色々なIF集   作:超人類DX

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シリアス? そんなもん転生者の中でしかありませんよ。



ザ・混沌祭

 クラス代表戦がありますとさ。

 各クラスの代表者同士でISの試合をして、優勝したら学食のデザート券をくれるとかくれないとか。

 

 正直あんまり興味は無いけど、クソヤローの実力を少しでも把握して置きたいので、俺はナイター観戦する気分でこっそりと菓子と飲み物を持参してアリーナの席で見物していた……簪とね。

 

 しかし……ぶっちゃけ見てもあんまり判断し辛かった。

 というのもクソヤローの実力を図るには、対戦相手が普通に微妙だったからだ。

 

 

「……。本気じゃないよなアレ」

 

「うん」

 

 

 ISの事は素人なのでよくは解らないが、少なくとも俺と簪も、確か幼馴染みだとか言ってた中国の子相手に本気で戦ってない事だけは何となく読めた。

 チッ、別に誰が悪い訳じゃないが、これではクソヤローの底を知る事が出来ない――ん?

 

 

「と、思ったら良さげなお客さんが来たみたいだぜ簪」

 

「…………。だね」

 

 

 中国の子が悔しそうに突撃しているのを腹が立つほどに軽く往なしているクソヤローの試合上空に感じる何かに俺は思わず口が歪んでいく。

 どうやらどっかの誰かがこの学園に何かをしてくれたみたいだ………ふふふふ。

 

 

 

 

 絞りカスは専用機も持てず、単に動かせてしまったからこその処置としてIS学園に居るという認識になりつつあるが、相変わらず俺は奴が気に入らない。

 そもそも大人しく死ぬかでもしてれぱ簪だって……。

 

 

「くっ、あ、当たりなさいよ!」

 

「当たったら負けるだろうが」

 

 

 鈴の攻撃は性格もあって単純な所が多い。

 従って読みやすく、避けやすい。

 言っておくが俺は原作と違い、鈴を怒らせる様な真似は何一つしてない。

 あの無能と違ってな。

 

 このクラス対抗戦もそろそろ来るだろうゴーレムによって中止になるんだ。

 余計なエネルギーを消耗する訳にもいかないし――――来たか。

 

 

「鈴、避けろ!」

 

「え――きゃあ!?」

 

 

 上空から降り注ぐ光の雨。

 その雨はアリーナを覆っていたシールドを破壊する。

 一瞬の出来事故に誰もが何事かと思う暇もすら許さず、激しい爆音と共にアリーナの中心に巨大な砂煙が舞う。

 

 

「な、何なのよ……」

 

「侵入者みたいだな、どうやら」

 

「は? 何でわかるのよ」

 

「考える必要もないだろ。アリーナのシールドを破壊した時点で外部からの侵入……しかも上空からだぞ?」

 

 

 困惑しながらも煙の上がる地点を見据えて警戒する鈴と話ながら、雪片弐型を構える。

 束さんが恐らく送り込んで来ただろう無人機だが……やはりさっさと片付けておいた方が良いと考えながら、姿が見えた瞬間に瞬時加速をして接近、零落白夜で仕留めようと頭の中でイメージする。

 

 

『…………………』

 

「な、何よあれ……ISなの?」

 

 

 生徒達が謎の爆音でパニックになり、次々とアリーナから出ていくのを横目に零落白夜の準備を完了させる。

 この白式も最早原作とは違い、神から貰った特典能力で魔改造している為、見た目以外は最早原型がない。

 基礎スピードも音速は軽くだせるし、某チートMS並の出力と火力もある。

 故に束さんには悪いが、あの無人機にはとっとと退場して貰う……ぜ!!

 

 

「鈴! 龍砲で牽制しろ! その隙に俺が叩く!」

 

「なっ! 何でアンタが仕切ってるのよ! ええぃ、もう!!」

 

 

 全身が覆われた……所謂全身装甲(フルスキン)タイプのISだが、中には人間が乗ってない完全な無人機。

 故に遠慮も何にも要らないが、どうせならあの無人機に積んでるコアは回収したいと思うので、無能とは違いコアを傷つけないまま倒し、ダミーと交換してやろうと、鈴にバックアップを頼みながら、不気味に佇む無人機に向かって零落白夜を起動した雪片弐型の刃を振り下ろし――――っ!?

