色々なIF集   作:超人類DX

906 / 1135
二話前の続き。

外堀じゃなくて牢獄の鉄格子に囲まれ始めている執事


ナンテコッタイな執事

 

 

 一度目にて自分の致命的過ぎる弱点を知った日から、二度とアルコールの類いの接種は辞める事にした。

 そうでなければあらゆる意味で取り返しの付かない事になるし、自分ではなくその取り返しの付かない展開に周りを巻き込んでしまうから。

 

 だけどやってしまった。

 完全に油断をしていた。

 

 胃と喉が焼けるような感覚のするあのおぞましい液体をブドウのジュースと思って飲んでしまったその瞬間、目の前の景色が反転と暗転を繰り返した。

 そして意識を取り戻した時、お世話になっている女の子が半裸で寝ているのを見た時から、日之影一誠は―――

 

 

 

 

 

「いい加減出てきなさいイッセー!」

 

「………ダメですね。

なんの返事も反応もありません」

 

 

 世話になっている保健医の家の小部屋の隅っこで体育座りしながら引きこもってしまうのだった。

 

 

「これは久々の重症ね……」

 

「以前にも同じことが?」

 

「ええ、私の娘達に同じことがありましてね…」

 

「それはまた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「保護者からの連絡がありまして、今日も日之影君は欠席です」

 

 

 あの日以降、学校にすら来なくなってしまったイッセーが今日も欠席するという旨の説明を、昇天寸前の担任の先生から告げられると、ひとつだけ空いている席を見ながらイッセーとそれなりに関わりのある者達がヒソヒソと話し合っている。

 

 

「どうしたんだろうねいっちーは? これでもう五日目だよ?」

 

「ねぇ、結城は本当に知らないの? 日之影が休みな理由とか」

 

 

 いつぞやの席替えによってイッセーとリトの二人と席が近くなっていた沢田未央と籾岡里紗の二人に聞かれたリトは困ったような顔をしながらもなんとか知らぬ存ぜぬを貫く。

 

 

「い、忙しいことでもあるんじゃないか?」

 

 

 まさか間違って飲んだ酒のせいで泥酔したイッセーが、妹とララの妹の片割れにやらかした等とは言えないし、あの正気に戻った時のイッセーが見せた焦燥っぷりを思い返せば尚更だ。

 

 

「ララちぃも知らないの?」

 

「う、うん……心配だよねー?」

 

 

 この事は特にララにはしつこいほど言い聞かせたこともあり、ララも下手ではあるものの知らぬ存ぜぬを貫いている。

 しかしリトとしてもまさか五日も学校に来ないばかりか、自宅の部屋に引きこもるとは思ってはいなかったので、心配といえば心配だ。

 何せあまりのショックに当初本気で自分で自分の頭を叩き割ろうとしていたくらいなのだから。

 

 

「忙しいって、学生は学業こそが本業なのに、他に忙しいことがあるなんて良くないわ」

 

 

 しかし何時までも知らぬ存ぜぬで誤魔化すには無理があるのは明白であり、証拠にイッセーと隣同士の席である古手川唯は、心配しているのを隠しつつサボりを疑っている。

 

 

「確か日之影って昔はかなりのワルだったらしいじゃん。

案外ホントにサボりなのかもしれないわね」

 

「えー? そうかなぁ? 確かにそんな話があったみたいだけど、いっちーってそんなワルって感じでもないじゃん」

 

 

 里紗の言葉に、実はそれなりにイッセーと話をしたりする未央が返せば、西連寺春菜やあの唯もコクコクと頷く。

 

 

「私よくマロンのお散歩に行く時、結城君の妹さんとララさんの妹さんとお話しながら歩いているところを見たことあるし、その時の日之影君って普通というか……」

 

 

 つまり『ワルっぽくは見えなかった』と言いたい春菜に内心リトはちょっと春菜にデレデレしながらも『その美柑とモモが理由なんだよな……』と思っていると、教室の扉がこれでもかと勢い良く開けられる。

