1.プロローグ
「何でこんなことに…」
本当に突然だが、俺は今訳の分からない事に絶賛巻き込まれ中だ。
夢の中ならどれだけいいだろうと思う。
目の前には突然現れた絶世の美女、足元には最近出来たばかりのVR機器を頭に着けた自分が倒れている。
もう訳が分からない。
最初は何かのイベントかと思った。
実際こうなったのはVR機器でVRMMORPGをしようとしたときだったから。
でも違うと、どこかでそう思う自分がいる。
そこで、初めて女性が口を開いた。
「完全に混乱しているようだったので少し待っていたのですが、逆効果だったみたいなのでもう話を始めますね」
「えっ?あ、はい」
「よろしい。では、あなたが何故こんなことになっているかなのですが、こちらの手違いで死んでしまったようです」
は?こちらって、ゲームの運営の人とか?
「私の管轄ではないので理由は知りませんけど、あなたにはゲームに参加するか、このまま輪廻の輪に入るかを決めてもらいます」
輪廻の輪?理由は知らないってなんだ。
「説明は終わったのですが何か他に聞きたいことはありますか?」
女性は無表情に説明を述べる。
淡々と述べるその説明には、確かに俺の聞きたかったことがすべて集約されている。
ただ、俺が受け入れることを拒否しているだけだ。
いきなり「あなたは死にました」で納得できるわけが無い。
だから、俺は深く考えることを放棄した。
だって、このままそれを受け入れても受け入れなくても事態は好転したりしないんだからな。
大学生の俺だってそれぐらいは知っている。
それに、だ。夢だろうと現実だろうと、いつも全力で取り組むのが俺のポリシーだ。
何事も本気で行かないと!
「家族に遺書とか書けますか?」
「無理です。諦めて下さい」
せめて遺書は残したかったんだけど、仕方ないか。
あ、そうだ。ルールぐらい聞いておかないと。
「ゲームってどんなものですか?」
「今の記憶のまま異世界へ転生してもらいその世界がどうなるかを神が予想するゲームです。ゲームというより賭け事に近いですかね」
「ゲームに参加って言うのは駒としてってことか…」
「そうなりますね」
「ゲームの参加人数は?」
「全員で五人ですね。一神に付き駒は一人までと決まってますので」
「報酬は?」
「新たな人生です」
なるほど、参加して何もしないのも手だな。
「輪廻の輪って言うのは?」
「魂が記憶しているあなたという人格そのものを消して今までの世界に転生してもらいます」
ゲームに参加しないと消えるのかよ。
ならもう…
「ゲームへの参加でよろしいですね?」
女性が無表情に告げる。
「それでお願いします」
「では、何でもいいので1つ特典を決めてください」
少し悩んで聞く。
「特典を増やす特典は有りですか?」
「有りですよ」
まさか有りだとは思わなかったが、有りならもう決まっている。
「じゃあ、それを入れて4つで」
「はい、大丈夫です」
「2つ目と3つ目は、さっきまで俺がしようとしていたVRMMORPGの俺のアバターの持ち物とスキル全部」
「大丈夫です」
「最後は、俺が転生する世界で自衛に適したものを」
「はい。それでは処置を開始するので少しじっとしててください」
「そういえば、あなたは怒らないのですね」
唐突に喋りかけられて少しびっくりした。
「怒るって何にですか?」
「こちらのミスで死んでしまったのに」
もう少し申し訳なさそうに言えないのだろうか。
余りにも無感情で無機質な声だ。
「怒ってますよ?いきなり殺されて、しかも、玩具になるか消えるか選べって言われたんですよ?誰だって怒りますよ」
「不思議とそういう風に見えないので言っているのですが」
なら、不思議そうに言えよ…
どう見ても完全なポーカーフェイスじゃないか。
「別にあなたが殺した訳じゃないんでしょ?ならあなたに怒る意味も理由も無いじゃないですか。本人(神?)が居れば怒ってましたけど」
「そんなものですか」
「そんなもんなんです」
その会話の後ぐらいからだろうか、徐々に眠くなって、
「それでは―――良い人生を」
そんな言葉と共に俺の意識は途絶えた。
最後に見たのは見間違いでなければ笑顔だった。