色々なIF集   作:超人類DX

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シリーズ中大半空気な彼女もたまには……ね。

前回までとの繋がりは一切ないです


割りと平和っぽい世界

 知らんけどシスターと友達になった。

 な、何を言ってるのか自分でもよく解らないが……マジで本物のシスターと友達になったんだよ。

 でも所詮は友達なんで、彼女の周りに取り巻く環境なんてものは知らんし、ましてや助ける義理もない。

 

 が、しかし父さんと母さんに取り敢えず相談してみた結果……どつかれた挙げ句何で助けないんだ! と怒られちゃったのを機に目が覚めたので、相棒と一緒にシスターちゃん救出大作戦を決行する事にしました。

 

 

「龍帝・壊神モードだ!」

 

『Boost!!』

 

 

 まあ、作戦って言っても普通にゴリ押しなんですけどね。

 

 

 

 

 アーシア・アルジェントのここ数日は確かに幸せだった。

 悪魔をその身に宿した力で治療したせいで魔女と蔑まれ、しかしそれでもめげずに修行をして漸く掴んだシスターへの道の為に、慣れない異国で言葉も碌に話せなかったけど、夢の為にとアーシアは頑張った。

 

 そのご褒美なのか……それとも単なる偶然だったのか。

 アーシアは言葉が話せずに迷子になっていた時、一人の少年と出会った。

 眠たそうなブラウン色の瞳と髪……日本人の少年は、日本語が喋れず途方に暮れていた自分の目の前を一旦は通り過ぎたものの、数分後に引き返して自分に話し掛けてきた。

 

 勿論初めは何を言っているのか解らず、母国語で日本語が喋れないと駄目元で話してみたアーシアだったが……。

 

 

『あー……あーあーテステス……通じたら手上げてみ?』

 

 

 驚いた事に、何と少年はそれが当たり前ですとばかりに自分の分かる言語で……しかも変な訛りも一切無く喋ってきたのだ。

 驚きの余り数瞬程固まってしまったアーシアだったが、この少年を逃したら後が無いと悟るや否や、必死になって目的地の場所が解らずに迷子になっていたんだと伝えた。

 

 それが少年との初めての出会いだった。

 

 

「よぉ、アーシアちゃんよ。元気そうじゃねーか?」

 

「イ、イッセー……さん?」

 

 

 少年の名前は兵藤一誠。

 常に怠そうで、常に怠け者で、常にやる気の無い表情の三段拍子揃った駄目人間だったが、アーシア・アルジェントにとってすれば生まれて初めてにも近い『友達』だった。

 

 

「ど、どうして……来たんですか……?」

 

 

 故に見習いシスターとしてこの地に派遣されたと思っていたら実は堕天使の罠で騙されていた事に気が付き、逃げ出そうとした矢先に一誠と出くわしたら、堕天使組のリーダー格に『戻って来なければそこの一誠(ニンゲン)の命は無い』と脅され、一誠の命を守るために自分を犠牲にしたというのに……。

 

 兵藤一誠はそんなアーシアの覚悟を踏み潰さんとばかりに、自分の元へ……堕天使やはぐれエクソシストだらけの外れ教会に一人で乗り込んできたのだった。

 しかもアーシアの問いに対して一誠の答えは……。

 

 

「最初は言われた通り来ないつもりだったんだぜ? だって来んなって言われたし? そもそも怠い真似とかしたくねーし?」

 

「うっ……」

 

 

 ヘラヘラヘラヘラと、周囲から向けられる殺気すらどうでも良さそうな笑みと共に、ある意味アーシアにとって心にグサッと刺さる事を平然と宣う一誠だったが、次の瞬間ヘラヘラしていた表情を若干だが引き締めると……。

 

 

「でもよ、トモダチなんだろ俺たちは? じゃあ来んなとか言うなよなアーシアちゃんよ。

んな事言われると逆に来たくなるだろ?」

 

 

 ニッとしながらのこの一言により、それまで封じ込めいたアーシアの心のナニかは崩れ、ポロポロと涙を流す。

 

 

「ま、そういう訳だから嫌だと言ってもこっからキミを拐うんでよろしくね」

 

「っ……く……! は、はい……!」

 

 

 だがそれは決して悲しくなんかなかった。

 孤独な人生を歩んできたアーシアの心をどうであれ、偶然だとしても救った少年は紛れもなくヒーローだった。

 独りじゃない……怖くない……だって……だって……!