 何事かとリト達のみならず、クラス中が騒然となりながら開け放たれた扉へと視線を向けると、そこにはある意味でこの学校の有名人である天条院沙姫とその一歩後ろに控える様に佇む九条凛と藤崎綾の――最近はお笑いキャラ扱いされがちな三人組だった。

 

 

「結城リト! 五日も日之影さんがお姿を現さないとはどういう事なんですか!?」

 

 

 全力で嫌がって逃げるイッセーとそれを追いかける沙姫は学校でも一種のお約束イベント化しているのもあって、イッセーの名前を出した瞬間クラスメート達は察した顔をしてしまう。

 

 

「や、で、ですからオレも先輩がなんで休んでいるのかは知らないというか……」

 

「嘘おっしゃい! 学校に来られなくなった前日に貴方の自宅に行っていることは既に調べがついていますのよ! さぁ、キリキリと吐きなさい! 日之影さんはどこですか!?」

 

「お、落ち着いてください天条院先輩。

結城君より御門先生に聞いた方が確実ですし、私達も後で聞きに行こうと思ってましたし……」

 

「む……。確かに日之影さんはお義母様と共に御門先生のご自宅にホームステイをされていますわね。

………良いでしょう、今は大人しく退いて差し上げましょう」

 

 

 何故だかこの沙姫はまるで追っかけのようにイッセーを見つける度に追い回すのは彩南高校に通う者なら誰しもが知っているし、その度にイッセーから全力で逃げられるのも知っている生徒達は、嵐のように現れて嵐のように捲し立てて、嵐のように去っていった先輩女子のパワフルさにすっかり圧されてしまうのであった。

 

 

 そんなパワフルな紗姫が放課後になった途端当たり前のような顔をして教室に現れれば、さっさと行きますわよ! という言葉と共に先導する形で保健室に行き、自宅に住まわせている御門涼子にイッセーの様子を訪ねてみる。

 

 

「あー……まあ確かに五日も休むとなれば心配にはなるわよねぇ?」

 

「ええ、それに五日分のプリント等も届けてあげなければなりません」

 

「ですから日之影さんのお部屋の鍵をお貸しくださいまし!」

 

『…………』

 

 

 沙姫はともかく、何故か妙に熱意のある唯の両方に詰め寄られるかのように言われてしまう涼子は『ふむ』と思案しつつ唯と紗姫の後ろに居るイッセーの『友人達』を見る。

 

 リト、ララ、春菜、里紗、未央といったクラスメートや一応一年枠で入ったナナとモモはまぁわからないでもない。

 しかし何気にヤミだのメアだのネメシスまで来ている辺り、イッセーという男は良くも悪くも人を変える人間なのかもしれないと涼子はぼんやりと……モモとネメシスが口喧嘩しているのを眺めながらフッと笑みを溢す。

 

 

「いっそアナタ達が彼を部屋から引っ張り出してくれそうな気がするから、頼んでみようかしら?」

 

『!?』

 

 

 ある意味彼の元の世界の近しい悪魔達と比較しても、キャラ立ちに関しては負けてない気がしてきた涼子は、何時までも部屋に引きこもって体育座りしている彼を引っ張り出す為に、家の鍵を預けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 何をどうしたら良いのかさっぱりわからなくなってしまったが故に引きこもってから早五日目。

 文字通りその場から一歩も動かずの飲まず食わずの状態で体育座りのままであるイッセーも流石にこのままではマズイような気がしてきた。

 自分のやらかしに関してヴェネラナは『これは責任案件ね』と言うが、何をどうしたら良いのかよくわからない。

 五日の引きこもりの間に、家に住み着いた幽霊の村雨静に絡まれたので、適当に消滅の魔力を投げつけてやって追い払った後も考えたが、責任とは何ぞやとクソ真面目に考えすぎて最早責任の意味が曖昧にすらなっていた。

