色々なIF集   作:超人類DX

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続き


二度目の夏ナンパ

 俺の異常の多分、怒りだとか憎しみといったものを爆発させていてこその真骨頂だったと思う。

 

 俺を利用するだけしたクソッタレ共への怒り。

 たかだか悪魔風情に強制的に下僕にされた程度で弱くなる己への怒り。

 

 そういった感情を燃料にし続けたからこそ、人でありながら人でなしになれた……と思うし、それこそがイッセーとしての捻れた人生だった。

 

 それを踏まえると、何故俺の異常が現在欠片にまで消えているかの合点がちょっとはつく。

 

 

 

 

 まず俺は青野月音としてあまりにも普通に育ったから。

 

 イッセーとは違って異常さゆえに両親に捨てられることもなく、イッセーの時では経験できなかった『普通』を体験した。

 

 故に俺はそれまで抱いていた怒りと憎悪を薄めた。

 

 そしてこの世界には畜生共が居ない。

 

 厳密には一応存在はするのだけど、殺してやりたい程憎いと思うようなのとは取り敢えず出会ってない。

 

 

 だから俺の異常は薄れた。

 だからこそ進化が止まり、そして停滞している。

 

 それが良いことなのか悪いことなのかはさておき、ドライグ曰く、『何でもかんでも殺しまくってた頃のお前より、今のお前の方が良い』と言うけど……。

 

 

「今更だが、この俺が人間じゃない奴等と修行してるなんてな。

ガキの頃だったら考えられなかったぜ」

 

「あまり聞きたくはないが、もしお前の言う『ガキの頃』だったらどうしてる?」

 

「多分、話も一切聞かずに皆殺しにしてたかもな……。

今にして思えば毎日畜生共をぶち殺さないと気が済まなくなるくらいイラついてたからなぁ……」

 

 

 確かに、常にイラついてたあの頃よりかは色々と気楽な気がしないでもない……んだよなぁ。

 

 

 

 ある程度本気を出しても問題ない程度の大結界空間での修行は当然続ける月音だが、流石に暴れすぎて結界の張り直しをしなければならないと理事長に言われたので一旦修行を中断することに。

 

 そのついでとばかりに理事長から『休暇のつもりで友人達と遊んだらどうだ?』と慰安旅行的な提案をされた。

 

 

「行き先は人間界が良いだろう。

ちょうど季節も夏で行楽シーズン――」

 

「しゃあっ! 水着ギャルのナンパ旅行の時間じゃー!!」

 

「…………」

 

『アホだ……』

 

 

 その行き先が人間界と聞いたその瞬間、月音のテンションは鰻登りとなったのは言うまでもない。

 

 

「くーくっくっく……! 今年こそ……今年こそ人間の女の子とプラトニックな一夜を――ぐへへへ!」

 

「……彼は人間の女性に関してはこうなのか赤い龍よ?」

 

『……ああ。

だがこんな下心満載な顔しかできんから結果は常にお察しだ』

 

 

 

 

 

 大体人間の女の話となると、嘘みたいにだらしない顔をする……というのは萌香達も知っていた。

 

 

「良いか貴様等ァ! 絶対に俺のナンパの邪魔をするじゃねーぞ!」

 

 

 そう人間界へと続くバスの中で萌香達に言う月音だが、言われた女子達の視線はとても冷ややかなものだった。

 

 

「邪魔なんぞしないが、お前の事だからどうせ悲鳴でもあげられて痴漢扱いされるのが関の山だろ」

 

「あからさま過ぎるのよ色々と……」

 

「なので今年は私とあそびましょう!」

 

「そうだそうだ、人間の女よりよっぽど楽しいぞ?」

 

「ある意味人間の女の見る目が正しいわね」

 

 

 全員間違いなく月音のナンパは失敗するに決まっていると言うし、そもそもそこら辺の人間の女にヘラヘラとナンパする姿なんて見たくもない。

 

 

「というかなんで旅行先が海なのよ? バンパイアである私とお姉ちゃんは泳げないってのに……」

 

「は? なんだお前、泳げないのか?」

 

「べ、別に泳げない訳じゃない。

ちょっと水が苦手なだけで……」

 

