色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

なんか……うん。


師弟でもあり、兄妹でもあり、相棒でもあり――――

 

 

 

 自分達とは違う理由でこの世界へと流れ着いた青年。

 

 話をするだけで、正直まともな教育を受けていたのかも怪しい青年。

 

 他者を平気で傷つける残虐性の塊のような青年。

 

 

 つまり、どこを切り取ってもチンピラにしか見えない青年が、死んだと思われていた生徒の一人と共に旅をしている仲間の一人であると聞かされた畑山愛子は諸々の意味もあってとても心配だった。

 

 平気で人に暴力やカツアゲをするような男だし、言動はドスケベだし、自分の事を寸胴チビのまな板女だと罵倒するような男と一緒に居れば、悪い道に行ってしまうのではないか。

 

 そんな懸念をしていた愛子だったのだが、結局は彼の理不尽めいた暴力に頼らなければならないのだと気づかされたのは、再会

した生徒や仲間達と共に六万もの魔物の軍勢と戦うその姿をその目に焼き付けている時であった。

 

 

「シアこの先を見ろ、この先に出てくるだろう敵を、そして自由を!

お前が自由を求めるのならば、そして俺の相棒になるのならば……こんな所で負けるのは許さねぇ!」

 

「っ!! ええ……私は必ず乗り越えて見せます、この目の前の敵も――そしてイッセーも!」

 

 

 再会した生徒、南雲ハジメが錬成師の力を駆使して作成した重火器を使っての先制攻撃を魔物の群れに仕掛けた後、後方支援に回っていたユエが魔法を使って大地を消し、町へとたどり着く道をひとつにし、それでも向かってくる魔物達をイッセーとシアと重火器を外したハジメの三人で迎え撃つ。

 

 

「行くぞシア! イッセー!」

 

「はいです!」

 

「絶対に生き残って人妻お姉さんとエロイことしてやんよー!!」

 

 

 

 端から見ればただの無謀にしか見えない戦いだが、ハジメが、ユエが、シアが……そしてイッセーが、次々と魔物達を粉砕していくその姿に、町の建物の上から見ていたクラスメート達と愛子は改めて感嘆してしまう。

 

 

「すごいな……あれが今の南雲達の力か」

 

「南雲……」

 

 

 誰しもが、過去のハジメのことを知っているからこそ、今の強くなったハジメの姿にただただ驚く中、そんなハジメと――いや、何故か今だけはハジメよりも力強く魔物達を返り血に服を汚しながらも粉砕していくイッセーの姿を、直前まで追いかけ回されていた愛子は見つめている。

 

 

「………」

 

 

 心底小馬鹿にした顔で、年下のくせに自分の事を寸胴だのまな板だの貧相だとの罵倒してきた青年。

 亜人であるシアのことを神殿騎士のデビットが差別したその瞬間に見せた人とは思えない残虐性を持った青年。

 

 恐らく、きっと、この世界で出会うことがなかったら一生関わることなんてなかったアウトローな人種。

 

 

「チッ……流石に数だけは多い―――」

 

「イッセー! 後ろです!!」

 

「ッ!? 危ねェ……助かったぞシア!」

 

「いえ! 私は私の背中を預けます。

だからイッセーの背中は私に任せてください!」

 

「はは、あんな偉そうな事を言っておきながら助けられるとは、あのビビりお嬢さんが言うようになったもんだ。

よっしゃあ……! なら信じるぞシア!!」

 

 

 だけどただのアウトローかと思えばどこか微妙におかしくて。

 楽しそうに笑いながらタップダンスといった大道芸をして見せた時の彼はとても悪い人には思えなくて。

 

 

「南雲もだけど、あのイッセーって奴もすげーな……」

 

「ただのド変態男だと思ってたけど、やっぱデビットさんを八つ裂きにした強さは本物みたいね……」

 

「特にあのシアって子とものすごく息がピッタリで、まるで踊ってるみたい……」

 

 

 そんなイッセーというよくわからない青年がどうしても気になってしまう愛子は、生徒達がハジメやイッセー達に感嘆の声をあげている中ずっとシアやハジメと共に『楽しそう』に魔物達を蹴散らすその姿を見つめ続け……そして小さく呟くのだ。

 

 

「アナタのその暴力性は怖いです。

でも結局私達――いいえ、私はそんなアナタの力に頼るしかできなかった。

南雲君に言われましたけど、確かにムシの良い話ですよね……」

 

 

 躊躇もせずデビットを嗤いながら半殺しにした時に感じた恐怖を拭えてもないのに、そしてそんな暴力性に嫌悪していたのに、結局は彼の暴力性を含めた『力』に自分達は守られている。

 

 

『イッセー本人は特に気にも止めないだろうが敢えて言うぞ?