 

 

『クロカミ……ファントム……』

 

 

 刃を振り下ろし、肩部をに届くか否かの刹那だった。

 それまで不気味にただ佇み、それまで虚空へと向いていた無人機のモノアイが確かに俺へと向いた。

 いや、それだけならまだ良かった。それでも負ける気なんて無かったのだから。

 

 俺が驚いたのは……そして顔面と腹部を襲った激痛は――

 

 

『タイショウ ノ サクテキチュウ ボウガイコウイ ニ ソウグウ スミヤカニ ハイジョシマス』

 

 

 身体能力も最強になった俺がまるで反応できなかった速度で姿を消したばかりか、カウンターの攻撃……少なくとも二発を放った無人機は、原作と何かが根本的に違う……その事実だったのだから。

 

 

 

 

 

「一夏!?」

 

「ぐ……ぇ……あ!」

 

 

 織斑一夏はたった二発で狼狽えた。

 目の前に堂々と立つ、自分の知識外の何かに。

 それを知らない鈴音は、鼻と肋骨を絶対防御すら無視して一撃で粉砕され、夥しい血を口とひん曲がった鼻から流す一夏の元へと龍砲を無人機に撃ち込みながら近寄る。

 

 

「う……い、一夏……」

 

「ぐ……ごほっ!」

 

 

 本来なら余程の事が無ければ、ISに存在する絶対防御のお陰で外傷は避けられる筈だ。

 しかし今の一夏の様子は何だ? 鼻はへし折られ、腹部は肋骨が折れたのか赤紫色に変色している。

 

 

「た、たったアレだけで……?

いえ、そもそもあの機体から聞こえた空気が破裂するような音は一体……?」

 

「げほっ! く、クソ……!」

 

『ボウガイシャノダメージ ジンダイ セントウゾッコウカノウ』

 

 

 無人機とはまだ知らない鈴はフラフラになりながらも白式の制御を立て直した一夏のダメージを気にしつつも、近接武器を手に構える。

 アレはヤバイ……何処の誰かは知らないけど、学生が乗ってるとは思えない、戦闘経験者(プロ)が乗ってる……と自分と一夏に向かってモノアイをギョロギョロと動かす様を見せながら佇む敵機を睨む。

 

 すると、苦しそうに――されどショックを受けた様子の織斑一夏が噎せながら鈴に告げる。

 

 

「あ、アレは無人機だ」

 

「は? ISは人が乗らなきゃ動かせないじゃない」

 

 

 唐突に自分の中の常識をひっくり返すような一夏の一言に鈴は、ほぼ反射的に返してしまう。

 だが一夏は咳き込みながら、それでも無人機だと言い張る内に、鈴は昔から変な所に一夏が詳しいのを思い出したので、取り敢えずは信じることにした。

 

 

「ゆ、油断するな……あの無人機はヤバイ」

 

「そうみたいね……」

 

『ボウガイシャ キョウイド E』

 

 

 武器を構える鈴の横で、織斑一夏は戦慄した。

 あの無人機を送ってきた者の正体を既に知識で知っている。

 故にこの流れは完全に想定外だったったし、何より目の前で堂々と佇む無人機の強さがおかしいのだ。

 一撃で重症を負わされた織斑一夏は完全に目の前の無人機に余裕を失っており、最早コアをこっそり云々を考えず、ただただ破壊して終わらせようと転生の際に無理矢理頼んで貰ったチート能力を発動した――のだが。

 

 

『テーマソング ハツドウ』

 

「へ、変身――がはっ!?」

 

 

 何かのアイテムを腰に付けようとした瞬間、グリグリと動いていたモノアイが妖しく輝き、織斑一夏へ一点に向いた瞬間、無人機は再び爆竹の様な破裂音と共に姿をかき消し、反応できずに居た鈴音の横で今度は一方的に殴り付けられた。

 

 

「がっ!? ぐはっ!? ぎぃ!?」

 

「い、いち――きゃぁぁぁっ!?」

 

 

 反応できなかった鈴音も巻き込まれる形で無人機に吹き飛ばされ、地面に目掛けて勢い良く叩きつけられてしまい、強制的にISを解除されて昏睡してしまう。

 しかし一夏はそれでは終わらず、チート能力を使うためらしき媒体となる物を無人機に粉砕され、落としかけた雪片弐型を奪われたと思いきや、冷徹過ぎる容赦の無い斬撃に見舞われ、既に戦意を失いかけていた。

 

 教師達の応援に最早すがるしか無かったが、それも無意味だった。

 

 

「しょ、所属不明のISの数、確認できるだけでも50体は居ます!」

 

 

 テンパって学園内に流してしまった副担任からの絶望。

 それは織斑一夏に対して『救援なんて期待しても無意味だよ』という宣告に他ならず、動ける教師は千冬を含めてアリーナの外に次々と現れる無人機との戦闘によって誰も助けが来ない。

 

 

(な、なんで……束さ、ん……! 何のつもりで……!)

