エグゼシリーズは3が至高……でも5も捨てがたい
良い意味でも悪い意味でも、彼は私のすぐ上の兄に影響を受けすぎている。
性格の軽さや女性のタイプや刹那的な性格とか。
上の兄二人と違って三男のライザーはその見た目とその軽さのせいで周辺からの評価が結構低い。
それはライザーが眷属を持たないからなのもあるのかもしれない。
でもそれは仕方の無い事なのかもしれない。
何故なら兄は見た目も性格も一見軽そうに見えるけど、その根底では他人をそう簡単に受け入れたりはしない疑い深い所があるのだ。
父や母、それから上の兄二人曰く、私がまだ生まれる前にあったとある出来事が理由でライザーはそうなってしまったと。
だからきっと私は『同じ目』に逢ってゴミのように捨てられた一誠を見つけてしまった時、無理矢理連れ帰ったのだと今なら思う。
もっとも、もしも一誠がそのまま性根を腐らせてしまっていたままなら惚れもしなかったのだけど、一誠は受けた恩を返す為に這い戻ってくれた。
それこそ兄のライザーのように。
不満があるとするなら、ずっと一緒に居たせいか私を妹分のようにしか見ていないという所か……。
まあ、それも時間の問題だと私は思うけれど。
ライザー・フェニックスは義理の弟と実の妹が人間界の学校に通う様になってからは暇で仕方なかった。
まだ一誠とレイヴェルが実家に居た時は、修行を付けてやるとか一誠を連れて冥界に住む悪魔(人妻限定)をナンパしに行っては玉砕しまくるという事が出来たので割りと退屈なんてしなかったのだが、二人が学校通いの為に人間界に暫く住むようになってからはそういったことが無くなってしまったので、本当に暇なのだ。
「ふっふっふっ、偶々人間界の店で発見してしまったぞ………爆転世代のドラ◯ーン
ある理由があって自らの眷属を持たないライザーにとって肉親であるフェニックス家の家族やレイヴェル。
今現在レイヴェルの眷属である一誠や自分達悪魔の闇の被害者ともいうべき黒歌ぐらいしか『身内』と呼べる者は居ない。
かといって兄二人や両親を遊びに誘うのは迷惑になるので、最近のライザーは手土産片手に人間界に住む三人のもとへと遊びに行くのが多くなっていた。
「投げ売りされていたものだからついト◯イピオも買ってしまったが、流石の一誠も欲しがらないか……?」
世代が微妙に古いゲームや玩具を集めて遊ぶのを最近の趣味にしている弟分の為に手に入れた玩具を片手に少しご機嫌な様子で三人が今現在住むマンションを目指して歩くライザーだが、その容姿と格好のせいか微妙に目立ってしまっている。
それに気づかず――いや、気付いていても敢えて気づかないフリをしながらテクテクと歩くライザーはふと数十メートル先にあるものに気づいて足を止めた。
「…………!!?」
「あ、アイムソーリー! ヒゲソーリー! イトウソーリー!」
この国では珍しい、自分とは毛色の違う金髪の者が近所に住むであろう人間にテンパられながら逃げられているという妙な光景。
「なんだありゃあ?」
思わず見てしまうライザーは、逃げられたせいかへこんでいる金髪の少女を暫く見るも、それもやがて飽きたのか再び歩き始めて肩を落とす少女の目の前を声を掛けるも無く通りすぎようとするのだが。
「! あ、あの!!」
ちょうどライザーが通りすぎようとしたことに気づいたのだろう、妙に必死な声でスタスタと歩くライザーを呼び止めてきた少女だが、実の所これで50回は呼び止めても逃げられていたので、多分彼も逃げるのだろうと内心思っていた。
しかし少女にとって幸運な事なのか、それとも少女の格好的に最悪な不幸なのか……呼び止められたライザーは玩具の入った箱片手に気だるげに振り向き……。
「あん? なんだお嬢ちゃん?」
それまで全く日本語が理解出来なかった少女の耳に入る青年の声は、諦めの感情を簡単に吹き飛ばすものであった。
「つ、通じた!? し、しかも言葉がわかる……! あ、あの……私の言葉がわかりますか……!?」
「あ? まあキミがなにを言ってるのかはわかるけどちょっと落ち着けよ? どうしたよ?」
千載一遇のチャンスとはまさにこの事だと思った少女の怒濤の質問責めに対してライザーは軽く引きつつも頷くと、今までよほど苦労でもしてたのだろう少女の表情が一気に希望に満ちたそれに変わる。
「あ、主よ! 私にお慈悲を与えてくださり感謝いたします!」
(………。この格好、この子は天界陣営の者か?)
