Side 剣也
「来ないで…!!」
恥ずかしがって、フェイトもかわいいなぁ
あとは、頭に手をのせて撫でればいい
「俺の、ものだ…フフ」
「ヒッ!?」
逃げ、られた…?
フェイトって凄く恥ずかしがり屋なんだね
追いかけないと
「待ってよ…?フェイトォ?」
逃げようとするフェイトの足に向かって剣を射出する。
幾らか当たったはずなのに逃げるのを止めない
痛そう、早く捕まえてあげなくちゃ
そしてまた、俺は
Side Out.
クッソ…
どこだ、何処にいる!?
何でこんなに広いんだよこの私有地は!
「気配が遠すぎて索敵スキルじゃ見つけられないし、このあたりの魔力濃度が高すぎて魔導師スキルで魔力を探知するのも無理だ…どうすりゃいい!」
≪ますたー…落ち、着いて?≫
「悪い…焦ってた」
でもこのままじゃ…
ん、小さいけど気配が…してるのか?これ。
「こっちの茂みの方か」
確かめる為に、茂みを掻き分け様とした時だ。
掌に、何とも言えない生暖かい様な液体が付いた。
恐る恐る掌を見ればそこは真っ赤に色付いていた。
「おい…これって!?」
必死になって茂みを掻き分けると、傷だらけで血塗れのアルフさんがそこにいた。
傷の度合いは酷いものが多く、傷口から臓器がはみ出し、そこからも血があふれている
「アルフさん!」
インベントリから取り出したポーションを手に駆け寄り、安否を確認する。
どうやらまだ何とか生きているようだった。
でもこのまま放っておいたら確実に助からないであろう傷だった。
「シフォン、アシスト頼む。『集中』、『制御』…『ヒール』ッ!」
ポーションをかけながら、体の傷を塞いでいく…
足りない血は魔力とインベントリの食塩水を使って誤魔化す。
いつもならもっと消費する魔力が多くなるところだが、シフォンのアシストが予想以上だったのかほとんど魔力が減っていない。
「ありがとうシフォン、助かった」
≪ん、役に立てた…≫
「んん…うぅ、ここは…」
よかった、目が覚めたみたいだ。
「アルフさんよかった。目が覚めたみたいで」
「凪斗、かい?…ッ!?フェイトは!あの子はどこだい!?」
「落ち着いてください!」
「落ち着けるわけ――ッ!?」
確かにフェイトに何かあったのだろう、この状況でアルフさんに落ち着けと言う方が無理だ。
暴れようとして、傷口が開きそうになって止まったようだが。
「落ち着けるわけが無いのは分かってるけど、アンタがその体で探しに行こうとしてもむしろ邪魔だ!少し頭を冷やせ!!」
口調が荒くなってしまい、ビックリしたのか一瞬ビクッとしたかと思うと、アルフさんの目に涙がにじんできた。
「なら…!ならどうしろっていうんだい!?アタシは…あの子の使い魔なんだ、助けなきゃ、フェイト…」
「だから…落ち着いて、フェイトがどうなったのか教えてください。俺が、あなたの代わりをつとめます」
「え…?」
「絶対に助けて見せます。だから、あなたはさっさと傷を治してください。それとも、その大役を俺に譲ります?」
「アンタ…わかったよ。一度しか言わないからよく聞きな!」
「はい!」
それからアルフさんに全部聞いた。
フェイトが件の銀髪に追い回されていること、アルフが助けようとして今のような状態になったこと、向かっていった方向、それが分かっているのに追いかけられなかった悔しさ…全部、聞いた。
「アタシが分かるのはこのくらいだよ。凪斗、頼んだからね」
「はい。もちろんです。あとこれを…」
さっき使ったポーションを2瓶渡す。
「これは?」
「簡単に言えば回復を早める薬です。ちゃんと安静にしていてくださいね」
「ああ、そうするよ」
さて、急がないといけないよな。
エーテル使うか…
インベントリからエーテルを抜き出し一気に呷る。
「『ステップフォース』」
≪ステップフォース≫
使ったのは単純に足の速さを引き上げる魔法。
つまり思考速度なんかはそのままだから、普段から練習していないとまともに走ることができない魔法。
この四年間に一番使った魔法でもある。
「フッ!」
力を込めて地面を踏むと一歩毎に視界が加速していき、木々が後ろへ後ろへと流れていく。
これなら、すぐに追いつけるはずだ。
「待ってろよ、今行くから…!」
Side フェイト
「ハァ…ハァ…」
体中の傷から血が滴る。
結構な量の魔力が血と一緒に流れて、そろそろ限界かもしれない。
「アルフ…」
途中で私のために囮をかってくれた、私の使い魔…家族。
「大丈夫だよね、きっと」
でももう、逃げるのは限界…
血と魔力が抜けすぎて、もう歩くのも限界に近い。
段々と大きな魔力がこっちに近づいて来るのが分かる。
だから、ここで迎え撃つ。
「バルディッシュ」
≪Yes sir.≫
私の相棒、いつも助けてくれる。
寡黙だけど冷たいわけじゃなくて、しっかりサポートしてくれる自慢の杖。
耳を澄ませば足音が着実にこっちに近づいてきているのが分かった。
「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル。フォトンランサー・ファランクスシフト」
≪Phalanx Shift.≫
お母さんは…私が死んだら悲しんでくれるかな…?
