前回のあらすじ
「璃紗!?璃紗!」
「怖い………」
俺がふと我に返ったのは図書館の扉が開く音に釣られてだった………
そこから入ってきたのはパチュリーにこぁと呼ばれていた女と魔理沙、そして忘れたくても忘れられない古くからの俺の
魔理沙と晴が戦わない理由は分からなかったが、多分、俺とはぐれてから偶然出会ったというところか………それよりも問題は俺の方だ。俺は今動けない。何故ならパチュリーを膝枕しているからだ。
気絶から一向に目が覚めないので【痛み】を吸収していたらやたら疲れたので回復する時間が伸びていたのは言うまでもないだろう………そして魔理沙からの視線が痛い。これは精神的に響く目つきだ。お願いです魔理沙様。能力発動中の俺にそんな目でこっちを見ないでくださいMじゃないんですから。
そして晴は俺を見るとどちらかというと喜んでいる表情をしてくる。
………なんだその目は………俺も待っていたさと言わんばかりの虚気の笑顔を浮かべるとあちらは吃驚したように仰け反る。
俺はそっとパチュリーを本棚のそばに背もたらせ、晴を睨みつける。するとまるで後悔しているかのような寂しそうな顔をした。
ククク………これだから晴は本当に分かりやすい。だからこそ、憎い。お前は俺から全てを奪った。
生きてきた過去も今も未来も今のような
だが、感謝しているさ。お前が俺を忘れてくれたお陰で俺は幻想郷に流れ着くことができた。
お前が何もかも奪ってくれたお陰で新たなる才能に目覚めることができた。
お前が俺の興味を全て奪ってくれたお陰で、お前が地獄を見させてくれたお陰で俺は今、幸せを掴み取ることができた。
だからこそ………お前が憎い。また俺の幸せを奪おうとするお前が………
一度は信じていた、親友として生きてやった………でも、お前を殺すことに微塵も後悔や未練なんて感じなくなった。全て………お前のおかげだよ。
晴………お前が全ての【きっかけ】でここでお前が全ての【終わり】になるのさ。
「待っていたぞ!晴!」
「珀雲!俺は………」
「俺はお前を殺す!復讐のためにな!だがお前から来たということは………全てを奪っても尚、俺を苦しめたいか!」
「違う!俺は………いや、お前には言葉だけじゃ物足りないだろう………俺はお前に決闘を申し込む!」
「ふ!お前から来るとはいい度胸じゃねえか………いいさ、来い晴!」
魔理沙とこぁは話についていけてないが魔理沙の方は兎に角、自分の近くにいる存在は敵だということは認識してくれたようで俺の後ろに来る。そこで見ていろと言おうとしたら急に魔理沙が俺に抱きついてきた。
「おわあ!?」という俺の叫び声をものともせず、魔理沙は黙って俺にぎゅっと抱きしめる。
一体、どうしたのだろうか………?
「ま、魔理沙?何をして………じゃなくてなんでこんなことしているんだ。」
「だ、だっていきなりはぐれて怪我してないかとか色々………心配したんだからぁ!」
「わ、悪い。いきなりはぐれたのは謝る。それに俺は傷なんか負ってないから泣くのはやめろ。俺が辛い。」
「う………ぐす。う、うん。分かった。」
「はぁ………お前の泣き顔なんて見ちまったら寝付けなくなっちまうから。もう泣かせない。」
「………分かった………ぜ。」
俺は魔理沙の頭を静かに撫でる。魔理沙も少しは落ち着いたようで俺と少し距離を取る。
晴はそれを見て少し驚いているような顔をしている。そこまで驚くことか?
確かに魔理沙は【璃紗】みたいな髪型だが、まるで別人じゃないか。
そこまで似ているだろうか?