 

 故に萌香達は徹底して月音のナンパの邪魔をしてやろうと既に水面下で結託している―――という事実を本人は知らず、去年と比べたら大分打ち解けている状況の中バスで移動をする。

 

 

「確かに泳ぎ方はあまり知らないし、月音がどうしてもと言うのなら教える権利を与えてやらんことも――」

 

「月音さーん、私も泳ぐの得意じゃないので教えて欲しいですぅ」

 

「あ、じゃあ私も教わろうかしら?」

 

「えー……? まあ、それくらいなら別に―――って、なんか言ったかぽんこつ1号?」

 

「………………………」

 

「は? なに泣いてんだよ?」

 

「月音のばか……!」

 

 

 こうしてやはり色々と空回りする裏萌香が早速半泣きとなる旅行がスタートするのだが……。

 

 

「月音と知り合ったのは私が先なのに……」

 

『まあまあ、チャンスはまだまだあるから。

私も今回は手伝うわ』

 

「た、頼むぞ本当に。

このままでは月音が……」

 

『はいはい。

ちゃんとドライグ君にも言っておいたから安心しなさいって。

その代わり、何回かドライグ君には入れ替わって貰う約束させたけど…』

 

「…………お前、そっちが目的だろう?」

 

『ええ、そうなるかも。

良いじゃない別に、アナタ達を見てると私も……って思っちゃうんだもの。

しかもある意味月音より難しいしドライグ君って……』

 

 

 同時に表の萌香が少々ガチになり始めるのだ。

 

 

「は? 夜になったら身体を貸して欲しい?」

 

『ああ』

 

「全然構わないけど何で?」

 

『表の方のモカが夜になったら話がしたいと言っててな。

別に断る理由もなかったからだが……』

 

「あー………うん、わかった」

 

 

二度目の夏編……始まらない。

 

 

 

 

 

 案の定人間の女性には滅法弱すぎる男である月音のナンパは、危うく通報されかける程に一々酷く、そしてその度に横から萌香や胡夢や紫達といった見た目美少女が邪魔をするので、成功なんてする筈もなかった。

 

 

 

「キイッ!!」

 

「がばっ!?」

 

「シャラッ!!」

 

「ギャアッ!?」 

 

「ディィィヤッ!!!!」

 

「グゲェェッ!?」

 

 

 そんな状況の最中、どういう訳か一言も声を発せずスケッチブックに自分の言いたいことを文字にする謎の少女が、ヤの付く連中に追われていて助けて欲しいと懇願してくるトラブルに遭遇。

 

 その少女を燦と呼びながら追ってきたスジモンさんに、本来なら月音は気絶させられ、そのまま封印を自力で解けない萌香もろとも拐われるという話に展開してしまうのだが、スジもんさんの一人が月音の後頭部に一撃を喰らわれた所で気絶する筈もなく、案の定スジもんさんが持っていたドスを奪い取った月音が、某嶋野の狂犬ばりの変態スウェイとアクロバットな動きで次々とスジもんさんを切り刻み……。

 

 

 

 

 

「雑ァ魚が」  

 

「げふっ!?」

 

「……………!」

 

「わ、私の出番が。

月音との華麗なコンビネーションを見せる筈だったのに……」

 

 

 見事なまでの返り討ちをしてみせる月音。

 そのあんまりな残虐ファイトに燦と呼ばれた喋らぬ少女は、狂気に嗤う返り血だらけの月音に怯え、最近胡夢にオイシイ所を取られ気味だった裏萌香は自分の出番がなくなったと肩を落とす。

 

 

 

「チッ、シケたチンピラ共だな。

全然財布に金入ってねーじゃんか」

 

「…………」

 

「おい、当たり前のように金を奪い取るな。

この女が完全にお前に怯えてるぞ……」

 

「助けろって言ったのはそこの女だろ。

方法にケチつけられる謂れはねぇぜ」

 

 

 

 そんな事なぞ知らないとばかりに、死にかけているスジもんさん達から財布を徴収する月音の、チンピラ以上のチンピラっぷりに、助けて貰えたとはいえ完全に怯えて裏萌香の背中に隠れてしまう燦なる少女。