 

 

「さぁてギャラリー諸君! バトルの前に名乗らせて頂こうか! 我が名は兵藤一誠……赤龍帝だぜバッキャロー!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』

 

 

 ヒーローは絶対に負けないから。

 赤い鎧を身に纏い、その場に居た全ての生物を問答無用で平伏させん覇気を放った一誠(ヒーロー)は、赤龍帝という言葉に大きく狼狽える堕天使達やはぐれエクソシスト達を千切っては投げ、千切っては投げまくるのだった。

 

 

 

 リアス・グレモリーは息を飲んだ。

 ここ最近己の管理する領地内で堕天使達が不穏な空気を放っていたので、警戒していたのだが……突如その堕天使達の潜伏していた外れの教会から莫大な力を感じ取り、直ぐ様確認の為に眷属達を引き連れてやって来たのだが……。

 

 

「やっべ……ちょっと張り切りすぎたかも」

 

『馬鹿かお前は。今ので確実に悪魔共に――って、もう来てるぞ』

 

 

 あった筈の教会は更地と化し、その中心に居るのは少年と少女の二人。

 多数の気配は完全に消えているから察するに、あの少女か少年――恐らく少年の方が一人で堕天使達を文字通り消したのだろう。

 そう判断したリアス・グレモリーは、眷属達に何時でも動けるようにと指示を送りつつ、何やら少女に向かってペコペコ頭を下げている少年に近付き、声を掛けた。

 

 

「お話の所失礼、ちょっと良いかしら?」

 

「良くないって言ったら帰ってくれるのかい悪魔さんよ」

 

「っ、あ、悪魔……!?」

 

 

 話しかけた途端、シスターの制服を着ている少女とはまるで違う……『死ぬほどかったるい』と主張しまくりな顔をする少年と、悪魔と聞いてビクビクし始める少女にリアスは眉を潜めた。

 

 

「あら、何故私達が悪魔だと?」

 

 

 名乗った覚えは無いのにハッキリと悪魔だと断言してきた少年にリアスは再度問う。

 

 

「さぁ? 知っていたら困る事でもあるのかい?」

 

「答えるつもりは無いと……」

 

「いや答えるよ。答えは簡単だ……コイツに大体の事は仕込まれたんだよ」

 

 

 そうかったるそうに左腕を見せた一誠の腕には、真っ赤な籠手があった。

 その腕……手の甲の部分に刻まれた紋章を見た瞬間リアス達は息を飲む。

 

 

赤龍帝の籠手(ブースデッドギア)……。

なるほど、この惨状の原因はやっぱりアナタね?」

 

 

 二天龍、神滅具の一種。

 怯えた様に自分達を見る少女に後ろから抱きつかれながら怠そうに普通の腕に戻した少年にリアス達は警戒心を一気に上げた。

 が、同時に兵士を一人も抱えていないリアスは彼を眷属に加えられたら……というちょっとした希望を抱える。

 

 

「で、名乗ったんで帰っていいっすか? この子を連れて帰ってご飯食べさせたいんで」

 

「……。堕天使を消した時点でそういう訳にもいかないと言ったら?」

 

 

 実にほしい。

 恐らく既に己の神器を制御しており、さらに言えば禁手化まで済ませている可能性もある。

 ともなれば、堕天使サイドに騙されてついていた聖母の微笑の神器を持つ少女と共に是非共自分の下僕に……。

 そう内心考えつつ、何とか引き留めようと言葉を選んだつもりのリアスだったが……。

 

 

「ふーん……? じゃあ逆にキミ達全員を口封じで消しちゃうか?」

 

 

 その言葉の選択はどうやら間違えたらしく、突如として押し潰して来る様な重苦しい殺気と共に、茶色だった髪を真っ赤に染め上げる。

 