【璃紗】………こいつも俺を人生のどん底に陥れた一人。
あいつの人望の厚さのせいで俺はどれだけ苦しめられたことか………
ま、今ではもうどうでもいい奴だ。鬱陶しかったということしかもはや記憶がない。
俺は1枚のコインを取り出す。たった百円だがそれでも決闘の瞬間には十分だ。
俺はその百円玉をコイントスする。そしてそれは俺たちの中ではゆっくりと落ちていって静かに決戦の火蓋が切って落とされた。
霊夢side(第三者視点)
霊夢はちょうど紅魔館の主、【レミリア=スカーレット】と対面していた。
異変を起こした理由を聞き、呆れていはいたものの自分が未だにお茶を飲めていないことに苛立ちを感じていた。
レミリアは珀雲というワードに敏感に反応を示した。珀雲の運命を見てらしく、早く図書館に行きたかったようだ。
だが、博麗の巫女と異変の犯人がここにいる以上、やることはたった一つだけ………そう弾幕ごっこである。
「こんなに月も紅いから(こんなに月も紅いのに)、楽しい夜になりそうね(長い夜になりそうね)」
さすがは
霊夢は流石に最初から弱音は吐けないと精一杯避ける。
紅魔館の主というのは赤が好きなのかと思ったらやっぱりそのとおりだった。
放つ弾幕さえも赤ばっかりで目に悪い。しかも一部の弾幕は紅魔館の色を保護色としているので余計面倒だ。
結構、早めにレミリアはスペルカードを使う。徹底的に霊夢を叩きのめしたいのだろうか、それとも早く晴のもとに行きたいからなのだろうか、どちらにせよ、レミリアは少し焦っているように見られた。
「まずはこれよ。天罰【スターオブダビデ】!」
全体的にレーザーを展開しつつ、丸弾とリング弾を発射する形式となっているスペカを使う。
これまた厄介な弾幕だろう………ギリギリで突破する。
だが、レミリアの攻撃は止まらない。もう1枚のスペルカードを発動する。
「次よ次。冥符【紅色の冥界】!」
「く!厄介なもんばっかりね!」
【紅色の冥界】はレミリアが呼び出した弾幕が一度はレミリアの近くを回っているが、
急に色々な方向に飛び散ってくる。さっきよりは少ないがそれでも回避しにくい弾幕の一つだろう。
すかさず、霊夢も1枚のスペルカードを取り出し、宣言した。
「お返しよ!夢符【封魔陣】!」
「チィ………中々やるわね。」
まだまだこの
珀雲と魔理沙の身に何かあっても目覚めが悪くなる。さっさとこいつ倒して合流しましょ。
私はレミリアを睨んで大きな声で言った。
「さっさと終わらせるわよ!」
その声に反応してレミリアも前半は愚痴の一人言だったが後半は霊夢に向けて言った。
「………これが博麗の巫女の実力。何よ………評判とまるで違うじゃない。ククク………だからこそ楽しくなってきたわね!」
レミリアと霊夢はそれぞれの思っていたかことを相手にぶつけると一瞬、笑った顔を浮かべると双方ともに相手の胸に向かって飛ぶ。そしてレミリアの尖鋭の爪と霊夢のお祓い棒がぶつかる。
ギギギ………という嫌な音が響いたが、二人の耳には自身の心音しか聞こえていなかった。
珀雲side
ギンッッ!
少し鈍い音をたてる俺の剣と晴のナイフがぶつかり合う。
剣?確かに剣の描写は無かったが使っていないだけであったぞ?
これは【魔理沙の家にあった剣】だからな。少しは馴染みがある。
まさかこれを思う存分に振れる時が来るとは………これも晴に感謝だな。
「まさかこの程度とは言わねえよなぁ!?」
「ぐぅぅ………」
「おら!」
「(今だ!)………!」
「何!?」
俺の攻撃を防いだ?いや、違う。アイツの手は俺の剣に一切触れていない………まさか、能力か!?しまった。その可能性があることをすっかり頭の片隅に置いといたまま忘れていた。アイツの能力か………洒落臭い能力な気しかしねえな。それよりもこの状況をどうすればいい!?
俺の剣が【止められた】のではなく【止まった】ということは十分に分かった。しかし、それから一向に動こうとしない。
しかも剣だけでなく、剣を振り降ろすために動かしたはずの右手さえも【止まっている】。これでは回避などの次の行動に動けないではないか!
と、あれやこれやしようとしたがそれを不意にやめる。もしかして、コイツの能力って………自分のテンパっている頭でなんとか整理する。
行動を止める。キャンセル………違う。止めたということは………英語でいうとストップ。
いや、【~~させる程度の能力】ってなんかおかしいだろう。まるで他人事だ。
違う、違う。これでもない。【~~にする】………動かない。
じゃあ、【運動神経が0】になる………それを【~~にする】に………速度、そうだ!速度だ!アイツは恐らく速度を………
【速度を0にする程度の能力】を持っている!
これならアイツを襲った剣だけでなく、右手まで動かなくなったのかは分かる。
でも、【どんな速度】もではないだろう………
俺の能力なら………そう【不意うちの音速の速度】は0にできないだろ!
こんな危機なのにもかかわらず、案外頭は冷めていたようで対策までは思いつかなかったが、能力の弱点をも見つけることができた。そして晴は少しずつ起き上がり、俺に弾幕を浴びさせようとしているが1手遅かった。俺はわざと悲しそうに、今にも泣きそうな顔で晴を見つめて言う。
「また、奪うの?」
「っ!?」
「また………まだ俺から奪うの?」
「は、珀雲………ぐぅ!?」
晴は俺の能力を知らない。そうだ。紅魔館の連中には一切能力を見せていない。
だからこそ晴は今、何が起きているのか分かってない。見事に俺の演技に引っかかってくれたよ。
そうさ………俺の能力の速度が音速だとはお前も知り得なかっただろう………
実力でいえば俺よりもお前………でも能力で言えばお前よりも俺だ!
