色々なIF集   作:超人類DX

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ソーナさんでした。
オーフィスたんがそれを理解しました。




ファイ!


我――雌悪魔を殲滅する

 ぶっちゃけ正直、私はこの前からずっと非常識な現象に遭遇してる気がしてならない。

 見下し男の兵藤一夏然り、何キロ程度では利かない距離を一瞬で、それも私ごと転移させる謎の力を私に体験させた兵藤一誠然り……。

 

 いや、私目線ではあるものの、まだ兵藤一誠さんの方がまだ取っ付きやすい気はする……ロリコンだけど。

 軽い性格というか、緊張感が無いというか……。

 

 

「おおっ!? あそこのお二人ちゃん可愛いじゃんか! しかもどっちも大盛りだ! へいへーい!」

 

「ナンパしてる場合ですか――うっぷ!?」

 

 

 こんな状況でもマイペースなのが少し羨ましいとすら思えるわ……。

 

 

「い、一体何処から現れたんだ?」

 

「眩しいと思ったらそこに居ましたけど……。

あの踞ってる方は確か生徒会長で、あぁもう訳が分かりませんわ!」

 

 

 一年生の篠ノ之さんとオルコットさんが其々狼狽えたり頭を掻きむしったりとパニックになるのも仕方ないと思う。

 だって私ですら殆ど勢いと流された感じでこの科学が発展した現代に蔓延る理念を粉砕する程の体験をさせられたのだ、正直吐きそうなのもあって整理が追い付いてない。

 というかよく見たら簪と兵藤一夏も困惑してるし、余程この二人の出現が意外……いや、私が接触した事がショックみたいね……。

 

 

「昨日の今日とか流石にたまげるわ」

 

「身元がある程度割れたからってのもあるけど、アグレッシブというかなんというか……」

 

「………。理解が出来ないままにしておくのは嫌なのよ――うっぷ!?」

 

「おいおいおい、マジで大丈夫かよたっちゃん? 年頃の女の子がゲロぶちまけるなんて俺嫌なんだけど」

 

 

 スリスリスリスリ……とオーフィスちゃんと一緒になって背中を擦ってくれる兵藤さんは地味にデリカシーが無い。

 確かに吐き気はするけど、そんなドストレートに言わないで欲しいわ……妹の目の前なのに。というか、たっちゃんって何よ?

 

 

「まあ、たっちゃんはこのまま安静にして貰うとしてだ一夏に簪よ。

さっきから此方を見てるだけっぽいメカニカルな出で立ちのアレはなんなん?」

 

「ほのぼのとクラス対抗のIS試合中に現れた謎のIS」

 

「ってだけなら別にどうでも良かったけど、あのIS……お兄ちゃんみたいと同じ技を使ってそこでリタイアしてる織斑一夏をボコボコにした」

 

 

 大分気持ち悪さが薄れて来たけど、これじゃあ戦力どころか足手まとい以下にしかならないと悟り、何とも言えない気分になりながら兵藤さんの質問に答える二人の会話を耳に入れる。

 

 

「技ぁ? オイオイ、機械に知り合いは居ないんだけど……」

 

「マジだって、黒神ファントム使ってたし」

 

「………………。一夏、それは本当なの?」

 

「うん、間違いないよオーフィスお姉ちゃん。

ちょっとムラはあったけど、確かに黒神ファントムだった」

 

 

 黒神ファントム? なによそれ。

 という疑問を抱いたまま4人の会話は続くけど、その声は先程のおふざけな空気というか雰囲気が無くなってる様に聞こえるのは、多分気のせいじゃない。

 

 

「黒神ファントム、ねぇ?」

 

 

 背中を擦ってくれる兵藤さんの手が私の背中から離れ、ゆっくりと立ち上がると、兵藤一夏と簪ちゃんの前に躍り出て先程から不気味に静止してモノアイを此方に向けている謎の全身装甲のISと対峙する。

 

 

「父兄参観の気分で来たつもりだが、ちょっとばかし気になるな。

おい一夏、それと簪にオーフィス……アレを破壊せず捕まえてやるってのに賛成か反対かを聞きたいんだが……」

 

「賛成、俺も気になる」

 

「賛成」

 

「我はどっちでも良い。けど、何と無くムカムカしてくる」

 

 

 ……………。いや、捕まえてやるって……。

 え、いや……え? な、生身でやるつもりなのかしらこの4人は? い、いやいやいやいや、流石にそれはISを嘗めてるとしか思えないんだけど……。

 

