東方傷心記   作:咲き人

23 / 53
どうも咲き人です。



其の弐拾弐「魔法の森の奥 2面」

霊夢と咲夜が魔法の森の上空を飛んでいると何か叫び声が聞こえてくる。

その声は恐らく女性のものなのだろうが、何かしらの言葉を叫び、慌てているように聞こえる。

 

 

こちらも慌ててその声がしたところに行ってみる。咲夜から聞いた話も忘れて真っ先に人助けをしに行こうとするあたり、さすがは博麗の巫女といったところか。だが、妖怪の騙し討ちだったとしたらどうする気なのだろう。自分から言っておいて引っかかった

時の弁解の言葉を思い浮かぶと面白くて笑えてくると咲夜は思っていた。咲夜がそんなことを思っているとも知らずに霊夢は大急ぎで声の主を探す。どうやら咲夜が思っているような可能性は頭には入ってきていないようだ。博麗の巫女という職業よりも前に一人の人間として人を助けたいと思えるのだろうか。あの霊夢が………それとも声の主に覚えがあるのだろうか。

 

 

霊夢がある場所に降り立つ。それに釣られて咲夜も降りる。そこにはいくつかの木造の小屋とその数には合わないほどの猫………野良猫だろうか。三毛やシャム、ドラなどの色んな種類があってこれらも外の世界で忘れられた猫達なのだろうか。少し霊夢と咲夜を尻尾を立てて毛を逆立てて警戒しているような身振りをする。霊夢は正直言ってこの猫達より、叫び声を上げた人物の方が気になるのだが、咲夜は違った。

 

 

目をキラキラと輝かせている。咲夜だって乙女(笑)であり、少女(笑)なのだ。猫のようなふわふわもこもこの存在は特に女子のハートを鷲掴みにするには十分すぎるほどのものだった。咲夜はそおっと近づく。猫もじりじりと下がってはいるが警戒の強さは弱まって来ている。身を低くし、右手をそっと差し出すかのように前に出す。するとその猫は少しずつ近寄ってくる。どうやら猫は咲夜を自分達のことを捨てた元飼い主よりは優しき心を持っていることが分かったのだろう。そして猫の方からも手をだし、咲夜が先に出していた手の上に置いた。肉球が咲夜の手のひらに触れる。柔らかく、何回も置いてくるので気持ちいい。咲夜も猫達が徐々に自分を認めてくれ近寄ってくれたのに感慨深いものを感じているのか、今寒いのにも関わらず、咲夜の手と顔と心は温かなっていっていた。咲夜はもう猫に触れただけで幸せなのだろうか、ポカポカしたようオーラというか、雰囲気を感じる。猫は咲夜の手のひらで丸まり尻尾を振る。もう猫に頬擦りしても嫌がらないし逃げられない。それどころか気持ち良さそうに目を細めて咲夜に身を委ねている。咲夜はもう有頂天だ。

 

 

レミリアやフランのような小さいものが好きだということがこれで十二分に分かるだろう。ただ好きなだけであって恋愛対象は勿論珀雲なのだろう。好きと愛は違うというのが一番例として分かりやすい女、咲夜が霊夢がいない間にやっていたことであった。

 

 

 

霊夢は咲夜が立ち止まった理由など露知らず、木造小屋の奥から聞こえるすすり泣く声の主を探した。さっきの叫び声の主とは声色が違うため、叫び声の主もこの声の主を助けるために来たのかもしれないという考えが強まってきた。元はそういう考えはなかったのだが、咲夜がいなくなった辺りからそういう考えが脳裏をよぎったのだ。そしてその奥にいたのは茶色とも栗色ともとれる髪の色に黄緑色のキャップを被り、背はどっかのバカルテットと同じくらいで赤いチャイナドレスに似たようなものの下に白い服を着ており、黄色の蝶ネクタイをしていてここからが重要。その子には2つの尻尾がある。どうやら化け猫のようだが、見た目どうりに子供なのだろう。その子は膝を怪我しているらしく、痛みのせいで泣いている。

 

 