そう!どっかの究極の生命体も言っていた。最終的に………
「勝てばよかろうなのだああああ!」
「はぁ………はぁ………もう一丁、ストップ!」
ググググ!
「は!もう引っかかるかよ!」
ボゴォ!
「があ!!」
予想通りに晴は俺の右手を止めた。だが、その瞬間に俺は左足で回し蹴りを繰り出していた。それに耐え切れず、晴はすぐ近くの本棚まで吹き飛ぶ。そして口から軽い鮮血も吹き出す。紅魔館独特の赤い床に血の赤がベタリとくっついたのだが、そこまで気にならなかった。そして晴の能力の新情報。恐らくの範囲なのだが、能力を使った対象から一定の距離を離れるか、それか目を逸らすことで弱い力でしか止めていない能力なら解除されてしまうのだ。吹っ飛んでから晴が動かないが、その程度で終わっては俺の復讐がどこにもいかなくなってしまう。俺は駄目押しというものをする。
それはマジックミサイル連発だ。無情にも黄緑色した魔力弾は綺麗に直線を描いて晴に直撃し、爆炎が舞い上がる。本の方は大丈夫なのだろうか………何冊か飛び散っているものの汚れが付いているだけで特に傷んでいたりはしていない。
そのかわり、血がついた本も一冊たりとも見かけてはいなかった。そう………晴は間一髪のところで………マジックミサイルを全ての【速度を0】にしていたのだ。またはマジックミサイルの構造上、ただのミサイルと変わらないため、【形を保っていられる速度を0】にしたのだろうかはあまり違いはないが(恐らく前者だろうが………)
兎にも角にもマジックミサイルは消滅する。流石に当てるようの弾幕だからな。追尾とかの性能がある魔法はまだ学んでいないんだ。
魔理沙も「弾幕は派手じゃなきゃ駄目だ」といって実用性があるものを一切作ろうとしないから仕方無くその我が儘を自分の戒めにしているのが仇となった。
だが、なんにせよ。右手は元通りだ。
俺は晴に向かって襲いかかる。次は流石の晴も学習したのだろう両足の速度を0にしたようで俺の足が動かなくなりそのままの勢いのままで足を引っ掛けられたものと同じだから俺は盛大に前に倒れ伏す。だが、俺が倒れる瞬間に晴は気づいたのであろう。
俺の背後から水色の魔法瓶………【マジックボム】が来ているのに………
すぐに避けるがさっきの蹴りが効いているようで少しよろめいている。
そしてボムの爆発範囲の広さのおかげで足の速度も元になる。俺は左手を空中にかざすと箒がどこからか来てそれを掴む。
そして俺を引っ張るように箒は飛び去り、俺は箒の上に立つ。まるで
まだアイツは諦めていないからだ。
何故だろうか?………何故そこまでして俺を元に戻したいのだろうか?俺はどうせまた騙すか裏切るだろうと思っているから殺す。殺せばもう騙されない。もう裏切られないからだ。それで晴が死んでも俺は悲しまない。泣けなもしない。何故ならこれは復讐だからだ。過去の友情か絆とかくだらねえことばかりより、未来だけがあればいい。それを奪うような存在は早急に消し去る。それが俺の………心情だ。他は………………
晴side
くそ!まだ分からないのかよ!あの分からず屋は!俺たち【親友】だろ!
【あの時の約束】を破れるわけないだろう………!
俺は立ち上がる。だって諦めないからだ。【出来ない】なんて言葉は俺には存在しないからだ!
俺は大量のナイフを珀雲に向けて投げる。一発一発はそこまで正確ではないが、
珀雲が少し辛そうな表情をしたのを俺は見逃さなかった。そして俺が隠し持っていたナイフはこれで全て使い果たした。そういえばさっきの俺の胸が突如として苦しくなったのは偶然なのだろうか………だが、珀雲は奪われたと言っているものの才能ある人間だ。能力があったとしてもなんら不思議ではない。気になるのはあのワード………「また奪うの?」という言葉を聞いた瞬間に胸が苦しくなった。
言葉で傷つける………!?馬鹿な!?【あの時】のもそういうことだったのか!?
だからあんなに否定しなかったのか………それに、たしかアイツは物理攻撃を喰らってもケロッとしていたが………まさかダメージを入れ替えている!?た、例えば………肉体的に受けるはずのダメージを精神的なダメージに替えて逆に精神的に受けるダメージを肉体的なダメージに替えている!?それが、この幻想郷に来たことで操ることができたのか………?
