「鋸は、鋸だけは…止めてくれ、それは死ぬぅ!?…ハッ、夢か」
なんだか、内容は思い出せないけどとんでもなく怖い夢を見た気がする。
「うわぁ、寝汗が気持ち悪いほど出てるな」
と言うか、俺いつの間に寝たんだ?
俺確か、公園でなのはと一緒にお見舞いに行こうって約束してそれから…
何でだ、思い出したら大切なものを失くす気がする。
「まあ、思い出せないものにはそれなりの理由があるんだし無理に思い出さなくてもいいか」
よし、朝ご飯食べたらなのはとの約束守れるようにしないとな。
取り合えず、魔力の制御から試すか。
そうと決まれば、
「朝は何食べようかな」
最近は、多少は前より動けるようになったので朝は俺が作ってる。
一応スキルは使わないでやっているので凄く美味しいと言うほどのものは作れないし、レシピを知ってても作れないものの方が多い。
でも、楽しいし美味しいから俺は結構好きだったりする。
ご飯かパンか、それが問題だ…
そんなことを思いつつ、リビングへ顔を出す。
「あれ?誰もいないや、珍しい」
いつもはここに魅鐘さんがいることが多い。
魅鐘さんがいないときは秋さんか魅音がいる。
それで、いつもは何か食べたいものがあるか聞いてからそれを作って食べているのだが、
「誰もいないし、トーストでいいか」
パンをトースターに放り込みスイッチを押し、冷蔵庫からジャムを探す。
椅子がないと冷蔵庫の上のほうには全然届かないのが凄く悔しい。
「よっと!…お、あったあった」
首尾良くジャムを入手し、扉を閉めて椅子から降りる。
五歳って大変だよなぁ、高いところにあるものを取るのに凄く苦労する。
そんな風に五歳児の大変さについて考えていれば、トーストの方が焼きあがったようで香ばしい匂いがここまでしてくる。
「さて、頂きまーす!」
これに、コーヒーでもあればいいんだが…
今の歳でコーヒーはまだ飲めない、子供の舌にコーヒーの苦味は合わないらしい。
「ご馳走様でした!さて、片付けたらさっそく始めますか」
ちゃっちゃと片付けと着替えを済ませて庭に出る。
「ええと、まずは魔導師のスキルを付けてっと」
その瞬間、世界がガラリと音を立てて変わっていった。
まず自分の中にある魔力を感じ取れるようになった、かなり微妙な量しかないが。
次に、空気中にも魔力らしきものが漂っているのが分かるようになった。
さらにもう1つ、この町に5つ大きな魔力を感じた。
うち2つはほとんど外側に出ていないようで、一瞬良く判らなかったが集中すると何とか分かった。
「うわぁ!なんか世界が変わって見えるや、慣れないと気持ち悪くなりそうだけど」
次は、治癒のスキル。
正直治癒は蘇生が使えるヤバイスキルの1つで、膨大な魔力があれば死ぬ寸前もしくは死んだ直後の人を生き返らせることも可能。
魔力量から俺には使えないけど…
その代わり、どんな状態からでも意識を回復させるぐらいは出来るはず。
「さて、ナイフを取り出して…布を口に入れてっと」
ナイフを持った右手を振り上げて…腕に突き刺す。
「ふぅ…ぐっ、うぅ…」
痛い、滅茶苦茶痛い!!
余りの痛さにのた打ち回り、転げまわる。
ナイフを…抜かないと。
「いぅ、ぐうぅ…」
抜くほうが痛い、痛いいたいいたいイタイイタイイタイイt…
ブチブチと筋繊維の切れる音が頭の中で響く。
気が狂いそうな痛みが体の中を暴れまわる。
ナイフを抜いた腕から血が抜けていく。
早く、直さないと…
「…ふぅ、ふぅ…うぅ、ふぅ…」
『ヒール』頭の中で思い描き実行する。
少しずつ腕の痛みが引いていき、血が止まり、肉が繋がる。
最終的には、傷跡も痛みも完全に無くなった。
「気が、狂うかと、思っ、た」
冷や汗で体温がガンガン下がって恐怖と寒さで体が震える。
正直もう絶対やりたくない。
でも、これならなのはのお父さんも治せるよな。きっと。
あとは、いつ行くかだよな。
明日聞きに行くかな。喫茶店の方にも行ってみたいし。
「にしても、この血まみれの服と庭…どうしよう」
何か無いかな…『浄化』、これかな?
庭と自分の足元に白色に輝く魔方陣が現れ、一気に頭の上まで移動した。
すると、いつの間にか庭も服も塵1つ無くなり新品の様になった。
効果、高すぎないか?
その日の晩、初めての魔力使用、および朝の腕の痛みから来るストレスによって、俺は風邪を引いた。