 実は学園OBだったりするのだが、彼女が人ではないと察知したのもあってか月音の態度は割りと塩だ。

 

 

「それよりも早くそいつらを……」

 

「あ? こんなの適当に下水道にでも流せば良いだろ」

 

「……。お前のやり口のが余程ヤクザだな」

 

『躊躇い0なのがまた……』

 

 

 顔の判別も、元の原型すら不明になるまで八つ裂きにしたスジもんさん達を、当たり前の顔で下水道に捨てていく月音のアウトレイジっぷりには裏萌香も思わずツッコミに回る他ない。

 そしてそんなOBこと音無燦に案内される形でやって来た民宿にて――月音は暴走した。

 

 

「み、みぼっ! 未亡人だとぅ!? お姉さん! その寂しそうなお体を是非この俺のマグナムで―――あげばっ!?」

 

「気にしないでください。何時もの発作なので」

 

「は、はぁ……?」

 

 

 下品も下品なナンパを阻止する萌香達は、なにやら色々と訳ありな民宿にて、やはりトラブルに巻き込まれる事になるとはまだ知らない。

 

 

「おい音無先輩よぉ! まりんさんの入浴時間を教えろ! 助けてやったろうが!?」

 

「…………」

 

「ちょお、やめーや……引いてるどころかあの燦センパイが養豚場の豚を見るような目しとるやんけ」

 

「けっ! そんなツラされようが俺の精神はノーダメージだっつーの!」

 

 

 だがそのトラブルによって成長をする者もまた……。

 

 

「ふふふ……♪ 二人きりねドライグ君?」

 

「二人きりではないだろ、単にオレもお前も入れ替わっているのだからな」

 

「もー、ムードが台無しよドライグ君……。

まあでも……こうして夜の海を一緒に見られるし、その鈍さは許してあげる!」

 

「?? ああ……」

 

 

 

 

 

 

「う、うわー……表のモカさんと月音さんと入れ替わってるドライグさんがあんな……」

 

「た、確かに何故か不倫現場を見ちゃってる気分ねこれは……」

 

「というより大人な雰囲気というべきだな……」

 

 

 

 

 

『うがっ!? ま、また感覚がダイレクトに……』

 

『わわっ!? も、もも、もう一人の私が今ドライグの頬を舐めたぞ!?』

 

『言うなバカ! か、感覚がストレートに伝わるんだよ――ひぇっ!? な、なにしてんだドライグ!? い、今ドライグがもう一人のお前の耳を噛んで……』

 

『わ、私が言うのもなんだが、表の私に誘導されすぎじゃないかドライグは?』

 

『た、確かにそうかも。

末恐ろしいな表のお前は……』

 

『うー……どうしよう月音……? 変な気持ちになってしまった……』

 

『し、知るか!』

 

 

 裏テーマ子持ち親同士の不倫旅行―――始まらない。

 

 

「ふふふ……大好きよドライグ君……♪」

 

「……返答に困るぞ。

それよりさっきから月音ともう一人のお前が大騒ぎしているのだが……」

 




簡易人物紹介

ドライグ
 ご存じボイスがマダオなドラゴン。

 一誠(月音)の相棒であり、父親代わりでもあったせいかすっかりパパなドラゴン化している。

 神器としての封印については進化により突破しているのだが、本人は月音と生死を共にするつもりなのでそこまで意味もない。


 そんなパパイグは現在表の萌香と互いに相棒を持つ者同士ということで気が合うらしく、たまにお互いが表面化してふれあうと不倫現場みたいな雰囲気になる。


表の萌香

 バンパイアとしての力を封じ込めた側の人格――ということらしいのだが本人も知らない何かしらの秘密があることに定評のある少女。

裏の自分があまりにもぽんこつで子供じみてる為、段々自分の立ち位置が姉……もしくは母親臭くなっている気がしてならないと思う今日この頃。

 ドライグのどこまでも人間臭い性格に惹かれた事で、子供達よりも恋愛しているのは秘密――でもないし、スキンシップの度にあわあわさせる人妻オーラを放つ。

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