 

 

 媒体を粉砕され、無人機によって蹂躙された織斑一夏は、想定を遥かに越えた出来事に絶望を覚えながらその身を地に伏せた。

 近くで箒とセシリアの声が聞こえるが、何を言っているのか聞こえない。

 

 

「な――ど――」

 

「ふ――な――お――ごとき――に!」

 

 

 織斑一夏は遠くなる意識をそのまま手放すその時まで、この絶望に恐怖した。

 

 

 

 ……。おいおい、あのISマジかよ? つーかどういう事だ? 簪も思わずポップコーンを食う手を止めてあの変なISを凝視してるから間違いなく俺の思ってることは合ってるだろう。

 

 

「見たよな簪? あのIS……イッセー兄ちゃんの黒神ファントムを使いやがった」

 

「うん……しかも強い」

 

 

 表で大騒ぎになってるのもどうでも良く、クソヤローをフルボッコにしたISを避難して誰も居ないアリーナの観戦席から観察しながら、俺は自分の身が震えているのが解る。

 イッセー兄ちゃんはISに興味は無いし、あんなものを作れる技術もコネも流石に持ってない。

 だが俺と簪は紛れもなくアレが兄ちゃんがよく好んで使う黒神ファントムを、精彩を欠いてはいるものの使っている事実にただ震えていた。

 

 恐怖? いや違う……。

 

 

「監視映像は全部壊れてるよな?」

 

「うん……そうでなくても後でこの学園の警備システムにハッキングして弄くるから平気」

 

「オーケー……」

 

 

 あのISを送り込んだ誰かが、兄ちゃんを知ってる人物で、今はただ敵同士として戦える。

 その事実は俺の全身に力を送り込み、異常性が唸り声をあげる。

 

 兄ちゃんと同じく経験を積めば無限に力を増し、そして積み重ねる事により夢を現実にする事が出来る俺の異常性を。

 

 

無幻大(ウロボロス・ヒーロー)……ver黒神ファントム!」

 

「……」

 

 

 目の前の存在は俺達を更に強くする……餌となりて。

 

 

『!?』

 

「よぉ、謎のISさん。ちょっと俺達と戦わないか?」

 

 

 俺は目の前の餌を喰らってもっと強くなる。

 

 

 

 篠ノ之箒もセシリア・オルコットもショックだった。

 あの織斑一夏が、何よりも頼もしい一夏が突然の襲撃者に為す術も無くボロボロにされたのだ。

 想いを寄せている者からすれば卒倒物だが、それでも二人は盲目的に敵討ちをしようと、セシリアは自身の専用機を、専用機を持たない箒はこっそりくすねてきた訓練機を使って襲撃者の前に出ようとした……。

 

 

「よぉ、謎のISさん。ちょっと俺達と戦わないか?」

 

「……」

 

「なっ!? お、お前等……!?」

 

「な、何故ここに!?」

 

 

 その時だった。

 搭乗したISのセンサーが完全に遅れるほどの、さながら弾丸を思わせる速度で襲撃者と自分達の間に割って入ってきたのは、変わり者というか織斑一夏にソックリな顔立ちの少年と、その横にひっついている女子だった。

 

 

「な、何のつもりだ! ISすら無いのに何をする!」

 

「邪魔になるだけですわ!」

 

 

 当然二人は怒声にも似た怒鳴り声をぶつけた。

 当たり前だ、常識的に考えてどこの世界にIS相手に生身で戦おうと思うのか。

 箒とセシリアは心配して云々は無いにしても言ってることは正しかった。

 

 だが二人は――そんな兵藤一夏と更識簪は怒鳴り付けるセシリアと箒に一瞬だけ振り向くだけで返答はしなかった。

 それがますます二人の癪に障る。

 

 

「おい聞いてるのか!」

 

「邪魔だからさっさと――っ!?」

 

 

