Side ????
闇と妄執と欲望の海。
そんな形容が相応しい様な場所。
こんな場所に、幾月幾年…もっとになるのか…
時間の感覚が分からなくなるほどにここで過ごした。
――デモ、モウスグダ…
――ココカラ…ヨウヤク出ラレル。
――ココモ悪クナカッタガ、ヤハリ外ガイイ。
――コノ男ノココロハ、イゴコチガイイ…
さあ、もっと願え!
もっと欲しがれ!
Side Out.
サラサラと流れる川とうっそうと茂る雑草が太陽の光を浴びてキラキラと輝く川原。
俺達はそんな川原の一角で、本日十個目となるジュエルシードの封印を終えようとしていた。
「『シーリング』…これでやっと折り返しか」
額の汗をぬぐいながら呟く。
俺の魔導師のスキルはほとんど魔力を発していなくても感じ取れるから、今朝からジュエルシードを活性化していないものを狙って集めている。
フェイトに言わせればこれでもかなりのハイペースらしいが、俺からすればもっと急げればいいのにと思う。
弱い反応のものから順に集めているが、俺のせいで移動が遅くなってしまうから思うように進まないのだ。
「さ、次行こう?」
フェイトがそう言いつつ、飛び上がろうとしてすぐに止めた。
「ごめん、俺のせいで…」
「別に気にしていないよ?私が飛んで探したってほぼ見つからないんだし…」
助け舟を出そうとしたフェイトも何故か落ち込みだす。
どう考えても飛べない俺が悪いんだけど。
飛行魔法にももちろん魔力は消費される。
俺の魔力じゃ、全部使っても多分5分飛べればいい方だ。
しかも、とてもじゃないが俺じゃフェイトのスピードについていけない…
「まあ、それでもここでウダウダ言ってるのは違――ッ!?」
「凪斗、今の…」
「うん。次取りに行く予定のジュエルシードで間違いない」
他の生き物に取り付いたみたいだな。
魔力が一気に大きくなった。
「フェイト、アルフも先に行ってくれ。すぐ追いつく」
「ふん、アタシとフェイトがいれば、凪斗が来るころには終わってるよ」
「そうだね。すぐに終わらせて待ってるよ」
「うん、頼んだ」
すると2人は一気に加速して大きな屋敷の方へ飛んでいく。
見る間に小さくなっていく2人の影に追いつけないのが、悔しかった。
Side フェイト
見つけた、アレだ。
凄く大きい猫。
お母さんの為にも、アリシアを生き返らせてくれた凪斗の為にも、急いでジュエルシードを封印しないと。
「まずは、弱らせて…バルディッシュ、フォトンランサー」
≪Photon lancer Get set.≫
「ファイア」
掛け声と共に槍の様な魔力弾が発射され、発射された魔力弾は寸分違わず目標に当たった。
標的が悲鳴を上げる。
しかし、それほどダメージはなさそうだ。
せめて動けないようにしないと…
「バルディッシュ…フォトンランサー、連撃」
≪Photon lancer Full auto fire.≫
このまま弱らせる。
≪Wide area Protection.≫
「――!魔導師」
猫の上に乗って私の魔法を弾く魔導師。
…邪魔。
それなら、標的の足を狙う。
狙い通りに当たり、標的をこかした。
「わ、わわわ…」
「なのは、大丈夫か!?」
「う、うん」
あの銀髪の人は、仲間?
あの2人の目的は、ジュエルシードの回収だろうか。
なら、まずはあの2人を排除しないと。
「――も、俺のハーレムに…ちまお…」
何?よく聞き取れなかった…
一体何を――ッ!?あの銀髪は何処に…
「誰を探してんだ?」
「きゃっ!?」
いつの間に!?
近づいて来る気配がまるでなかった。
「そんなに恥ずかしがるなよ…?」
何を、言っているの…?
そんな困惑など知らないとでも言うかのように、ニタニタと男は笑っている。
気持ち悪い…
「来ないで…!!」
全力で拒絶の意思を込めて言う。
しかし、それすら意に返した様子も無く、ただニタニタと笑い――右手を伸ばしてきた。
Side Out.
「ここ、だよな…」
目の前には高い塀、隣にはでかい門。
おいおい、思いっきり私有地じゃないか。
「はぁ…不法侵入、ごめんなさい!」
高い塀を飛び越え、さっさと先に行ったはずのフェイトたちを探す。
だけど、ジュエルシードの魔力の反応が消えてないってことは、封印が上手くいっていないのか?