鳩がクルッポーと鳴きながら飛んでいる方向の空に向かっていきなり膝をついて祈り始める少女を見て、既に嫌な予感しかしなくなってきたライザーは、出来ることならそのまま無視してしまいたくなってきたが、この人間の少女がどう見ても天界陣営の天使達に近い地位に居るとは思えないし、何より似てなんてないけど妹のレイヴェルを思い出してしまう。
「えーっと、それで何で俺を呼び止めたのかそろそろ聞きたいんだがね?」
仕方ない、少しくらいの親切なら怒られもしない筈だと思ったライザーはまだブツブツと『もう在りもしない主』に向かって祈っている少女に用件を聞く。
ずいぶん前に克服しているとはいえ、神への祈りだなんだといった行動を目の前にするのは悪魔の身としてはあまり良いものではないのだ。
「あ、ごめんなさい。
えっと、実は道を聞きたくて……」
「道? どこに行きたいんだ?」
「えっと、この近くにある筈の教会に……」
こうしてライザーが生粋のド悪魔である事を知らないまま少女は道を尋ねる事になってしまい、ライザーもライザーで割りとお人好しで損をしまくってきた性格があるせいか、ついつい一緒に探してあげることになってしまうのであった。
「携帯持ってないのか? あるのならその場所の住所を検索してその道の通りに行けば良いと思うぞ」
「あ、携帯電話は持ってなくて……」
「まぁ、だろうな……。
それで道を聞こうにも日本語が喋れなくて聞けなかったと。
なんで日本の教会に派遣されたんだキミは?」
「い、色々ありまして……」
「ふーん……?」
「ら、ライザーさんこそどうして日本に? その、日本の方ではありませんよね?」
「妹が日本の学校に通っててな、ちょっと様子を見に来たのさ。
えーっと、この道を左だな」
「おー……なるほど、そうでしたか」
「……………」
その後ろを義弟に皮だけが似てる男に尾行されている事も敢えて気づかないフリをしながら、アーシアという少女を道案内するライザー・フェニックスなのであった。
てっきり顔見たら殺しに来るのかと思っていただけに、遠巻きに殺意ばっかりしか向けてない彼には微妙に困るだけだったりする霧島一誠は、義兄のライザーが来て、爆転世代縛りのベイバトルをするという約束の為に何時もより若干ながら風紀委員のお仕事を頑張っていた。
「ベイバトルの後はロッ◯マンエグゼの通信対戦だからな……気合いも入るぜこんちくしょうめ……!」
「だから妙に朝から張り切っていたと……。
ふふ、アナタらしですね?」
「ええ、てな訳で今日の分の報告書です」
「……………はい確かに」
「っしぃ! 良し判定貰えたぞレイヴェル!」
「ええ、ではさっさと出ましょう」
やればできる子だが、普段はやらない一誠の渾身の仕事っぷりに文句の付け所が無いと生徒会長であり悪魔でもあるソーナは可の判定を下し、それを聞いた一誠はジトーっとした目をしながらソーナを見ていたレイヴェルと帰ろうとする。
「あ、待ってください。
ライザーさんとベイバトルと通信対戦をするというお話なのですが、それって私も参加できますか?」
「は?」
「む……」
「か、会長!?」
しかし一誠の腕を引っ張って一刻も早く帰ろうとするレイヴェルの奮闘虚しく、いきなりソーナは一誠に参加表明をする。
これには特にソーナの眷属達がギョッとしていた。
「参加って、先輩は持ってるんですかベイとエ◯ゼ?」
「ベイ◯レード爆転世代、バースト世代まで、ロ◯クマンエ◯ゼは初代から6まで網羅しています」
「なぬ!?」
そして割りとガチ勢なソーナに一誠も驚いた。
「証拠にブラ◯ク・ドランザーやドランザーF・レッドも持ってます。
エグゼシリーズは全ての隠し要素解放をしています」
「はぁ!? そ、それってイベント限定のギガチップも……?」