お前達は、他人を嗤いながら八つ裂きにした挙げ句カツアゲまでするイッセーのその『チンピラさ加減』に守られてるんだとな。

否定したいならすれば良いし嫌悪を持つもの自由だが、それだけは覚えておけ』

 

 

 いくら正しいことを主張しても、それを貫ける強さがなければ無価値で無意味である。

 そして人としてはきっと正しくはない生き方をしているイッセーは、己の意思を貫ける力がある。

 

 

『ぜぇぜぇ、さ、最悪だ。

戦う前に余計な体力を消費してしまったぞ……』

 

『ぐ、私もつい挑発に負けてしまいました……』

 

 

 対して自分にはそんな力はない。

 それなのにイッセーがシアと――割りとイケナイ真似をしていることに対して『良くない事だ』と注意をしたり、キレたイッセーの残虐性に恐怖と嫌悪を感じる資格なんて果たしてあるのか?

 

 

『チッ、おい寸胴まな板半ロリ教師。

魔物共をぶちのめした後は後で膝カックンしまくってやるからな』

 

『覚えてろです!』

 

 

 それなのに彼は、先程の追いかけっこの後、シアと共に悪態をつきながら魔物達との戦いに赴く彼に対してつい呼び止め、ハジメに言われた事を思い返しながら訊ねた時、こう返したのだ。

 

 

『はい? その気になればアンタなんか秒で殺せるのに、なんで殺さないんだって? いや、殺したらはっつぁんに怒られるどころじゃすまんだろうし、そんなナリしてるとはいえはっつぁんの先生さんなんだろう? そりゃあ先生じゃなかったら――そうだな、俺の名前聞いただけでゲロ吐くくらいのトラウマくれてやっても良いけど……別にそんな恨みも無いし』

 

 

 そう言いながら、あっかんべーしてくるシアを連れて戦場へと赴くイッセーの背中が大きく――そして遠くに行ってしまったような気がした。

 

 

「本当に変な人。

だけど、どうかご無事で……」

 

 

 だからこそ畑山愛子は戦うその姿を目に焼き付けんとするのだ。

 

 

 

 

 

 

 生きる為には、自由である為には覚悟が必要だ。

 

 三年前、恐らくはこの世界でも最強の強さだったであろうイッセーから初めて教わった事は戦う技術ではなく『精神面』的なものだった。

 

 争い事を嫌う兎人族達は、他を蹴散らしてでも生きるという弱肉強食的な考え方は当時だれも持ってはおらず、シアもまた例外ではなかった。

 

 

「ウォラァー!!」

 

「てぇぇぇい!!」

 

 

 しかし、ただ『世話になったから』という理由だけで、同族である筈の人間はおろか神すらも敵に回してでも自分達の『自由』を守ろうとしてくれたその姿を見たことで、一族達は『覚悟』をした。

 

 守る為に、自由であるためには時にはその手を血に染めなければならないという覚悟を。

 

 そしてシアは自分の為に自らの力を捨てる覚悟をしたイッセーを支えられるようになりたいという覚悟をした。

 

 

「ふー……」

 

「大丈夫ですかイッセー?」

 

「ああ……。

まだ底は付いちゃいないさ」

 

 

 ハジメの指示通り、襲いかかる魔物達を士気する拠点兵的な魔物を何体か倒していったイッセーとシアは、まだ戦意を失っていない魔物達に取り囲まれながら、互いの背中を預ける形で構える。

 

 

「チッ、しつこいぜ!!」

 

(イッセーは大丈夫と言っているけど、やっぱり少しずつだけど疲れてきている……)

 

 

 構えるイッセーの様子を背中越しに感じ取るシアは、言葉とは裏腹に疲労を蓄積させていることを察する。

 

 ティオとの戦いから満足に体力を回復できなかったというのもあるが、やはり一番はそれだけ今のイッセーの力は二年前から失われていて、殆ど取り戻せていないのだ。

 

 

(でも、完全に取り戻すまで私がイッセーの力になる……!)

 

 

 しかしシアはそれでもイッセーを信じている。

 必ずイッセーが這い戻り、理不尽に対して理不尽で叩きのめすあの時のイッセーに戻ることを。

 そしてその時までには自分も必ずその領域に到達し、本当の意味での相棒(パートナー)になるのだと。

 

 

「その為に、こんな所で苦戦している場合ではないんですよっ!!」

 

 

 その為に旅の誘いをハジメ達からされた時も受けた。

 きっとハジメ達の行く道を辿れば、強くなれるだろうし、イッセーも力を取り戻せるかもしれないと。

 そういう意味ではこの『トラブル処理』もまた修行の一環でしかないし、こんな所で終わるわけにはいかないとシアは全身に力を漲らせ、飛び掛かる魔物達に合わせてカウンターのフックを叩き込み―――

 

 

「っ!?」

 

 

 突如脳内に現れた『映像』に目を見開く。

 

 

(今のは私の未来視……!?)