 

「ちょ、ちょっとお待ちなさい! アナタ方は一体何をするつもりですか!」

 

「そもそもそこの二人は何者だ! 此処は関係者以外立ち入り禁止なんだぞ!」

 

 

 座り込む私の前に並んで立つ背丈バラバラな四人を見て我慢ができなくなったのか、ISに乗ってたオルコットさんと篠ノ之さんが困惑半分に大声を張り上げる。

 近寄っては来ないのは、多分四人から感じる『理解の出来ない怖さ』があるから……だと思う。

 

 

「お、まさかこの歳になっての逆ナン? 俺のモテ期来ちゃうの?」

 

「いやねーから兄ちゃん。

あの二人はそこでおねんねしてる織斑一夏君LOVEだから」

 

「残念だったねお兄ちゃん?」

 

「そもそも浮気はダメ」

 

 

「な、何を言ってるんだあの男……ふざけてるのか!」

 

「兵藤さんが兄と呼んでましたが、ま、まさか彼が? ……思っていた以上に若いというか、どう見ても同年代にしか……」

 

 

 マイペースな態度に二人は肩透かしを食らったのか、これまた何とも言えない顔だわ。

 まあ、そうよね……私だってそうだもの、寧ろ正気を保ててるのが奇跡よ。

 

 

「えー? んだよ……変な期待して損したぜ。

じゃあアレだわ――おーい、そこの可愛い子お二人! 早いとこそこでひっくり返ってる彼を連れて治療した方が良いぜ! 見たところ腕とあばら骨と――ああ、左足の骨がやられてるっぽいし!」

 

「「はぁ?」」

 

 

 ……だから二人のそのリアクションも頷けるわ。

 だって、どう見ても兵藤さんが戦おうとしてるんだもの。

 

 

「ちょ、ちょっと待て! さっきから貴様は勝手な事を言っているが、何が目的だ!」

 

「何って……アレ相手に確かめたい事があるから軽く運動を――」

 

「運動って、ISも持たない非戦闘員が何をおっしゃってるんですか!? 自殺する――キャア!?」

 

「なっ、セシリ――ぐわっ!?」

 

 

 知らなければ誰もがオルコットさんと篠ノ之さんが正論だと思うやり取りであり、私も正直二人の意見側だったわ。

 けど、それを言い切る前に、偶然かそれとも分かってやったのか、それまでジーッとただ黙してた謎のISが放ったエネルギー兵器が気を取られてた二人に当たってしまい、其々の機体から煙をあげながら撃ち落とされてしまった。

 

 

「あ、かわいこちゃんが……」

 

 

 墜落し、ISを強制解除された状態で織斑一夏の近くで気を失う二人を言葉は残念そうながら、表情は他人事の様などうでも良さを感じるソレで見つめる兵藤さん。

 その表情は、兵藤一夏と顔立ちとかいう意味ではなく似ていたわ。

 

 まるで『自分が好きだと思うモノ以外は全てが無価値』と割りきった顔に……。

 

 

『死んではないわ。ただ、騒がれると面倒だと判断してちょっと眠って貰っただけです』

 

 

 そんな訳で気絶してリタイアしてしまった二人をボーッと見ていた兵藤さんに、謎のISが流暢に話し掛けてきた。

 当たり前の様に……そして兵藤さんを知っているかの様に。

 

 

「!? お、おい……あんな流暢に喋ってるって事は中に誰か乗ってる――って、ど、どうしたんだ兄ちゃんと姉ちゃん?」

 

 

 その声に兵藤一夏や簪ちゃんはちょっと目を見開き、モノアイをギョロギョロと動かす謎のIS……の搭乗者に向けて声を掛けた。

 だけどその際隣に立つ兵藤さんとオーフィスちゃんに視線を向けた兵藤一夏は声を詰まらせていた。

 

 

「…………お前」

 

「オイオイ、面白いサプライズだな」

 

 

 後ろから見ているだけの私には二人の表情が分からない。

 けど何と無くハッキリと二人がどんな顔をしているのか想像は出来た。

 

 

『ふふ……一声でそこまで察してくれるなんて、やっぱりアナタ達との付き合いは決して短くは無いわね……オーフィス、それに一誠?』

 

 

 だって、あの謎のISはハッキリと二人の名前を出したのだから。

 

 