「チートではなく当時本当にイベント会場に行って手に入れました」
「な、なんだと……」
『…………』
割りとではなく正真正銘のガチ勢っぷりに一誠は初めてソーナを畏怖したのだが、後ろで聞いていたソーナの眷属達はある意味ショックだし、レイヴェルは一誠の気を引いてるソーナにハンカチでも噛んでるような顔で睨んでいる。
「しかし何故……?」
「隠すつもりはなかったのですけど、姉がああでしたので結果的に知られなかっただけですね。
まあ、他の悪魔達は誰もやりませんでしたし。
ですからアナタとライザーさんがやってると聞いた時は本当に打ち明けたくて仕方ありませんでした」
「だ、だからこの前のアルメット・フ◯ニックスも……?」
「ええ、未開封品含めて私は8体所持してます」
「マジでか!? じゃあ流星シリーズも……」
「全てあります。
あ、折角なのでブラザーバンド結びます?」
まさかの趣味の話で盛り上がる二人についていけない眷属達とレイヴェル。
恐らくリアスがこれを知ったら引くのかもしれない。
「おいライザーの兄貴! 今日来るんだろ? ――え、道に迷ってた女の子助けてるから少し遅れる? よしわかった。それより聞いてくれよ、シトリー先輩――じゃなかったソーナ先輩が割りとガチ勢だったわ! だから今日家に連れていくから対戦しようぜ!」
「………ふふっ♪」
(こ、この女……!)
すっかりホビー心を掴んだソーナの笑みにレイヴェルは心底悔しそうに睨み、反対に生き生きとライザーに電話する一誠を最近加入したソーナの兵士が殺意丸出しで睨むという割りとカオスな状況が生まれるのであった。
「じゃあ先に家帰って準備しときますんで!」
「………」
すっかりソーナをホビー友達認定した一誠が焼きもち全開のレイヴェルを連れて生徒会室を改めて退出する。
その瞬間生徒会室内が大騒ぎになる中、一誠と焼きもち全開のレイヴェルは意外な人物がそこに居たことに気づく。
「…………」
白い髪に金色の目をした少女。
リアス眷属の戦車でもあり、黒歌の妹である白い猫こと塔城小猫が何故か生徒会室の前に居たのだ。
「……。なにか?」
既に機嫌値が最低を更新していたレイヴェルはツンケンしながらこちらを見てくる小猫に言う。
すると小猫はそんなレイヴェルに『いえ、別に貴女には用はありません』と売り言葉に買い言葉のように返すと、じーっと一誠を見る。
「??? なんだ、兵藤くんと間違えてるのか? 違うぞ、俺は――」
そんな小猫にそういえば気配を感じない例の男こそ『兵藤一誠』と間違えられているのかと思って訂正しようとするが、小猫は首を横に振りながら『承知していますと』言う。
「レイヴェルと一緒に居るんだからそりゃあわかるか……。
じゃあどうした? 正直俺とライザーの兄貴ってキミの主さん達からかなり心象悪いからあんま関わらない方が……」
「確かに部長達は先輩やフェニックスさんのお兄さんをあまりよくは思っていないです」
「ではそんなよくは思わない方々のお仲間である塔城さんが一体なんのご用ですか? 見ての通り暇ではないですけど?」
「…………用は無いです。
少し先輩が気になるだけなんです」
「は? 俺? なんで???」
「…………。先輩から懐かしい匂いがする気がするから」
そうじーっと真っ直ぐ一誠を見つめながら言う小猫に、一瞬言葉を失う一誠とレイヴェルには身に覚えがありすぎた。
というか小猫は気づけてないが、今現在もかなり近くからその懐かしい匂いの主が居たりする訳で……。
「う、うーん……風呂はちゃんと入ってるんだけど、そんな臭う?」
「そういう事じゃありません。
それにその懐かしい匂いとは関係なく、私はその……」
「??」
「せ……先輩の匂いは嫌いじゃないです」
「……………………あ、うん」