泣いて…くれるかな?
少しずつ近づいてくる足音はもう目と鼻の先だった。
次の瞬間ガサリと音をたて、茂みを掻き分ける手が見えた。
――今だっ!!
「撃ち砕け、ファイアー!!」
掛け声と共に38基のスフィアから無数の魔力弾が目標に目掛けて射出されていく。
巻き上がった土煙で見えないけど、手応えはあった…
「や、やっ…た?」
そう呟いてそばにあった木に倒れ掛かる。
ゆっくりと土煙が晴れれば気絶したあの男がいるはず。
――だった。
「ビックリするじゃんかぁ?フェイトォ?」
「そ、そんな…なんで…」
土煙が晴れてそこにいたのは、無傷の銀髪だった。
「ロー・アイアス使わなかったら怪我してたかもしれないじゃないか。でも大丈夫、優しい僕は許してあげるよ?さあ、こっちにおいでよ?」
ニタニタとした気味の悪い笑顔を貼り付けて恋人にするように腕を広げる。
「い、や…」
男は、こちらのことなど理解しようとしていない。
ただ、いう事を聞く人形が欲しいだけだ。
男の濁った目を見たとき、直感でそう感じた。
「なんだ、動けないのか。じゃあ俺がそっちに行ってあげるよ。嬉しいだろう?」
動かない足を必死で引きずって逃げる。
でも、そんな抵抗もむなしくすぐに捕まってしまう。
「もう、逃がさないよ」
ゆっくりとこっちに右手が伸びてきた。
そして余りの恐怖に、強く強く、現実を受け入れないように、私は目を閉じた。
でも、いつまで経っても何も起こらない。
気が付かない間に一思いに殺されたのだろうか?
そう思って目を開ければ、あの男の右手はもう1人の誰かに掴まれて止まって…
もう1人…?誰…?
よく、見えないよ…
Side Out.
「ギリギリ、間に合ったな」
フェイトを守るように間に割って入り、銀髪が伸ばしていた腕を引っ掴む。
腕を掴んでいる手に力と魔力をを込めて、投げ飛ばす。
「フェイト?大丈夫…おいっ!しっかりしろ!?」
≪気絶…してる?≫
「みたいだ」
でも、傷が思ったより深い…
このまま放っておいたら死にかねないので、ポーションで応急処置を済ませる。
「本当は、もっとちゃんと処置しておきたかったんだけど…」
≪…来る≫
「了解」
さっき銀髪を投げた方に向き直る。
すると、すぐに十本の剣が飛んできた。
もう復活したのか、結構強く投げたんだけどな…
「『魔法障壁』」
プレシアさんの魔法を防いだ障壁。
しかし剣はそのまま障壁を抜けて突き刺さった。――ダミーに。
4年前と同じように『空蝉』で銀髪の後ろに瞬間移動する。
障壁をすり抜けたってことは…
「おいおい、障壁を切ったのか…ダミーじゃなきゃ死んでたな」
「お前ええぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!」
振り向きざまに切りかかってくるのをバックステップで避ける。
「…さすがに同じ技じゃ無理があったか」
「今度こそ…殺すぅ!!射出!」
後ろに飛びずさった俺に、またも剣を飛ばしてくる。
さて、どうするか…
≪まかせて≫
「迎撃、できるのか?」
そんな機能つけた覚えないんだけど。
≪ざっつ、らいと≫
「…よし、頼んだ」
≪射出、制御、統制≫
いつもと違うはきはきとした口調で喋るシフォン。
すると、本と化しているシフォンの周りから剣や刀、斧に槍、果ては銃まで出てきた。
この武器たちどっかでみたことある気がするんだけど、何処だっけ?
≪迎撃、開始≫
空中に浮いた武器たちが、器用に飛んできた剣を打ち落としていく。
こんなことができたのか…本気で知らなかった。
「俺より強いんじゃないか?」
≪ますたーは、わたしが…まも、る≫
シフォンのおかげで体制を立て直したが、ヤツは自分で出した剣の中を大きく変形させた干将・莫耶を手にこっちへ突っ込んでくる。
「あぁぁぁああああぁぁぁぁぁ!!死ねよ、死ね死ね死ねしねしねシネシネシネシネシネシィネェェェ!!」
「チッ!?無軌道に振り回しやがって…」
≪ますたー、つかって…≫
攻撃を必死に避けている俺の掴みやすいところにインベントリが開く。
取り出したのは刀と小太刀…
左手で逆手に持った小太刀と右手に持った刀で受け流し、そのままの勢いで鳩尾に膝蹴りを食らわせて距離を離す。
しかし、距離を離して少し気を抜いたその瞬間に俺の周りで爆発が起こる。
俺自身は完全に防げないタイミングだったが、両隣の楯を見るにシフォンが助けてくれたらしい。
「これは、一筋縄じゃ行かないかもな…」
そんなことを、急所にもろに入ったはずなのにすぐに立ち上がってくる銀髪を見て呟いた。
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