだけだ。

 ほんの一部でこれなんだし、全貌はまさに変態と言えるに相応しき異常性(アブノーマル)なんだが、それを言うと決まって一誠はムキになってキレる。

 

 

「異常だろうが過負荷だろーが知るか! 俺は俺じゃい!!」

 

「マイナスって何さイッセーくん?」

 

裏の六人(プラスシックス)連中みてーな奴等の事だ……まあ、あれでもマイナスとは言わねーが」

 

「ったく、サイコロごときで一々大袈裟に一喜一憂しやがって……クソ暇人共が」

 

 

 十三組連中との決定的な違いの一つ、異常だろうが自分を一切見失わず、性質に飲まれない強烈な精神力。

 これのせいでオレの開発サンプルである異常殺しの薬を投与してもまるで変化が無い。

 何だっけか……『薬程度で俺のスキルは消せないな……それが厄介なんだが』と遠い目をして言ってたのが印象的だったな。

 

 

「へんたーい! へんたーい!!」

 

「て、テメェ……なまじ顔とスタイルが良いから俺に何もされないと思ってチョーシこきやがって……!

正真正銘の変態に20円で売り付けんぞボケが!」

 

「無理だろ、そんな事しても古賀ちゃんならその変態をぶっ殺しちまうだろうし」

 

 

 それを考えると、一誠は自分の異常性に飲まれては無いが抜け出せては無いっぽいんだよな。

 本人はそれを含めて『それすら利用して人生楽しく生きてやる』と割りきってるから、結局は抱き込めずに厄介なまんまなんだけど。

 

 

「サイコロテストは終わりにして、さっさとオレを一発シバキ倒すテスト始めろよ。

腹パンだろうが何だろうがテストの為だし仕方なく受けてやるからよー」

 

「変態はテメーじゃねーか!」

 

「ごめん名瀬ちゃん……ちょっと引くよ……」

 

 

 しかしそれでも未知の塊で、オレに毎度毎度決定的な挫折を味合わせる唯一の男な事に変わりは無く、出会ってからずっとそれは変わらない。

 だからこそオレは一誠に拘るんだよ……。

 

 

「前に殴られた時のえも知れない気分をもう一度味わいたいだけで、要するに自分を知りたいだけだ。

他の意図はねーよ、だから殴れや一誠よー?」

 

「アブノーマルって意味ならお前が最強だわ……。

というか何時からこんなマゾっ子になったんだし……」

 

「私が名瀬ちゃんとイッセーくんの親友になった頃にはこんな感じだったけど……」

 

「え……じゃあもっと前から? 全く身に覚えが無いんだけど……」

 

「色々大変なんだよ? イッセーくんに勝つと言っときながら、小さく『どんなパターンで叩き潰してくれるか楽しみだぜ……』――とニヤニヤしてたし」

 

「引くわぁ……」

 

 

 常に届かせない壁として前に立つバカ野郎にな。

 

終了。

 

 

 

 

 

 口の悪いやり取りばかりだが、一誠に宿り続けるドライグは知っている。

 一誠にとって、古賀いたみと名瀬妖歌――否、黒神くじらは全てに於いて優先される存在である事を。

 

 冗談でもこの二人に対して何かしようものなら、間違いなく一誠はそういった存在を消しにかかる。

 

 ……恥ずかしいから一誠は絶対に口には出さないが、ドライグは知っているのだ。

 

 

「なぁくじら、お前の妹っぽいのが、お前の正体と俺との腐れ縁を知ってからというもの、スゲー監視してくるんだけど、俺何かしたか?」

 

「普段のオメーが女子に対してナンパしまくる軽い奴だからだろ? オレからしちゃあ大きなお世話だが、大方オレがオメーに変な事でもされてねーか――とか考えてるんだろ」

 

「なるほどー……。じゃあお前の兄貴からは『死んでくれ』的な目で睨まれるのもそんな感じなんだな?」

 

「無駄な事だが、そうだろうよ」

 

 

 特にくじらに対しての信用度はほぼ肉親に近いものがある。

 

 

「で? その黒神に一応言われたんだろ? 生徒会戦挙ってのに協力しろってよ?」

 

