ブラック・ブレット 夜の海と蓮の華   作:神流朝海

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こんにちわ。

今回、久しぶりに月夜の登場です。

少し短い気もするかもです。

では、どうぞ



だらだらとした夕方

「・・・はぁ」

「「「「「・・・・・」」」」」

 

誰もしゃべらない。

誰も動こうとしない。

ここは私が動くか。

 

「それでは、依頼は蛭子影胤よりもはやくジュラルミンケースを確保すること。以上でいいですか?菊之丞殿、聖天子様」

『それで以上だ』

「天童閣下ッ!新人類創造計画はッ―――あの男がいっていたことは本当なのですか?」

『答える必要はない』

 

質問をしたのは、三ヶ島さんだ。

 

あれ?そのことについては私も少ししゃべったはずだけど・・・?

ま、いいか。いちいち聞かれるのはめんどうだし。

 

「大変だ!しゃ、社長があああああッ!」

 

会議室に飛び込んできた男が、金切り声を上げる。

あの人は・・・たぶん、今日会議に欠席した大瀬社長にいつもくっついていたノッポさんだ。

だけど、その表情は険しい。なにかあったのだろうか?

 

「社長が自宅で殺された!し、死体の首がどこにもない!」

 

私を含め、全員の視線が里見君の手前に置かれた箱に向けられた。

箱の一辺は三十センチほど。

 

・・・・・このサイズなら、人の首は入る・・・・・

 

里見君が震える手でゆっくりとリボンを解く。

そして、蓋を持ち上げる。

 

―――しばらくそれと対面した後、蓋をゆっくりと下ろす。

 

「・・・ぁの野郎ぉッ!」

『静粛にッ!』

 

聖天子様の澄んだ声に、里見君は怒りの表情のまま、ゆっくり顔を上げる。

 

『事態は尋常ならざる方向へと向かっています。ケース奪取を企むあの男より先に、ケースを回収してください。でなければ大変なことが起こります』

「中にはいっているものがどういうものなのか、説明していただけますよね?」

『・・いいでしょう。ケースの中に入っているのは七星の遺産。邪悪な人間が悪用すればモノリスの結界を破壊し、東京エリアに“大絶滅”を引き起こす封印指定物です』

 

 

 

―――――

・・・・・

それから木更さんと里見君たちと別れ、家に帰った。

 

「たっだいま~~!」

「あ、お帰り。あれ、早かったですね」

「うん。また依頼きたよ~。今度は七星の遺産の回収だって」

「あ、え、そうなんだ」

 

・・・え?

 

「え?七星の遺産の回収・・?」

「うん。回収」

「えっと、もう少し詳しく」

「だから、―――――・・・とこういうわけなの」

「あぁ、わかりました」

 

ようはそのガストレアを排除して、ケースを蛭子影胤よりも早く確保すればいいわけか。

となると、「お~い?」問題はガストレアの「お~い??」居場所だけど・・・

 

「・・・なにか用ですか?今考え事をしてたんですけど?」

「あはは?そこまで慎重な敬語って、もしかして怒ってます?」

「・・・そうですね。少し怒ってるかもですね」

「も~まぁまぁそう怒らないでよ~」

 

・・・毎度思うけど頭を抱えたくなる。

これではどっちが年上で年下なのかまったくわからない。

まぁ、でも、

 

「はいはい。じゃ、そろそろ夕方だから夕飯の準備しましょうか」

「は~い!私は何をすればいい~?」

 

これがいつもの日常だ。

冷蔵庫を開けて、中の食品を見る。

確か昨日買ってきたのがまだあったから、それを・・・・

 

「・・・・・・」

「・・?どうしたの~?」

 

パタン、と冷蔵庫の扉を閉めて、言う。

 

「買出し、行こうか」

「へ?うん!りょ~かい!」

 

バッグと財布を持って、デパートに向かった。

 

なぜ、買出しに行くのか。

答えは簡単。

冷蔵庫の中に私の好きなものが入っていなかったからだ。

好きなもの、というのは・・・プリンだ。

 

我が儘、なんて言われるかもしれないけれど、こればかりはしょうがない。

私だって普通の小さい女の子だもん。

 

それに、

 

「今のこの人の相手、疲れるなぁ」

「お~い!早く早く~!」

 

笑顔で手招きする海夜。

ため息をつきながらついていく月夜。

 

傍から見れば、どちらがプロモーターなのかイニシエーターなのか、よくわからない光景だ。(精神的に)

 

・・・早く性格変わってくれないかなぁ。

 

 

少し時間はすぎて。

 

プリンを買い終わってデパートを出ようとすると、見知った後姿があることに気づく。

 