 

 そんな時だったか、覚えのある気配が割りと大量に家の前に現れたかと思えば、そのまま入ってきて部屋の前に集まっている事に気づいたのは。

 

 

 

「ちょっと日之影君!? 何時まで引きこもっているのよ! 早く出てきなさい!」

 

「ちょ、そんな威圧的な言い方は……」

 

「日之影さん! お顔を見せてください!」

 

「……………」

 

 

 そして部屋の戸を叩く音と共に聞こえるその声にイッセーの顔は久々に歪んだ。

 それは決して唯の声が聞こえたからではなく、沙姫まで現れたからであるわけで……。

 

 

「………」

 

 

 

 窓から逃げるか? と一瞬考えたが、逃げたら余計厄介な事になりそうな気がしてきた。

 そう考えたイッセーは五日間全く動かさなくて凝り固まった身体を久々に稼働させて立ち上がると、のそのそと扉を開け――

 

 

「あ、出てきた……」

 

「ひ、日之影さん? ず、随分と窶れているようですが……」

 

「だ、大丈夫ですかイッセーさん?」

 

「……………」

 

 妙に知った顔が多い事に驚く以上に、彩南高校の制服を着たモモとバッチリ目が合ってしまったその瞬間、イッセーは反射的に扉を閉めようとする。

 

 

「ダメよ日之影君!」

 

「そうですわ! せっかくこうしてお会いできましたのに!」

 

「な!」

 

 

 しかしそうはさせんと妙に息がぴったりな唯と紗姫がドアとの間に足を割り込ませて阻止すると、そのままグイグイとドアを引っ張って開けようとしてくる。

 

 

「か、帰れ!」

 

「帰らないわ! 明らかに不健康そうな顔のアナタをほっとけないわ!」

 

「体調が優れないのでしたら私が看病をしますわ!」

 

「要らん! 帰れ!」

 

 

 閉めようとするイッセーと阻止しようとする唯と紗姫のコントじみたやり取りが続く内に、流石に色々と疲れていたのか、やがて諦めたイッセーは渋々わざわざ来てくれた子達を部屋に招いてあげることにした。

 

 だが、寝るためのベッドと着替えの為の小さなクローゼットと小さな机と椅子以外はなにもない――独房のようなテイストの部屋を見た年頃の少年・少女は別の意味で絶句する。

 

 

「これが日之影君のお部屋?」

 

「ベッドと小さいクローゼットと机だけしかない……」

 

「……まるで独房だな」

 

 

 何気について来ていたネメシスのポツリとした呟きにモモですら思わず同意してしまうのと同時に、イッセーのプライベートを今まで知らなかった事を改めて自覚させられる。

 

 

「こ、こんな生活感のないお部屋……」

 

「ただ寝るだけの部屋だから……」

 

「ふ、不健康よこんなの! せめて本棚を置くとか――」

 

「例えばベッドの下にスケベな本とか―――無いわね」

 

「ちょ、な、なにしてんだよ籾岡!?」

 

「クローゼットの中は制服と燕尾服だけかー……」

 

「や、やめなよ未央!」

 

 

 テレビもなければラジオも雑誌もない。

 言うなればただ着替えるか寝るだけの部屋は、年の近い少年・少女にとってもそれなりにショッキングなものだったらしい。

 

 だが何故か誰一人として帰らずに居座り始めた事により。

 そして外から帰ってきたヴェネラナが急に悪乗りし始めたことにより。

 何よりモモが普通に美柑まで呼び出したことにより、冷たい雰囲気しかなかったイッセーのお部屋はある意味色が付くことになるのであった。

 

 

「折角皆さんが心配して来てくれたのだから、少しゲームでもして遊びましょう?」

 

「テメーの年考えろババァ!」

 

「良いじゃないの。

まずは無難に王様ゲームでも……」

 