 

『っ!?』

 

「おいアーシアちゃんよ、舌噛むから目瞑って口閉じろ」

 

「へ? あ、は、はい!」

 

 

 カラクリは解らないが、明らかに先程までのだるそうな雰囲気は無くなっており、逆にギラギラと獲物を狩る獣を思わせる目付きへと変貌した少年――一誠にリアス達は一気に臨戦態勢を取る。

 

 

「龍帝・乱神モード」

 

『Welsh Dragon insanity mode!』

 

 

 しかし臨戦態勢なぞ一誠には無意味だった。

 アーシアの身をお姫様抱っこ宜しくに抱えた一誠の力は、リアス・グレモリーやその眷属達の遥か上だったのだから。

 

 

「父さんと母さんが言っていた……。嫌なら嫌だと相手にハッキリ言え、それでもしも相手が力付くで来るのであるなら……全力で迎え撃てってな!」

 

 

 この日、隠れてこそこそとしていた龍帝の少年は、一人のシスターを助けたのを境に表舞台へと上がった。

 只一人のトモダチの為に……無限に進化する力と龍帝の力を惜しみ無く使う。

 

 

 

 

 

 ……。知らなかったです。

 まさかイッセーさんも神器を持っていたなんて……。

 これはもう運命としか云いようがありませんよね!

 

 

「あぁ……やってしまった。

事情が事情だから、父さんと母さんは何も言わないだろうけど、ニヤニヤしながら馬鹿にしてきそうだぜ……」

 

『ま、諦めて弄くられろ、あの化け物夫婦相手じゃ息子のお前でもどうする事もできまい』

 

「はぁ……」

 

 

 悪魔の方々から上手い事私を抱えて逃げてることに成功したイッセーさんは、困ったように溜め息をついてます。

 

 

「えっと、私はいったい?」

 

 

 助けてくれたイッセーさんに付いて行く決心をした私ですけど、この後何処に連れていかれるのかが解らず、何度も溜め息を吐くイッセーさんに聞いてみました。

 

 

「え、あぁ……ほらキミを拐うって言った通り、ウチで暮らして貰おうと思ってよ」

 

 

 はぁ……イッセーさんのお家ですか。

 一緒に暮らす……んですよね。あれ、何だかドキドキします。

 

 

「これから毎日にご飯を食べたりお話しできたりするんですね……。でもご迷惑じゃ……」

 

「迷惑? あぁ、逆にキミに迷惑が掛かるって意味ならあるかもな。

恐らく母さんにめちゃんこ可愛がられるだろうさ……」

 

「は、はぁ……」

 

 

 どうやらご迷惑じゃ無い、らしいですけど。それに甘える形では駄目なので、ご厄介になっている間はお仕事をしようと思います。

 

 

「多分あの馬鹿夫婦が揃ってキミに『一誠の嫁にならないかー』とか聞いてくるだろうが、軽く流して良いから」

 

「え!? い、イッセーさんのお嫁さんですか!? そ、それは……よ、よろしくお願いいたします!」

 

「…………」

 

『おい、テンパって何気に了承してないか?』

 

 

 お嫁さんなんてあり得ないと思ってましたけど、イッセーさんのお嫁さんなら……えへ、えへへ……♪

 神器を持つ者同士に加えて、お友達――更にはお嫁さん。

 やっぱり私とイッセーさんは運命で繋がっていたで間違いありませんね!

 

「あのさアーシアちゃん、前々から思ってたけどひょっとして若干アホなの?」

 

「む、ドジではありますけどアホじゃありませんよ! 今日は転んだりしませんでしたし!」

 

 

 イッセーさんと出会えて本当に良かった……。




補足

転生者は居ません。
しかしイッセーのスペックはかわらないので、逆に悪魔さん達からは超警戒されて仲間になれるどころじゃなかったりする。

そして本人も良い歳こいてもバカップルな両親の下で胃もたれしそうな人生を送っていたので、割りと普通に女の子に対しては普通です。

ただ、普通より若干枯れてるのでフラグが立たず、アーシアさんがまさかの初だった……という訳です。

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