「忙しいから無理って断った。

だってどっちでも良くねーか? 球磨川ってのが会長になろうが、引き続き黒神さんがなろうが」

 

「確かにな。協力するメリットも全く無い」

 

 

 だからドライグは知っている。

 世の中がどうなろうが、それこそ今すぐ全世界の者達が殺し合いを始めようがどうでも良いことを。

 

 その飛び火がいたみとくじらに飛んで来ないのであれば関係ないと至極当然のように思っている事を。

 

 

「ねぇ、二人でやる気無さそうな話をしてる所に水を挿すようで悪いけど、言ってもいいかな?」

 

「どうした古賀ちゃん? また調子悪いのか?」

 

「トレーニングだったら付き合えるぜ?」

 

「そうじゃなくてさ……。

アタシは二人と知り合った時から、二人が()()()感じだってのを知って慣れたから今では何時ものことなんだと思えるんだけど、何も知らない人が見たら今の名瀬ちゃんとイッセーくんって――――

 

 

 

 

 

 

「「…………………」」

 

 

 

 

 

――こっちを覗いてる黒神達を凄まじく煽ってるだけだと思うんだ?」

 

 

 だから何も知らない連中が見たら、目を逸らすかもしれない距離感の近さが基本なのだ。

 つまり、他に誰も居ない二年十三組の教室でいたみが微妙な顔をしながら言った言葉にドライグはイッセーの中から同意できるし、教室の外から覗き見ているくじらの兄妹達の放つイッセーへの親の仇みたいな殺気も仕方ないとも思ってしまう。

 

 

「イッセーくんって普段は他の子ばっかに鼻の下伸ばしたり、チャラ男みたいに声ばっかかけるって黒神達は当然知ってる訳じゃない? それなのに名瀬ちゃんに今そんな事をしてるんだから、一応黒神からしたら腹も立つんじゃないかな?」

 

「それこそ知るかよ、指図される謂れはねーぜ」

 

「だってくじらが、体型だけはストライクに成長しちゃったもんだからつい……」

 

「そういう言い方も黒神達に喧嘩売ってる言い方になるよ? まるで名瀬ちゃんの身体目当てですみたいな……」

 

 

 基本的に誰彼構わずナンパばっかするお騒がせ生徒としてブラックリスト入りしているで有名な一誠が、姉、もしくは妹とかなり昔からの知り合いばかりか、殆どずっと一緒に生活してたと知った時点で黒神兄妹はイッセーへの敵意が倍増したというのに、最早それが当たり前ですとばかりに、くじらを抱き枕みたいにイッセーが扱っているものだから、殺意を向けられても当然だ――といういたみの意見にもドライグは内心同意だった。

 

 しかも困ったことに、くじらが一切嫌がる事無く好きにさせてるものだから、黒神兄妹にしたら『何なんだアイツは!?』となるわけで……。

 

 

「切れたきゃ勝手にキレさせとけよ。オレは別に嫌でもなんでもねーし」

 

 

 ちょっと不器用気味に腰辺りに抱きつきっぱなしのイッセーの頭を撫でながら、片手で本を読むくじらがこう言う時点で、止めようも無い。

 

 しかもそんなくじらに何か起これば、普段こそちゃらんぽらんが服着て歩いてるイッセーか即座に『殺る気満々』で出撃するのだから、今更何を言おうがどうにもならないのである。

 

 

「はぁ……慣れ過ぎたせいか、いい感じで寝れるよ、お前にこうしながらだと」

 

「だったらいい加減、あのド下手な口説き文句を撒き散らすのはやめろよな。

じゃねーと、してやんねーぞ」

 

 

 そういう関係に自然となってしまったのかだら。

 

 

 




補足

違いその1
ドライグが居る。
つまり、普通にやべー

その2
基本的に女へのだらしなさは変わらない――が、お二人に対しては結構素直。


その3
だから二人に何かあれば、即出撃。

特にくじらさんに対しては肉親のそれに近い信用度で、態度にも結構素直に出すので、お互いに結構素直。


素直過ぎて、兄と妹さんは彼をかなり敵視する始末。


………続かないよ
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