「ちょっと兄ちゃんに姉ちゃん? ホントにあの謎過ぎるISに乗ってるっぽい人物を知らないのかよ? 今明らかに――」

 

『いいえ一誠の弟の一夏君。

私はあくまであの人により作られ、あの人の思考パターンをトレースしただけの存在。

故にこの機体の搭乗者は居ませんよ』

 

「は? AIとでも言いたいのかよ? だったらまだ中身がある方が納得できるぜ……」

 

 

 段々と謎のIS自体すら良く解らなくなってきた流れになってる気がする中、兵藤一夏に自身は無人兵器だと暴露するその喋り口調は女性のものだった。

 

 

「……………。お前、潰す」

 

 

 その時だった。

 声を聞いてから嫌に大人しくなった兵藤さんの横に立っていたオーフィスちゃんが、ただ一言冷たく言い放った瞬間、重圧というか言葉すら陳腐に感じるほどの……圧倒的なプレッシャーに私は吐き気処か――えと、ちょっとだけ……うん。

 

 

「潰す。

しつこい奴は我は嫌いだ。そうでなくてもお前は元々嫌いだったんだ――この雌悪魔」

 

「お、おいオーフィス!?」

 

「手を出さないで一誠、一夏、簪。

このしつこい雌悪魔の分身は我が潰すから」

 

「あ、はい」

 

「お、お姉ちゃんがあそこまで敵意を向けるなんて……だ、誰なのあの無人機のAIのトレース元って?」

 

 

 それは私も気になるけど……ど、どうしよう。足腰が砕けて立てないし、そ、その……こ、この歳になってこんな事になるなんて。

 

 

『所詮私は単なるAI。

故にアナタに勝てるとは思ってはいませんが……ふふ、久しぶりにアナタに嫌がらせ出来るのはAIながら……面白い』

 

 

 人間味溢れるAIの声は弾み、その声に呼応するかの様に、いつの間にか上空には笑えない数の同じタイプの機体が私達を見下ろしている。

 

 

『この程度の数でどうにかするつもりは無いわよオーフィス。

私は只オリジナルの伝言を伝えるだけ――何処に行こうが、必ず追い掛けて一誠を捕まえる……てね? ふふ、あはははははは!!』

 

「……………」

 

 

 

 数の暴力の絶望ってこういう事なのかしら……。

 だけど真に畏れるは、オーフィスちゃんから放たれる究極的なプレッシャー

 思わず……ちょ、ちょっとだけお漏らししちゃうくらいの圧倒的な力。

 

 

「ひんぬー会長かよ。

チッ、そうなると一夏と簪だけじゃ荷は重かったか」

 

「誰だよそのひんぬー会長って? 知り合い?」

 

「まぁな……まさか此方に来れてる事に俺は驚くよ。

ったく、だから行き遅れって言われんだよあのド貧乳」

 

 

 

「えい」

 

『っ!? 相変わらずの力に衰え無しですかオーフィス』

 

 

 襲い掛かる無人機を可愛らしい掛け声とは裏腹の、まるで漫画の戦闘シーンみたいな速さで次々を破壊していくオーフィスちゃんだけど、下で眺めていた三人は呑気にあの無人機のトレース元についての話をしていた……。

 

 

「この分だと曹操とヴァーリも居るのか? チッ、無駄に気配を誤魔化すのだけは上手いせいで上手く察知できねぇ……」

 

「そ、曹操? 兄ちゃんの友達に三国志の英雄が居るのかよ?」

 

「え? あぁ、曹操の事か? いや、アレの場合は完全に名前負けしてる自称だからな。本物じゃねーよ」

 

「オーフィスお姉ちゃん、やっぱり凄い……」

 

 

 小さな身体の何処にあんな力があるのか。

 というかナチュラルに空を飛んでるオーフィスちゃんはまさに無双状態で、次々と無人機を粉砕していくのを私は呆然と眺めているだけしかできなかった。

 

 

「弱い、話にならない。

一誠に近付く資格無し」

 

『ふふ、弱いのは認めますが、嫉妬は見苦しいわよオーフィス? その分じゃ、まだ一誠としてないんでしょう?』

 

「だから何? 少なくともお前相手にも一誠にその気は無い」

 

『でも、脈が完全に無いわけ――』

 

『じゃ――』

 

『無い――』

 

『わ……ふふ』

 

「……………。潰す!」

 

 

 

終わり

 

 

 