 

 

 それはシアの持つ未来視の力が発動し、数秒先の未来をシアに示したのだ。

 その未来は、魔物達の群の中から一際素早い獣型の魔物がシアの死角から襲いかかってくるというものであり、それを視たシアは咄嗟に避けようとするが、既にその魔物はシアのすぐ近くまで襲いかかってきていた。

 

 

(し、しまった……! 避けきれな―――)

 

 

 未来視に意識を取られたことで生じた隙のせいで避けるのが間に合わなかったシア。

 しかしその瞬間――

 

 

 

停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)!」

 

 

 イッセーの声と共に口を開けてシアの目の前まで迫っていた魔物の動きが―――否、世界全ての時間が停止した。

 

 

「あ、あぶねぇ……ギャスパーの形見をまた使うことになるとはな」

 

 

 その両目をユエのように深紅に輝かせているイッセーによって。

 

 

「はっ!?」

 

 

 ハジメも、ユエも、それこそ世界全てが停止した世界を作り上げたイッセーによりダメージを受けなかったシアは、ハッと我に返ると、飛び掛かった体制のまま固まっている獣型の魔物の眉間に向かって渾身の拳を叩き込みながら距離を取ると、膝をつきながら両手で自身の両目を覆って苦しむイッセーに駆け寄る。

 

 

「ぐ……あぐっ!」

 

「い、イッセー! そ、その力は……!」

 

 

 シアは一度見たことのあるイッセーの隠し能力だが、そのリスクもまた聞いていたので痛みに苦悶の表情を浮かべながら、その両目から血を涙のように流すイッセーにひたすら謝る。

 

 

「ご、ごめんなさいイッセー! わ、私がノロマなせいでイッセーにその力を使わせてしまいました……!」

 

「き、気にすんな。

あんな畜生にお前が傷つけらるくらいなら、こんな痛みなんて気にもならねーぜ……ぐっ!?」

 

 

 かつて目の前で殺された友の形見として受け取った神器。

 しかし無理矢理使う事は鍛練で可能になったものの、そのリスクは図り知れず、一気に体力を消費してしまったイッセーは鳴きそうな顔をしながら謝るシアの頭をポンポンと撫でながらフラフラと立ち上がる。

 

 

「そもそも、足を引っ張ってるのは俺の方だったからな。

これくらいはさせて貰わないと……な!」

 

 

 一度でも受け入れた相手を守る為なら、己の全てを軽視する傾向があるイッセーだからこその後先考えない選択に後悔はないとばかりに、先ほどシアによって眉間を貫かれた魔物を全力でぶん殴る。

 

 

「この犬っころ共め、嫁入り前の娘さんを傷物にしようとしやがってよォ……! 死ねやボケがァ!!」

 

 

 そこから更に止まった時の世界の状態のまま、オーバーキルとしか言えない拳のラッシュを盛大に叩き込み、ついでに可能な限り周辺の魔物達にも攻撃を加えると……。

 

 

「そして時は動き出す……なんてな」

 

 

 世界に再び時を与えると同時に、文字通り『血の雨』を降らせるのだった。

 

 

「今ので大分体力が減ったが、犬ころ共を皆殺しにするくらい――訳ねーぞゴラァ……!」

 

 

 それでも尚襲いかかる魔物の中に、今度は複数で連携をしながら襲いかかる獣の魔物に、今度は油断はしないとイッセーに並んで構えたシアと共に迎え撃たんと口調が荒々しくなる。

 

 それは皮肉にも体力的には瀕死なのだが、精神的には全盛期のそれに近いスイッチが入ったことになるのだ。

 

 

「私は今度こそイッセーの足手まといにはなりません! 絶対に! 今度は私がイッセーを守ります!」

 

 

 同じくシアの中でもスイッチが切り替わったのか、獣型の魔物の速度を上回る速度で叩き伏せると、全身からイッセーのように闘気を放出する。

 

 

「そもそも傷モノになっても良いです! イッセーが貰ってくれるから!」

 

「……ったく、物好きな子だよお前は」

 

 

 それに続く形でイッセーも全身から闘気を放出し、揃ってお馴染みの構えをする。

 

 

「私の力よ共に戦うイッセーの矛となれ!

私の想いをこの一撃に込める!!」

 

「シアと俺の……いや、俺達のしぶとさをなめるなよ!!

くらえ!!」

 

 

 その闘気に圧される魔物達を鋭く見据えながらパワーを溜め込むイッセーとシアは声を揃えながら溜め込んだそのパワーを放出する。

 

 

「「ドラゴン波ァァ!!!!」」

 

 

 こうして二人によって放たれたドラゴン波はひとつの閃光となり、魔物達を呑み込んでいくのだった。




補足

ギャー助の形見として神器を持っており、修行により使えてはいましたが、リスクが強すぎるのであまり使えません。

具体的には全身の細胞がズタズタにされるような激痛。


しかしシアさんが危険だったので、そこは躊躇い無しに発動しましたとさ。
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