「本当にいいのね?私達と協力するってことは犯罪者の仲間入りってことなのよ?」
「分かってますよ、ちゃんと。それぐらいの覚悟はしてきましたから」
自分の家族を助けるためだ。
そんな些細なことは気にしない。
「そう、ならもう何も言わないわ」
「それよりも、約束は守ってくれるんですよね?プレシアさん」
「ええ、当然よ」
昨日あの金髪の女の子、フェイトの誤解が解け、この人、プレシアさんが戻ってきたときのことだ。
フェイトは最初俺のことを管理局って所の犬だと思っていたらしく、笑っていたのが収まっていくと首筋に武器を当てられてプレシアさんが戻ってくるまで拘束されました。
「あなた達、何を遊んでいるのかしら?」
「助けてくれません?」
「この人、きっと管理局の人だよ。だから!」
管理局?何それ、何かを管理しているとこなのは分かったけど…
初めて聞く組織だ。
「あの、管理局って何?」
「こ、今度こそ騙されないから!」
騙すって何の話!?
するとプレシアさんが、面倒くさそうにため息をついた。
「はぁ…フェイトその子は本当に何も知らないわよ。ただの馬鹿だから、気にするだけ無駄よ」
「で、でも…はい、わかりました」
プレシアさん、怖いですよ?
と言うか、俺の印象って…
「フェイト、部屋に戻っていなさい」
「ッ!?…はい」
渋々と言った感じでフェイトは部屋に戻っていった。
最後にこっちを睨んで行ったのは、気のせいじゃないな。
「それで、薬は?」
「ああ、はいこれを」
渡したのは自然治癒を促すポーション。
詳しい病状も分からずに薬を処方するのはまずいので、それなりに効果の高い自然治癒を高めるものを渡した。
末期癌じゃない限りは大丈夫だったはず。
「美味しくないわね…」
「それはまあ、薬ですからね」
苦虫を噛み潰したような顔をしているプレシアさんに、思わず苦笑してしまう。
迷わず飲んだってことは、少しは信用してくれているって事でいいんだよね?
「それで、質問があるんですが」
「何かしら?今は少し気分がいいから、少しだけなら答えてあげるわ」
「あなた達は何で、これを集めているんですか?」
インベントリからジュエルシードなんて呼ばれていたものを取り出す。
その瞬間にプレシアさんの空気が変わった。
「それを渡しなさい!」
「2つ条件があります」
「言ってみなさい。応じるかどうかは分からないけれど、聞くだけはしてあげるわ」
「あなた達…いえ、あなたがこれを集める理由を教えてもらえませんか?」
「…何故、そんなことを聞くのかしら?あなたには関係のないことよ」
「あなたみたいな人が、命をなげうってでもやろうとしていることが知りたいんです」
聞いたとたんに、さらに圧力が上がる。
体の回りで空気が軋んでいる様な気分になる。
「興味本位で聞くようなことじゃないのは分かっているわよね?」
「はい」
「ならそれで私が怒るかもしれないと、交渉が決裂するかもしれないと、わかってやったのよねっ!!」
「…はい、それでも聞きますよ。あなたの目的はなんですか?」
怒りと殺意、そしてこちらを見極めようとする思い。
それらを併せ持った視線は普通なら逃げ出したくなるような捕食者の視線。
それを、ただじっと見つめ返す。決意は揺らがないのだと…
「はぁ、あなた馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど、ここまで馬鹿だとは思わなかったわ…」
突然それらがフッと無くなり、その雰囲気をまとっていた本人はくるりと踵を返した。
「何をしているの、早くついてきなさい。聞きたいのでしょう?」
「え、は、はい!」
プレシアさんが俺を連れてきたのは、何かの実験に使われているであろう部屋。
そして、これが最大の理由。
そこにあったのはフェイトを幼くした様な少女がつけられている水槽。
「何だよ…これ」
「私の娘よ。人形じゃない本物の、ね」
人形?何のことだ…
それにこの子、生きてるのか?
「私の願いわね、この娘を生き返らせること…」
「な、出来るんですか?そんなことが」
「そのジュエルシードの願いを叶える力があればその方法が分かる場所へ行けるはずなのよ」
願いを叶える…それがこの魔道具の本質?本当に?
もしそうなら、これそのものでこの娘を生き返らせることができるはずだ。
「それで?」
「え?それでって…」
「もう1つ条件があるんでしょう?」
忘れてたよ、自分で言っといて。
「このジュエルシードが及ぼした効果を完全に消し去る方法を見つけて欲しいんです」
「何故?」
「家族を、助ける為に」
「…そう」
それっきりどちらも黙り込んでしまった。
「あの、プレシアさん」
「なにかしら」
「手を、組みませんか?」
今出来る最高の手。
他に縋れるものが無い俺にとって、最高の。
成立させる、何をしてでも…
「あなた、頭は大丈夫?」
「お互いの利益のために、手を組みましょう」
「だから!」
「組んでくれたら、あの子を生き返らせます」
「な、にを…」
信じられない、そんなふうに目を見開くプレシアさん。
「できるの…本当にできるの!?」
「確証は無いですけど、出来ると思います」
「お願い!娘を…お願い、だから…」
「分かりました。その前に聞きたいことが」
「何、何でも聞いて!」
急に必死になった。
大切…なんだな。
この子のことが、大切なんだ。
羨ましいな…
「この子は死んでからどれぐらいでこの中に入れられましたか?」
「半日、経つか経たないかだったはずよ」
よかった、ならこれが使えるはずだ。
残りが一個しかない――蘇生薬。
「これを、この薬を静脈に注射してください」
「わかったわ」
プレシアさんに薬の入ったビンを渡すと、どこからか取り出した注射器で素早く薬を吸い上げる。
―スキルリセット
―魔導師セット
―治癒セット
―精神セット
「注射を打ったら、少し離れていてください。魔法で、弱っている細胞を活性化させます」
「ええ、わかったわ」
水槽の水を抜き、素早く寝台へ運ぶ。
プレシアさんが薬を打ち終わるのを待って、治癒を始める。
4年前になのはのお父さんにやったのより少しは楽なはずだ。
今回は『リカバー』は使わないから、より『集中』できる。
「『集中』して『制御』、『ヒール』」
細胞の活性化を開始…あれ、活性が遅い。
意識がまだ戻らない。
まさか、予想以上に細胞が弱ってる!?