急に照れながら言う小猫に一誠は反応に困った。
というのもその台詞は随分前に黒歌にも言われた事があるのだ。
「ただの食い意地の張ったお子様が、人様の眷属に対して色目とはいきなりですわね」
そしてそんな台詞が気にくわないレイヴェルが嫌味を飛ばすと、小猫はムッとする。
「別にそんなつもりではありません。
相手にされないからって八つ当たりしないでください」
「は? 誰が相手にされてないですって?」
「貴女ですけど? 見た限り先輩は貴女を異性とは見てないと思いましたが?」
「何も知らない外様が言ってくれますわね」
「外様だったからわかることですが?」
そして気付けば小猫とレイヴェルが互いにメンチの切り合いに発展する。
どうやらどこの世界線でもこんな小競り合いは起こるらしい。
このままでは喧嘩になる……そう思った一誠はレイヴェルを落ち着かせようと、それまでの口調から一変させ、レイヴェルの眷属としての口調へと切り替えた。
「ストップですお嬢様」
「………!」
「一誠……はぁ、わかりましたわ」
口調どころか雰囲気までもが変わった一誠に少し驚いてしまう小猫は、ため息を吐きながら引き下がるレイヴェルに突然頭を下げられてしまう。
「少々大人気ありませんでした」
「あ、い、いえ……私のほうこそ」
レイヴェルに続いて一誠も頭を下げた事で小猫もぺこぺこと頭を下げた。
「しかし先程言った通り、我々は今の悪魔達から見ても『異端』ですし、貴女様はリアス・グレモリー様の眷属。
あまり関わり合わない方が良い」
「でもシトリー様は……?」
「あの方は……ちょっと特殊なのです」
「特殊過ぎて腹が立ちますけどね」
一誠の言葉に同意するように頷くレイヴェルに小猫は首を傾げる。
だが小猫はこれで確信した。
血の繋がりがあるのかとすら思える程似ている自分の眷属仲間の兵藤一誠と目の前の霧島一誠は見た目だけで中身はまるで違う別人であることを。
ましてやレイヴェルの従者のように振る舞う姿になろうとも小猫にとって嫌いではない、寧ろ優しくて好きな匂いのままなのだから。
「シトリー様のように、部長や私達とはお話したりしないのですか……?」
「いや、グレモリー様が管理する地域の学校に通うことを許可して頂けてるだけでも十二分だと我々は考えておりますので……」
「ええ、下手に刺激をして怒らせたくはありませんわ」
「やっぱり兵藤先輩が言ってたのと違う」
「……………ほう、彼はなんと?」
「……。部長や私たちに霧島一誠とライザー・フェニックスには気を付けろ、セクハラとか平気するからと……」
「だ、そうですわよ一誠?」
「………。ま、まあ当たらずも遠からずなのでなんとも言えませんね。
ただ塔城様やグレモリー様達には誓ってそのような真似はしませんよ――信じては頂けませんでしょうが」
困ったように笑う一誠の態度を見て小猫は再び確信する。
やっぱり聞いていたものとは明らかに違うと。
そしてソーナがグイグイ彼に行くのを見ていてつい思ってしまう……。
「あ、あの……ベイ◯レードは持っていませんが、ロックマンエ◯ゼシリーズは持ってるので、よかったら対戦を……」
「なぬっ!?」
「はぁっ!? あ、貴女までそんな事を言うつもりですか!?」
「エ◯ゼ5はフォルテクロス持ちです」
「マジでか!?」
「ま、また訳のわからない単語を……! キーッ!!次から次へと!!」
噂はやっぱりアテにはならない……と。
補足
ま、まあお姉ちゃんの趣味がアッチに突き抜けてるし、隠れてこんな趣味持ってても変では――変か。
それにしてもエ◯ゼ3のナビ戦bgmって良いよね……。
ラスボスのプロト戦なんかも『集大成』って感じだし。
その2
ライザー君、ついうっかり誰かのフラグを手に入れてしまう。