俺は立ち上がって早々に珀雲に向かって叫ぶ。
「珀雲!聞いてくれ!俺はお前も知っているだろうが、
俺の能力は【ありとあらゆるものの速度を0にする程度の能力】だ!
お前の能力は恐らく………」
「ほぉ………あれだけで分かったか。いや、実際にお前が【アレ】を喰らったのは【2回目】だったな………それでか………そうさ、俺の能力は【肉体と精神のダメージを反転する程度の能力】だ。」
「お前はその能力をずっと持っていたんだろ!?お前はその能力のせいでずっと苦しんでいた。俺の周りの奴等から【化け物】呼ばわりされていたのもその能力のせいなんだよな!?だったら俺はもう痛い程分かった。俺もこの能力の力のお陰でお前の痛みが、
辛さが分かった!確かに俺が憎いのかもしれない!それも全て分かった!でも間違っている!復讐でお前の全部を任せるなんて………絶対間違っているって気づけよ珀雲!」
「………お前………俺が改心するとでも思っているのか?」
「ああ、思っているさ。信じているからな………【あの時】から………ずっとな………」
霊夢side
レミリアがかなりの実力者だということに気づくのは早かったが、
対処する方法が見つからなかった。あちらは吸血鬼………力も素早さも体力………ほぼ全てのステータスが人間の比ではないのに、こちらはいくら異変解決者と言っても、才能があるといっても、育ち盛り(?)の人間の少女だ。どれだけ強気なことを言っても力の差は歴然………なのだが、それを理由に引き下がってはいけない。
粘り強く戦わなければ自分の使命などはくだらないと思ってはいるがそれに従っている
自分が馬鹿みたいで嫌になる。だからこそ、そうやっていやいや言いつつも私は言われたことをやってきたのだ。だから………今回も………愚痴をこぼしながら戦うだけよ!
二人はほぼ無言の状態のまま弾幕を放ち、避け、グレイズし………それだけを繰り返した。
レミリアside
とても楽しいこの弾幕ごっこは簡単には終わらせたくない。それだからこそ、霊夢の体力の多さにたちまち吃驚する。普通の人間だったらもうそろそろ息が切れ、呼吸が荒くなるというのに霊夢は全くそのような感じに陥らない。これも彼女の能力なのだろうか?【空を飛ぶ程度の能力】………地球の重力という概念に縛られない自由に自分の気分のまま生きる巫女………ということは全てから飛ぶことができるのか………自分の体力の消費を飛ぶことで減らしている………?詳しいことは分からないが………いまはこの弾幕ごっこを………楽しみたいところなのだけど、少し気になるのよね………あの………【逆狩 珀雲】という人間………あの晴の親友だというから運命を見てみたら、あら不思議というやつね。
ところどころの運命が【途絶えていた】。色んな人間や妖怪にこの能力を使ってきたが
こんな運命は見たこともない。恐らく本来死ぬはずの運命が沢山あるということなのだろう………それがなんらかの力によって逆狩 珀雲は【生きていられる】………
それが………その生きていられる原因が晴なのだとしたら………!?もし、私の予想が本当だったら………今、彼らがお互いの死を賭けて戦っているのは駄目だ。
晴の罪悪感の根源………逆狩 珀雲の死の運命を捻じ曲げてきた存在………どちらが死んでしまったらもう片方の存在も死んでしまう。ぶっちゃけた話、逆狩 珀雲という存在はどうでもよかった。晴に会うまでは………逆狩 珀雲が晴の大切な存在だというのなら話は別だ。事は一刻を争う………!私の従者に止めてもらおう………
「咲夜!今すぐ図書館に行って晴と逆狩 珀雲の戦いを止めてきなさい。」
「で、ですがお嬢様の身に使えるのは………」
「咲夜、貴女は私が負けると思っているの?」
「滅相もありません!私はお嬢様が勝つことを信じております。」
「だったら貴女は行きなさい。後で行くから………」
「はっ!お嬢様………どうかご無事で………」
そう言って咲夜一瞬で時を止めて移動したためこの部屋からいなくなった。
さっきまでずっと私を見守ってくれていたのだがいなくなって少し寂しくなった。
「あんな大層なこと言っちゃって本当に大丈夫かしら?」
「別に………私は強いからね。それよりも………続きをしましょ?」
少し、時が止まったように(実際止まったが)静寂が二人の周りの空間に満ちる………
そしてそのまま静かに弾幕ごっこの続きが始まった。
次回予告
「痛みを知れ!」
「やめろ!」
「くだらねえ過去があって何がやり直せるだ!」
「俺………たちは………」
「さらばだ………唯一の………友よ」
「珀雲?………お前言ってんだよ………?」
中………そして下に続く………
次回「異変狂気 6面中」