まずいかもしれない。
もっと出力を…
頼む、もってくれよ。
「ふぅ…!」
「おわっ…た、術式は、成功」
魔力が完全に無くなった…
もう無理、説明して寝たい。
「本当に…?生き返った、の?」
「明日には、目を覚ます…はずです、よ?」
異様に眠いんだけど、もしかして、これ、薬の効果切れた…
まあ、そんなこんなでプレシアさんと協力関係が結べた。
代償として一個しかなかった蘇生薬がなくなってしまったけど、別にいい。
問題は、娘に構いっきりでぶっ倒れた俺のことを思いっきり放置して行かれたこと。
娘がかわいいのは分かるけどさ…さすがに酷い。
「凪斗?しっかり聞いているの?」
「は、はい。聞いてますよ?」
「はぁ…」
聞いていなかったのが完全にばれていて、思いきりため息をつかれる。
そんなだから、不幸に見舞われるんじゃ…
「ごめんなさい、何の話でしたか?」
「あなたが頼んでいたデバイスの資料と機材の話よ」
「ごめんなさい、もう一度最初からお願いしても?」
「資料と機材は頼まれたものはもうあなたの部屋に運んでおいたわ。場所はフェイトに聞くといいわ」
「どうも」
軽くお辞儀をして、部屋を出て行く。
なんだか一気に丸くなったなあの人…
さて、フェイトに部屋の場所を聞かないと、ってあれ?
「まずフェイトの居場所がわからないんですが」
俺が廊下で困っていると、フェイトと一緒にいたケモミミの人がやってきた。
ナイスタイミング!あの人に聞こう。
「あの…」
「ん?何だ、アンタかい。アタシに何のようだい」
「俺の部屋って分かります?」
「…プレシアから聞いてないのかい?」
「フェイトに聞けって言われまして」
「はぁ、あの人は…」
このあとは軽く名前を名乗って、部屋まで案内してもらった。
アルフさんって優しい人だな…
「送ってくれてありがとう」
「別に気にしなくていいよ。主人の用事をこなしただけだからね」
主人?誰だろ?プレシアさんかな?
「しゅじんって?」
「ん?アタシはフェイトの使い魔だからね!」
そう言って胸を張るアルフさん。
主人ってフェイトのことか。
「そっか、でも連れて来てくれたから、ありがとうって言っておくよ」
「そうかい。じゃあ受け取っておくよ」
それだけ言うとさっさと帰っていった。
そっけないなと思っていると、面白いものを見つけた。
尻尾が、ぶんぶんと揺れていた。
「あはは…元になったのはイヌ科の動物だな、あれは」
使い魔も面白そうだな。
さて、俺はお勉強を始めますか!
魔導師は昨日から付けっ放しだから、デバイスの知識もスイスイ覚えられるな。
ふーん、意外と簡単に出来そうだな…
一から作るんじゃなくて元からあるものを改造する方法もあるのか。
生体デバイス?うわぁ…外道チックだなこれ。
あれ?これ使い魔の本か?プレシアさん間違えて運んだな…
「…うん、こんなもんか」
作るんなら生体デバイスかな…
さっきは外道チックとか言ったけど、俺のシナリオ通りに行ったら必要になりそうなんだよな。
まあ、材料が生きている生物って時点でヤバイ代物だけどな。
「まあ当てはある、やってみよう」
インベントリからペットカードを取り出す。
取り出したのは、課金で手に入れたキャラクターカード。
つまり、この世界では人間を封じ込めたカードになっているはず。
このカードの中身をデバイスに…
他の材料は…
その日俺は、目的のために生きた人間をデバイスに変えた。
それが本当に人間かどうかなんて分からないけど…
俺がそれをわかってやったことに、代わりなんて無かった。
俺は…人の形をしたものを兵器に変えたんだ。
きっと調子に乗ってたんだ。
1人の少女を生き返らせて、何でも出来ると思ってたんだ。
「おはよう…ますたー」
「ああ、おはよう」
月光をそのまま髪にしたような綺麗な長い髪。
碧色の落ち着いた大きな瞳。
すらりとした手足の、色の白い少女。
その日から、それが俺のデバイスになった。
何でだろ…
最近何かいてもこんな感じに暗く…
命の重みってどれぐらいなんでしょうか?
3gって答えた人もいますけど。
さっさと晴れやかな展開に戻したい!
とこんな感じの思いが自分の中で渦巻いております。
病院にいったら、躁鬱病と診断されました…
後書きが愚痴みたくなって来た所で、感想やリクエストの募集をして終わります。
ではまたノシ