 

 

 

 

「………………すまん」

 

「そこまで気にされると、嫌だったのかと心配になりますよ……」

 

「ホントだよ。逆に傷つくし……」

 

「……。ごめん」

 

 

 しかし改めて素面の状態で話し合う事ができたのだけは、イッセーにとって+だったのかもしれない。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 取り敢えず引きこもり生活から抜け出して何時もの生活に戻れたのも束の間……。

 デビルーク三姉妹の護衛長ことザスティンがイッセーにあるものを渡してしまった事で色々と大変な事が起きた模様。

 

 

『話は聞いたぞ小僧。

理由が理由にせよ、娘――てかモモに手ェ出した以上、親としては黙っている訳にもいかないんだよなァ?』

 

「………………」

 

『まあまあ落ち着けよ小僧? 別に弱みを握ったとかそんな話じゃねぇから睨むなっての。

しかしモモに手ェ出した以上はちゃんとしろって話だし、モモからも話や気持ちは聞いた。

だからだ、宇宙中にオメーとモモが婚姻すると通達しておいてやったから精々俺様に感謝しろ?』

 

「………………………………………」

 

 

 過去二度引き分けた三姉妹の親父に外堀どころか牢獄に放り込まれていたり。

 

 

「ど、どうしましょう……?

私はその……全然嬉しいですけど、やっぱりイッセーさんの意思が問題ですし……」

 

「………逆に俺がどうしたら良いのかがわからなくなってきた」

 

「イッセーさんは嫌ですか……?」

 

「嫌というか、わからないんだよ……」

 

 

 転移ではなく憑依したもしもの世界でならあり得ぬやり取りはこうして少しずつ進む。

 

 

「や、やべーっす先輩」

 

「何が?」

 

「前先輩と美柑との間にあった事が母さんにバレてました……。

それで今から先輩を呼んでこいって……」

 

「」

 

 

 酒は飲んでも呑まれるなとはまさにこの事だったと日之影一誠は身を以て痛感するのだった。

 

 

「不謹慎ですが、後はイッセーさんが頷いてさえくれたら悪魔の方々よりも先に立てます……!」

 

「大分うちのお母さんに言われたみたいだけど、最終的にはいけそうな流れに持っていけたしね」

 

「…………何故キミ達は当たり前の顔して俺の部屋で寝ようとするんだ」

 

 そして……。

 

 

「嫁? 読め? ヨメ? なぁ結城君、ヨメってなんだ? 食い物か?」

 

「ちょ、引く程話がうまく進みすぎて混乱するのはわかりますが、そんな悟空みたいなボケかまさないでくださいよ……!」

 

「えーっと、もしかしたらイッセーが私とリトの義弟になるかもしれないんでしょ? 良いことじゃないの?」

「話はそんなに単純じゃないんだよララ! けど確かにもしそうなったら先輩が義弟になるのかオレの……うーん」

 

 

 執事の明日は誰にもわからない。

 

 

「先に言いますが、仮にウチのイッセーとそうなったとて、ウチの娘達は間違いなく取り返しに来ますわよ?

そちらの星でも認められているように一応我々悪魔も一夫多妻は認められていますし、なおのことね……」

 

「リアスさんとソーナさん、そしてセラフォルーさんですか?」

 

「ええ、それに孫娘のミリキャスも……」

 

「凄いわねイッセー? 世界を越えた一夫多妻なんてアナタくらいじゃない?」

 

「黙れ……!」

 

 

終わり




補足

何故かやらかした相手がロリ気味なのは気のせいだ。

その2
ここから完全にスイッチを切り替えたモモさんと美柑さんが本気出し始めます。

具体的には親父さんが勝手にやっちまった事を受けてから。



その3
ママン主催のゲームでもやらかしたらしい。
そのせいで変な火が紗姫様についたとか、古手川さんが割りとショック受けてたとかあったとか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。