「あ、蓮太郎さん、延珠さんじゃないですか?」

「ん?ああ、月夜か。お前も買い物か?」

「おぉ~月夜!そうだ!月夜にも後で天誅ガールズを見せてやるぞ!」

「あ、はい。え?天誅ガールズってなんですか?」

「やっほ~蓮太郎くん~!」

「は?うぉお!?」

「「あ・・」」

 

突然のことに驚く。

なにに驚いたのかというと、

 

「な、おい、神流。なんでお前は俺に抱きついてんだ?」

「ん~?だめだった?」

「いや、その、だめじゃないけど―――」

「「けど?」」

「うぉおおおい!ちょっと待て延珠!こんなとこで蹴りかま―――」

 

それからいろいろ、ほんとにいろいろあった。

 

まず、蓮太郎さんが延珠の蹴りで吹っ飛ぶし、蹴りが入る前に海夜を蓮太郎さんから離して、その後吹っ飛ばされた蓮太郎さんを受け止める・・・など、結構大変だった。この数秒。

その後は、延珠から蓮太郎さんへの説教が10分くらい・・・

内容は、「なんで妾以外の女とくっついておるのじゃ!」とか「聞いておるのか蓮太郎!」というものがほとんどだった。

そして説教から逃れることが出来た蓮太郎さんが私に話しかけてきた。

 

「ふぅ。やっと説教から開放された」

「ふふふ、お疲れ様です」

「それはそうと、なぁ月夜。神流、少しおかしくないか?」

「・・・どの辺がですか?」

「いや、あの、なんつーか、今日の依頼の話の時と性格っていうか人格っていうか、それが変わってるっていうか」

「その通りです」

「だよな。・・・は?」

「ですから、その通りです。海夜は性格がころころ変わるんです」

「性格がころころ変わる?」

「・・・これは、この話は蓮太郎さんが信用に値する人物だと判断したので、話します。海夜は小さい頃、家族が殺されました。誰かの差し金によるものだったそうです。その時、左目と脳の一部が銃弾によって損傷を受けたんです」

「な!?それって―――」

「海夜は、一緒に逃げていた兄によって病院に運び込まれました。そしてすぐに集中治療室に運び込まれました。執刀医の名は、室戸菫」

「・・・はあ!!?」

「当時、『新人類創造計画』の最高責任者であった室戸菫医師でした。そして、海夜は『新人類創造計画』の一人として、治療をうけました。海夜が持つのは、左目の義眼に埋め込まれたスパコンと、それと連携する人間の感情・性格を創る部分の役割をしている脳にあるスパコンです」

「な・・・」

「海夜は、最高まで演算能力を高めれば、4000分の1秒の世界を見ることができます」

「よ、4000分の1!?」

「あ、すみません。話が逸れてきましたね。ようは、海夜の性格・人格はころころと変わるんです」

「・・あ、ああ。それはわかった。じゃあ、どれが本物の神流の人格なんだ?」

「それは私にもわかりません。1年と長い間過ごしてきましたが、私にはよくわかりません」

「そうなのか。じゃ―――」

「蓮太郎くん~!そろそろ帰ろ?」

「え?は?ちょっと待て神流!ストップ!月夜、頼む助けてくれ!」

「蓮太郎さんも結構大変なんですね」

 

また蹴りを放とうとする延珠を抑え、やれやれと頭を抱えながらため息をつく。

蓮太郎さんもやれやれとため息をつきながら、手をつかませる。

 

その蓮太郎さんと海夜を傍から見れば、恋人同士に見える。

それが気にくわないようで、延珠はもっと暴れだそうとするが、

 

「ふふ、離しませんよ?」

「は、離すのだ!蓮太郎ッ!」

「あのなぁ。俺も苦労してんだっつの」

「あはは、蓮太郎くんは渡さないぞ~!延珠ちゃん!」

「わ、妾こそ蓮太郎は渡さないのだ!」

「はいはい。とりあえず、このまま帰りましょうか。いいですよね?蓮太郎さん」

「あ、ああ。(こんなとこ木更さんに見られたらなんていわれるか・・・)」

「ん?なにかいった?蓮太郎くん」

「ん、ああいや、別に」

「じゃあ、いこ!」

 

そのまま、蓮太郎さんの手を引っ張って海夜がアパートに向かって走り出す。

私もどうにか延珠ちゃんを抑えながらその後について走る。

 

ここまであんな風に笑っているのをみるのは、あんな風な無邪気な笑顔をみるのは久しぶりだ。

 

私は、あの顔が、あの笑顔が本物の海夜なんだと思う。

さっきは答えられなかったけど、今は答えられる。





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