オマケ

 

 

 え、えぇ……そりゃ無いよ。

 折角いっくんと楽しめると思ったのに、気付けばゴーレムの制御は外され、あのオーフィスってのにボコボコされてるなんて……。

 

 

「チッ、やはりオーフィス相手に思考トレースだけの機械では掠りもしないか……」

 

「あぁ、束さんの力作が虫けらみたいに……」

 

 

 ワンパンで粉々にされては映像が途切れるので、次々と動けるゴーレム視点の映像に切り替えているけど、気付けば60体近く向かわせていたゴーレムは残り5体を切っている。

 多分もう30秒も持たない……。

 

 

「ソーナちゃんで慣れてるとはいえ、あのちっちゃい女の子の力はヤバすぎるよ……」

 

「そりゃあ当然よ。

私たちの世界では世界最強の龍神と呼ばれてましたからね」

 

「ソーナちゃん自身よりも強いんだよね?」

 

「ええ、ハッキリ言って勝てませんよ。一誠ですらスキル無しの真っ向勝負だと負けますからね。私は精々一矢与えられたら良い方かしら」

 

「マジかよー……。というかいっくんの凛々しい姿がぁ……」

 

 黒い……無機質な瞳は何処までも読めないまま、最後のゴーレムが殴り砕かれ、そこで映像は完全に消えた。

 どうやらたった5分で会話混じりでゴーレムが全滅させられたみたい。

 

 あっははははー……天才とか言われた束さんもこれには自信ぶち壊れさ☆

 

 

「チッ、ここまでね。

だけど私の存在は知らしめられた……ふふ、直接の再会が楽しみだわ」

 

「そんな事よりいっくんの凛々しい姿が……」

 

 

 舌打ちするソーナちゃんはまだあの一誠って人に自分の存在を教えられたから良いけど、私はいっくんに束がやったんだよって解って貰えてない訳で……グスン。

 

 

「はぁ、いっくんはまだ私が忘れてると思ってるんだろうな……」

 

「告げられるチャンスはちゃんとあったのに、貴女がヘタレだからでしょう? 全く、自分で慰めてばかりの性欲爆発兎はこれだから……」

 

「そんなにしてないもん! い、1日15回しかしてないし……」

 

「十分し過ぎよタバネ」

 

 

 昔みたいに早くなりたいな……。

 

 

「一夏って子も大変ね、仮にタバネを受け入れたら毎日搾り取られそうで」

 

「じ、自分だって人の事言えないくせに……」

 

 

 最初はちーちゃんの弟ってだけだと思ってた。

 だから、初めて会った時もそんなに興味なんて無かったし、私も態度に出してたと思う。

 

 けどいっくんはそんな私に対しても笑いながら言ってくれたんだよね……。

 

 

『あ、あの……これ……』

 

『なに? 箒ちゃんと遊んでたんじゃ――え?』

 

『そ、その……すきです、大人になったらけっこんしてください…! そ、それじゃあ!!』

 

 

 私はこの言葉を、モジモジしながら花を渡して言ってくれた時の姿を忘れない。

 

 

『い、一夏! 姉さんは忙しいから私と――』

 

『い、良いよ……邪魔なら束お姉ちゃん見てるだけにするから……邪魔なんてしないよ』

 

『なっ!?』

 

『おい束……お前、人の弟を何たぶらかしてる?』

 

『えー? 別に何もしてないけどなー束さんは……ふふ♪』

 

 

 だから偽物が偽物だってすぐに分かったんだよ、いっくん?

 

 

「やっぱり直接会いに行くべきよタバネ」

 

「そ、そうかな……。で、でもいっくんは私が偽物を信じてると思ってるだろうし……」

 

「だからその事を直接告げるのよ。そうすれば距離は縮まるわ」

 

「で、でももう簪って子が隣に居るし……」

 

「だから何よ? 正式に契りすら交わしてないのであるなら――いや、例え交わしてあったとしても割り込む気位を持ちなさい。というか、慰める程に引きずってるならそうするべきよ」

 

「う、うん……」

 

 

 だから……だから……今度は私が勇気を出す番だから……もう少し待っててね?

 

 

 

 終了

 




補足

まあ、オリジナルじゃないのでこんなもんでしょう。

つーか、完全にオーフィスたんの無双回に……。


その2
束さんマジ束姉ちゃん。

覚えてた理由は――ベッタベタなショタ一夏のコクられでした。

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