何かあったと考える方が妥当だよな…
急ごうとして、動きが止まった。
「…おい、まさかあれか?」
≪おおき、い、ネコ…かわいい≫
そう、ここからでも分かるぐらいにでかいネコだった。
あのでかいネコがジュエルシードの宿主か。
でも、あれならフェイトがてこずる事は無いはず…
誰かの妨害――おそらくは銀髪か。
あいつ自身もジュエルシードの宿主だから、来ていたっておかしくない。
それに、何か視線を感じる。
「フェイトー!どこだー!」
≪どこー≫
声を上げてみるも、返事は来ず…
「動かないで…」
後ろから頭に銃口を押し付けられた。
おそらくさっきから感じていた視線の正体だろう。
「あなた、魔導師だよね。ここに来た理由となんでフェイトの名前を気安く呼んでいるのか教えてもらえる?一応非殺傷設定だけど、当たれば確実に気絶はするよ」
声からして、同学年ぐらいの女の子か。
「…罠張っといて正解だったな」
「え、何を――きゃっ!?」
俺と少女を隔絶するように張られる無色の結界。
――アレンジ『削減結界』
ゲームにあった原典《オリジン》の魔法ではなく、それを元に改良した魔法。
魔力の消費は発動時だけ、それ以外は全て結界内の魔力で補い、さらには本当に結界の様に外へ出られなくした魔法。
どうやら成功したようで、結界の魔力光が紫に色付いてきた。
ただ、まさかこの子がいるとは思ってなかった。
発動した結界の中にいたのは、顔にバイザーをして何処かの軍服を改造したかの様な黒い服装、その上からマフラーをした魅音だった。
最初はコスプレかと思ったが、両手に持った形の違う拳銃のようなデバイスと、魔力が無いと動かないはずの『削減結界』が動いた事実からあの格好はバリアジャケットだと思われる。
あいつも…魔導師だったんだな。
「結界魔法!?なら、収束魔法で結界ごと打ち抜くまで!デネブ、ベガ」
≪しかたない、手を貸そう≫
≪了解です、マスター!≫
デバイスが二機もあるのか。
でも、それは無理だ。
「盛り上がっているとこ悪いんだが、無理だと思うぞ?」
「あなたが何を根拠に言っているか知らないけど、私の収束魔法は原作のなのはなみよ。結界なんて」
≪これは…!?≫
≪マスター!魔力が収束できません!それどころか、どんどん無くなっていっています!≫
「え、な、何で」
そんな驚くことかな。
罠なんだからこれぐらいの用意はしておきますよ、普通。
「この結界が魔力を吸い取るものだから、収束した先から魔力が吸い取られてるんだよ」
「そ、そんなのあり!?」
「あ、そうだ。この機械のスイッチ入れてくれる?」
わざとらしく思い出したように言ってポケットからプレシアさんに頼んでおいた機械を放る。
訳の分からない機械を渡され、じっと眺めたり、突いてみたりしている魅音。
「何これ…」
「急いでいるんだ、さっさと押してくれないと君の大切な人が死んじゃうかもね?魅音ちゃん?」
「――ッ!?」
困惑した顔から、言っている事を理解したのかキッと睨みつける鋭い表情へと変わる。
…なんと言うか悲しくなった。
「あなたは誰!?何で――「いいからさっさとスイッチを入れろ」――このっ!」
少し何かを考えるような素振りを見せたが、最後にこっちを睨みつけて押した。
魅音に渡した機械は、プレシアさんに作ってもらった精神の汚染を完全に治す機械だ。
詳しい効果は俺もよく分からないんだが、これが一番都合がいいのだそうだ。
効果が出てくれるといいんだが…
「あ、うあぁ、ぁ…」
呻き出したと思ったら、いきなり倒れた。
おい!?ちょっとプレシアさん!?気絶するとか聞いてませんよ!?
それと同時に結界も消える。
≪マスター!?≫
≪アンタ何したんだよ!!アンタ、あの銀髪よりムカつくぞ!!≫
「…これは返してもらう」
機械を手から奪い取る。
…これ失敗作とかじゃないよね?
「その子はしばらくしたら目を覚ますよ…」
気絶した魅音をインベントリから取り出したマットの上に乗せ布団をかけて先を急ぐ。
この騒動が終わる頃には、俺はこの町にいないだろうから、優しくしてやれるのはこれで最後かもだけど…
フェイトたちも心配なんだ。
魅音がいたってことは、あの銀髪がいる確立がかなり高くなったっていうことだ。
「急がないと」
大きな猫のいる方に向かって、全力で走る。
フェイトたちが危ないのは分かっているけど、走り出したその足は、少しだけ軽くなった気がした。
もうすぐ受験ですので更新が遅れています。
エタっているわけではありませんのであしからず。
一月を過ぎるまでは亀更新になると思います。
申し訳ないです。
感想や意見、アドバイスなどあればよろしくお願いします。