 こんな時に邪魔をするな。セシリアと箒は無視をする一夏と簪に向かって罵倒しようともう一度口を開こうとした……が、更に二人を襲う『非現実的』な現象に思わず二人と襲撃者に向けていた視線から、『そちら』へと向けられた。

 

 

「な、なんですのアレは?」

 

「わ、私が知るわけないだろ……あのISの機能なのか?」

 

 

 突如自分達から数メートル程離れた箇所に出現した数メートル四方の円陣。

 それはどこかのおとぎ話に出てきそうな魔方陣だったが、箒もセシリアもそれが襲撃者のISの能力か何かと勘違いしつつも困惑する――いや、よく見てみれば無視をしていた一夏と簪もギョっとした表情で虚空に出現した円陣を見つめて口をパクパクとさせている。

 

 そんな中を出現した円陣は妖しく輝きを増していき、やがては目を覆うような光となってその場に居た全員の視界を奪う。

 

 

「へー 此処がIS学園か……なんだ、随分と荒れ果ててるな。パンフレットに載ってたのと違うじゃん」

 

 

 そして光が止み、円陣が消えた先に立つのは――

 

 

「そら着いたぜたっちゃん……って、どした?」

 

「うっぷ……な、何だか急に気持ちわるくて……!」

 

「転移が初めてだから慣れてなくて気持ちわるくなったんだと思う。一誠は転移が下手くそだから」

 

「え、マジで? まさかのつわりかよたっちゃん? んだよ、妊婦だったらそうだと……」

 

「そ、そんな大ボケ――おっぷ!? い、いりませんから!」

 

 

 

「こ、今度は誰だ!?」

 

「し、しかも一体何処から――」

 

 

「な、イ、イッセー兄ちゃんにオーフィス姉ちゃん!?」

 

「そ、それにかた――じゃなくて楯無姉さんも!?」

 

『!』

 

 

 この学園の生徒会長である更識楯無――の背中をボケ噛ましながら擦る茶髪の男と、同じく楯無の背中を撫でる黒髪ロングのロリっ娘……つまり一誠とオーフィスだった。

 これには特に楯無が傍に居る事を含めて一夏と簪は驚き、思わず顔色悪く蹲る楯無の背中を擦る二人に駆け寄り、事情説明を求めた。

 

 

「な、何で兄ちゃんが!? そ、それにその人……」

 

「わ、私の姉さんが何で……?」

 

「お、よう一夏に簪。

アレだ、簡潔に説明するとだな、割りとこの子は根性ある子だぜってこった」

 

「…………。わざわざ我と一誠の所に来た」

 

「「はぁ!?」」

 

「うぅ……」

 

 

 あれだけボロクソに言われたのに、今度は一誠とオーフィスを直接訪ねたと聞かされた二人は驚愕しながら、顔色が危うい楯無を見下ろすが…………。

 

 

 

 

 

 

 

『ミツケタ――みつけた――見付けた、一誠くんをみーつけた』

 

 

 ぶっちゃけ、一誠の出現のせいで只でさえややこしい数の無人機が更にややこしくなってしまったのは云うまでも無かった。

 

 

 

 

「げっ!?

せ、折角いっくんに殴られるのを映像越しとはいえ楽しめると思ったのに、急にゴーレムの制御が!?」

 

「一誠……ふふ、あはははははは!! やっと縮まった! あはははははは! さぁ、残念ながら私本人ではないけど、久々にヤりましょう! 私はもうアナタを映像越しに見るだけで、何処がとは言わないけど疼いて疼いて……ビショビショになっちゃうのよ? あはははははははっ♪」

 

「や、やっべー……ソーナちゃんの要らない所までトレースしたせいでまさか束さんの制御すらはね除けるとか……。本人は完全に下腹部押さえながらイッちゃってるし……これ大丈夫、だよね?」

 

 

 色々とタガが外れて常識はずれになってしまった、二人の美女のせいで。




補足

転生者のチートツールというか、変身アイテムは本来破損しても時間が経てば勝手に修復します。

が……本来は核爆撃ですら無傷で耐える強度故に転生神は自動修復の速度をメンドクセーと思って遅めにしてました。

故に粉々にされた場合の修復は一体何時になるのやら……。


その2
ソーナさんをある程度トレースしたゴーレム50体は、目の前に現れた想い人を前に思っていた以上に刺激が強すぎたのか、トレースとはいえ全機体が暴走しましたとさ。

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