博麗 霊夢はわがままだ。わがままで何もかも治め、生きてきた。そのため、命令されるというのは屈辱以外の何者でもない。
だが、頼み事というのらまだ屈辱ではなかった。霊夢は紫の話を脳内で再生していた。空を飛んでいるのは霊夢だけではなく、紅魔館のメイドの十六夜 咲夜がいた。咲夜はレミリアの代わりに異変に介入して寒さを止めに来たらしい。薪を追加購入するのが面倒というのもあるそうだ。紫の話によると昔からの友人の西行寺 幽々子がおかしくなったのは紅霧異変が終わってから2ヶ月程後だったそうだ………紫も直接本人から聞いたわけではないらしいが冥界で霊の管理人である幽々子にが来たそうだ。というよのも幽々子が住んでいる屋敷の剣術指南役兼庭師の【魂魄 妖夢】という者の話らしい。何でも異変が終わってあまり時間が経っていない時期に来た人物達がいたらしく、侵入者だと勘違い戦いが勃発しそうな時に幽々子が現れ「客だ」と言ったそうだ。紫は
そもそもそいつらは何者なのか………何故そいつらに出会ってから幽々子がおかしくなったのか………紫はある一つの考えを仮定として霊夢と咲夜に話した。それは………
「【洗脳】ね………」
「あの大賢者の友人を洗脳できる奴なんてこの幻想郷でも屈指の強敵ね………」
どうやってかは知らないが幽々子を洗脳させて無理やりこの異変を起こしているというのが紫の考えだ。と言ってもそれが本当かどうかはそいつらに会わない限り、真相が分かるわけがない。そして話題は代わり、咲夜が残念そうな顔で喋り始めた。
「珀雲さんは来ていないのね………彼もいれば心強かったのに………」
「仕方ないじゃない。珀雲はなんか紫と話があるって言って結局来なかったのだもの。」
そうなのだ。珀雲と紫はあのあと少し話があると言って境界に入っていったまま現れていないのだ。咲夜が来る少し前の出来事だったので余計寂しそうだ。だが、そんなことでいちいちめげるようでは紅魔館のメイド長の名が廃るというもの。咲夜は気分を一新して話題を変える。ある意味重要なことであったが、珀雲のことになると少し興奮してしまい、周りが見えなくなってきているのを知られたくないため、思い出したことを言ったのだった。
「そういえば霊夢。貴女やっとこさ異変解決に力を入れる気になったのね。お嬢様が助言してこいと言ってきたのだけどいらなかったというのはついつい目を疑ってしまうわ。」
「何?喧嘩売ってんのあんた。」
「いいえ。ただ気になっただけ。」
「はぁ………別にあの紫が
「ふふふ。そう………」
咲夜は笑い出す。霊夢の素直ではなく無理矢理話題を変えようとするその必死さについつい笑ってしまった。彼女も友という言葉に弱い存在なのだと感じた瞬間でもあった。
咲夜の笑っている姿とこの寒さから妙にいやな寒さを改めて感じ取ったのだろう。霊夢は身震いする。いや、咲夜自体は何もしていないのだが、体感温度がぐっと下がってきている。ふと前方を見ると白い吹雪の中に人影が見える。警戒を強めて近づく………するとその人物はまるでルーミアみたいなポーズをしながらこちらに近づいてくる。
「黒幕~。」
少し独特の帽子とウェーブのかかった髪型に寒色系の服装。厚着っぽく見える。スカートのあたりのエプロンっぽい装飾をしていた。
背中に半透明のマントっぽいものが羽のように思わされるものが見える。胸元には三方向への矢印のような飾りがついている。
あと後に珀雲から聞いたことだがこれは錬金術で銀を現す記号であるらしい。自称黒幕はドヤ顔で霊夢達の前までやってくる。
その表情にイラっと来ているのか霊夢は今にでも攻撃してきそうな勢いだ。
「黒幕ね………さっさと倒して暖かさを取り戻さなきゃ。」
「ちょっと待って!私は【レティ・ホワイトロック】。黒幕だけど普通の黒幕よ!」
「そんなもの関係ないわ。あんたが邪魔するならぶっ潰すだけよ。」
霊夢は封魔針を
どうやら霊夢に任せるようだ。戦いに巻き込まれないように離れ、じっと近くの森の方を見る。そこは魔法の森。そこから妙に温かい色が見えるのだ。霊夢は戦いに集中していて見えていないようだ。終わったら教えておこうと考え、霊夢の戦いの光景を見ることを再開した。
どうやらレティがスペルカードを使うようだ。
「寒符【リンガリングコールド】!」
どこかの氷精かのような氷柱が出現したかと思えば真ん中の青く大きい弾幕を筆頭に小さい弾幕が大きい弾幕を中心にしてそれぞれ弧を描き飛んでくる。霊夢はそれをすぐ自分を狙って飛んできていると判断すると少し横にずれる。
すると続いて飛んできていた2つ目の弾幕達が当たることはなかった。そして続く3つ目の弾幕は更に横にずれて回避する。
4つ目、5つ目が流れ切る前にはスペルカードの効果は切れていた。レティは悔しそうに声を漏らす。
「くっ………」
「………まだやるのかしら?」
「さすがにあと1枚です………よ!冬符【フラワーウィザラウェイ】」
レティの周りの氷柱の量が倍に更に倍へと莫大に増えていく。そしてそれは四方へと飛び去り、その一つの弾幕達は斜めの方向から霊夢を襲いかかってくる。そして量が多く、避けにくいと思いながらも霊夢は顔にはださず、冷たい表情のまま弾幕を回避そして封魔針をレティに当てた。ピチューンという終わった感の出ない音が聞こえレティはやれやれと言わんばかりに肩を落とす。
「もう………こんな異変が起きるから勘違いで倒されちゃたまったもんじゃないわ。」
「魔理沙のことかしら?」
「そう。冬がまだ続いているから私も春眠したくてもできなくて困っているの。」
「………黒幕よわいなぁ~」
「寝たいんだもの。仕方ないわ。」
「じゃあ霊夢、新たな黒幕を探しに行きましょう。」
「そうね。さっさと行くかしら。こいつのせいで余計寒くかんじるし………」
「………言い返すこともできませんわ。」
レティはバツが悪そうに顔を下に向ける。霊夢はふんと鼻で笑うかのように飛んでいった。咲夜はまた素直じゃないなと思いながら霊夢のあとをついっていった。
珀雲side
「そう………なら――――ということなのね?」
全ての目玉がこちらを向いていて恐怖さえ通り越して笑ってしまいそうな空間で紫の珍しく真面目な言葉が響く。
珀雲は口を開かなかった………代わりに頷いた。紫は少し疑問に思っているようでこちらをジロジロと見てくる。そして口を開く。
「本当に………異変には協力してくれないのかしら?」
「………一つだけ条件があるんだ。」
「何かしら?」
「――――ということと――――というのは魔理沙には黙っていてくれ。さっきのパシリもアレも無しでいいから。」
「………ええ。ちゃんと秘密にしておくわ。ただ………」
「言わなくても………分かっているつもりだ。」
そう言って珀雲は立ち上がる。いや、そんなモーションしなくてもよいのだが、紫に一言「開けてくれ」という言葉に紫は無言で扇を持ちながら手を前に出す。すると境界の目達の間が開き、そこからは博麗神社の居間が見える。珀雲はそこから出て行った。
紫は一人静かにこういった………
「貴方の秘密………簡単に要約すれば【傷は癒えない】ということかしらね………早急に手を打たなければ………」
次回「魔法の森の奥」