そしてその傍らにはその子を一生懸命介護しているものがいた。恐らく彼女が叫び声の主なのだろう。彼女は金髪のショートボブに金色の瞳を持ち、その頭には角のように二本の尖がりを持つ帽子を被っており、服装は古代道教の法師が着ているような服で、ゆったりとした長袖ロングスカートの服に青い前掛けのような服を被せている。簡単に言えば漢服のような中華風の服のように思えるものを着ているというということだ。身長は霊夢よりもやや高く紫よりもやや低いと言ったところか………腰からは金色の狐の尾が九つ、扇状に伸びている。 彼女も人間ではない。妖怪だ。それも九尾………妖狐という大妖怪。それなのに妖狐からすれば下級の中の下級であるはずの化け猫にこれほどまでに大切に扱っているというのは希………いや、見たことがない。

 

 

ということはそれほどの仲なのだろうか………それとも………と霊夢が思っているとやっと妖狐の女が霊夢の存在に気づく。どうやらあっちは知っているらしい。それもそうだろう。こっちはなんって言ったって妖怪退治が主な仕事なのだ。いわば妖怪退治のエキスパートなのだ。大妖怪に敵対視されていたとしても何ら不思議ではない。だが、彼女は違った。霊夢を呼ぶとき、大体馴れ馴れしい奴なんて知り合ってしばらくした奴しかいない。魔理沙は別としてレミリアなどは知り合って間もないがお互いが名前で呼び合っている。それと同等だったのだ。

 

 

「霊夢か!すまないが【橙】を直してくれないか?」

 

 

勿論、霊夢と彼女は初対面のはずだ。なのになんでこんなに馴れ馴れしいのだろうか?それともどこかで会ったのだろうか。記憶の片鱗にも値しないくだらない記憶の一部で

こういう人物にあったのだろうか?混乱してきた頭が溶けてしまいそうなほど気持ち悪い気分になってきた。そしてそれを察したように妖狐の女は軽く頷き、立ち上がって自己紹介した。

 

 

「そうか。お前は知らなかったのだな。私の名は【八雲(やくも) (らん)】。【八雲 紫】様の【式神】だ。い、いやそんなことよりも橙が!橙が!」

 

「ふえええ!痛いです!藍しゃま~~!」

 

「ちぇえええええん!」

 

 

なんなのだろうかこの妖狐は………化け猫の保護者なのだろうか?それしては過保護すぎはしないだろうか………それにちょっと擦りむいた程度の傷でそんなに慌てなくてもいいとおもうのだろうが、それよりもこの女が言うことが本当なのならそれはそれで問題だ。紫に式神がいるなんて聞いたこともない。いや、まあ………本人が言ってないだけだと思うが紫はどうせてっきり知っているものだととか言ってはぐらかすに違いない。もうあの女のてへぺろという顔が頭に浮かぶと苛立ちがわなわなと湧き上がる。とそれはそれでこれはこれだ。紫の式神ということは結構主人の面倒を見ないいやな奴だと自己解釈していたが、どうやら藍というこの妖狐はしっかりもの………ただ、橙と呼ばれる化け猫のことに関しては過保護主義者ということだった。紫はもう少し自分の性格をサポートしてくれる存在を式神にしなかったのだろうか………どう考えても頭がおかしい。狂っているわけではないのだろけれどもこれは相当病んでいるように見える。いや、自分の頭で勝手に紫への文句を言うのも勝手だが橙が怪我をしているのは事実だ。まずはそれを回復させてやろう。

 

 

霊夢は回復札を取り出し、呪文を唱えるかのごとく、ぶつぶつと詠唱した。

 

 

 

 

珀雲side

 

 

彼はそこで待っていた。そして待ちわびた存在が現れる。そこは人里から少し離れた魔法の森とも呼ばれない特殊な森の大樹に背をかけていた。やっとこさ来た方の男は面目なさそうに手を後ろに回して愛想笑いを撒き散らす。別にそれを見ている人物の数は一人しかいないので寂しいものなのだが………大樹に寄りかかっていたのを止め、背筋を伸ばし立ちなおる。急に愛想笑いをしていた方も真剣な表情で見つめている。

 

 

「行くのか?珀雲………別に俺からすれば………」

 

「行かなければならないからな。紫にも言われたし………あと、晴。」

 

「え?あ、ああ。分かってる。【本当に二人っきりの時】は――――って呼べばいいんだよな?すまないな。ついつい………」

 

「………強制というわけじゃないが、万が一の時ようにな………――――。」

 

「ああ………次は忘れないさ。じゃあ………行くか。」

 

「そうだな。」

 

 

二人はそういうとどこかへ飛び去ってしまった………

 




次回「争奪する愛(珀雲君涙目)3面」
次回はあの3回も出てくるという自己主張の激しい人が登場です。そして………対戦カードは分かるよね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。